FMfanのアーカイヴであの時代にタイムスリップ!タイムマシーン特集
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Red Hot Chili Peppers
今のオレたちのすべてがここにある
No.6
Photo: Redferns
改めて説明するまでもないだろう、音よし、曲よし、ライブもよし、加えて公衆の面前で真剣におバカをやるところもまたよし、いろいろな角度からわれわれを目一杯楽しませ、よろこばせてくれる、その四拍子そろい踏み的なところが、そう言われるゆえんだ。が、実はここ数年、彼らはその“世界最強バンド”っぷりを発揮したくても発揮しようのない状態にあった。『ワン・ホット・ミニット』(95年)より参加し、台風直撃を食らった「FUJI ROCK FESTlVAL'97」で豪雨、強風吹き荒れる中、壮絶なライブを披露、新たなライブ伝説を創った時のギタリスト、デイヴ・ナヴァロ(元ジェーンズ・アディクション)が脱退、さらにフロントマン、アンソニー・キーディスの薬物問題再発という追い打ちもあり、ピタリと動きを止めたからだ。そんな彼らが後任のギタリストを迎え、ここに新作『カリフォルニケイション』を発売、大復活した。
「再び動けるのを待っていたからね、今オレたちはすべてに対してヤル気満々さ。新作にも大満足さ。全力を注いだこの作品は今のオレたちのすべてだし、すごくいいものが出来上がった」と、アンソニーもハッピーそう。
今回の大復活劇のシナリオはあまりにも劇的で、旧友との深く、温かい友情によって綴られている。それがロック・エンタテインメント・ビジネス界特有の演出や仕掛けなんかではなく、すべてが自然に動き、進んで行った結果なのだ。ここに、“世界最強バンド”たる運の強さを見た。その後任のギタリストで旧友とは『母乳』(88年)、『ブラッド・シュガー・セックス・マジック』(91年)のころ一員だったが、92年春の再来日公演中に失踪、脱退したジョン・フルシアンテのことだ。それが原因で再来日公演は途中で中止、それ以降約2年も後任が固定しないなど、彼の脱退はバンドに大きなダメージをもたらした。考えてみてほしい、結果的にそこまでのことをしてしまった人間と、また、一緒に何かをやりたいと思うだろうか。普通は思うはずもない。が、彼らは違った。また一緒にやりたいと切に願ったのだ。そしてアンソニーがドラッグ中毒のリハビリ中であった彼を見舞い付き合いを再開、続いてベースのフリーが話し、一気に復帰が決定したのだ。フリーが言う。「彼は世界一のギタリストだから、ほかの候補なんて考えもしなかった。彼と一緒にプレイすることほどパワフルで美しいものはないんだ。
ジョンが続ける。
「心より信頼できる友達っていいもんさ。バンドを離れてしばらくして人生がいい方向に向き始め、フリーもそれに気付き、もう一度戻らないかって誘ってくれた。オレはクリエイティブなことをしつつ一生を過ごすのが理想だから、新作を作れてハッピーだし、今からライブをやるのが待ち遠しいよ」
リラックスした穏やかな雰囲気も
彼らの魅力の一つとして、また強烈なイメージの一つとして挙げられるのが、ブッ飛び力ッ飛びのハチャメチャさ、だ。が、それは新作からはほとんど放たれて来ない。その代わりというわけじゃないが、今回は人間味にあふれ、随所に暖かみ、優しさが満ち、聴く者を大らかに包み込むかのような包容力もある。ロック+ヒップホップ+ファンク的な、いわゆるミクスチャー・サウンドに、バリエーション豊かな楽曲群を乗せ、時に心地よく体を揺らしてくれて、時にじっくりと聴き込ませてくれるところも、もちろんゴキゲンだ。「新作には、リラックスできる穏やかな雰囲気があるよ。友達と一緒にいる時がー番リラックスできるわけだし、パッションも生まれる。だから新作にはいろんな思いが凝縮されているし、今のオレたちを取り巻く世界すべてが新作で表現されていると言えるね」
4月下旬にハリウッドで彼らと会った時痛感させられたのだが、ジョンの復帰で今彼らは最高にハッピーそうで、実にいい状態にあるように見えた。時間こそ要したが、また、“世界最強のバンド”を発揮する時が来たようだ。
(インタビュー・文/有島博志)
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