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南佳孝 デビュー40周年記念スペシャルインタビュー
70年代からジャズやラテンなどの要素も独自に消化した日本のAOR~アーバン・ポップの先駆といえる名曲を数多く残し、今年でデビュー40周年を迎えた南佳孝。ブラジル録音による最新作『スケッチブック』では、現地の実力派ピアノ・トリオをバックに起用し、ボサノバや洋楽の名曲カバーから自身の代表曲のセルフ・リメイクやオリジナル曲まで。心地良くもより深い南流のジャジー・ボッサを聴かせている。9月19日にビルボードライブ大阪、9月22日にビルボードライブ東京での公演を控える彼に話を聞いた。
自分の中でもやっておいた方が良いのかなって。
??デビュー40周年おめでとうございます。今回ビルボードライブで記念公演を開催しようと思った経緯をお聞かせ下さい。
南佳孝:ありがとうございます。ずっとマイペースでやってきましたが、これまで10年、20年、30年のアニバーサリーもやらなかったんですよ。そういうのあんまり好きじゃないというのもあって。それが40周年となって、自分の中でもやっておいた方が良いのかなって。今回ビルボードライブでの記念公演はそんな感じですね。
??新作『スケッチブック』をリリースされましたが、作品は40周年を意識したものですか?
南佳孝:40周年は気にしてないですね。たまたまです。縁あってブラジルでのレコーディングができることになりブラジル音楽の師匠、吉田和雄さんと録ってきました。ボサノバのエキスも吸っておきたいというのがあって、ブラジルはもう6回くらい行ってるんですけど、レコーディングするのは3回目ですね。ブラジルは行けるなら何回でも行きたいですね。
??ブラジルでのレコーディングはいかがでしたか?
南佳孝:今回はフェルナンド・メルリーノのトリオピアノと録音したんですが、歌ってても気持ちが良かったし、凄く楽しめて出来ました。オリジナルの新曲2曲と、カバー曲を収録しましたが、イメージはデッサンというか鉛筆で書いたような感じです。それで『スケッチブック』というタイトルにしたんです。
??「スローなブギにしてくれ」「モンローウォーク」含めこれまでの披露されてきたアレンジとは異なり、かなりジャズなアレンジになってますね。アレンジはフェルナンドに任せたんですか?
南佳孝:そうなんですよ。フェルナンデスが全部やってくれました。僕も最初は戸惑ったんですけど、ミックスダウンをやって詰めていく中でなどで何回か聴くと「凄いな」と。じわじわじわじわと本当に凄いトリオだと感じましたね。
昔から好きで一度やってみたかった
??収録曲はどのような方法で選曲していったんでしょうか?
南佳孝:いろいろ悩んだんですけど、オリジナルもありながら、ここ何年かカバーをずっとやっている中で、プロデューサーの吉田さんから「この曲どう?やってみたら?」と提案されるんですが、自分でやって自分で聴かないと、うまく歌えてなかったりとか、もうひとつ咀嚼がうまくいってなくて、こなれてないというのもあって。なので2人で演奏する曲については随分キャッチボールしましたね。
??「アイム・ノット・イン・ラヴ」や「スプーキー」といったカバー曲はいかがでしたか?
南佳孝:「スプーキー」はダスティ・スプリングフィールドがカバーしていたのが良くて。10ccの「アイム・ノット・イン・ラヴ」も昔から好きで一度やってみたかったからチャレンジしてみようという感じですね。
??本作でも収録されているご自身のスタンダードナンバー「スローなブギにしてくれ」「モンローウォーク」をはじめ、メロディーメイカーとしても、歌い手としても評価が高いですが、ご自身では南佳孝をどんな音楽家であると感じていますか?
南佳孝:音楽好きでこの業界に入って40年ですけど、まぁ、甘いですね。音楽的にもまだまだ知らないことも多いですし。今朝もピアノ弾いてて一瞬、「あぁ、山はまだまだ高い」と思ってました。まだまだ山は高いと思いました。制作する時も、もっと良くなるとポリッシュアップして隅々まで磨いて。そういうのって不思議ですよね。サビなんかももう一個作ろうとかしますからね。結局メロディーラインもそうですけど、ここで良いやと思ったらそこで終わっちゃうんですよ。
良いメンバーに恵まれてます。
??なるほど。普段作曲される際はどの楽器で制作されますか?「スローなブギにしてくれ」、「モンローウォーク」などは?
南佳孝:曲によりけりなので、ピアノもギターもどちらもですね。「スローなブギにしてくれ」はピアノで、「モンローウォーク」はギターで作りました。やっぱりノリの良い曲はギターで出来ることの方が多いです。
??音楽を続ける理由ってどんなところにあったりしますか?
南佳孝:やっぱり音楽が好きなんですね。好きじゃなきゃできないと思います。歌い始めて喉の調子が悪くても、別の日にいい感じで出てると嬉しくなる。盛り上がって心地よいグルーヴがでると「やっぱりやっててよかった」という感じで。そんな時はミュージシャン冥利につきますね。今日もビルボードライブ公演のリハーサルやっていたんですが、伊東たけしも、鈴木茂も「いいね!」と思いましたし。良いメンバーに恵まれてます。
鈴木と細野だよね。ピリピリしてるのは。
??では今回共演される鈴木茂さん、石川セリさん、伊東たけしさん達についてお聞かせ下さい。
南佳孝:デビューのきっかけになった松本隆と会ってから、自分のオリジナルのデモテープから10曲くらいをやる予定だったんですけど「新しいのを作ろう!」ということになり、その日に松本の家行って『摩天楼のヒロイン』を作ったんですよ。それで、レコーディングに鈴木茂が来たのが最初でしたね。彼は僕より2つくらい下なんですけど「わ、めちゃくちゃギター巧いな」という印象です。天性の才能で当時から天才的なギターとか言われてましたね。そのときは細野(晴臣)も“ホシイモ小僧”だとか言ってたしね(笑)。やっぱりギターソロひとつとっても、レコーディングでのカッティングにしても「凄いな」と思いますね。今日も良いフレーズ出してました。
??以前のインタビューで「凄い怖い顔してた」と仰ってましたが?
南佳孝:はっぴいえんどは基本的にみんなピリピリしてたっていうか。なんだっけ多羅尾伴内は…NIAGARA TRIANGLEの…大滝詠一だ!彼と松本隆はそうでもなくて、鈴木と細野だよね。ピリピリしてるのは。若い時はつまんないことで笑わないというかね。でも松本隆も目つき凄かったしね。そんな雰囲気の中、右も左も分からない僕はデビューしたという感じでした(笑)
??石川セリさんと初めてお会いした時はいかがでしたか?以前のライブで「陽水の嫁さんになっちまったけど、可愛かったんだよな。」とMCで話していた記憶があります。
南佳孝:可愛かったですよ。初めて会ったときはもちろん2人とも20代でしたね。曲を書いてほしいと依頼を受けて、どこかのちっちゃな事務所で「どんな感じ?」なんてと話して「midnight love call」書いた記憶があります。
??伊東たけしさんとは親交が深いようですね。
南佳孝:たけちゃん(伊東たけし)は同じ事務所だったんですよ。事務所行くと安藤君(安藤正容)とかもいたりして。そこで、初めて会ったのはTHE SQUAREがT-SQUAREになった時にくらいかな?そう言えば、40歳くらいの頃にテレビ番組でトルコやイスタンブールを訪れていたんですけど、それからレコーディングの続きで休みもあったので、ニューヨークのたけちゃんのトコに寄ったんですよ。その頃、3ヶ月くらい羊の肉とかばかり食ってたから、ご飯とみそ汁と作ってもらったのは美味しかったなーって。なんて話をさっきもしてました。彼とはいろんなところで会ったりするんですよ、内輪のテニス大会とか。ナイスガイだよ。たけしが一番仲良いかな。
今後はアニバーサリーなことはしませんので、一回ぽっきりですね(笑)
??貴重なお話ありがとうございます。そのビルボードライブ公演はどのような内容になりますか?
南佳孝:『スケッチブック』からの新しい曲もやりますけど、やっぱり40周年なんで、あれ聴きたい、これ聴きたいというストライクな曲を。統計とったわけじゃないですけど、人気のある曲をやります。ゲストを入れる東京の場合は賑々しく良い感じで「ああ40年ね。」とみんなに祝ってもらえれば良いですね。今後はアニバーサリーなことはしませんので、一回ぽっきりですね(笑)。エポックメイキングなライブにしようと思っています。
??ビルボードライブで他のアーティストの公演にいらっしゃたことはありますか?
南佳孝:ビルボードライブには何回か観に行っていてますよ。マイケルフランクスとか。アルゼンチンの女の子とかなんだったかな?あの子はすごく良かったね。セリも観に行ったし。東京での公演は初めてですが、あの箱で演奏できるのは楽しみにしてます。
??お酒と音楽・食事と音楽を楽しむ空間ですが、ご自身の音楽にはどのような食事やお酒を選びたいですか?やはりお好きなジンソニックでしょうか?
南佳孝:ジンソニックは昔から好きですね。あと、ギネスにシャンパン入れるブラックベルベットも好きですね。これにキャビアでしょう。昨日も本読んでたらキャビアを食べると。半熟の卵の上に思いっきり乗せて食べるとか。合うんじゃないでしょうか?
【プロフィール】
73年に松本隆のプロデュースによるアルバム『摩天楼のヒロイン』でデビュー。80年には翌年に郷ひろみがカバーした「モンロー・ウォーク」、82年には同名映画の主題歌「スローなブギにしてくれ」を大ヒットさせた。その後もコンスタントにアルバムを発表しながら自身の音楽性を深化させ、04年に佐川急便のCMに起用された「遥かなディスタンス」も世代を超えて話題を集めた。
公演情報
南佳孝
40th Anniversary Live
日時:2013年9月19日(木)
会場:ビルボードライブ大阪
日時:2013年9月22日(日)
会場:ビルボードライブ東京
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