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倉木麻衣 『無敵なハート/STAND BY YOU』インタビュー

倉木麻衣 『無敵なハート/STAND BY YOU』 インタビュー

 「Love, Day After Tomorrow」での衝撃デビューから15周年。音楽の流行や聴き方が目まぐるしく変わっていく中“私にとって音楽はみんなとコミュニケーションが取れる唯一のもの”という想いを貫き、ヒットチャートやシーンの前線に立ち続けている倉木麻衣。このまま行くと、音楽界のタモリや黒柳徹子的存在にもなり得るポップスターが、誰にも真似できない15年間を語る。

どう歌えばいいか分からなくなってしまった

--倉木麻衣って自分ではどんなアーティストだなと思いますか?

倉木麻衣:“みんなから育てられた倉木麻衣”っていう感じがします。私って何の下積みもなくデビューしたので、しかも一気にいろんなことを注目されて、デビュー曲「Love, Day After Tomorrow」もすごくたくさんの人に聴いてもらえちゃったんですけど、私はライブ経験もなかったですし、16歳の私に対してみんな手探りの中で支えてくれて。ファンの人も「麻衣ちゃん、危なっかしいけど大丈夫かな?」みたいな感じで(笑)。なので、みんなから支えてもらって、育ててもらった倉木麻衣なんじゃないかなって。

--では、世間からはどういうイメージを抱かれていると感じてますか?

倉木麻衣:あまりメディアに露出しなかった時期もあって、デビュー当時のときは「2人いるんじゃないか?」って騒がれたんですよ!

--歌ってる人と写真の人は別人なんじゃないかという(笑)。

倉木麻衣:っていうのもあったりして「えー!そんなことないのに!」とか思ったり。あと、ちょうどそのときは学業とスタジオでいっぱいいっぱいの自分がいたんですね。だからテレビに出れなかったりもしたんですけど、その影響もあってか、みんなからのイメージは「倉木麻衣って本当に存在しているのか?人間じゃないんじゃない?」みたいな(笑)。

--初音ミク的な?

倉木麻衣:そういう感じ!「実在しないんじゃないか?」っていう。あとは、立命館大学を出ているので「すごく優等生なんじゃないか?」みたいなことをよく言われていたんですけど、「実際はそんなに完璧じゃないし!」とか思いながら(笑)そういうギャップに悩んでいた時期もありましたね。情報やイメージだけが先行しちゃって、それに伴っていない自分がいて苦しんだりもしたんですけど……特に10代の頃って多感期だから気にするじゃないですか。でも大学はそれぞれ活躍している生徒が多かったので、みんなでバックアップして。

--理解し合える生徒が多かったんですね。

倉木麻衣:そうなんです。で、最初の頃は「倉木麻衣?」みたいな感じで観に来る人もいたんですけど、普通に過ごしているうちにもう居てあたりまえの感じになって。それで吹っ切れたというか、「自分のままでいいんじゃないか」って思えたんです。

--倉木麻衣=優等生キャラのイメージは強くありますよね。例えば、同期の代表的な女性ソロアーティストたちを各々何かに喩えていく中で、倉木麻衣のポジションはやっぱり学級委員長とか。

倉木麻衣:まぁたしかにやってましたけどね!

--やってたんですね(笑)。

倉木麻衣:やってました(笑)。

--あと、いきなりブレイクして世間に騒がれ、期待されるようになった“倉木麻衣”と、実際の倉木麻衣にも当然ながらギャップはあった訳ですよね。そこを埋めなきゃいけないプレッシャーは強くあったんでしょうか?

倉木麻衣:それって前に出ていけば出ていくほど感じるもんだなと思ったんですよ。当時は、学校に行って、すぐに家に戻ってスタジオへ行く生活だったんですけど、さらにライブをやりだしてから、いろんな人の顔が見えて、いろんな人たちとの出逢いがあって、タイアップも決まったりすると、自分自身がしっかりしなきゃいけないとか、「倉木麻衣だったら完璧に歌えるよね」「歌詞も間違えずに歌う」みたいなイメージを自分も作り上げていて、それに伴わなきゃいけないってすごく葛藤してましたね。ライブが上手くできなくて、ホテルに帰ってからめっちゃ号泣したり。でもそういうことを乗り越えていくと、だんだん分かってくることがあったりして、良い意味でみんなから自信をもらえるようになりました。

--15年も活動していれば、いろんな人のいろんな意見があると思うんですけど、例えば「これにはショックを受けたなー」的なところで印象に残っている言葉ってありますか?

倉木麻衣:アハハハ! なんでしょうねー……忘れてるぐらいだから、そんなにないのかもしれないですね。いろんなことを言う人がいますし、やっぱり何事にも賛否両論はあるじゃないですか。でもあんまり否定的な声って情報として入れてこなかったと思います。当時はブログも始まったばかりぐらいで、ネット自体も今ほど盛り上がっていなかったので、それはある意味よかったなって。今、デビューしてたらツイッターとか見ちゃって傷ついたり、絶対気にしちゃてると思うんですけど。だから「嫌だったなー」っていう意見は……なんかあったかなぁー?

--無理やり探さなくてもいいですよ(笑)。質問を少し変えます。デビューしてから今日までで一番挫折しそうになった出来事は?

倉木麻衣:去年「Wake me up」っていう曲を制作したんですけど、その前に自分の中で歌に対して「こうじゃなきゃいけない」とか……なんか、上手く歌えなくなっちゃった時期があって。歌をうたっても全然……「なんでしっくりこないんだろうなぁ」って。声がなかなか出ないとか。今までいろんな楽曲をライブで毎回歌ってきた中で、どう歌えばいいか分からなくなってしまった。そのスランプから抜け出すのがすごく大変でした。何やっても上手くいかなくて。スタジオに行って制作作業しても「私、この歌、心がこもってない」とか「私、この歌でやってていいのかな?」って感じちゃって、家に戻っても大好きな音楽を一切聴けなくなっちゃった。

--アーティストとしては致命的ですね。

倉木麻衣:ただ、その時期にちょうど伊勢神宮に行く機会があって。そこで自分を見つめ直してみようと思って、パワーもらって、新幹線で帰ってくる途中で「このままじゃいけないんだ、自分は」みたいな。自分自身との対話ですよね。それで出来上がったのが「Wake me up」っていう曲だったんですけど、「このままじゃいけないから、自分をもっともっと変えていかなきゃ!」って想いで作っていったら、吹っ切れたんです。それが転機になったんですけど、すごく大変でした。15年活動していると、ずっと走り続けていく中で息切れするときってあるんですよね。自分自身を見失っちゃう。

--そういう状態になるのは初めてだったんですか?

倉木麻衣:そうですね。「なんで歌えないんだろう?」「歌が大好きなのに、なんで歌えなくなっちゃったんだろう?」ってなったのは。

--きっかけは?

倉木麻衣:それが本当に突然すぎて。ライブで同じ曲を歌っていくと、自分の歌なんだけど、前みたいに素直に純粋に歌えなくなっちゃう自分がいたんですよね。ただ音に合わせて歌ってる、みたいな。「それじゃあ、ダメだろう!」って思ったりとかして。なので、アレンジ変えて歌ってみたり、カバー曲を歌ってみたり……

--いろいろもがいた訳ですね。

倉木麻衣:歌に対しての想いが弱くなっちゃっていたので。でもその中でファンの人たちは「麻衣ちゃん、頑張ってね!」とか「いろいろ僕もツラいときはあるけど、頑張るよ」みたいなメッセージをくれるから、それがまた「ファンに対して申し訳ない」ってすごくツラかったんですよ。それで「このままじゃいけない!」と思って伊勢神宮へ行ったんです。

--自分の意思でそうなった訳じゃないからツラいですよね。長年歌ってきた結果、スウィッチが勝手にオフになってしまったっていう。

倉木麻衣:不思議ですよね。同じことを続けていくのって大変なことなんだなって、改めて思いました。伊勢神宮では、神様に毎朝決まった時間に食料を届けて、掃除して……っていうことを繰り返してる方々がいて、同じことを何百年、何千年と代々引き継ぎながらやってきた。その話を知った瞬間に自分自身と比較して「こうしちゃいられないな」と思って。それも良い刺激になったんですけど。あとは、ここで諦めちゃったら、あとになって「諦めなければよかった!」ってなるだろうし。だから「Wake me up」で「目覚めていかなきゃ!」って。

--今の倉木麻衣はどんな状態なんですか?

倉木麻衣:今はもう目覚めたので、どんどん前に! 15周年がすごく楽しいですし、あのときの倉木麻衣と比べたら、今は最高な想いで活動できている。で、負の想いとか、マイナスな自身自身を修復できる歌をここで作りたいなと思って、出来上がったのが今回の「無敵なハート」なんですよね。

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音楽シーンにおけるタモリさんや黒柳徹子さんの位置に?

--「無敵なハート」は再生した瞬間に「え、これ、倉木麻衣!?」ってなりました。ウィスパーは倉木麻衣のアイデンティティだと思いますが、驚くぐらいソウルフルなボーカルワークも取り入れ、サウンドもド頭から超攻撃的な内容になってます。これを15周年、記念すべき40枚目というアニバーサリーシングルで打ち出しちゃう痛快さ!

倉木麻衣:ハハハ! 15周年はこの曲でスタートさせたいと思って。選曲していく中で「無敵なハート」にはすごく不思議な力があるなと思ったんですけど、冒頭から徐々にウォーミングアップして、サビで自分がすごく強くなれた気になるなぁと。まさにこの曲は今の自分に必要な歌だと思って。だから歌詞も自分の中にある言葉、喋っている言葉で書いていったんです。

--「無敵なハート」というタイトルにしたのは?

倉木麻衣:このタイトルもすっごい強い印象なんですが(笑)、実は“無敵”って思える瞬間って弱いときなんじゃないかと思っていて。「無敵になりたい!」って思うとき。ツラかったり、苦しかったりすると、どうしてもハートって歪んできたりする。でも歪んじゃうと夢に到達できなくなっちゃうから「歪まない心を、無敵な想いを持って頑張ろう」っていう。

--この曲を作曲した平賀貴大&望月由絵のお二方は分かってますよね。今、倉木麻衣にどんな楽曲を当てたら面白いか?っていうのを。

倉木麻衣:平賀さんと望月さんは「FUTURE KISS」でも、私の楽曲のイメージを一変させてくれた作曲家の方たちなんです。倉木麻衣ってバラードやミディアムの曲も結構多くて、R&Bを主体としてやってきたんだけど、ロック調の強い、攻撃的なサウンドってあんまりなくて、でも平賀さんと望月さんはそれが得意な方たちなんですね。それで私の新たな一面を引き出してくれる。あと、2人の曲はライブですごく盛り上がるんですよ。「PUZZLE」って曲もみんな「待ってました!」みたいな感じですごくノってくれる。

--「STAND BY YOU」にはまた後程触れさせて頂くとして、15周年、40枚目のシングル。正直ここまで続けられると思っていましたか?

倉木麻衣:……思ってなかったですね。それを思う余地すらなかったというか(笑)。でもここまで続けてこられたのは、自分でも奇跡に近いなと思っています。先ほどもお話した通り、みんなが育ててきてくれた倉木麻衣であるので、みんなと家族なんですよね。ファンの方も当時小学生だった子が大学生になっていますし、「子供が生まれました」とか「ファン同士で結婚しました」なんて報告もすっごい多いんですよ! いまだに自分は結婚できてないのに(笑)。

--でもファンはどんどん結婚して「幸せそうで何より」っていう(笑)。

倉木麻衣:でもそれがすごく嬉しくて。ライブすることによって、みんなと顔合わせるじゃないですか。言葉も交わすし。そこで「麻衣ちゃん、頑張ってるねー」とか言われると、お互い“頑張れる”っていう想いを共有してるからこそ続けてこれたんだなって思うんですよね。「あー、やっぱりダメだ」ってお互いに弱くなっちゃうと、走れなくなっちゃうだろうけど、お互いに目線は一緒でやってこれたからこそ続けてこれた。

--そもそも倉木さんってなんで歌手になろうと思った人なんですか?

倉木麻衣:4才ぐらいのときに母親からピアノをやってみないかと言われて、それが初めて音に触れるきっかけだったんです。あと、祖父母と一緒に住んでいたんですけど、祖父がすごく音楽が好きな方なんですよ。マライア・キャリーも聴くぐらい(笑)。それで自宅にカラオケボックスがあったんですよ! だから祖父はカラオケで私に歌を練習させたりしていて。さらに、お正月になると親戚を集めた披露会があって、歌ったらみんなが「うわぁー!」って反応してくれる。それがすごく嬉しくて、どんどん歌に興味を持つようになったんです。で、洋楽をウチの家族はよく聴いていたので、私もマイケル・ジャクソンを聴くようになって『ムーンウォーカー』を観たのがきっかけで、「私も歌手としてみんなを感動させてあげたい」って想いが生まれて。

--おじいちゃんとマイケル・ジャクソンの影響なんですね。

倉木麻衣:そこから始まりました。ピアノはずっと続けていたんですけど、先生から「あなたはピアノよりも歌のほうが向いてるわ」って言われて(笑)。

--遠回しに「ピアノの才能はない」って言ってますよね、それ(笑)。

倉木麻衣:それが子供ながらに分かったんで、「やっぱり私は歌だな!ピアノじゃない」って(笑)。それで学校から帰ってきたら宿題よりも何よりも歌の練習をするようになって、歌手になる為にはどうしたらいいか考えて、当時はまだCDがなかったので、カセットテープに自分の声を録音してデモテープを作って、いろんな事務所に送って。それを聴いて下さったのが今の会社。「オーディション受けてみましょう」と言われて受けて、当時はローリン・ヒルの「トゥ・ザイオン」がすごく流行っていたので、それを録音して聴いてもらったら「ボストンに行ってみないか?」って話になって。学生だったので夏休みを利用して行かせてもらって、そこで一気にレコーディングして! 初めてのことを一気にたくさん経験したので大変だったんですけど……今思えば、10代だからこそ頑張れた!

--デビュー前からずっと音楽だったんですね。倉木麻衣は一貫して音楽の人のイメージがあって。いわゆるキャラクター先行や話題作りでキャリアを重ねてきたのではなく、あくまで音楽を純粋に続けてきた印象が強いです。

倉木麻衣:ありがとうございます。本当にそのときどきの想いを音楽で伝えてきた感じです。音楽は私にとってすべてだし、だからどんどんやっていくうちに欲も出てくるんですよね。最初の頃は「みんなに聴いてもらいたい」「聴いてもらえた。やったー!」って想いがあって、どんどんライブやることによって「もっとパフォーマンス上手くなりたい」とか「ライブで映える曲を作りたい」とか思うようになって、ジャンルに関しても「もっと開拓したい」とか「アレンジはもっとこうしたい」とか。それで総合プロデュース的なものをやるようになって。そうやって欲が重なっていってここまで来た感じ。その欲はすべて音楽に対してでしたね。私にとって音楽はみんなとコミュニケーションが取れる唯一のものでもあるし、一緒に共有しているものでもあるので。曲にみんなの想いが入ってくることで、一人じゃなくなってくる。

--倉木さんぐらいのキャリアを持って、今も第一線で活躍されている女性ソロアーティストは多数いらっしゃいますけど、倉木麻衣ほど音楽活動に全精力を注ぐ活動ができている人。しかもそれを休まずにやれている人って他にいないですよ?

倉木麻衣:本当ですか?

--芸能人であるより音楽人であり続けている印象です。

倉木麻衣:私はメディアに露出する機会は少ないんですけど、とにかくライブが好きだから、ライブでみんなと時間を共有して、そのままダイレクトにコミュニケーションを取ってきたんです。ファンの方からお手紙で「もっとテレビに出てほしい」とか(笑)そういう要望はたくさんあるんですけど、なんて言うんでしょうね。自分のペースと言いますか、スタイルは崩さずにやっていきたいなって思ってるんですよね。私の“Mai.Kチーム”には支えてくれる人たちがいるし、女性が多いから共感してくれる部分も多いし、本当に恵まれた環境にいるので、だからこそマイペースにここまでやって来れたのかなって思ってます。ただ、決してテレビに出たくない訳ではないんです。とにかくライブをメインで活動しているので、そっちに精力を捧げたいタイプなんですよね。要するにあんまり器用じゃないんです。不器用なんです。

--それはなんとなく伝わってます。

倉木麻衣:ハハハ!

--メディア露出が少ない中でもなんとなく伝わってます(笑)。そんなスタイルで15年活動してきた倉木麻衣から見て、今の音楽シーンってどんな風に映っていますか?

倉木麻衣:今の音楽シーンは……ある意味、伝染力が凄いなって思います。いろんなジャンルがあるんだけど、ひとつの楽曲が流行り出すと、みんなそっちの方向に向き出すっていう。でもそれって決して悪いことじゃなくて、すごく面白いなと思って。ファッションと一緒じゃないですか。「じゃあ、次はどんなものが流行るのかな?」とか、それが楽しみでもあったりすると思うんで。ただ、私の場合は率先して流行を取り入れるとかないんです。あくまで曲調によって合うサウンドを探していくので、それが偶然流行に合ったサウンドになっていることもあるし、80年代テイストの強いものになることもある。だからジャンルに捕われず作っていきたい、それはやり続けたいなと思います。

--この15年で音楽は流行も聴き方もめまぐるしく変わっていきました。最近はアイドル全盛のシーンになったりしていますけど、その中でヒットチャートにもシーンの前線にもずーっと普通の顔して立ってますよね。倉木麻衣って。

倉木麻衣:(爆笑)

--それってめちゃくちゃ面白いし、凄いことだと思うんですよ。15年も活動していたら、普通はシーンの流れに翻弄されながらの物語になるはずなんですけど、倉木麻衣はブレずに立ち続けている。何なんですかね、倉木麻衣って。

倉木麻衣:いやー、何なんですかね(笑)。そのときどきで曲のスタイルとか変わってはいくんですけど、でもどの曲も希望とか前向きな想いに変えてもらいたい気持ちが強いんですよね。それはいろんな人と交流すればするほど、みんなも頑張ってるし、ツラい想いをしている人たちもたくさんいるから、そういう人たちにエールを贈れる歌手でありたいって思う。そう思えば思うほど、そういう楽曲を提供したくなる。それがずっと続いているので、変に突拍子もない物語にはならなかったんですかね。

--このまま行くと、倉木麻衣って音楽シーンにおけるタモリさんや黒柳徹子さんの位置に立つことになりますよ。「時代は大きく移ろいでいきましたが、私は変わらず歌っています」って。

倉木麻衣:ハハハ!

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カンボジアの子供たちとの出逢い「歌手になりたい」

--それこそ『笑っていいとも!』や『徹子の部屋』ですよ。ゲストはどんどんその時期の旬な人たちが入れ替わっていくんだけど、倉木麻衣だけはスタイルを変えずにどーんと存在し続ける。

倉木麻衣:ただ、不器用だっただけかもしれませんよ(笑)。

--でもそれが武器になってるんでしょうね。器用だったら音楽以外のことにもっと手を出していたでしょうし、女優になったり、バラエティ番組に出ていったりする倉木麻衣もいたかもしれない。でも不器用ゆえに音楽にひたすら注力できた。その結果がこの15年じゃないですか。

倉木麻衣:私、音が大好きなんですよね。アレンジとか制作することがすごく好き。しかも「これ!」って決めたらひとつのことしか出来ないんです(笑)。だからそれにすべてを注いじゃうんでしょうね。

--そこにファンが離れずついてきている。これも凄いことですよ。それが大変だから、誰もがあの手この手を使う訳じゃないですか。でも倉木麻衣のファンは余計なことしなくても倉木麻衣のライブに通い続けてる訳ですよね。それこそ結婚しても、子供が生まれても。

倉木麻衣:奇跡ですよね。嬉しいです。たまにお手紙の中に“違うアーティストの方のライブに行きました”みたいなことが書いてあると、なんか、ちょっとだけ寂しくなる(笑)。そういう自分もいない訳ではない。

--ちょっと浮気された気分になると(笑)。

倉木麻衣:っていう想いもちょっとあるけど(笑)、いつもライブにも来てくれて本当に嬉しいですし、家族みたいに感じてる。「お母さんが倉木麻衣を聴いていて、私はその娘なんですけど、好きになって来ました」とかあるんですよ。家族ぐるみで聴いてくれてる。

--その話だけで良いPV一本作れそうですもんね。親に連れられてきていた赤ちゃんが、今では最前列で拳振り上げてます、みたいな。

倉木麻衣:そうですよね。ただ、そこに凄いジェネレーションギャップを感じる。「私も歳取ったんだなぁー」って(笑)。

--そろそろ終盤かと思うので、ニューシングルから「STAND BY YOU」の話をお伺いしたいんですが、この曲にはどんな想いを込めて歌われているんでしょうか?

倉木麻衣:今年3月にカンボジアへ行く機会があって。カンボジアって大虐殺された歴史があるんですよ。お医者さんや学校の先生、知識人って言われている人たちが。その名残が今もあって、子供たちが本当に必要最低限のことしか教えてもらえていなかったりするんです。学校へ行けない子たちもいる。その現状を直接見に行ったことによってすごく衝撃を受けて。

--なるほど。

倉木麻衣:で、私はカンボジアの寺子屋に音楽の授業がないと聞いていたので、音楽の授業をしに行ったんですけど、リズムの取り方とかをみんな知らないので教えてあげようと思って、まず「心臓の音を聞いてみてください」ってみんなで脈はかって!「どう鳴ってる?」「トントントン」「じゃあ、それを手拍子してみよう!」みたいな。そしたら初めての音楽の授業だったんで、「もっともっといろんなことを知りたい」って思うんですよね。キーボードを持って行ったんですけど、それも初めて目にする子たちだから「音が鳴ってる!」それだけで喜んでもらえたりして。で、最後に「あなたたちの夢はなんですか?」って聞いたら「歌手になりたい」「楽器をやりたい」って言う子も出てきたんです。それで、寺子屋に通えてない子たちがまだまだたくさんいるから「学校作りたい」という想いと同時に、「歌を作りたい」って思って「STAND BY YOU」は作ったんです。

--カンボジアの子供たちに向けたものだったんですね。

倉木麻衣:日本はとても便利な世の中になっているけど、カンボジアの家には台所もなくて、床でご飯を作ったりしてるところもあるんです。でも彼女たちに幸せかどうか訊ねたら「幸せだ」って返ってきたんです。私たちが「可哀想」って思ってることでも、彼女たちにとっては幸せなことだったりする。だとしたら“何かやってあげたい”じゃなくて「助けてほしい」と思っていることにボランティアするべきだなって思ったんですよ。そのことを歌にしようと思って、私たちの目線と彼女たちの目線を取り入れた歌詞を書いてみたんです。ボランティアって「綺麗事」みたいに言う人もいると思うんですけど、自分が出来ることを意識するだけで何かが変わってくるんじゃないかなって。それが音楽によって広がっていけばいいなと思って。

--今の話って「実際に現地の子供たちと会ったら、何かしたいって気持ちは芽生えてあたりまえじゃないか」っていうシンプルな話ですよね。人とのふれあいの中で芽生えた感情がボランティアになり、音楽になるっていう。

倉木麻衣:あと、ボランティアって自分自身もパワーをもらえるんですよ。日本からも実はたくさん来られていて、同じ歳ぐらいの看護師さんがいて、お話する機会もあったんですけど、その現状を知って「私も頑張らなきゃ!」っていうパワーをもらって帰ってきたぐらいなので。そういうことでボランティアの見え方も変わるんじゃないかなと思うんですけどね。

--倉木さんがボランティアを始めたきっかけって何だったんですか?

倉木麻衣:小学生の頃から自然と身についていたというか、街を綺麗にしたりとか、そういうことをいつもやっている学校に通ってたんですよ。で、歌手になってからは、みんなに知ってもらえるチャンスを与えられる環境が整っているので、やらないよりやったほうが絶対良いなと思って、ずっと続けているんです。

--倉木さんの「誰かの力になりたい」っていう気持ちのルーツって何だったりするんですかね?

倉木麻衣:「誰かの力になりたい」という気持ちももちろんあるんですけど、私もそれに支えられてるんですよ。「気持ちを共有したい」ってところかな。基本は強くないので、歌によって、音楽によって、みんなによって支えられているタイプなので、そこが大きいですね。だからライブとかやらなくなっちゃうと、すごくテンションが下がっちゃうタイプなんですよ(笑)。

--様々な想いが込められたニューシングル『無敵なハート/STAND BY YOU』、どんな風に世に響いていってほしいですか?

倉木麻衣:私と同じく「あ、ちょっとムリだな」とか「これは出来ないな」みたいな感じで、自信がなくなっていたりとか、ツラいことを経験されている人にぜひ聴いてもらいたいです。特に「無敵なハート」はライブを通じてみんなと共有できる曲だと思うし、ハートを修復したい人に聴いてほしい。体は運動とかで調整できたりするけど、心ってなかなか難しいじゃないですか。そんなときに「無敵なハート」を聴くことで、自分の弱さに負けないようにしてもらいたいです。あと、「STAND BY YOU」は“支えてあげられる”“支えてもらえる”関係ってすごく素晴らしいこと。それを感じてもらえたらいいなと思います。

--では、最後に。15周年を迎えた今の倉木麻衣の夢を教えて下さい。

倉木麻衣:夢はたくさんあります。もっともっとライブでみんなと会いたいですし、パフォーマンスも良くしていきたいですし、もっと違った一面をたくさん見せていきたい。あと、去年“再生”をテーマにしたライブをしたんですけど、みんなが賛同してくれて植樹を手伝ってくれたりしたので、そういう活動もどんどんやっていきたい。あとはカンボジアに学校を建てたい。それと、体が資本なので、まだやったことがない運動とかしてみたい。ピラティスは一回だけやったんですけど続かなかったので、改めて通いたいと思ってます(笑)。あと、パラセーリング! 世界変わりそうなので、やってみたい。そういう興味がなかったことに敢えて挑戦してみることで、新しい発見があるかなって。

--15周年以降の倉木麻衣は空を目指すと。

倉木麻衣:空を目指します(笑)。

倉木麻衣「無敵なハート/STAND BY YOU」

無敵なハート/STAND BY YOU

2014/08/27 RELEASE
VNCM-6038 ¥ 1,100(税込)

詳細・購入はこちら

Disc01
  1. 01.無敵なハート
  2. 02.STAND BY YOU
  3. 03.無敵なハート ~Instrumental~
  4. 04.STAND BY YOU ~Instrumental~

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