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トニ・ブラクストン&ベイビーフェイス 『恋愛~結婚~離婚』 インタビュー
1992年にエディ・マーフィ主演映画『ブーメラン』のサウンドトラックに収録された「Give U My Heart」で初共演を果たしたベイビーフェイスとトニ・ブラクストン。翌年リリースされたベイビーフェイスがプロデュースを務めたトニのデビュー・アルバムは米ビルボード・アルバム・チャートにて1位に輝き、その後も数々の名作を生み出してきた2人。そんな彼らが様々な恋愛の形を歌った初のデュエット・アルバム『恋愛~結婚~離婚』を2014年2月にリリース。ますます円熟味を増す極上ヴォーカルが織りなす珠玉のハーモニーが病み付きになる今作について2人が語る貴重なインタビューをお届け!
彼は私の夫なの、本気よ―音楽においての夫
一度別れたけど、また一緒になったの
??以前トニは、もう音楽はやりたくないと公言していましたね。そしてベイビーフェイスにとっても、前作のソロ・アルバムから約6年ぶりとなる新作となりますが、そんな2人がスタジオへ戻るきっかけとなったのは?
ベイビーフェイス:沢山アルバムを作ってきたアーティストにとって、たまにあることだが、ある時から曲作りのゴールが、確実にヒットするかになってしまうことがある。そのプロセスの途中で、音楽を作ることから生まれる自然な愛を見失ってしまう。でもこれはどのアーティストにも起こる現象なんだ。そうなると、大胆になれないし、人の意見を気にしだす。それって疲れるし、全然楽しくないよね。
だから、トニがそういうことに飽き飽きしたって言ったのも理解できる。でも同時に、才能を与えられたのだから、自分のため、その自分を支えてくれるファンのために、そういったことを乗り越えなきゃいけない。人々を感動させることができる力をもっているんだったら、諦めてしまうのはもったいないよね。
再び2人で会った時に、これがゴールとなった。スタジオに入って、何を伝えたいのか、それをどうやったら楽しく、気持ち良く伝えることができるか考えよう。何が起こるか、全く分からなかった。もしかしたら何も結果が生まれないかもしれなかった。でも全く反対で、すぐにしっくりきたんだ。
トニ・ブラクストン:ケニーは、“アーティスト”のように考えることを止めて、自分らしくできるように導いてくれた。曲を楽しんで、歌うんだって。アーティストであることの商業的な部分ばかりについて考えるのではなくてね。一人で美しい絵画を描きあげるアーティストについて考えてごらん。今は、それと同じように音楽のことを考えなきゃ。思い出してごらんって。
私は、いつでもケニーに自分のプロジェクトに参加してもらうようにしてる。でも今回は、とても久しぶりね。彼は私の夫なの、本気よ―音楽においての夫。一度別れたけど、また一緒になったの。
??最初の頃は「カヴァー・アルバムになるのでは?」と噂されていましたよね。
トニ・ブラクストン:色々なアイディアについて話し合ったの。中には、カヴァーとオリジナルのデュエット曲を織り交ぜるアイディアもあった。私は暗闇の中で手さぐりしながら、進んでいた気分だったけど、ケニーがきちんと道しるべを務めてくれたわ。
ベイビーフェイス:カヴァーか…でもそれってありきたりだよね。
トニ・ブラクストン:このプロジェクトについて話していた時に、急にケニーに、「オーケー、トニ。どうしたんだ?あまり調子が良くなさそうじゃないか。話してごらん。」と言われた。そこで彼に私の人生や離婚の状況などについて話し始めた。彼は話すことは必要だ、セラピーになるからと言ってくれたの。そしてこのアルバムのコンセプトを彼が考えついたのよ。
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2人とも別れた相手といい関係を保ててる
離婚はハードかもしれないけど、でも乗り越えなきゃいけない
▲ 「Where Did We Go Wrong?」 Audio
??曲は2人で書いたのですか?
トニ・ブラクストン:そうよ。でも大変だったこともある、それは認める。彼が披露した曲について私が、「素晴らしいわ、もうこれで完璧ね」とコメントすると、「いや、まだ完璧じゃない」って言うの。彼は、私が忘れていた芸術においての規律を再び教えてくれてる。
私は女性で、彼は男性だから物事の捉え方も違う。だから時には、クリエイティヴ面で衝突することもあった。「ノー、女性はそんな考え方しないわ。ケニー、悪いけどこれは、ヴァギナがなきゃわからないこと。あなたの考えはペニス的よ(笑)。」って具合に。2人とも考え方が違うのは、素晴らしいことだわ。でも最終的には、きちんと形になってる。お互いをうまく補えてると思うわね。
ベイビーフェイス:以前は、「トニ、これを一緒にやるんだ。君は歌ってくれればいいよ。」という感じだったが、今回は、それを遥かに通り越していた。トニは、大きく成長しているし、作曲に関してもより貢献できるようになった。詞をどうしたらいいか話合えるし、曲の構成についても同じだ。彼女が意見してくれて、それでいこうと決めたこともあって、かなり助かったよ。
??初めてラジオで「Hurt You」を聴いた時の反応は?
トニ・ブラクストン:あの曲は、一緒に作曲して、レコーディングした最初の曲のひとつなの。リリースされた時は、最初の週はどれぐらい売れるかしら、次の週はどうかしらって、また商業的なアーティストのように考え始めてしまった。一番最初にベイビーフェイスとL.A.リードと契約した時に学んだのは―これは今回再び学んだ事ね―歌いたいと思うだけじゃダメだということ。ストーリーのナレーターになり、人々に曲を伝えるには、その感情を自分自身が感じなければならない。最近あまりこのことについて考えてなかったから、記憶が舞い戻ってきてる感じね。
ベイビーフェイス:色々アイディアは出しあったけれど、これはトニのアルバムにすることに決めたんだ。すべてのキーは、彼女のキーなんだ…。
トニ・ブラクストン:幸運にもね!
ベイビーフェイス:だから今こんな声で喋ってるんだ(わざとディープな声を出すと、2人とも笑い出す)。でも彼女が初めて歌った音譜を聴いた瞬間に「オーマイガッド!これだよ、コレ。この声を待ってたんだよ。」ってみんなが思った。素晴らしすぎて、身震いしたぐらいだよ。一番最初の曲から、エキサイティングだったね。「いい感じじゃないか。絶対に上手くいくはずだ。もっと曲を書かなきゃ。」って具合に。
??マーヴィン・ゲイの『Here, My Dear』のように怒りに満ちた作品になりかねなかったですが、アルバムは様々な目線から恋愛関係を捉えていて、バランスのとれた作品になっていますよね。
ベイビーフェイス:興味深いことに、2人とも別れた相手といい関係を保ててる。離婚はハードかもしれないけど、でも乗り越えなきゃいけない。
トニ・ブラクストン:彼とアルバムを作り始めた時、私の離婚は成立していなかった。怒っていたし、傷ついてもいた。あんたなんか大っ嫌いって、まだ思っていた時期もあった。長くは続かなかったけどね。
ベイビーフェイス:ある曲について話し合っていた時に、トニがナイスすぎるって言ったんだ。でも僕は、君はそういう人じゃないかって答えた。苦しくて、傷ついた面を表現するのはいいけど、その先に希望があることも伝えなきゃいけない。世界の終りじゃないし、そのせいで人生をダメにしたり、これまでの自分、そしてアーティストの自分で居続けることを止めたりしてはダメだ。自分を向上させ、次のステップをどうするか学ぶためには、すべてを受け入れなければならない。だから音楽は、自分が吐き出したいことやどのように考えたらいいのかを理解する為のセラピーのようなものなんだ。
トニ・ブラクストン:ありきたりなものは作りたくなかった―男が浮気して、女が傷つく。女性が不貞行為をすることだってある。扶養料を払わなきゃいけない男性もいれば、同じような立場の女性もいる。女性が相手を養い、何もかもしてる場合もある。こういったことについても語りたかったの。
Q&A by Gail Mitchell / 2014年2月4日 Billboard.com掲載
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