2023/12/22
12月10日、angelaのライブツアー【Welcome!】の最終公演が東京・豊洲PITで開催された。
angelaは10月25日にニューアルバム『Welcome!』を発表した。そしてこのリリースとデビュー20周年を記念して、同月からライブツアーを行うことを予定していたが、初日・福岡公演を前にKATSU(Gt.)が病気療養のためライブ出演見送りが告知され、atsuko(Vo.)はひとり、サポートバンドを帯同し、台湾と香港を含む8会場を回っていた。
その8会場目となる豊洲PITでの千秋楽公演は、とにかく幸福な内容に。最新アルバムのタイトルナンバー「Welcome!」をリアレンジしたオーバーチュアに乗せて小島“じんぼちゃん”億洋(Dr.)、Buono(Ba.)、大場映岳 -hana-(Key. / マニピュレータ)、そして上空から舞い降りてきた「薄っぺらいKATSUさん」ことKATSUの等身大パネルとともにステージに現れたatsukoは、そのまま「Welcome!」と、2003年のメジャーデビュー曲「明日へのbrilliant road」を立て続けにドロップ。20年のキャリアを一気に横断することで、豊洲PITに詰めかけたangelaファン、通称ぢぇらっ子のボルテージをライブ序盤からピークに押し上げた。
この熱狂に「みんな、今の気持ちが思いっきりだだ漏れちゃってるね」と笑顔を浮かべたatsukoは「アロハTraveling」「AYAKASHI」「全力☆Summer!」を3連発。ヨーデル、アラブ音楽、アルゼンチンタンゴ、沖縄民謡、ロシア民謡など、リズムパターンもキーも異なるさまざまなワールドミュージックをリレーする「アロハTraveling」、Buonoがハードなスラップベースを魅せる「AYAKASHI」、ラテンパーカッションが印象的な「全力☆Summer!」という3つのダンスミュージックにぢぇらっ子は、時にハンドクラップを打ち鳴らし、時にフロアをウルトラレッドのペンライトの光で染め上げ、時にタオルを振り回して応えていた。
そしてアニメ『蒼穹のファフナー』の関連楽曲34曲を制作したことで、「同じアーティストにより歌われたアニメーションフランチャイズの歌曲の最多数」のギネス世界記録TMに認定されたことを「自慢」すると、ライブは『ファフナー』タイムに突入する。atsukoはまず、今年1月発表のスピンオフ作品『蒼穹のファフナー BEHIND THE LINE』のテーマソング「Start again」を歌い出すも、なにかトラブルがあったのか、1コーラス目のAメロの時点で「もう1回いいっすか?」と演奏をストップ。仕切り直そうとする彼女に「これが本当の“Start again”だ」と返すぢぇらっ子に「うまいね」と笑うひと幕こそあったものの、このドラマチックなバラードを優しく歌い上げ、その後には、じんぼちゃんのブラストビートが光る、2015年のTVアニメ『~EXODUS』のオープニング曲「イグジスト」と、2019年リリースのOVA作品『~THE BEYOND』の主題歌「叫べ」を叩き込んで、angelaの『ファフナー』楽曲の幅広さを見せつけた。
その後、2年前からトレーニングしているというアコースティックギターを手にしたatsukoが、バンドメンバーとともに『Welcome!』収録の80年代の日本語ロックテイストの「今でも...」と、ブリットポップライクな「Alone」をプレイし、またもブラストビートが耳に残る「DEAD OR ALIVE」という2015年の『ファフナー』ソングを投下したところでライブは後半戦に。ここで彼女は「性格がいい。ビジュアルもいい。歌もいい。どこか悪いところがないかな? と探している」という声優・アーティストの蒼井翔太をステージに招き入れる。
そのatsukoと蒼井は、TVアニメ『乙女ゲームの破滅フラグしかない悪役令嬢に転生してしまった…』(『はめふら』)第1期のエンディングテーマである蒼井の楽曲「BAD END」をパフォーマンス。そのタイトルを彼が告げた瞬間、巻き起こった黄色い声援の中、流麗なハーモニーを披露すると、12月6日に発売したばかりの劇場版『はめふら』の主題歌、angela×蒼井翔太「晴れのちハレルヤ!」と、angelaが手がけたTVアニメ版『はめふら』第1期のオープニング曲「乙女のルートはひとつじゃない!」をデュエットする。2人はその陽気でシアトリカルなこの2曲を息の合ったコミカルなマイムを交えつつ歌い上げることで、先日、Billboard JAPANで公開されたインタビューの中で蒼井が語っていた「atsuko姐さんと僕の声を融合させて最上級にハッピーな」空間を作り上げた。
蒼井を送り出したのちもangelaの幸せの大攻勢は止まらない。「KINGS」ではフロアの上手サイドにペンライトをレッドに切り替えさせ、下手サイドにはブルーを灯らせて、ぢぇらっ子をセパレート。その2色の光の中、シリアスなハードロックナンバーを歌いつつ<Big wave>のフレーズに合わせて上手、下手からのウェーブを何発も誘い、和テイストの「RECONNECTION」ではBuonoに加えて、-hana-もショルダーキーボードを手にステージ最前のお立ち台に歩みを進めて、フロアを挑発してみせる。さらにもう1つの『はめふら』楽曲で高速アイリッシュトラッドチューン「アンダンテに恋をして!」では「元気?」とぢぇらっ子を煽り、「今『元気』って言った人はジャンプ!」と彼らにジャンプとクラップを繰り返させ、「Shangri-La~THE BEYOND~」では、atsukoが自身のサンバホイッスルと、察しのいいぢぇらっ子が用意していたそれとのコール&レスポンスを繰り広げて、ライブ本編を締めくくった。
そしてアンコールのステージではツアー最大のサプライズが。atsukoがあらためてサポートメンバーと「薄っぺらいKATSUさん」を紹介していると、その「薄っぺらいKATSUさん」の背後から本物のKATSUが登場。この日一番の大歓声の中、KATSUが「帰ってきたぜ」「お前らが待っていてくれるなら死んでらんないんだよね」とステージへの帰還を告げると、“フルバンド”となったangelaは、ご当地ソングの第一人者であるお笑い芸人・ミュージシャンのはなわと制作した地元賛歌「OK! 岡山」を投下。ストレートなロックンロールに乗せて、2人はデビュー20周年を迎えた自身のルーツを振り返る。そして<Everything is ノンストップで走っていた>から始まる「KIZUNA」でatsukoとKATSU、そしてぢぇらっ子たちとの“絆”をあらためて確かめ、最後にあらためて「Welcome!」をプレイしてツアー最終日を締めくくった。
冒頭のとおり、この日のライブはとにかく幸福に満たされていた。療養中だったKATSUの復活や蒼井との共演という、いかにも見出しになりそうなトピックがあったことはもちろん、若者の生死を虚心に見つめる『蒼穹のファフナー』関連のシリアスな楽曲で串刺しにするセットリストながら、angelaのライブに対する練度が高いぢぇらっ子はもちろん、蒼井のファンも置いてきぼりにせず、彼らが能動的にライブに参加できる仕掛けを用意するエンターテイナーとしての強さも、その幸福感に大きく寄与していた。
アンコール後のライブではatsukoが圧巻の歌声を披露し、KATSUが自由にギターを弾き倒す、ライブ本編以上にエモーショナルでテクニカルな “完全体angela”を観られた。この事実がツアー千秋楽の幸福感を頂点へと押し上げてくれていた。
Text by 成松哲
Photo by 釘野孝宏
◎公演情報
【angela Live Tour 2023「Welcome!」】
2023年12月10日(日)
東京・豊洲PIT
<セットリスト>
01. Welcome!
02. 明日へのbrilliant road
03. アロハ Traveling
04. AYAKASHI
05. 全力☆Summer!
06. Start again
07. イグジスト
08. 叫べ
09. 今でも...
10. Alone
11. DEAD OR ALIVE
12. BAD END
13. 晴れのちハレルヤ!
14. 乙女のルートはひとつじゃない!
15. KINGS
16. RECONNECTION
17. アンダンテに恋をして!
18. Shangri-La ~THE BEYOND~
<アンコール>
19. OK! 岡山
20. KIZUNA
21. Welcome!
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