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蟲ふるう夜に×松隈ケンタ×プー・ルイ(BiS)インタビュー

蟲ふるう夜に 『蟲の声』 インタビュー

 中川翔子、柴咲コウなどの楽曲を手掛け、センセーションな話題を次々と振りまくアイドルグループ BiSのサウンドプロデューサーでもある松隈ケンタ。彼が初めてバンドのアルバムをフルプロデュースすることになった。蟲ふるう夜に(むしふるうよるに)なるバンドのアルバム『蟲の声』。

 Billboard JAPAN.comでは、今作の配信&レンタルリリース(敢えてCDリリースなし)を記念し、蟲ふるう夜にのフロントマンとコンポーザー、松隈ケンタ、そして彼の楽曲をデビュー時から歌い続け、オリコン6位を獲得するに至ったBiSのプー・ルイを招集することにした。目的は、時代へ中指立てながらセンセーションな作品やアクションを畳み掛け、革命を起こし得る存在たちの認知。その異端児たちの“声”を腐りきった音楽シーンにお届けすること。

 「CDが売れない」「音楽業界の崩壊」といったネガティブワードを目にするようになって久しいが、「だからどうした?」と自由に表現する彼ら(彼女ら)のソレは、熱くてバカバカしくて切実で苛烈で愛おしい。

全員人見知りの対談スタート「今日も縄ですから。服の下は」

蟲ふるう夜に「犬」
▲蟲ふるう夜に「犬」

--自殺したご主人様を犬目線で描いたりしているバンド(蟲ふるう夜に)と、樹海を全裸で走ってみたりするアイドル(BiS)。松隈ケンタがサウンドプロデュースする人っておかしい人ばっかりですけど。

一同:(笑)

松隈ケンタ:なんか多いですよね。他にも未来人っぽい奴らとか、紙袋かぶってる奴らとか、血だらけのシンガーソングライターとか。変な奴ばっかりですね。

--なんで?

松隈ケンタ:何なんでしょうね!? 俺はわりと普通なつもりなんですけど(笑)。

--変人しかプロデュースしないんだと思われますよ、そろそろ。

松隈ケンタ:本当ッスよね。全く意図的じゃないんですけど! でもそういう人たちが好きなんでしょうね。普通じゃない、他とはちょっと違うことをやろうとする奴が好きなのは確かなので。

BiS「My Ixxx」
▲BiS「My Ixxx」

--プー・ルイと蟲ふるう夜には、これが初対面?

蟻(蟲ふるう夜に/vo):初です。会う前の印象ですか? 縄跳びを水着代わりにしている写真。『プレイボーイ』のグラビアを観て「可愛いな」とは思っていたんですけど。……だから最初のイメージは縄。

プー・ルイ(BiS/リーダー):今日も縄ですから。服の下は。

:縄アイドルなんですね。

--縄アイドルという形で頑張ってるんだよね?

プー・ルイ:はい!

:アハハ!

蟲ふるう夜に 『蟲の声』インタビュー
▲蟲ふるう夜に×松隈ケンタ×プー・ルイ(BiS)

--慎之介さんは、どんなイメージを持たれていましたか?

慎之介(蟲ふるう夜に/g):正直に言うと、バカっぽいなって。

:彼、ドSなんです。「すげぇイジメたい」って言ってましたよ(笑)。

--プー・ルイさんは、蟲ふるう夜ににどんなイメージを?

プー・ルイ:出逢うことのない人種だなって思ってました。頂いた資料を見た限りでは「V系なのかな?」って。でも会ったらそんなことなくて……すみません、今、人見知り発動してます。

:ウチらもかなり。

松隈ケンタ:俺も人見知りしちゃう。

--全員人見知りの対談(笑)。

:でもこうやって(プー・ルイに)会ってみると、印象変わりますね。雑誌とかメディアで見ると、ちょっと威圧感があるんですけど、実際に会うと透明感があったりして。三ツ矢サイダーのCMにでも出られそうな爽やかさがあって、ビックリしてます。

--松隈さんは、中川翔子さんや柴咲コウさん等、ちゃんとした方々の曲も手掛けられて……って言うと、この2組に失礼ですけど。

柴咲コウ「ラバソー ~lover soul~」
▲柴咲コウ「ラバソー ~lover soul~」

一同:(笑)

--そもそもサウンドプロデュース的な仕事って昔からやりたかったことだったんですか?

松隈ケンタ:そうッスね。こういう仕事をする前から自分のバンド(Buzz72+(バズセブンツー))で統括的にサウンドプロデュースはやってましたし。あと、そのバンドはCHOKKAKU(ちょっかく)っていうジャニーズのアレンジをいっぱいやってる大御所の人にデビューさせてもらったんですけど、そこでCHOKKAKUさんの仕事をずっと見ていて「面白いな」とは思っていたんですよ。

--ある意味、CHOKKAKUさんが松隈さんの師匠筋になる訳ですね。

松隈ケンタ:そこでいろんなことが勉強になって。CHOKKAKUさんはファンクやブラスアレンジを得意とする人だったんですけど、俺たちみたいな泥臭いロックバンドを拾ったっていう。だからジャンルのちょっと違う人と仕事する面白さみたいなものは、バンド時代から感じていて、自分が逆にプロデュースする立場になったときも、もちろんロックバンドもやりたいけど、アイドルだったり、自分とは違う畑の人と一緒にやったりしていて。

蟲ふるう夜に 『蟲の声』インタビュー
▲松隈ケンタ

--ただ、バンド時代はバンドで行こうと思っていた訳ですよね?

松隈ケンタ:もちろんそうですね。でも売れなかったの(笑)。

--Buzz72+ってなんで解散しちゃったんですか? avexからメジャーデビューまでした訳ですけど。

松隈ケンタ:まぁよくある、人間性の不一致。

プー・ルイ:よくある!

--君が言うと生々しいから。(※BiSはメンバーがよく脱退する)

松隈ケンタ:(笑)。まぁウチはボーカルが辞める形になっちゃったんで。ただ、ドラムとベースはBiSの後ろで弾いたりとか、レコーディングもBiSの初期からほとんどの曲に参加してもらっているんです。

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牛丼作りと曲作り→出逢ってすぐプー・ルイを家のベッドへ

蟲ふるう夜に 『蟲の声』インタビュー
▲プー・ルイ(BiS)、松隈ケンタ(左から)

--バンド解散からすぐサウンドプロデューサーの道へ?

松隈ケンタ:解散直後は、レコード会社も事務所もバンドも無くなっちゃったんで、まず牛丼屋にバイトへ行ったんです。「あれ、給料無くなったぞ」みたいな! 地元の九州からは「チェッカーズになってこい」って言われて出てきたから、絶対にバンドで売れるつもりだったんですよ。で、2年ぐらいはメジャーで活動してたから、バイトもしたことなかったけど、とりあえず働かなきゃと思って牛丼作って。その側らで曲作り。最初は作曲家としてまず実績を積まないとっていうところで、2,3年かなぁ。ずっといろんな人に曲を提出しては落とされ、落とされ。で、あるとき、柴咲コウさんとか中川翔子ちゃんに起用され出して。そうやって決まり出すと、各所でちゃんと聴いてもらえるようになり、その流れでプー・ルイと出逢ったんです。

--出逢った当初の印象は?

蟲ふるう夜に 『蟲の声』インタビュー
▲プー・ルイ(BiS)

松隈ケンタ:透明感のある……(笑)

プー・ルイ:いや、透明感あったんですよ! 当時は。何も喋らないし……たしかカフェで会いましたよね?

松隈ケンタ:ファーストキッチンだよ。俺はどうやった?

プー・ルイ:その頃、大人がみんな怖く見えたので。

松隈ケンタ:でもすぐ俺ん家に来たろ?

プー・ルイ:そうです、そうです。ベッドで……

--出逢ってすぐプロデューサーの家のベッドって、ワードだけ見たら本当に怖いです(笑)。

プー・ルイ「限られた時間の中で☆」
▲プー・ルイ「限られた時間の中で☆」

松隈ケンタ:いや、二段ベッドでレコーディングしてたんですよ。一階が作業机になってて。当時は小さいワンルームですから。いかにも売れないバンドマンが住んでいそうな生活感のある汚いところでね、本当にブースも何にもなくて、そのベッドで「歌うぞ」って。プー・ルイのソロ時代初期はそこで録ってましたね。でもそれが初めて“サウンドプロデューサー”という位置につけてもらった仕事。(※プー・ルイはBiS結成前、2009年秋~2010年冬までソロアーティストとして活動していた)

--初めて出逢ったときは、この娘がアイドルになったり、裸になったりすると思ってました?

松隈ケンタ:思ってない(笑)!! ソロ時代、ウサ耳を付けた動画で驚いていたぐらいだから。「これ、絶対、売れんわ!」って。

プー・ルイ:あれは渡辺さん(マネージャー)が「アイコンになるものを身に付けよう」って。

蟲ふるう夜に 『蟲の声』インタビュー
▲蟲ふるう夜に×松隈ケンタ×プー・ルイ(BiS)

--じゃあ、上手く当たれば、ウサ耳キャラでやっていこうと?

プー・ルイ:はい。恥ずかしい……。

--ボーカリストとしてはどんな評価だったんでしょう?

プー・ルイ:蚊の鳴くような声って言われてました。

松隈ケンタ:ぶっちゃけイマイチでした(笑)、今から考えるとね。だから最初の頃はレコーディングも結構時間がかかって。そっから修正したり、エディットに膨大な時間をかけてましたね。でも最初のソロアルバム『みんなのプー・ルイ』を完成させるまでにだいぶ成長したんですよ。成長が早い娘でした。今や……まぁあんまり褒めたくないんですけど、プロデュースの仕事をしていく中でいろんな歌い手さんを録ってて思うのは、プー・ルイは上手い方。

:リーダーっぽい歌声ですよね。真ん中に居てほしい声。

慎之介:俺もそう思う。見た目もそうだし、真ん中。

蟲ふるう夜に 『蟲の声』インタビュー
▲慎之介、蟻
(左から/蟲ふるう夜に)

--プー・ルイ的には、松隈さんってどんな存在なの?

プー・ルイ:最初から居るから、なんて言うんですかね~……近所のお兄ちゃん。

:ウチらもそう言ってる(笑)。夏休みに会えるお兄ちゃん。

松隈ケンタ:(恰好が)夏休みっぽいもんね。業界っぽさを出したくないんですよ。

--プー・ルイさんはソロ時代、松隈ケンタプロデュースでデビューして、曲が良くても売れないことが悔しかった。でもその悔しさがBiSで活動していく上での原動力になってると、以前言ってましたよね。

プー・ルイ:はい。

--そういう意味でも、プー・ルイは「松隈ケンタの手掛ける曲は素晴らしい」と、絶対的に信頼している?

BiS「BiSimulation」
▲BiS「BiSimulation」

プー・ルイ:素晴らしいです。売れてくると、大人がいろんな有名人を連れてくるじゃないですか。その方たちに曲を書いてもらうことでBiSが広まるのは嬉しいし、その曲自体もすごく好きなんですけど、私はずっと松隈さんと一緒にやってきたので、松隈さんの曲を歌っていきたい気持ちは常にあります。

松隈ケンタ:嬉しいこと言うね~。自分もやっぱりそういう気持ちでサウンドプロデュースしてきたから。まぁでもいろんな思惑もあるし、逆に「いろんなクリエーターと会わせたらいいんじゃないか?」って思っている人も結構いると思うんですよ。そういう声はあって当然だし。ただ、例えば、ヒダカトオル(THE STARBEMS/ex.BEAT CRUSADERS)さんとか、津田紀昭(KEMURI)さんがBiSの為に作った曲も、最終的には僕がここのスタジオ(PINBALL.LAB)で歌を録音して、アレンジしたり、仕上げたりもするんです。だから誰が作曲したものであっても、思い入れとしてはあんまり変わらない。

BiS「MURA-MURA」
▲BiS「MURA-MURA」

--ただ、そうして様々なクリエーターとBiS作品を創っている中で、悔しくて物を3個ぐらい壊したという逸話も。

松隈ケンタ:そりゃ悔しいもんは悔しいですよね~!

一同:(笑)

--何を壊したんですか?

松隈ケンタ:何だっけなぁ? もう憶えてないですね。呑んじゃった!

--(笑)。BiSと松隈さんの関係性は分かり易いんですけど、蟲ふるう夜にの場合は、新作『蟲の声』以前は自分たちで全て完結させていた訳じゃないですか。そこに見ず知らずのサウンドプロデューサーを入れるとなれば、戸惑いもあったと思うんですが。

蟲ふるう夜に 『蟲の声』インタビュー
▲慎之介(蟲ふるう夜に)

:実はかなり戸惑ってました。

慎之介:自分たちの曲をアレンジされることなんて今までなかったから、最初はキレそうでしたもん。

:キレてましたよ(笑)。

慎之介:でもやってみたい気持ちはあったんですよ。

:あったけど……なんか娘が彼氏連れてきた、みたいな。

慎之介:そういう感じ。俺が作った曲を松隈さんにアレンジしてもらうじゃないですか。で、戻ってきたものをみんなで聴くと、みんながそれを「良い!」って言うんですよ。俺はそれがすごく悔しくて。でもだんだんやり取りしていくうちに「いや、これはすげぇ」って思い始めて(笑)、そこから変わりましたね。考え方も。

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蟲ふるう夜にの葛藤、松隈ケンタの男気、プー・ルイの芸術

蟲ふるう夜に 『蟲の声』インタビュー
▲慎之介、蟻(左から/蟲ふるう夜に)

--松隈さんと作った方が面白いものになると。

慎之介:うん。だからこの先、居なくなられると不安でしょうがなくなると思う。

プー・ルイ:全然ドSじゃない!

--もう好きになってしまった訳ですからね。

プー・ルイ:乙女っ!

慎之介:ちょっと……そう、乙女っすね(苦笑)。

--いろんな面持ってますね(笑)。蟻さんはどう?

:私は、松隈さんから戻ってきたものが凄く格好良かったから、スって受け入れられたんですけど、受け入れられない慎之介を間近で見ていたから、切なさが伝わってきてね。「今まで俺らだけで作ってきたじゃん!」みたいな。

蟲ふるう夜に 『蟲の声』インタビュー
▲プー・ルイ(BiS)、松隈ケンタ(左から)

--松隈さんもバンドやってたから「多分、本人たちは嫌がるよなぁ」みたいなことって思う訳ですよね?

松隈ケンタ:思ってましたよ。俺、逆だったら絶対キレるもん。訳わかんないアイドルのサウンドプロデュースとかやってる奴に麦わら帽子かぶって来られたら、そりゃあ「ふざけんな!」とは思うよね(笑)。

:でも音で伝わってましたから。BiSがいろんな奇抜なチャレンジをしてて、その中でもファンがガァ~ってついてきてるのって、やっぱり音の格好良さとBiSメンバーの可愛さがガチって合ってるからだと思うので。それを実際にライブで観て感じて、音の面で松隈さんにお願いしたいっていう気持ちは固まっていた。だから切ない気持ちになりつつも、この形を取らせて頂いたんです。

松隈ケンタ:クリエーター的に悔しかったんだと思うんだけど、それって俺が悔しくて物壊した話と同じだなって思った。

蟲ふるう夜に 『蟲の声』インタビュー
▲慎之介、蟻(左から/蟲ふるう夜に)

慎之介:松隈さんがアレンジしている作業を見せてくれたじゃないですか。あれがすごく良かったですね。超勉強になって。

松隈ケンタ:レコーディングがない日にひとりでスタジオへ来てもらって。で、アレンジ作業を見せつつ「こうやってやってるんだよ」みたいな。「俺の商売の裏側だから、他人には見せたくない」って言いながら(笑)。まぁそれは事務所の社長さん(※総合プロデュースを手がける蟲Pこと津倉悠槙)から「いろいろ思うところがあるみたいなんですけど」と、相談を受けてて。それで一回話してみようと。同じギタリスト同士だし……まぁギタリスト同士って絶対仲良くならないんですけど(笑)。ギタリストの友達、いないでしょ?

慎之介:ギタリストの友達っていうか、友達がいないですよ! メンバーだけっすね。

松隈ケンタ:のぞしゃんみたい(笑)。(※のぞしゃん……BiSメンバー/マイペース担当)

:BiSのメンバー同士は友達なんですか? のぞしゃんとか。

プー・ルイ:ビジネスパートナーです。

--あくまで友達ではない(笑)。

蟲ふるう夜に 『蟲の声』インタビュー
▲プー・ルイ(BiS)

プー・ルイ:バンドって友達同士で組むことが多いじゃないですか。だから最初から絆があるんですけど、アイドルって仕事する為に集められてるから友達にはなりにくいんですよね。損得考えたりとか。あと、みんなボーカルなんで取り合いになるし、チェキ会とか個別で列の長さが違ってくるので嫌な気持ちにもなる。

松隈ケンタ:それで、BiSメンバーみんなで飲もうって言ったら、のぞしゃんは「家の掃除がある」って。

一同:(笑)

--メンバーより“家の掃除”の方が上にあるっていう。蟲ふるう夜には仲良いんですか?

:ウチらは本当に仲良いですね。スタジオ終わったら代々木公園でフリスビーするぐらい(笑)。一緒に住んだこともありますよ。

慎之介:6畳に5人で住んでました。

プー・ルイ:男女で過ちは起きないんですか?

:「本当に女として見れない」って言われる。

蟲ふるう夜に 『蟲の声』インタビュー
▲蟻(蟲ふるう夜に)

--6畳に5人って身動き取れないですよね。

プー・ルイ:筒抜け、筒抜け。

--筒抜けだし……そういう話じゃなくて(笑)! まぁでも共同生活していたぐらい仲良くて、それ故に外部から大人が介入してくることに抵抗もあったんでしょうね。

:そうでしょうね。そういうことだったのか。まぁでもアレンジャーを探していたのは私たちの方だったので。前回のアルバム『蟲の音』は私たちの中で「最高の物が出来た」って思えたんですけど、日が経つにつれてやり切れない感が出てきたというか、周りからしたら最高ではないって気付いて、アレンジャーっていう存在を求め始めたんですよね。自分たちにないものを入れてくれる人を。そしたらプロデューサー(蟲P)から「BiSっていう、今のロックバンドよりロックやってるアイドルがいる」っていう話を聞いて。「なんぼのもんじゃい!」って気持ちでライブを観に行ったら、音がまず格好良かったんですよね。

--松隈さん的にもバンドのアルバムをフルプロデュースするのって初めてだったと思うんですけど、どんな意識で『蟲の声』の制作には臨んだんですか?

松隈ケンタ:BiSはゼロから始めてるから自由度はあるじゃないですか。蟲ふるう夜には歴史があるから、それまでの世界観も大事にしなきゃいけない。ただ、俺らしさを入れないと、俺が入る意味はないと思ったんですけど、今回はそれも一回すべてぶっ壊した状態から組み上げていく意識で取り掛かりましたね。その中で一番良いものを掻い摘んで組み立てる、みたいな。

--そうして出来上がった『蟲の声』にはどんな印象を?

蟲ふるう夜に「一緒に逃げよう」
▲蟲ふるう夜に「一緒に逃げよう」

松隈ケンタ:俺っぽくなっちゃったな(笑)。

慎之介:でも俺は超好きっス。前作がもう聴けないぐらいの達成感はある。

:自分の中で「最高だ」と思って出した前作があって、でも「何か足りない」と思っていた部分が今作で「あ、埋まったな」って感じました。求めてる人が現れてくれて、その隙間を埋めてくれた。

--ちなみにBiSと何かするとしたら、どんなことをしてみたい?

:お絵かき大会。

--なんで(笑)?

:ツイッターのアイコンを「プーちゃんが書いてくれた」みたいな人がいて、その絵を見て「画伯だなぁ」って思って。私も絵が好きなので、どんな絵でも書くんですけど。

プー・ルイ:私はアートな絵を書くんです。アートタイプ。

--アートタイプって発言がすでにアートじゃない。プー・ルイさんは何したいですか?

プー・ルイ:お喋りで戦いたいです。ロック対決。どっちがギリギリを攻められるか、みたいな。「もうやめてください」って言った方が負け。

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異端児たちの未来~腐りきった音楽シーンへメッセージ

蟲ふるう夜に 『蟲の声』インタビュー
▲慎之介、蟻(左から/蟲ふるう夜に)

--じゃあ、2.5Dで開催しているレギュラーイベント【もしもしシブヤZ!】で実現すればいいじゃないですか?

プー・ルイ:ぜひぜひ! あと、友達になりたい。友達いないんです。

:いや、ウチの方が……

慎之介:全然いない!

松隈ケンタ:友達いない奴ばっかりやね~(笑)。

--この対談の後日、どこかで会っても会釈で終わっちゃう人たち。

慎之介:おつかれさまです。

プー・ルイ:あ、この間はどうも。

--以上。

プー・ルイ:友達ってどうやって作るんだろう?

蟲ふるう夜に 『蟲の声』インタビュー
▲蟻(蟲ふるう夜に)

--そんな一般社会では生きづらい蟲ふるう夜にとBiSなんですが、この2組、個人的には「CDが売れない」時代が生んだ異端児だと思っていて。正攻法だけでは勝てないことを知っている、そしてセンセーションなことが嫌いじゃないから無茶してしまえる。自分たちではどう思いますか?

:そうですね。今回、CD売らないですからね(笑)。(※新作『蟲の声』は配信&レンタル限定)

プー・ルイ:私はあんまりそういうことを考えないですけど、いつも「驚いてるぅ! うふふ!」って感じ。「バカだなぁ~。嫌いとか言っちゃって、それ宣伝になってるから」って思って見てます。

--BiSは伝説になる為にいろいろやってるんですもんね。

プー・ルイ:江頭2:50、目指してるんですよ。最近、裸にダイブで書類送検されたから「あんまり言わないで」って言われてるんですけど。記録より記憶。格好良い。

--この2組がやってることって、結果的に音楽シーンに対する中指だと思うんですけど、実は一番そこの意識が高いのは、松隈ケンタだと思っていて。

松隈ケンタ:(笑)

蟲ふるう夜に 『蟲の声』インタビュー
▲松隈ケンタ

--BiSも蟲ふるう夜にも偶然出逢った人たちだとは思うんですけど、こうした剥き出しでパンクスな人たちをサウンドプロデュースしていくことって、ある意味、松隈さんの復讐劇でもあるのかなって。Buzz72+時代の。

松隈ケンタ:僕は音楽業界がバブリーだった時代を中高生の頃に見ていて。「売れてやる!」と思ってギターを持った世代じゃないですか。けど、自分らがデビューしたら、全然バブリーな時代の感じとは違ってて。だからファッ○な部分はもちろんあるんですけど、あんまりメインストリームを気にしていない部分もあって。それより本当に格好良いことをやっていく。BiSは世の中をビックリさせたい、蟲ふるう夜には自分が格好良いと思えるものを発信したい、いろんなパターンがあっていいと思うんですけど、そういうところに惹かれるのかもしれないです。「私を見てほしい」とか「俺の曲を認めてほしい」っていうのは、俺は好き。そういう奴らが集まるところに俺もいたいなっていう。中川翔子ちゃんもそれの塊のような人だし。

--松隈さん、磁場持っちゃってますよね。

松隈ケンタ:磁場ありますね(笑)。よく集まる、集まる。

--では、そんな異端児たちの、今後の目標を。まずプー・ルイさん。BiSとしては武道館で伝説になるという夢がありますけど、ひとりの歌い手としては?

プー・ルイ:最近、鬱になるんです。BiSが終わった後のことを考えると。だからBiS無くなっても困らないように今から準備しておこうと思ってます。

--先日のインタビューで、BiSと心中するって言ってたじゃないですか?

BiS「DiE」
▲BiS「DiE」

プー・ルイ:私は死なないですよ。みんなは死ぬかもしれないですけど。

--「みんな死のうぜ」って集めておいて、ひとりだけ生き残ると?

プー・ルイ:したたかに生きていきます。まぁしたたかに生きられたら、こんな生き方してませんけど(笑)。

--蟲ふるう夜には?

:私も鬱になるんです。こういうインタビューのときとか、自分が作ったものについて上手く伝えられないんじゃないかと思って、前日に鬱になったりするんですよ。

--申し訳ない。

:(笑)。で、そういう機会が増えてくると、自分が変わることもあるかもしれないから、絶対周りに濁らさせられないように強く自分を持っておこうって。目標じゃないですけど、そうありたい。

蟲ふるう夜に 『蟲の声』インタビュー
▲蟻、慎之介(左から/蟲ふるう夜に)

慎之介:あと、バンドとしての目標は、友達を作ること。

:本当にいないんですよね。

慎之介:個人的には、もうちょっと外に出ることですかね。

:ニートなんでね。あと、慎之介がモノマネするバンドは解散するっていうジンクスがあって。友達のバンドをモノマネするんですよ、スタジオとかで。そしたらみんな解散か活動休止していくんです。

:そんなことを面白がってやってたら、友達がひとりもいなくなった。

松隈ケンタ:そりゃ関わりたくないもん!

プー・ルイ:マネしないでくださいね。

慎之介:しないよ(笑)。

--BiSの場合、逆に解散できなくなるかもしれない。

蟲ふるう夜に 『蟲の声』インタビュー
▲プー・ルイ(BiS)、松隈ケンタ(左から)

プー・ルイ:やだやだ!

--「やだ」ってどういうことだよ(笑)!

慎之介:でも今のところ100%解散してるんで。次狙ってるバンドもいるんですけど(笑)。

--その暗殺家業、絶対儲かりますよ。では、最後に松隈さん、腐りきった音楽シーンへメッセージを。

:答えにくい(笑)!

松隈ケンタ:うーん……そんなにこう……腐ってる?

一同:(笑)

松隈ケンタ:腐ってるかな。まぁでもミュージシャンは腐ってないと思うんですよね。昔は腐ったミュージシャンが多くて、そんなでもないのに売れていたりとかあったと思うんですよ。でも今はCD売れない時代だから、本物の格好良いミュージシャンしか残らないと思ってるし、それはクリエーターもそうだし、レコード会社の人や編集系の人、全部そうだと思ってて。やっぱりハートのある奴しか残れないと思ってるんで、腐ってる奴らはそもそも気にしてない。BiSとか蟲ふるう夜にとか、格好良いことやってる連中に僕のサウンドを乗せて、自分がバンドで売れなかった分だけの夢も乗せちゃってる感覚はあるんで、みんなそれぞれ売れてほしいなって思ってます。

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2012/10/24

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IDOL is DEAD
BiS「IDOL is DEAD」

2012/10/24

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2012/10/24

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2012/07/18

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2012/07/18

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PPCC
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2012/07/18

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2012/07/18

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