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凛として時雨 『still a Sigure virgin?』インタビュー
これが本物の前人未踏 時雨、最強の最新作 完成
前作でオリコン初登場4位を記録し、その後のツアーの最終公演はさいたまスーパーアリーナで。昨年末の【COUNTDOWN JAPAN 09/10】から今夏の【JACK IN THE BOX】までを網羅と、その轟音からは想像だにできないほど広く深く、シーンに衝撃の爪痕を残し続けている凛として時雨が、ニューアルバム『still a Sigure virgin?』を遂に完成! ……という訳で今回も、1年4か月ぶりのリリースとなるこの最新作を軸に、3人に色々と訊いてきました!
「さっきから、何でコイツは凄ぇ弾いてんだ?」
--今年の4月に全国ツアーのファイナルとして、さいたまスーパーアリーナ公演がありました。自分は終演後にブワッと会場が広がったような感覚があって、とても印象的でした。
ピエール中野:3人の距離が近いせいか大きめのライブハウスでやっている時と同じ感覚でやれたので、ライブ中はそこまで大きい会場でやっているって感じはあんまりなかったですね。
TK:演出も最小限で最大のものができたというか、最終的には一番見せたい形でできたかなって。……最初はスケールが大きすぎて、いまいちどこから手をつければいいのか分からなかったんですよ(笑)。でも、確かに終わった後、(会場が)広がった感じはありましたね。
やったことの無いことをやる、っていう案もあったんですけど、基本的には今までやってきた照明なり音なりの集大成を見せる。……っていう方向で、それぞれのスタッフにも知恵を絞って頂いて(笑)。一回見たことある演出も違って見えたと思うし、違う形で見せることができたのが良かったですね。『moment A rhythm』の演出もインパクトが強い分、違うものにはなかなかできないし、同じものをずっとやるのも少し違う。ある種の完成形が見せられたので、よかったと思いますね。
345:緊張しました、……いつもなんですけど(笑)。それまでツアーで色々回ってきましたけど、そういうモノを全部見せられたかなぁと思います。
--中野さんに関しては、両親の前でのMCも強烈でした(笑)。
ピエール中野:東京だとなかなか呼び難い人 ―――うちの親とか特にそうですけど、友人や仲間を呼べてあのステージを見せられたのは大きかったです。ただ、その後にシドのさいたまスーパーアリーナを観に行って、「俺はこんな所であんなことをしゃべってたのか……」と勝手に赤面してました、「みんなあったかいなー」って(笑)。
--また、5月には【The Great Escape】など、イギリスで海外初ライブも行いました。
TK:全部で4箇所だったんですけど、一番最初が【The Great Escape】の小さいパブみたいな会場で。全然お客さんがいなかったんですけど、ライブをやっているうちにパブの方から人がやってくる、ダイレクトに吸い寄せられてくる感じは久しぶりでした。なかなか日本のライブハウスでは経験できないですよね。初心に戻るじゃないですけど、何も知らない人たちに向けて音をぶつけて、その瞬間を目の当たりにしてみたかった。凄く良い感じでしたね。
--海外での経験を通じて、表現者として改めて気付いたことなどは?
ピエール中野:……345さん、アレ言って下さい。帰りの飛行機で言ってたアレ。
345:席、隣じゃなかったじゃん!(笑)
ピエール中野:そうだっけ?(笑) お客さんも僕らを知らない状態で観ているので、凛として時雨に加入した当初の感じに近いというか、昔の爆発的な感じを出してみたんですよ。走ってる訳ではないんですけど、速度を感じるようなプレイができたし、きちんとバンドサウンドとして成り立っていたので、それを今あらためてやってみた手応えは凄くありますね。
日本に帰ってきてから、スマパン(スマッシング・パンプキンズ)やacid androidとの3マンとか、【JACK IN THE BOX 2010】とか、その感じでやってみたら意外と良くて。その変化はかなり大きく感じましたし、今後のツアーにも反映されると思います。
--因みに、イギリスのお客さんは盛り上がってましたか?
TK:みんなポカンとしてました(笑)、本当に初めて聴いたんだろうなっていう。目の前にいるお客さんの視線は「さっきから、何でコイツは凄ぇ弾いてんだ?」みたいな感じでした(笑)。
ピエール中野:「何なんだこの東洋人たちは?」っつって(笑)。
TK:明らかに次に出るバンドを観に来たであろう、若いギャルたちが最前列に張り付いてたんですけど、唖然と眺めている彼女たちを見て、「この子たちは何を考えて観ているんだろう?」って考えながら叫びまくってました(笑)。
もちろん、ただポカンとしているだけじゃないなっていうのは分かりますよね。それだけだったら途中で出て行っちゃうだろうし、そういう面は日本よりハッキリしていると思うんですよ。下に酒場があるので、聴く人と呑む人がセパレートされている中で、こっちに流れてくる人も凄く多かった。楽屋に戻った時も、その日のヘッドライナーが「お前らクレイジーだぜ!」って言ってくれたりして(笑)。
Interviewer:杉岡祐樹
ピエール中野 15年ぶりにギターを
--シングル『moment A rhythm』に付属のブックレットでは、イギリスで撮影した写真が掲載されていました。TKさんにとってイギリスとは思い入れの深い国なのでしょうか?
TK:バンドを始めてすぐの頃、姉が向こうに住んでいたので、「遊びに行ってくれば?」って両親に言われたのが初めて行ったきっかけで。当初は「早く帰りたいな……」なんて印象だったんですよ。天気も悪いし、17時くらいでもう暗いし、お店も閉まっちゃうし(笑)。
でも、日本に帰ってからその無機質な冷たい感じが良い意味で違和感として残っていて。ちょうどその前後が時雨の曲を作り始めていた時だったので、イギリスでのその違和感がダイレクトに時雨の核の所に……。そこから派生していって、色んな曲ができていった感じです。
その後、何回も行ってたんですけど、そのたびに歌詞を書いてきたりとか。それこそ『DISCO FLIGHT』とかは向こうで書いた歌詞だったりしますね。それもあってイギリスでライブをしてみたいっていう願望が長年あったので、夢が叶いましたね。
--では続いてニューアルバム『still a Sigure virgin?』についてですが、このタイトルはやはり、まだ未聴のリスナーにも届けたいという想いから?
TK:(タイトルの)全てが曲とダイレクトにリンクしている訳ではないですし、アルバム自体の曲が分かりやすい訳ではないんですけど、イギリスで初めて聴いた人を目の当たりにしたっていうのもあったし、名前は聞いたことあるけど聴いたことない人もいると思うんです。(そういう人たちにも)聴いて欲しいし、「まだ聴いてないんですか?」っていう問いかけでもある。超J-POPな曲とか入ってないんですけど(笑)、単純に聴いてみて欲しいって感じですね。
--ピアノが導入されたM-03「シャンディ」や、12弦ギターの弾き語りがベースのM-06「eF」など、新しいアプローチに挑戦している楽曲もあります。
TK:楽器で音楽の広がりを出そうっていう意図はなくて、最終的にそう聴こえてるのが良いなって思うんです。「シャンディ」は時雨でやるつもりもなくて何となく息抜きで作っていた曲だったので、そもそも“ピアノの曲を入れて広がりを持たせよう”って想いは無かったんです。何かのきっかけで時雨で「やってみようかな?」って思って、そこから時雨のフォーマットに変換していった感じなんですけど、だからこそ行き切ったアレンジになったと思います。
今回は(サウンド)エディットが激しい曲もありますけど、ミックスを自分でやっていて、楽曲の本質が見え辛くなってしまった瞬間があって。エディットなのか楽曲なのかって考えていた時、“ギター一本で歌ってみれば、今作っているモノが本当に響くのか分かるかな”って所から始まったのが「eF」ですね。原点ではないんですけど、本当に削ぎ落とされた環境で聴いてみたいと思って、12弦の弾き語りでデモを作ってみたらメンバーの反応も良くて。 ただ、弾き語りってけっこう完成された感じに聴こえちゃうから、その後にドラムを入れてみたんですけど、なかなかハマらなくて。なので「ちょっとココで解禁してもらおう」と、中野くんには15年ぶりにエレクトリックギターを……。
--え、中野さんがギター弾くのって15年ぶりだったんですか!?
ピエール中野:中二の時に始めて、中三で挫折しました(笑)。レコーディング、緊張しました、手が震えちゃって。
TK:中野君の弾けてないギターを2本重ねる、斬新なアプローチ(笑)。ライブを楽しみにしていてください。
ピエール中野:確かに上手く弾けてれば良いってものでもないですしね。でも、ギター頑張って弾きます、ちゃんとオーダーもしたんで(笑)。「是非うちと契約を」って、兵庫県のギタークラフトメーカーSagoから依頼があったんですよ。
--また、中野さんのドラムではM-07「Can you kill a secret?」が非常に印象的だったんですが、この曲のリズムは全て中野さんのドラムになるのですか?
TK:基本的にリズムパターンに打ち込みはまず使わないですね。(今作では)「シャンディ」でちょっと使ったくらいです。
Interviewer:杉岡祐樹
正解を超えていかないと意味がない
--「Can you kill a secret?」のドラムは強烈でした。
ピエール中野:キックのパターンとかですよね? あと、スネアだけジャストで鳴ってて、ハットが前に行ってて、と変な感じになっているから複雑に聴こえるのかもしれないですね。ドラムはM-08「replica」の方が凄いことになってます(笑)。Aメロは割とインプロ(即興)で叩いているので、ライブで完全には再現できないという……。でも、それは僕とか違いを聞き分けようと思わないとわかんないレベルですけど。
TKが持ってきた曲に対してどうアプローチするか。今回もそこに忠実に取り組んでいった感じですね。ただ、「シャンディ」はエディットされたり打ち込みが入ってきたりするので、斬新でした。録っている時は、何がどうなっているのか分からない!(笑) M-04「this is is this?」とか、繊細な曲は特にそうですけど、この曲と「シャンディ」のドラム録りが一番多かったよね? スタジオを変えたり、セットを変えたりしながら録り直してみたりとか。
TK:「this is is this?」と「シャンディ」のドラムは3~4回録り直しました。デモの段階が凄く完成されていたので、それを超えるまでは良しとしない。「せっかく録ったから」って感覚が余りないんですよ。一人で完成させたデモを超える事って意外と難しいんです。でもそれを飛び越えていかないとバンドでやってる意味がないんです。
--正解の上を行く。プレイヤーとして求められるレベルは相当高いと思うのですが、プレッシャーになることは?
ピエール中野:割と「そういうモンだろう」って思ってやってるんで(笑)。変なプレッシャーは無いですね。
--また、CDに収録された楽曲については、プロデュースやミックス、マスタリングは殆どTKさんひとりで行っています。
TK:どちらかというと普通かなぁと思っているんですけど(笑)。「この曲は違うニュアンスが欲しい」って時だけ他の人にお願いする感じですね。
--では、今作の中で印象的だった楽曲などはありますか?
345:印象的な曲というよりは、一曲一曲に凄く集中して制作していたので、マスタリングの時に並んでいるのを聴いて、「凄い9曲だな」と。どういう曲になるのか、マスタリングが終わるまで分からないので、その場その場で集中していく感じです。
--個人的には、一曲一曲が曲の中でクライマックスまで達する9曲が揃っていると感じました。ここまでの作品を完成させた達成感というのは?
TK:達成感は……、基本的には毎回、そんなに無いんですけど(笑)、それぞれの曲が行き着く先は、ちゃんと見つけてあげられたかなってくらいな感じですね。マスタリングが終わった時も、「終わりました、お疲れ~。ハワイ行ってきまーす」みたいな感じじゃないですね(笑)。
--各々のリスナーが、聴きながら映像を思い浮かべられるような作品だと思うのですが、逆に限定されたイメージ的なモノが少なく、想像の余地がある楽曲が揃っているようにも思えます。
TK:限定したくないというよりも、自分自身も作った時にしか分からない感覚というのがあるんです。あんまりないですけど、「この歌詞はどういう意味ですか?」って訊かれて何かを答えたとしても、それすら合っているかどうか分からない。
でも確かに今回は「this is is this?」とか「illusion is mine」とか、映像的にアプローチすると面白いかな?って曲がたくさんありますね。その絵がどういうものなのかはハッキリ分からないんですけど、何となく。
--そして、リリース後は全国ツアー【凛として時雨 TOUR 2010 “VIRGIN KILLER”】がスタートします。
TK:いや、もう凄いんじゃないですか、中野くんが(笑)。
ピエール中野:テキトーじゃねえか!(笑)
345:ギター弾くんでしょ?
ピエール中野:そりゃ弾きますよ。とかいって全然セットリストに入ってこないんでしょ?(笑) 「今日も無い! ……今日も無い! ギターの出番が無い!」って!
--ツアーに向けての意気込みなどは?
345:頑張ります!
--では中野さん、最後にシメを!
ピエール中野:俺ですか!?(笑) ……えっと、新譜が出てのツアーなので、バリエーションも広がって良いライブができるんじゃないかな、と。さいたまスーパーアリーナを経て、イギリスツアーを経て、新譜を出しての僕のギターですから!(笑) 是非楽しみにしていて下さい。
Interviewer:杉岡祐樹
still a Sigure virgin?
2010/09/22 RELEASE
AICL-2174 ¥ 2,934(税込)
Disc01
- 01.I was music
- 02.シークレットG
- 03.シャンディ
- 04.this is is this?
- 05.a symmetry
- 06.eF
- 07.Can you kill a secret?
- 08.replica
- 09.illusion is mine
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