FMfanのアーカイヴであの時代にタイムスリップ!タイムマシーン特集
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TOPICS - 1967※当記事の著作権は全て株式会社共同通信社に帰属します。
1967年 トップニュース ―マイルス・デイヴィスほか
児山紀芳
No.1
Photo: Getty Images
●マイルスのニュー・ドラマー
トランペッター、マィルス・デイヴィスの五重奏団は、去る12月上旬、ニューヨークのヴィレッジ・ヴァンガードに出演(2週間)したが、トニー・ウイリアムスの後任ドラマーとして、新人ジャック・デジョネットが参加したもよう。デジョネットは、チャールス・ロイド四重奏団で活躍中の新鋭で、トニー・ウイリアムスの影響を受けている。
●コルトレーンの復帰
一時的引退を伝えられたテナー・サックスの巨匠ジョン・コルトレーンは、66年11月いっぱい休暇をとったあと、12月になって再び演奏活動にはいった。それよりさき、米インパルス・レコードでは、コルトレーン五重奏団の「ライヴ・アット・ザ・ヴィレッジ・ヴァンガード・アゲイン!」を発売したが、このアルバムでコルトレーンは、「ネイマ」と「マイ・フェイバリット・シソグス」という、60年代初頭のヒット曲を再演している。このアルバムは、今春、日本でもキング・レコードを通じて輸入盤で発売される。
●ストーンズの映画難航
ビートルズと人気を2分するイギリスのビート・グループ「ザ・ローリング・ストーンズ」の初主演映画「恋人たちだけが生き残った」(原題「Only Lovers Left Alive」)は、66年11月上旬には撮影にはいる予定だったが、現在、まだ何ひとつ進行していない。計画では、11月上旬から、ほぼ8週間をかけて撮影し終えたあと、ストーンズは映画の宣伝をかねて67年新春早々にも国内とアメリカを巡演、3月にはファン待望のサウンド・トラック盤も発売される予定になっていたもの。なおストーンズは、この映画によって、サントラ盤の売り上げなどを含めて、つごう72億円という巨額の収入を手にするとうわさされていた。
(児山紀芳)
フォークの女神 ジョーン・バエズ
古澤武夫
No.3
Photo: Redferns
ジョーン・バエズがやってきた。「神秘の女神」とか「フォークの女王」などと呼ばれているが、彼女の場合は、平和と自由をねがい、戦争、暴力、人種差別の反対を叫び、歌を通じて大衆にこれらを訴えようとする行動派歌手といったほうがいいようだ。無理のない発声で、行動派とは思えないおだやかさで、叙情味ゆたかに歌い上げる。きくものの魂をゆさぶるというのも、彼女の歌の底に流れているエスプリのためかもしれない。
バエズはメキシコ人の学者を父に、イギリス人を母として、1941年1月9日にアメリカで生まれ、ボストン大学の演劇部にいたころ、民謡喫茶に出はいりしてフォーク・ソングを歌うようになった。音楽については正規のレッスンも受けていなかったが、1959年の第1回ニューポート・フォーク・フェスティバルに出演して、今日の成功の糸口をつかみ、翌年の5月にはカーネギーホールでリサイタルを開き、いらい全米にブームを起こすようになった。生活は万事簡素で、仕事の合い間にはカリフォルニア南部の草深い土地の山小屋にこもっているという。
「おお自由よ」「勝利を我等に」「さようならアンジェリーナ」「花はどこへいった」「朝日のあたる家」「ドンナ・ドンナ」など数十曲のレパートリーがあるが、アメリカではレコードを数枚しか吹き込んでいない。彼女のアンチ・コマーシャリズムの表われであろうか。
(古澤武夫)
人気絶頂のアレサ
No.20
Photo: Redferns
アトランティック・レコード専属のリズム&ブルースシンガー、アレサ・フランクリンは、このほど3枚目のゴールド・ディスクをRIAA(アメリカ.レコード産業協会)から贈られた。彼女のシングル盤「ベイビー・アイ・ラブ・ユー」が100万枚のセールスを記録したため。
(共同)
アストラッド、ロリンズ来日か
久々にジャズメンが大挙来日しそうな気配
No.20
Photo: Redferns
今秋から冬にかけては、久々にジャズメンが大挙来日しそうな気配だが、まず11月にはボサ・ノバの歌姫アストラッド・ジルベルトの来日が実現しそう。実現すれば、彼女は自分の伴奏グループを同伴するそうだが、渡辺貞夫との共演話も持ち上がっており、楽しみなことだ。さらに来年1月初旬から3週間の予定でテナー・サックスの巨匠ソニー・ロリンズが四重奏団を率いて来日する予定だ。現在確定しているメンバーは、ロリンズのほかトロンボーンの新鋭グラチャン・モンカー3世、ベースに伝説的な名手ウィルバー・ウェアー、ドラムスに新人ビーバー・ハリスとなっている。招へい元のニューJBCではすでにこのメンバーでの来日契約を米側ととりかわしており、あとは法務省の入国許可が下りれば、実現することになる。
またことしの12月には、いま話題のオーケストラ、バディ・リッチ楽団が来日する予定である。すでにレコードなどでも知られるように、バディ・リッチのニュー・バンドは、新鮮なアレンジを使ったエキサイティングな演奏でわが国でも好評を博しており、ぜひとも実現させてほしいもの。
なお11月に予定されていたマイルス・デビス・クインテットの来日は惜しくも流れてしまった。デビス・クインテットの現ドラマー、トニー・ウィリアムスが入国不可能なためその代わりにチャールズ・ロイド四重奏団の現ドラマー、ジャック・デジョネットを臨時に加えたコンボでと計画を進めたところ、デジョネットがどうしてもロイド四重楽団を抜けることが出来ないとの返事が返ってきたために流れたものである。
(共同)
野性的な本格ジャズ ―ニューオーリンズ・オールスターズ
新しいメンバーによる「ニューオーリンズ・オールスターズ」が来日
No.22
新しいメンバーによる「ニューオーリンズ・オールスターズ」が来日。全国各地を巡演している。
ジャズはニューオーリンズの黒人ブラスバンドから始まった。その創生期のスタイルそのままを演奏できるミュージシャンは、もう数えるほどしか存在していない。来日したバンドリーダーのジョージ・コーラさんは「あと十年もすれば、すっかり滅びてしまうだろう」とさえいっている。
最年長者はジョン・ハンディで六十七歳、最年少はフレッド・マイナーの五十五歳。だが老黒人とは思えないほどの熱っぽいプレイ。ニューオーリンズ・ジャズ特有の野性的で豪華な演奏はまさに無形文化財的といえる。
(共同)
ボサ・ノバがやってきた フルートの王者ハービー・マンとその楽団
ブラジル生まれの“新しい波”ボサ・ノバが大流行のきざし
No.25
Photo: Redferns
ブラジル生まれの“新しい波”ボサ・ノバが大流行のきざしを見せている。そのトップを飾ってフルートの王者ハービー・マンとその楽団がやってきた。
1964、66年に次ぐ3度目の来日で、前回は雅楽と共演するなど、ハービー・マンとその楽団は、日本のファンとはすっかりおなじみ。東京公演を皮切りに神戸、名古屋を巡演、クールな新しいジャズをフルートの甘美な音色にのせてファンを魅了していた。
とりわけ話題を呼んでいたのはオラトンジの野性的で強烈なパンチのきいたコンガで、その異様なリズム感に拍手が集中、またハービー・マンと渡辺貞夫の競演もみもの、聞きものだった。