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浮気者(SuG 武瑠) 『I 狂 U』インタビュー
「それがなかったら解散するべきだと思う」
サイドプロジェクト浮気者の始動に続き、昨年末より活動休止していたSuGの再始動発表。想像より早い復活だったと思う人もいるかもしれないが、クリエイティブに取り憑かれてる人が「それをするな」と数ヶ月にわたって強いられるのは、ハッキリ言って地獄である。そんな日々を彼がどのように過ごしていたのか、浮気者の活動を通して何を示したかったのか、SuGはなぜ“解散”せずに再び走り出すことができたのか。一気に放出してもらった。
30日ぐらい連続で毎日呑んで胃腸炎、それでもやめない
--改めてお帰りなさいませ。お元気でしたか?
武瑠:呑んだくれておりました。
--主に呑んだくれ(笑)?
武瑠:そういうのをやったことがなかったから。ヤケ酒的なことではなく、単純に「今しかできないことなんだろう?」と思って、時間あるんだし、呑みまくってみようと。30日ぐらい連続で毎日呑んでいた時期もありました。毎晩毎晩繰り出して、それで胃腸炎とかになったんですけど、それでもやめない。みたいなことを1回やってみました(笑)。
--結果、どうでした?
武瑠:うーん……やってよかったかな(笑)。いろいろ街が見えた。「あ、みんな、こういう風に生きてるんだな」っていうことが分かったし、かなり人間観察できました。実際、浮気者の歌詞にかなり反映してるんですよ。夜な夜な明るいお店にみんないて、苦しくてみんな集まっていて、でもどこか寂しい。それは反映してる。いろんな話も聞けて新鮮でした。
--いきなり核心に迫る話になっちゃうんですけど、昨年12月29日 国立代々木競技場第二体育館にて開催した【SuG Oneman Show 2012「This iz 0」】をもって、SuGは活動休止となりました。なぜSuGは一度立ち止まらなければいけなかったんでしょう?
武瑠:自分たちが本当に活きるフィールドで勝負したかった。今までが間違っていた訳ではないし、今までの出逢いがないと絶対に今の自分たちはない。ただ、ずっと何かに縛られたままじゃなくて、ちゃんと今を正直生きていくことが過去にも未来にも一番誠実だと思ったので、その為にも違うフィールド、場所で進んだ方がみんな幸せになれるんだろうなって。
--ただ、SuGが過去最も勢いに乗っていた時期に活動休止って、リスクも高いですよね。メンバーやスタッフとの間でいざこざが起きたり、例えば“解散”というワードが飛び出してもおかしくなかったと思うんですけど。
武瑠:それはやっぱりありましたよ。立ち止まった後でまた出来るかどうか分からない。だったら、先に解散しようって。ちゃんと解散した方がいいんじゃないか、みたいな話は何回もしましたね。
--それでも解散しなかったのは?
武瑠:みんなが「続けたい」って言ったから。ひとりでも「うーん、やめようかな?」って言ったら解散でしたけど、みんなと話した結果、そういう声はなかったので。
--それでSuGは活動休止。メディアや公の場から5人の姿がしばし消えます。どんな心境でした?
武瑠:ちょっと焦ってる気持ちはありましたけど、ケジメとしてまだ動いちゃいけないなと思っていたので、それは耐えでしたね。で、今、何が出来るんだろうって思ったときに、少しでもジム行ったりとか、英会話を始めたりとか。物理的にSuGの行動が出来ないなら、いつか繋がることをやっておこうと。
--ただ、思い付いたアイデアや曲がすぐにアウトプットできないのは、武瑠くんみたいなタイプからすると、相当ストレスですよね?
武瑠:そうですね。その時期にシミュレーションしていたもののひとつが浮気者だったりするんですけど、まぁ実際には、何にも考えたくないやって時期もあったし、ちょっと沈んじゃうときもありましたし……多分、〆切とかないと基本やれない人なんだと思う(笑)。
--でもSuGのことが頭から離れることはなかったでしょ?
武瑠:それはないですね。全部忘れて、みたいなことはなかったです。でも外に出ていかない分、アンテナとか感度は鈍くなってるとは思いました。常に密接して情報が入ってこないと捉えられないものがある。こうやって話していれば、他のアーティストの話とか聞けるけど、そういう自然の流れで情報が入ってこなくなるんで、自分で能動的に取りに行くしかない。ただ、見尽くした感じもあって、若干つまんなくなっちゃったなって。他のアーティストの曲を聴いても感動しなかったり……それは自分が閉じていたせいもあるんですけど。自分が動けないから、感受性をちょっとオフにしてる感じ。「オフにしてないと、やってられないよ」みたいな。
--クリエイティブに取り憑かれてる人に「それをするな」って、簡単に言っちゃうと地獄ですもんね。
武瑠:うん。ただ、そんな状況下で、全然知らない人から違う仕事の話をもらったりして、それが面白かったんですよ。「ドラマと映画の脚本を書かないか?」って言われて。ただ、それをやってしまうと、SuGが復活するにあたってのスタッフ探しだったり、事務的な動きをできる人がいなくなっちゃうから、そこは自分がリーダーとして動かなきゃいけない。なので、脚本の仕事に手を出すのはやめておきました。
--難しい選択ですね。表現や仕事の幅を広げられるチャンスだけど、それをやっちゃうとSuGのリスタートが遅れるっていう。
武瑠:だから個人の仕事はほとんどお断りして、わりとSuGの復活に専念していました。
リリース情報
I 狂 U
- 2013/11/20 RELEASE
- [PCCA-3930(CD)]
- 定価:¥1,800(tax in.)
- ≪試聴可能≫
- 詳細・購入はこちらから>>
- 完全限定生産盤の詳細・購入はこちらから>>
関連リンク
Interviewer:平賀哲雄
それがなかったら解散するべきだと思う
--あと、活動休止中に海外へ行っていたんですよね?
武瑠:それも今しかできないことだと思って。英語とかある程度しゃべれた方が復活したときに便利だなと。ただ、それでラスベガスとニューヨークに行ったんですけど、あんまり滞在できなかったので、もうちょっと長く居たかった。
--それでも学べるものはあった?
武瑠:ありすぎましたね。今回の浮気者にもめっちゃ反映してるし。外から東京を見られたことも大きいし、外人コンプレックスみたいなものはかなりなくなりました。「あ、やっぱ、普通に人間なんだな」って。こっちは「日本人はダメだ、ダメだ」「日本人でそれはないでしょ」って勝手に思って壁作るけど……
--「日本人のくせに」って自分で言っちゃう感じ?
武瑠:それがだいぶ外れたので。向こうで自分たちのPVをフラットに見せたりすると、普通に「良いね!」って言ってくれる。意外と届くんだなって。日本のファッションシーンの人の方がよっぽど冷たい(笑)。「ファッション以外のものは認めない」みたいな。
--話が前後しちゃいますけど、12月29日 国立代々木競技場第二体育館でのSuGワンマン。今振り返るとどんなライブだったなと感じていますか?
武瑠:あのときの正解が出せたかと思いますね。終わった後も結構スッキリしていたし、未来に繋がるライブがちゃんと出来たんじゃないかな。今、昔のDVDとか観ても、最後のライブDVDが一番良かった。
--でも頭の中にはあれ以上のSuGが出来上がっているんですよね?
武瑠:それがなかったら解散するべきだと思う。休んで、良い曲が出来た。それは良かったなって。それがない、または「良い曲はこれ以上できないな」って思ったら絶対解散していたと思う。でももっと良い曲が出来たんで。誤解を怖れずに言えば、とりあえずこの先2年ぐらいは前より良い構想があるから、続けようっていう感じ。
--活動休止があったからこそ、前以上のものをお届けできる?
武瑠:作品に関してはそうですね。時間をかけた方が良いモノを生み出せる。なので、昔ほど多く出したくないなって思ってます。ひとつひとつへの責任をもうちょっと高めるべきだなって。もうワンランク上を目指すべきだなって。
--そんな武瑠くんに聞きたいんですが、活動休止期間、外から見ていた日本の音楽シーンはどんな風に映っていましたか?
武瑠:うーん……PVにもっと力を入れるべきだなって。もうCDがどうとか、ライブがどうとか言うよりは、その人が言うものならすべて信じられるとか、ブランドイメージと一緒で、バンドイメージをブランド化することが一番だなと思いましたね。特に自分がやることは。とにかくSuGというものをロゴだけで、PVだけで格好良いと思わせるようなものにしないと、通じないなって。
--それはなんで?
武瑠:曲が良くても、それだけだと曲は届かない。良いモノが必ず届く訳でもないし、それぞれに用意された舞台でしか活躍できないところがあって。じゃあ、この居場所でのベストを尽くすにはどうしたらいいのか。より研ぎ澄まして動いていかなきゃいけない。
--具体的には、ここからはどう戦っていこうと思ってるんでしょう?
武瑠:自分のポピュラリティを変えてまで、ひたすらにただ話題性を取るやり方じゃないほうが良いなとは思っていて。前はおそらく作品以上に話題性を重んじていたんですけど、それは作品に自信がない表れでもちょっとあったと思う。でも面白かったし、勢いで行っちゃえ!みたいな良さはあって、それで広がった部分もあるし。でも次は本当に良いものを届けられるかどうか。それがベースにあって、自分も飽きないように面白いことをやっていく。だから歌とかもっと良くないと勝負できないんだろうなとも思ったし。
--自分の歌も含め、全体的にクオリティを上げていくと。
武瑠:後から冷静にSuGを見て、自分がいないとあそこまで行けなかっただろうなと思う反面、あそこで止まったのは自分の責任だろうなと思って。良くも悪くも自分だった。これから先はまたちょっと違う考え方をしなきゃいけないし、その為にも自分がまずレベルアップしなきゃいけない。で、もっと先へ行くには、ひとりひとりがもっと当事者意識を持つとか、そういう風に改めていかないと解散するだろうなって。
--なるほど。
武瑠:バンドが復活すると、よく「問題が解消されましたね」みたいな感じになるけど、それは忘れているだけで。改善できないんだったら当然のように解散すると思うし、どんなバンドでも「仲良いからやってます!」みたいな感じでは通用しないので。まぁ常にそうですけど、いつまで活動できるというのは断言できない。ただ、前の自分に勝てるならば延長していく。ハードルはどんどん高くなっていくし、自分vs自分、SuGvsSuGのサバイバルレースがどんどん過酷になっていくイメージ。
--それに勝利できる自信があってこその復活ですよね?
武瑠:今はある。
--そのSuGの前に浮気者としてのミニアルバムを発表することになりました。まず浮気者というプロジェクトを始動させようと思った経緯を教えて下さい。
武瑠:そのSuGっていう本命がありながら、浮気するっていう。これがただのソロプロジェクトなら全然違う名前にしたと思うんですけど。あと、発想としては、SuGが普通に復活しても面白くないから、何か企画性を持ったサイドプロジェクトが欲しかったんです。やりたいことはSuGで出来ているんで、別の、偶発的に起こってしまう「良いのが出来ました!」みたいなプロジェクトが。そしたら、浮気者っていう名前がこれ以上ないぐらいハマって。
リリース情報
I 狂 U
- 2013/11/20 RELEASE
- [PCCA-3930(CD)]
- 定価:¥1,800(tax in.)
- ≪試聴可能≫
- 詳細・購入はこちらから>>
- 完全限定生産盤の詳細・購入はこちらから>>
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Interviewer:平賀哲雄
加藤ミリヤとは絶対いつかコラボしてもらいたい
--様々なアーティスト(ゆよゆっぺ、たむらぱん、0.8秒と衝撃。、Plus-Tech Squeeze Boxなど)とコラボレーションしていますが、サウンドとしてはエレクトロ路線ですよね。この音楽形態を選んだのは?
武瑠:特に拘った訳ではないんですけど、バンドサウンドじゃないものを選んだ結果ですかね。
--その上で表題曲「I 狂 U」のアレンジやアートワークを“和”に寄せたのは?
武瑠:結構なんとなくなんですよねー。今回はこのアートワークの写真ありきで考えていたので、自然にこういうアルバムやPVになって。絶対に“和”を入れたかったというよりは、この感じだったら成立しそうだなっていう。で、ダブステップに和太鼓が入ってたら面白いなとか、虚無僧がDJしてたら面白いなとか、監禁されてる女の子がししおどしで注がれたミルクを飲んでたら……とか、映像と一緒に考えていって。海外アーティストが“和”をモチーフとして使ってるイメージ。“和”っていうより“東京”かな。洋と混ざってる感じ。
--きゃりーぱみゅぱみゅのチームとか、海外を視野に入れているところって“和”というか、海外に喜ばれる日本文化を積極的に取り入れてるじゃないですか。武瑠くんの中にもそうした狙いはあったのかなって。
武瑠:単純にそれもあります。自分がカッコいいと思うTOKYO。「男の子がやるならこうでしょ?」とか。いつも思うのは“自分にしか出来ないことをやりたい”なので。
--きゃりーぱみゅぱみゅの方向性って、武瑠くんにはどんな風に映ってるの?
武瑠:全体の方向性はブレてないじゃないですか。ディズニーランドみたいな存在。ネタは変えてるけど、存在としてはずっと変わってない。それが出来るのは、まず根底に音のクオリティーがある。あんだけ単純で、ひらがなで、子供っぽい「にんじゃりばんばん」みたいなフレーズをオシャレに響かせているのは、音のクオリティーあってのことだと思う。やっぱり天才と言われるサウンドクリエーターが基盤になってる。そして、それを体現するパワー。あと、きゃりーぱみゅぱみゅは一人であって一人じゃない。みんなで作ってる。そこがしっかりしてるから面白いんでしょうね。
--今、きゃりーぱみゅぱみゅと同じ状況に在ったら、俺はこうするのにな的なことは考えたりする?
武瑠:それはすごく思います。男の子だったらどういう勝負が出来るんだろう?とか、すげぇ考える。デザインもそうだけど、アイデアの数が物凄い多いんで、それをオーディションしまくってアウトプットしていくんですけど、どうしてもソリッドなメイクとかって、ある意味、男だと凄いハンデキャップになるので。メイクしているだけで出ていけない場所があったりとか。で、イケメン俳優とかジャニーズに勝てるのか?って言ったらそんなこともないし。じゃあ、自分のフィールドがない中での戦いをしていくしかないなって。
--それが浮気者でもあると思うんですけど、ここで経験したことを復活後のSuGだったり、今後の音楽シーンで戦っていく為に生かせるものにしたい。そういった感覚はありますか?
武瑠:そうですね。テレビ番組に例えると、バラエティ番組に出て人気を集めていたのがSuGだとしたら、今回の浮気者で『情熱大陸』に出ていったイメージはあって。「あ、こういう風にしっかり作ってるんだ」っていう部分をしっかり見せていったというか。復活後のSuGはその両方が混ざっていく感じになると思うんですけど、だからSuG新章へ行く前に「ほら、ちゃんと作ってるんだよ?」っていう部分を1回見せたかった。だから先にやったんです。
--SuG『sweeToxic』リリース時のインタビューで「次は根こそぎヴィジュアル系バンドという概念から外れたことをやると思うんで」と言っていたんですが、そこともリンクする部分なんですかね?
武瑠:浮気者は“自分”っていう感じです。ジャンルに関してはもうよく分からなくて。別に嫌とも思ってないし、呼んでほしいとも思ってないし、もう捕らわれていないと思うし、よく分からないですね。ヴィジュアル系という言葉が。呼ばれるんなら呼ばれてもいいし、そこに拘りが無さ過ぎて、本当にどうでもいい。自分が育ってきた環境、そこから生まれたものしか入ってないので。
--では、今後、自分のことを紹介するとしたら、どう紹介しますか?
武瑠:それをPVで表現したかったし、そうあるべきだなと思っていて。ジャンルってCDショップでカテゴライズ分けするぐらいの意味しかなかったと思うんですけど、元々。今はより意味がなくなってるから。で、今、アーティストってヤフーやGoogleで検索するよりYouTubeで検索されることの方が多いと思うんですよ。そこに一番に看板を置くべきだなって。それは時代に合ってるし、自分が一番やりたいことでもあったし、結局はPVが一番情報量を持ってるので。だから映像に力を入れていくことで「こいつがやることは間違いない」ってところまで持っていかなきゃいけない。
--だから今まで以上にそこに力を入れていくと。
武瑠:どこそこのクラブ行ったら楽しいとか、あそこのショッピングモールは楽しいとか、そういう信用があるもの、ブランド力があるもの。それをアーティストのワールドとしても持つことが最優先だと思っているので。「こいつの世界観は楽しい」って思ってもらうこと。
--ちなみにこの浮気者としての活動は今後も続いていくの?
武瑠:はい。浮気相手がいれば。
--めちゃくちゃ格好良いセリフですね。
武瑠:(笑)。ただ、バンドじゃない方がよくて。ラッパーとかは絶対やりたいし、アイドルグループから一人だけ借りてきて意味わかんないことを歌わせるとか、分かりやすくSuGじゃできないことをやってみたい。あ、シシド・カフカとか面白いかも! あと、加藤ミリヤとは絶対いつかコラボしてもらいたいです。PV観てて、絶対に感覚が似てると思ってるので。
--また、12月29日には、あの国立代々木競技場第二体育館にてSuGの完全復活ワンマンライブが開催されます。どんな一日にしたい?
武瑠:ワンマンって感じてることをそのまま出すという意味では、いつも同じ。だから「久しぶりに中間テストあるな」みたいな感じです。ただ、今回は1年分のテストになるんで、この1年間をどう生きてきたか、その答えというか、それが試される場だと思うんで。
--「これだけ期間あったのに全然勉強できてないぞ」とも言われかねない。
武瑠:そうそう。そういう意味では怖いし、楽しみだし、いろんな気持ちが混ざってますね。ただ「やっとできる!」みたいな、単純なものではない。生きている意味が、この1年間にちゃんとあったのか。1年前の自分よりレベルアップしていないと意味がないので。
--では、最後に。ここからまた武瑠及びSuGの革命劇が始まる、そう思ってていいですか?
武瑠:もちろん。どうなるか楽しみだし、真価が問われると思うんですけど、めっちゃ格好良いこと、たくさん思い付いてるんで。前の自分たちを否定する訳じゃないけど、今考えているものの方が良いなって素直に思えるから。
Music Video
リリース情報
I 狂 U
- 2013/11/20 RELEASE
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