今年はこれまでで最高の年になった

??2013年度【ビルボード・ウーマン・オブ・ザ・イヤー】賞の受賞おめでとうございます！感想はいかがですか？

ピンク：シュールよ。今年はこれまでで最高の年になったわ。周りで起こっていることをきちんと理解できる年齢なったと思ってる。（2001年に）『M!ssundaztood』がリリースされた頃、周りでいいことが起こっていても、若すぎて理解できてなかった。自分では年寄りって感じてたけど、実際はそうでなかった。何も吸収できてなかったの―私はいつでも第3者的立場で物事を見てるから。
　ウィローの存在は、私をオープンにしてくれた。でも今年は一生分の仕事が落ち着いた感じ―ポジティヴで、素晴らしい出来事ばかりだった。
　本当に素晴らしい気分なの、なぜかって言うと、この後何かをするのであれば、それが何かが全然わからないから。今回の受賞は、タイミングがばっちり、（インタビュアーの肩を叩きながら）「グッド・ジョブ！」って言われてるみたい。素敵なことだし、とてもいい事だと思う。家庭の面でも最高よ。ウィローが14歳ぐらいだったら、今の私の姿が見られるのに。残念ながら、彼女が私がクールだったって憶えているには幼すぎるわね。きっと「ウィロー、この雑誌を見て！誰が表紙を飾っていると思う？」「え、ママそんなの大昔の話じゃない。」って具合になるわね（笑）。

▲ 「Try」 Music Video

??この1年間の思い出深い出来事は？

ピンク：全てのパフォーマンスが思い出深いわ。（2012年の）【アメリカン・ミュージック・アワード】は最高だった。あの時のパフォーマンスはとっても楽しかったから。多分ビルボード以外のTV中継されたアワードに出るのは、あれが初めてだった。それに本当に楽しかった。「Try」を演奏するのは、すごく好きなの。振り付けもすべて考えて、最高だったわ。後は、オーストラリア・ツアーも愛が溢れてて。次から次へと本当に楽しいことばかりだった。
　ウィローともディスニー・オン・アイスや『Cavalia』のショーを見に行ったり、クールなことばかりしてるの。
　オーストラリアの人々は言葉で説明できないほど、とにかく愛に溢れてる。私にも意味が分からないけど、理由もなくね。でもお互いに対する愛や観客の表情は、他のどこの国でも見られないものだと思う。本当にサイコー。人種、タイプ、年齢なんて関係ない、3世代が一堂に集まって楽しむだけ。楽しすぎて、毎日が奇跡のようよ。
　もちろんアメリカも素晴らしい。アメリカでフル・ツアーをやるのは初めてだから、それもすごい事。私は何年もアーティストとして活動してきたから特にクレイジーよね。でもオーストラリアはそれに劣らず。アメリカからツアーを始めたんだけど、今回は子供と一緒で、ライブと育児を両立して、途中で私が病気なって、そしたら1歳半の娘も病気になってしまったのは正直大変だった。ヨーロッパに辿り着いた時には、具合が悪化したけど、終盤にかけてはだんだん良くなって慣れてきてからまた楽しくなった。
　そしてオーストラリアに移動して、すべてがしっくりきた。自転車のようにすべてのパーツが揃って、動きはじめたって感じ。そこからは順調よ。でも今また喉が悪くなって…。でもとりあえず最高よ。
　それに、私“ムーンマン”（MTVビデオ・ミュージック・アワード）を授賞したわよね？そうよね。トロフィーをデザインしたアーティストは誰だっけ？名前が思い出せない～。“ムーンマン”が作られる過程を追ったドキュメンタリーを見たんだけど、マネージャーのロジャー（・ディヴィス）に電話して、「絶対欲しい！買わなきゃいけなくても、ノミネートされてなくても。何にも書いてなくていいから絶対欲しい！」って言ってたら、受賞した。こんな賞を貰うのは久しぶりだから、とっても嬉しい。

??因みに何の賞だったか憶えてますか？

ピンク：全然。けどネイトと一緒に貰った賞だと思うわ（編注：「Just Give Me A Reason」でベスト・コラボレーション賞を受賞）。でも、そんなの関係ない！だってトロフィーがもらえたんだもん。

女性が天下を取っているのは素晴らしいことだと思う
ビヨンセやケイティ・ペリーと同レベルの
男性アーティストは全然いないわよね

▲ 「True Love ft. Lily Allen」 Music Video

??現代の音楽業界で女性アーティストとして活動することについては？どのような時に自分にとって有利でしたか？逆にチャレンジとなることは？

ピンク：女性だということが、私の足を引っ張ったことは一度もないわ。自分が女性で良かったと思ってる。それに音楽業界にいる女性は大好きよ―アイディア、サイクル、そしてその歴史のすべてが大好き。デビューした時、私にとって一番のアドバンテージは自分らしくあることだった。その頃活躍していた女性アーティストと自分は真逆だった。
　女性が天下を取っているのは素晴らしいことだと思う。ビヨンセやケイティ・ペリーと同レベルの男性アーティストは全然いないわよね。私にはジャスティン・ティンバーレイク以外思いつかない。

??（マルーン5の）アダム・レヴィーンは？

ピンク：う～ん、そうね。でも同じじゃないと思う。女性がアーティストがありったけのステージを見せて、マイクを投げ捨てそのままステージを去っていくのを見るのは本当に楽しい。大体いつもそう。それを見るのが楽しくてしかたないの。もちろん自分がやってることも最高の気分。長年活動してると、ツキがまわってきてる時もあれば、その反対もある。最初の頃にロジャーが…あれはLA（リード）だったかもしれないけど…彼らは私の“ボーイズ”なの、“ローラーコースター”の話をしたのを憶えてる。
　成功と失敗、両方を経験できるほど、この業界に入れれば上出来。“ローラーコースター”の最後は、いい結末で終わる。自分のキャリアを振り返ってみて、「うん。私はポップ・アーティストとしては長く活動してる。」って思ってる。それも“ローラーコースター”だったから、これでいいのって。
　私はパフォーマーとして、そしてツアーでも自分を証明できたと思う。人気コンテストだったり、その類のくだらないことやラジオで愛されたりっていうのは無いし、私が一生そんな風になることはないと思うけど、それはそれでいいの。だって今後一生ツアーして暮らしていけるし、私はその点では長けてるから。

??以前ライアン・テダーとあなたについて話した時に、彼はあなたが「音もなく世界的ポップ・スターになった」と言っていたのですが、それはなぜだと思いますか？

ピンク：“音もなく”なんて面白いこと言うわね。多分私が地に足をつけて、思いっきり地面を打ち鳴らしてるから。私はホースショーに出て賞を獲るような馬がいる厩舎にいて、最高峰から学んでる。ティナ・ターナー、シェール、シャーデー、ジャネット・ジャクソンを誰とも比べることは出来ない、今のところね。私にとって彼女たちは“ツアー”アーティスト、生涯ツアーをし続ける伝説的“ツアー”アーティストたち。それとベット・ミドラーも。彼女たちは私にとって神なの。自分の曲がラジオでヒットすることなんて望んでない。そんなことより私はライブ・パフォーマンスでみんなを泣かせたい。

▲ 「Just Give Me A Reason ft. Nate Ruess」 Music Video

??とはいえ「Just Give Me A Reason」は、ラジオで大ヒットしましたし、これまでで一番のヒット曲ですよね？

ピンク：最高の気分よ。だってあの曲は私が書いた曲だし、あの曲の為に戦った。ネイトにあの曲を歌ってもらえるように戦ったし、すべてにおいて戦った。あの曲が実現するには何か月もかかった。でも私はあきらめなかった。私は何かが欲しい時は、絶対あきらめないんだから。

??どのようなことがその足を引っ張ったのですか？

ピンク：すべてよ。ネイトは、ポップ・スターとコラボするのを躊躇してた。彼の所属レーベルはインディー・レーベルだから、彼らも躊躇してた。でも私はあきらめなかった―というかある意味やるように仕向けたの。というのも1日目に最初のヴァースとコーラスをほぼ完成させた。家に帰って、詞を見ながら曲について考えていたけど、コラボレーション・ソングではなかった。曲を一緒に書くという面ではそうだけど。でも「これは恋人同士の会話についての曲だわ」思ったから、彼に参加してもらわない手はなかった。だって彼は私が今一番好きなヴォーカリストなんだもん、アデル以外にね。
　2ヴァース目を書いて、曲をネイトに見せたんだけど、「う～ん。他のメンバーがどう思うかわかんない。」って言われた。だから「わかったわ。私だってポップ・スターと曲なんて歌いたくない。でも会話だっていうのは紛れもない事実。仮でヴォーカルを入れて。そしたらゴティエに歌ってもらうから。」って返したの。そう言えば興味を持ってくれるかもって思って。そしたら彼はヴォーカルを入れてくれた。その時に、ネイトが何と言おうと彼以上に上手く歌ってくれる人はいないと悟った。だから何か月も何か月も費やして説得したの。
　でももう慣れた。みんな私とツルみたいんだけど…なんて説明したらいいかわからないな。バーベキューなんかをすると多くのシンガーやソングライターの友人が来て、一緒に曲を作ろうって話をしてるけど、私は絶対に誘われない。なぜなら私がポップ・スターだから。だから見下された負け犬や“企業”のように扱われるのは慣れっこよ。私がそのバーベキューで実際に歌ったり、こういう賞を受賞しない限り理解してもらえない。毎年のように自分を証明しないといけない。文句言ってるわけじゃない―それはモチベーションにもなるから。でもたまに超ウザいって思うこともある。
　たとえばピーチズにも「なんであんたとなんか曲作んなきゃいけないの？」って言われたけど、「アタシがサイコーだからに決まってんでしょ？イエスって言いなさい！」って返したら、「OK」て言われたし。説得することなんてしょっちゅうよ。スティーヴン・タイラーとリンダ・ペリーは説得しなくて良かったけど、他は全員しなきゃいけなかったんだから。

自分の娘のこと以外では、長い間感じていなかった
素晴らしくハートウォーミングな瞬間だった

▲ 「Blow Me (One Last Kiss) 」 Live From Los Angeles

??曲づくりのセッションは大体どんな感じで行われるんですか？

ピンク：場合によるわね。コラボレーターと自分は同等だと思ってるけど、私は楽器を弾かない。ビリー（・マン）やブッチ（・ウォーカー）とかだと、彼らがギターやピアノで音遊びしてて、気に入ったものがあればそこからスタートする。ビリーと行ったセッションの中で好きもののひとつは「Crystal Ball」。一緒に座って演奏してたけど、彼は私の兄弟みたいなものだから「え？それ最悪！」とか心置きなく接することができる。私が歌いはじめると、詩が動いてるような感じ。5分、20分すれば大体ヴォーカルが出来上がる。ワインを良く飲みながら作業するわ、昼間じゃない限りね。
　グレッグ・カースティンは、素晴らしくクレイジーなトラックを作り上げる―作曲するの。彼は最高すぎて、何を演奏しても素晴らしすぎて吐きそうになるわ。一番最初に演奏してくれたのが「Blow Me (One Last Kiss)」だったんだけど、途中で思わず「ストップ！」って言っちゃった。「残りが聴きたくないの？」って言われたけど「いいえ！」って答えた。次の日には、違う曲を聴かせてくれた。その時も途中で「ストップ！」って止めて、「残りが聴きたくないの？」って言われるのの繰り返し。「Blow Me」にはじまり、「Walk of Shame」で「Try」かな。私は「Try」は書いてないんだ。毎日、毎日が全く違うものが出来上がった、だって彼は最高なんだもん。それにウィットに富んでいて、面白くて、素晴らしくて、ラヴリーで。彼らと一緒に仕事ができるなんて、本当にラッキーだわ。

??ではツアー中の日常について教えてください。

ピンク：大体起きて、パパがウィローに朝ごはんを食べさせてから公園に行く。いつもウィロー中心に過ごしてる。私はジムに行ってから、彼女と少し遊んで、一緒にヨガをしに行く。家族、ダンサー、バンドとクルー、みんなでヨガをするのよ。それからサウンドチェックをして、ご飯を食べる。食べ終わったら、ヘア・メイクをしてもらって、ヴォーカルと身体のウォームアップをする。そしてバンドとクルーとお祈りをしてステージに上がるわ。ライブが終わったらバスに戻って寝る。ウィローがベッドで寝て、私は寝台。そしてまた起きて同じことの繰り返しね。

▲ 「Are We All We Are」 Live From Melbourne

??ピンクが現在一番大切に思っているチャリティは？

ピンク：“No Kid Hungry”が一番よ。昨年から彼らと関わりはじめた。昨晩『A Place at the Table』という（アメリカ国内での飢餓についての）ドキュメンタリーを観たばかり。エクゼキュティヴ・プロデューサーがトム・コリチーオのという人で、『Top Chef』の番組司会を務めていて、クラフト・レストランのシェフでもある。観てる間ずっと泣きっぱなしだったわ。彼らはアメリカ国内の学校に給食を支給する手伝いをしているの。アメリカ人の子供は、4人に1人が飢餓だっていうのよ、信じられないわよね。
　動物愛護にもずっと携わってきた。でもそれはライフスタイルという感じね。後は女性と子供に関わること。最近Twitterで助けが必要な人々を見かけると、名を明かさず手を差し伸べることをしてる。誰にも言わずそういうことをするのって、とっても気持ちがいい。もちろん助ける人々にも名は明かさない。そういうのが楽しいの。その人や周りの人がツイートしたことで、ちゃんと伝わったことが私にもわかるし。とってもクールよ。
　オーストラリアで、カルヴィンという子がいて―これは今年のツアーで起こった私のお気に入りの出来事よ。ヴォーカル・ウォームアップをしてる時は退屈だから、Twitterのリプライをよく読んでるんだけど、ある母親が「私の息子カルヴィンはダウン症の11歳で、癌を克服しました。今夜ライブに参加します。化学療法をしていた時に彼を支えたのはあなたの音楽でした。」ってツイートしていたの。
　彼女は、私がこのツイートを見たことを知らなくて、ライブ中「So What」用のハーネスを装着して、空中遊泳しながら巡る50か所ぐらいのポイントの中に車いすのエリアがあるんだけど、「彼はきっと車いすよね。だからその中に絶対いるはず。」と思って、「カルヴィン、あなたの元に行くわよ～。」と叫んだ。辿り着いて私が空中で停止すると、カルヴィンの母親が立ち上がって、彼の方を指さしてくれたの。彼が気づいて、声を上げた瞬間全身に稲妻が走ったわ。彼女も泣きだして、私も大泣きしちゃった。
　実際空を飛んでいたけど、まさに空中を歩いて、天にも昇る気分だった。自分の娘のこと以外では、長い間感じていなかった素晴らしくハートウォーミングな瞬間だった。あれは本当に素晴らしかった。地元のラジオでも取り上げられたようで、もっと多くのライブに来れるようにチケットを貰ったみたい。クールなことよね。

歳をとるのも怖くない。“P!nk”を辞めることも怖くない。
母親になるのも、もう怖くない。

▲ 「Slut Like You 」 Live From Los Angeles

??2014年の予定は、いまのところ真っ新？

ピンク：いいえ。2014年は、（夫）キャリーのスーパークロスの年。今年は、彼が私のツアーに同行してくれたから、来年は私が同行して、“ロード・ママ”になる番。

??ツアーはどのぐらいするのですか？

ピンク：スーパークロスのシーズンはすっごくハードで、私のきらびやかな人生とは全然違う。だから私が会場にいれば、夫を愛してるってことよ。いなければ、そうじゃないってことね。毎週末半年以上に渡って行われるから大変よ。それに彼、サウスウェストになんか乗って移動してるのよ、ふざけてるわよね（笑）。「ちょっと、予算でツアーバスにしてよ！」って感じ。

??てことは、楽しみにしてるんですか？

ピンク：う～ん。ウィローが赤ちゃん用のプログラムをスタートするし、私はたくさん料理する。それが楽しみかな。今2歳半なの。スゴイでしょ。彼女は本当に楽しい子。今年のツアーでは、クルーみんなをハッピーにしてる。今、シェフのロビーと一緒にいるんだけど、彼らはとっても仲良しで、喧嘩すると兄弟みたい。子供の周りで言っちゃいけないようなことばっか言ってて、たまに彼のこと引っ叩きたくなることもあるけど。でもすっごく美味しいサーモン料理を作ってくれるから、許してる。彼とウィローが築き上げた関係はとってもキュートよ。

??彼女がピンク自身に及ぼした変化について教えてください。

ピンク：なんて答えたらいいか全然分からない。彼女の存在はすべてを変えた。昔は、休むことなんて考えなかった。でも今は「学校探しするのが待ちきれない。彼女が8歳になったらどんな感じかしら。どれだけ精神安定剤飲まなきゃいけないのかしら。それまでにワイン作り憶えなきゃ、そしたらタダだから。」なんて考えてる（笑）。でも彼女は本当に素晴らしい。最高よ。

▲ 「The Truth About Love Tour: Live from Melbourne Trailer」

??もっと子供が欲しいですか？

ピンク：そうね。彼女だけでも十分。一生一緒に世界を巡っていたい。でも私にとって兄がすべて。だからウィローには、私とパパ以外の家族と思える人がいて欲しいと思う。それもあって、彼女の一生涯の親友を作る意味で、もう一人子供が欲しい。
　私には、異兄妹がいるけど、年齢がかなり離れてる。キャリーも12歳まで一人っ子で、やっと弟ができたかと思ったら、数年前に亡くなってしまった。家族が一番大切。親友のグラントには、4人も兄妹がいるの。最高よ―休暇の時に一同が会した時のカオスと喧嘩。それに誰か一人は絶対に近くにいてくれる。養子をもらうか、もっと生むか―どちらにしろ答えはイエスよ（笑）。

??前回話した際に、今回のツアーはあなたの高所恐怖症を克服するためでもあって、自分の恐れと真っ向から勝負するのが好きと言っていましたが、次にタックルしたいものは？

ピンク：なんだろう、見当もつかない。アタシ疲れちゃったわ（笑）。サメ恐怖症に関しては、何もしたくないから、そのままにしておく。これ以上恐れるものがあるかわからない。歳をとるのも怖くない。“P!nk”を辞めることも怖くない。母親になるのも、もう怖くない。だからわからない。今私は人生を謳歌してて、自分の本当の友達が誰かもわかっていて、彼らを愛してる。未来も明るい。とってもエキサイティングよ。夫が苦しまなくなればと思うけど、それぐらいよ。私って結構退屈ね。

2013年12月6日 Billboard.com掲載