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grram 『まぼろしのカタチ』インタビュー
マイケル・ジャクソン逝去に駅のホームで泣きじゃくるような純粋さ、心のままに生きたくて葛藤する不器用さ、そこから生まれる音楽。2ndミニアルバム『まぼろしのカタチ』について久川実津紀(vo)が語った。CD不況時代にニューカマーとして世に飛び出す者の覚悟、伝えたいもの。ぜひご覧下さい。
CD不況時代のニューカマーとして考えること
--3月のデビューアルバム『心の指すほうへ』リリースタイミング以来のインタビューとなります。あれから4ヶ月、今はどんな状態や心境で日々を過ごしている感じですか?
久川実津紀:デビュー前と今では、気持ちの部分が変化しているかもしれないです。今は「支えられているな」ってつくづく思います。初ライブ以降、grramの曲を聴いて頂いている方々の姿を目の前にする機会が増えていて、リリースイベントで福岡から北海道まで全国廻ったときは、握手会で曲の感想を直接聞けたりもして、「grramの音楽がすごく好きです。応援しています」って言ってくれる方が各所にたくさんいて、支えられている認識が強くなりました。
--今って完全にCD不況じゃないですか。その中でメジャーデビューしていくニューカマーの人たちって、10年前の新人より求められるものが大きいと思うんですよね。そうした面での重圧とかはないですか?
久川実津紀:CDの売れない時代ではあるんですけど、YouTubeなどのツールがあるからこそ聴いてくれる人っていると思うんですよ。だからそういうツールを活用して、どんどんgrramの輪を広げていく。その上で積極的にイベントもやって、自分から直接発信していくスタンスをちゃんと保ちたい。で、制作も止めない。リリースをするなら常に前作を超えていく。じゃないと、埋もれていってしまうと思うので。
--4ヶ月前はまだライブ未経験でしたが、この期間に行った初ライブはやってみていかがでした?
久川実津紀:心から嬉しかったですね。デビューの一日前にも関わらず、全部歌詞を覚えて一緒に歌ってくれる人もたくさんいて。自分たちが発信した音楽や言葉をちゃんと受け取ってくれている方が実際にいた。それは自信にもなりますし、何より嬉しかったです! もっともっと伝えたいことが増えました。
--そうした活動の中で、久川さんにとってgrramってどんなバンドだと感じるようになりましたか?
久川実津紀:伝えるバンド。音楽は何かを伝える為にあるものだと思うので。理想のバンド像ですか? 仲良し子良しじゃなく、バンドで音楽活動をしていく以上は、みんなが音楽作りに集中する。まぁストイック過ぎても面白くなくなっちゃうかもしれないんですけど、でもやっぱり聴いて下さる方がいる限りは、出来るだけ良いものを届けられるようにしたい。そういう意思は今の時点でメンバー一同強いと思うので、あとは経験を積んでいけばもっと良いバンドになる。まだ5回しかライブしてないんですけど、そこの手応えは感じています。
--そうした意思もあってか、今回の2ndミニアルバム『まぼろしのカタチ』を聴いて、声が強くなったなと感じました。ガツンと響く。自分ではどう感じていますか?
久川実津紀:前回はレコーディング自体が初めての経験で、不安な部分もあったんですけど、今回はリリースイベントとか初ライブを経てのレコーディングだったので、前回よりは“伝えるとは何なのか”理解できていたんですよね。それで、今まで以上に曲の世界の中に入って歌うようになったので、自分でも変化は感じます。
--声が強くなった分だけ、曲の輪郭も際立ちますよね。よくこの短い期間でレベルアップしたなって驚きました。
久川実津紀:それだけこの4ヶ月が濃かったんだと思います。
--さっきは理想のバンド像について聞かせてもらいましたが、久川さんが目指す理想のボーカルってどんなボーカル?
久川実津紀:伝わるボーカルです。私が目指すのは、CD越しでも世界観や空気感が伝えられるボーカリストなので。マイケル・ジャクソンのエモーショナルかつ繊細な感じとか、アヴリル・ラヴィーンの嘘が全くない正直な歌い方とか、影響受けているんですけど、私もその人にしかない唯一無二のボーカルを目指したいです。もっと自分と向き合って。
ライブ情報
ワンマンライブ【grram-mentalism 1】
08月31日(金)hillsパン工場(大阪府大阪市西区北堀江1-3-17)
OPEN 18:30 / START 19:00
お問い合わせ:hillsチケットセンター
TEL:06-6110-7111
E-mail:pankojyo@giza.co.jp
マイケル・ジャクソン逝去に駅のホームで号泣
--前回のインタビューでは「マイケル・ジャクソンに救われた」と言っていましたが、それだけ敬愛するスターが亡くなってしまったときは、どんな心境だったんですか?
久川実津紀:3年前の6月25日ですよね。高校への登校途中、学校の最寄り駅に着いたときにそのニュースを知って、人生で初めて腰が砕けました。立てなくなっちゃったんです。で、涙が止まらなくて、ホームで大泣き。とにかく泣きました。憧れの存在、ヒーローが亡くなってしまって、本当に心にぽっかり穴が空いちゃったんですよね。本当に悲しかったです。自分の夢そのものだったし、いつか会いたいと思っていたけど、もうそれは叶わないので……。でもマイケル・ジャクソンからは音楽活動に対する姿勢すべてに影響を受けているので、感謝しています。
--そんな久川さん。先日「正義って何だろね。ほんとにね。」とツイートされていました。あれはどんな状況や心境で書いたものなんでしょう?
久川実津紀:ニュースを観ていて思ったんですけど、社会の中で「正義」と言われているもの。それをみんなが「正しい」と思い過ぎていて、何かが歪んできているような気がして。……こういうことをよく考えちゃうんですよね。目に見えないものについて考えてしまうことがよくあります。優しさって何だろ?とか。
--ちょっと抽象的な質問になりますが、久川さんはどんな風に生きたいと思っている人なんですか?
久川実津紀:自分の心には嘘をつかず、正直に生きたい。それってすごく難しいことなんですけど。あと、ありきたりかもしれないですけど、人に優しくしたい。分け隔てなく、誰にでも優しくありたいなと思います。自分がしてもらって嬉しいことは、私も人にしてあげたいと思うし。
--その真っ直ぐに生きたい感覚は、2ndミニアルバム『まぼろしのカタチ』の歌詞にも表れています。
久川実津紀:ありがとうございます! そうですね。人としての生き方を真っ直ぐにメッセージしているアルバムになったなって。
--久川さんって様々な状況や感情と正面衝突しながら歌詞を紡いだり、歌ったりしてますよね? ぶつかって自分なりの答えみたいなものを導き出す。自分ではどう思いますか?
久川実津紀:日々そうして感じているものを歌詞にしています。自分が目指しているものは、人の胸に寄り添える音楽なので、その為には自分にとってリアルな感情や感覚が乗せられないと成立しないんですよね。なので、例えば、誰もがいつでもポジティブに生きられる訳ではないから、その現実を理解した上で、躓いてもその先はあるって、光のある方向に誘ってあげられるような歌詞を書いたりしています。
--どの曲も必死にポジティブな方向へと辿り着こうとしていますよね。これは久川さんが根っからのポジティブ人間だからこうなるの? それともネガティブだからこそポジティブを求めてこうなってるんですかね?
久川実津紀:後者ですね。私はすごく後ろ向きな考え方をしてしまう。それですごく落ち込んじゃったりするんですけど、理想としては「もっと明るく生きたい」と思っていて。だから歌詞には「そう在りたい」とか「ここに辿り着きたい」っていう願いも反映されていると思います。
--なるほど。ちなみに、どんなことで暗黒に潜っちゃったりするんですか?
久川実津紀:自暴自棄。人にどう見られているか気にすると、そこに陥りやすいですね。あと、私はよく失敗を恐れてしまうんです。自分の作ってきたプライドなのかもしれないんですけど、自分の中で失敗を許せなくて。そういうときに「自分なんて」と繰り返してしまう。ただ、そのモードのときの方が言葉は出てくるんですよ。歌詞が書きやすい。悩むからこそ書けるというか。今作の「大切なものはきっと」の歌詞も、そういう気分のときに書いたもので、悩みながら歩いていたら割れた花壇の中でも咲き誇っている花を見つけたんです。それで、私も自分らしく咲き誇れたらいいなと。大切なものはプライドとかじゃなく、弱さを見せられる強さ。それが持てるようになりたいと思ったことから、この歌詞は生まれているんです。
ライブ情報
ワンマンライブ【grram-mentalism 1】
08月31日(金)hillsパン工場(大阪府大阪市西区北堀江1-3-17)
OPEN 18:30 / START 19:00
お問い合わせ:hillsチケットセンター
TEL:06-6110-7111
E-mail:pankojyo@giza.co.jp
3.11~今の時代に求められている音楽
--ネガティブな感覚をポジティブに変換していく。そうした音楽を発信しているからこそお聞きしたいんですが、3.11当時はどんなことを考えたりしましたか?
久川実津紀:あまりにも事件が大きすぎて……震災が起きても、学校には普通に通っていたし、友達と笑い合っている自分もいて。そういう自分に気付いた瞬間、被災した方々への申し訳なさと、普通に過ごせていることへの有り難みが生まれて。それからは“生きている”ということについてすごく考えましたね。友達の家族が宮城県に住んでいて、震災で住まいが無くなって、全身骨折したという話も聞いて、神様ってすごく不平等だなと思ったり。それでも私は祈ることしかできなかった。ただ、リリースイベントで仙台に行ったんですけど、握手会で「『心の指すほうへ』を聴いてすごく前向きになりました。毎日聴いてます」って言ってくれた人がいて。そのときに「ちょっとでも力になれたのかな」って。復興の力にはなれていないかもしれないですけど、自分が歌っていくことに意味があったと思えたんです。
--そうした事象や経験は、grramから発されるメッセージの原動力になっていると思いますか?
久川実津紀:すごく語弊があるかもしれないですけど、自分の中に悲しみがあるからこそ歌える。ツラい経験があったからこそ歌える。それは確実にあります。
--そんなgrramの2ndミニアルバム『まぼろしのカタチ』。自分ではどんな作品になったと感じていますか?
久川実津紀:前作『心の指すほうへ』は、主観的な目線で歌詞を書いていたんですよね。でも今回はもう少し社会とか世界を客観的な目線で見つめている。そういうスタイルの歌詞に挑戦することができて。結果、悩んで立ち止まっている人の心にそっと寄り添えるようなアルバムになったなと感じています。
--個人的には王道のポップミュージックだと思いました。物凄く外に向いていますよね、曲も言葉も歌も。自分ではどう思いますか?
久川実津紀:今の時代に求められている音楽って何だろう?と考えたときに、やっぱり普遍的な音楽を作りたいと思ったんですよ。そういう音楽作りにはこれからも拘っていきたいと思っています。
--中でも最後を飾るアッパーチューン「幸せはまぼろし」のポップぶりが半端じゃないです。何回でも聴いていられるし、いろいろ漲ってきます。
久川実津紀:メロディ自体の音程はあんまり上がったり下がったりしない、勢いで駆け抜けていくような楽曲なので、レコーディングではいろいろと挑戦だったんですよ。どうしたらアップテンポな曲らしく、リズム感を持って歌えるか。それは歌詞のはめ方にも関係した部分なので、悩みましたね。でも遊び心を持って気持ち良いところまで持っていけたので、ライブでは純粋に盛り上がってもらいたいです。
--この曲を聴かせれば勝てる、ライブなどでもそんな立ち位置になっていくと思います。大はしゃぎですよ。
久川実津紀:ありがとうございます!
--それはそうと、デビューから4ヶ月でミニアルバム2枚って普通じゃないと思うんですけど、制作はタイトじゃありませんでした?
久川実津紀:5月6日に全国のリリースイベントが終わったので、そこからは毎日制作に向き合って、レコーディングブースに入ってました。すごく集中していましたね。短期決戦とは言え、手は抜きたくないので、1曲1曲どれだけ丁寧に作り上げられるかの勝負でした。
--そもそも、この短いインターバルで2枚目を発表しようと思ったのは?
久川実津紀:まず制作を止めたくないんですよ。それで、もっと自分たちの伝えたいこともあるので、それを解き放つことが許されるのならどんどんリリースしたいと思っていて。そうして持ち曲が増えていく中でライブもたくさんやって、大阪拠点ではあるんですけど、どんどん全国を廻れるようになりたい。
--今作のリリース後はどんな展開を予定したり、企てていたりするの?
久川実津紀:このアルバムを機にワンマンライブを初めて開催します! これを機に完成度の高いライブができるように経験を積んでいきたいです。そして、新しい出逢いをたくさん生んでいきたいです。
grram「空のようなヒト」MusicVideo
ライブ情報
ワンマンライブ【grram-mentalism 1】
08月31日(金)hillsパン工場(大阪府大阪市西区北堀江1-3-17)
OPEN 18:30 / START 19:00
お問い合わせ:hillsチケットセンター
TEL:06-6110-7111
E-mail:pankojyo@giza.co.jp
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