Special
大塚愛 『Re:NAME』インタビュー
今も「辞めよう」と「やろう」が交互にやってくる―――
なぜ彼女は音楽へ戻ることができたのか?
待望の新作『Re:NAME』リリースに至るまでの
大塚 愛の3年間、初公開。
「なんで愛ちゃんが財布のことまで気にしてるの?」って
--約3年ぶりにニューシングルを制作/リリースすることが決定したとき、どんなことを考えましたか?
大塚 愛:「早くない?」って(笑)。
--いやいや、3年ぶりですよ?
大塚 愛:「来年でいいんじゃないですか?」って言ったんですけど、スタッフから「いやー、今年にしようよ」ってゴリ押しされ、めでたくリリースする運びとなりました。「10/9にリリースするから」と言われても、最後まで「来年でいいんじゃない?」とは言い続けていたんですけど。
--ということは、4年ぶりになる可能性もあったと。
大塚 愛:そうですね(笑)。
--スタッフの頑張りに感謝します。また、この3年で音楽シーンも大きく変わりましたが、大塚さんにはどんな風に映ってました?
大塚 愛:テレビ番組に出るアーティストさんも毎回同じな感じがしてて、今はこういう音楽番組作りで、こういう音楽を作っているアーティストさんの時代なのかなと。前に比べたらとても真面目だなっていう印象。
--えーっと、それはディスと捉えて大丈夫ですか?
大塚 愛:ハハハハハ! 歌詞もすごく良いことを言ってるし、教科書に載せたいような歌が多くて、それはきっと良いことだし、そういうのが面白くない……って思っている私はなんて汚れているんだろうと(笑)。
--また、この3年の間には、巨大なアイドルムーヴメントが起きて、同じCDを何枚も買うことがあたりまえになり、チャートの上位をアイドルが埋め尽くすようになりました。
大塚 愛:厳しい時代だなとは、もちろん思っていて。私に子供が出来る前からだんだん市場が変わりだしていて、にっちもさっちもいかんなと。「いつ着地するんだろう?」とは思ってましたね。で、私が表に出ていない間に着地しておいてほしいと思ったんですけど、全然着地してなくて(笑)! その中で気付いたのは、アーティスト自身にプロデュース能力がないと厳しい。もしくはプロデュースしてもらうアイドル。そのどっちかになっていってしまうのかなって。私もそれでスタジオ作りを計画したりして。
--アイドル自体にはどんな印象を持たれていますか?
大塚 愛:誤解を招く発言がいっぱい出そうなんですけど(笑)、アイドルっていう言葉が昔と比べてすごく安くというか、身近になったなって。昔はアイドルってみんなのスター。誰もが認める可愛さがあって、歌も上手くて、手が届かないマドンナみたいな人がアイドルになっていたはずが、今は誰でも手が届く範疇にいる女の子がアイドルになってて、それは価値観の変化なんだろうなって。でも私はその価値観の移行はまだできていないので、今のアイドルの価値がちょっと分かんないんですよね(笑)。
--そんなアイドル全盛のシーンで、大塚 愛名義の作品が発表されます。これって「ヒカリ」のファンクラブ限定配信リリースや、Rabbitのアルバムリリースといったものとは意味合いが変わりますよね。100%大塚 愛として、いわゆるファン以外にも楽曲を届ける訳ですから。
大塚 愛:そういうことを考えて作っていたのは、2010年度までですね。そこを考えて創るのがしんどくなったんです。どこの層に合わせたら……って突き詰めていくと、結局は世間の人が聴きたい歌ってみんなバラバラだし、どこかひとつ狙ってもそこにしか受け入れられないし、そういうことを考えるのがだんだん負担になってきて、「あー、ちょっともう休みたいな」みたいな。で、深呼吸の時間を長くもらったことで、自分っていうものを貫いたとして「いや、世間の人はそれを求めてないよ」ってなったらソレはソレじゃない?と思えるようになった。
--その結果を受け止めるだけだと。
大塚 愛:昔は「これはビジネスなんだから。自分の好きなものだけをやりたかったら趣味でやればいいじゃない」みたいなことも考えていて。ただ、私が作家だったらまた違うかもしれないけど、自分を商品として出していくのに“誰かに向けて”っていう……そもそも“誰か”って誰だよ?とも思うし、だったら自分を貫いて、それでダメだったらダメでよくない?って。
--大塚さんはデビュー前に、デビュー後の当面のシナリオを考えて、それをある時期まで決行してきた訳ですけど、今回は事前にシナリオを用意するような作業もしなかった?
大塚 愛:そうですね。出来た楽曲をどんどん貯めて、その中から「今回はこれじゃない?」みたいな感じ。
--ちなみに横浜赤レンガパーク【大塚 愛【LOVE IS BORN】~7th Anniversary 2010~】まで……言うならば、独身時代の大塚 愛が音楽シーンでやりたかったことって何だったんでしょう?
大塚 愛:私の中では5thアルバム『LOVE LETTER』 と、それ以降で変わってるんですけど、5thアルバムまでは若いからこそ生きる楽曲から出していっていたんですよね。トゲのあるものから先に出して、だんだん丸くなっていく。刺激を先に出してみんなに振り向いてもらって、どんどん深いところを見せていくというのが、5thアルバムまでにやらなきゃいけない課題だった。映画『スターウォーズ』シリーズで言うところのエピソード1とか、2とかがその時期。で、今は現代に戻ってきた感じ。
--でもここからのエピソードにシナリオはないんですよね? やっていきたいことはあるんですか?
大塚 愛:一応あるんですけど、結構難しいところを歩こうとしているので、上手くいくとも限らないし。あと、ここ数年で市場もだいぶ変わったので、そこを見ながら動かないと、いろんな兼ね合いが……。
--『LOVE LETTER』までのストーリーに比べて、ここからは臨機応変さが必要になってくる?
大塚 愛:昔は「こういう面白いことがしたい」って言ったら、いろんなやりくりで「じゃあ、やってみる?」ってなったんですよ。でも今は市場の影響で、何をやるにも「それは予算的に大丈夫か?」っていう話になるので、そういう面での難しさがある。ちゃんと結果を出さないと、例えば「じゃあ、次の作品ではストリングスは呼べませんよ」ってなってくるから、そこを呼べるようにするにはどうやってプロモーションして、1枚でも多く売るのか、とか。そういうことを昔よりも考えなければいけなくなってきている。
--大塚さん自身も考えてる?
大塚 愛:うん。いつも「愛ちゃん、そこ考える必要なくない?」ってアーティストさんには言われるんですけど。「それはスタッフが考えることであって、なんで愛ちゃんが財布のことまで気にしてるの?」って(笑)。でもそこは私だけじゃなくて、多くのアーティストの方が頭を悩ませているところではあるんじゃないかなと思うんですけど。
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リリース情報
Re:NAME
- 2013/10/09 RELEASE
- 初回限定盤[AVCD-48769(CD+DVD)]
- 定価:¥1,890(tax in.)
- ≪試聴可能≫
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関連リンク
Interviewer:平賀哲雄
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