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JASMINE 『High Flying』インタビュー

JASMINE 『High Flying』 インタビュー

やっぱり世界を見てます。「こっちにもいるぞ!」って言いたい。

 日本の音楽シーンに“新たな夜明け”を感じさせた1stアルバム『GOLD』から3年弱。JASMINEは定期的に新作をリリースしながらも悩んでいた。大事なものを失いながら、勢いが減速したと感じながら、世界への想いの前に立ちはだかる現実に翻弄されながら、でも確かに進化の一途を辿りながら。当編集部では、2010年代の主役に成り得る天才の魅力を今一度伝えるべく、NGワードなしのぶっちゃけインタビューを敢行した。

アルバム『GOLD』までの勢い「減速した感じはあります」

JASMINE 『High Flying』
▲JASMINE 『High Flying』

--こうしてインタビューさせて頂くのは、2010年夏のアルバム『GOLD』リリースタイミング以来、3年弱ぶりになります。JASMINEにとって名盤『GOLD』から今日まではどんな日々でした?

JASMINE:大きく成長したかもしれないです。自分が出来ることを増やそうと必死になってましたし、考え方とかも変わったと思います。逃げがちだったところも変わったし、生きる上での知識も増えたかもしれないです。あと、人との関わり合い方。前の方が何も考えてませんでした。他人のこともそうだし、自分のことも。でも今はもっとひとつひとつのことに自分の意思を置いて……みたいな。

--なんでそんな風に変わろうと思ったんですか?

JASMINE:後悔したことがあったから。後悔しない為にはどうしたらいいか?みたいなことを考えるようになったんですかね。思いっきりヘコむときもあったんですけど、そういうときは伸びるときだから自分探しとかもしたし。冷静に周りを見渡してみて、今、自分に足りないものは何なのか? そのヒントをガーッと探すというか。

--そんなモードになったキッカケ、もう少し具体的に知りたいです。

JASMINE:……めっちゃ怒られたんです!

--(笑)

JASMINE:プロデューサーに。「おまえは歌を辞めんのか?」って言われて。辞める気なんかなかったけれど、どこを大事にしなきゃいけないか、どこをないがしろにしちゃいけないか、みたいなところが分かってなかったので。それで失ってしまったものもあったので……。だから悔しくて…………“おこ”です(笑)。

--JASMINEも怒ったと。

JASMINE:おこがアレらしいですよ。人間が行動に移る一番の種になる。で、怒らせてくれるのも愛情かなって思ったから、ちゃんと自分の中で吸収して、分解して、筋肉に変えようかなって。後悔するのは嫌だから。みんな後悔しないように生きていると思うんですけど、私は何が後悔か分かってきた。「こうなっちゃうのは嫌だ」っていうのが。だから『GOLD』から3年あって、自分のやりたいこととか、自分の失いたくないものの輪郭がだんだんハッキリ見えてきている感じがするんです。

--そうなると、どう生きたいかも見えてきますよね。

JASMINE:そもそも自分が誰だかよく分からない、みたいなところから始まっている訳じゃないですか。でもだんだん自分が一体何者なのかと、自分がどうなりたいのか。そこをどう組み合わせたらいいのか、みたいなところも見えてくる。なので、成長してる感じです!

--“自分の失いたくないもの”ってどんなものなんでしょう?

JASMINE:大事に思ってくれる人ですね。今まで残念ながら凄く自己中な性格で、“自分、自分”みたいな。自分のしたいことだけを一生懸命見ようとしていたんです。そこが答えだ、正解だと思って必死に追い掛けてて。でも自分が正しいと思ってやっていることでも、全然ダメなことって起こるから。当時はそれが分からず、ひとつの見方しかできなかったんです。

JASMINE 『High Flying -Behind the Scene』
▲JASMINE 『High Flying -Behind the Scene』

--それで一度は失ってしまった?

JASMINE:そうですね。さっき「失ってしまった」と言ったのは、当時のスタッフのことです。取り上げられてしまった、みたいな。「甘えすぎだ」って言われて……。でも今考えると、本当に自立してなかった。そのときは本当に分かんなかったんですよね。甘えてる感覚もなかったし。でもそこをバコーン!ってされたことで気付けた。きっとこの先もずっといろんなことに気付いていくんでしょうけど。

--でも取り上げられた当初は納得いかない訳ですよね?

JASMINE:納得できなくても納得できるものに変えていくのは自分じゃないですか。私はどんなこともマイナスなことじゃないと思うようにしてるんで……チャンス!?みたいな。逆に凄くエネルギッシュになりました。

--今、自分の中で『GOLD』ってどんな作品という印象ですか?

JASMINE:作っているときは何もかもが初めてで、必死だった。でも必死ながらも物凄く楽しんで作ってた。「いいんだろうか? こんなに幸せで!」ぐらいの域。…………神様からの贈り物ですね、『GOLD』は。

--自分はその『GOLD』でもって、JASMINEはJASMINEと同じような思春期を送っている女の子たちのリーダーになると確信したし、これから音楽シーンにもどんどん衝撃を与え続けていくと思っていたんですが、当時、本人的にはどんなモードだったんでしょう?

JASMINE:曲を出しながらも、リリースがありながらも、どういう風にしていくのがJASMINEとしていいのか、求められているものは何なのか。JASMINEを形作っていく上で結構悩んでました。

--あれだけのアルバム作ったら売れて当然だし、これからJASMINEは好きなことやりたい放題だなって思ってたんですけど、ぶっちゃけると『GOLD』までの勢いって減速しましたよね。自分ではどう思ってました?

JASMINE:うん、減速した感じはあります。

--その要因は、今話してくれた悩みですよね?

JASMINE:そうです。自分がやりたいことをやることが全てじゃないから。世間とどうフィットしていくのかもそうだし、自分が出来ることと出来ないことを理解した上で、自分は何に挑戦していったらいいのか、とか。勢いよく『GOLD』を作った分、自分の器の小ささとかも感じて。

--なんで“器の小ささ”を感じたの?

JASMINE:夢はあっても、その夢に器が間に合ってない。自分でどんどん成長していかないことには、っていうところですかね。

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JASMINE 『High Flying -Official Lyric Video』
▲JASMINE 『High Flying -Official Lyric Video』

--当時のJASMINEの印象は、感覚と衝動の人。叫びたい想いをリリックに乗せて、面白いと思ったモノを感覚的に音へ変換していく。その勢いが『GOLD』には集約されていた訳ですけど、それだけでは通用しない現実が出てきたんですかね?

JASMINE:そういう感じです。簡単に言うと、私はストリート人間というか、道端人間って感じなんで。普通に団地の公園で遊んで育って、ヒップホップに出逢っちゃって、やんちゃしながらも音楽大好き!という衝動で生きてきた。でももっと世界は広い。ぶつかっていきたい世界は、本当に広い。っていうことを知りました。

--で、悩み出したと。当時、JASMINEは「私は音楽にしかプライドがない」「前から普通に「うたいつづけたい 命の限り」って思ってるんです」と言っていたんですけど、その人にとって思い通りに音楽活動ができないのは、かなり苦しい状況ですよね?

JASMINE:いや、音楽を作るとか、歌うとか、そういうときは思い通り……じゃないけど、自分の魂が体より前に出ている感じ。だからそこはガツガツやってる。ただ、それ以外のところがそうなれなかったんです。

--例えば?

JASMINE:ジャケットとかPVとか振り付けとか、いろんな構成とか。すべてにおいて音楽と同じぐらいまでのモチベーションで出来ていない感じがするんですけど、そこも同じぐらいでやっていきたいから凄く考えるんです。さすがに音楽は小さいときからずっとあるから。自分の体にしっかり染み着いて、何が好きで何が嫌いなのかも超ハッキリ分かってるから、全然自信満々でガツガツ行けるんでけど、後から入ってきたものに関しては、100%ではいけない……まぁでもそんなのは言い訳だってことで、頑張ります(笑)!

--また、この3年の間には、3.11もありました。あの出来事はJASMINEにどんなことを考えさせ、どんな影響を与えました?

JASMINE:私は音楽がすべてで生きてきたけど、そうじゃない人はかなりいることに気付かされて……。本当にヤバイ状態になったら、音楽なんて要らないぐらいに言われちゃうもんなんだと知って。でもそんな中で逆に凄く求めてくる人もいる。そういうことを知ったのは、かなり衝撃でしたね。凄く重たかった。音楽はどんな人でも救えると思ってたから。でもそうでもない……って思って、たくさん泣いたし。でもちょっと時間が経って「タイミングだ」「伝え方だ」っていうことに気付いたりして。最終的にはもっと音楽が好きになってました。伝える相手への想いとかだったり、待っててくれる人がそれでもいることだったり、そういうところに重心を置けるようになった。

--具体的には、何をするべきだと思ったんでしょう?

JASMINE:自分が出来ることをやる。これで救える人がいるなら、それをマックスでやる。そうすれば自分の生きている価値もあるんじゃないかと思えるし。

--音楽で救える部分があるのであれば救いたかった?

JASMINE:うん。求めてくれる人がいたり、喜んでくれる人がいたりするから……やっぱりこれで良いんだよなって思ったし。何よりも自分が“音楽を愛してる”っていうことを発信できることで救われてました。

--その想いは2011年7月リリースの『ONLY YOU』に込められてる?

JASMINE:そこで初めて音楽というものに対して“愛”を確信したので、それで「ONLY YOU」を書いたんです。音楽へ。音楽さまへ。

--今、あの曲にはどんな印象を持たれていますか?

JASMINE:思い入れが凄く強いんで、自分で聴いて泣いたりもします。

--「ONLY YOU」もそうですけど、やがて忘れてしまうかもしれないけど忘れたくない感情を歌にしますよね、JASMINEって。「sad to say」然り、「Bad Girl」然り、「Why」然り。

JASMINE:そうだと思います。なんか、メモしている感じもあって。大事なことなのになんで忘れちゃうんだろう?って思うことがいっぱいあるんで。通り過ぎていっちゃった人とか見ると、「あ、この気持ちって忘れちゃうもんなんだ」って思って、それを全面に表現したくなる。今を生きている感じを切り抜いて音楽にすると、自分的に超熱いです。

--ちなみにJASMINEって「もう音楽辞めたい」って思った瞬間とかあるの? 例えば、この3年の中で。

JASMINE:さすがにそれはないです。音楽辞めたら、結構やることないですよ? 廃人になっちゃう(笑)。

--音楽があるのは大前提?

JASMINE:そうです!

--今はどんなモードなんですか? 相変わらず葛藤してばかり? それとも晴れやかな気持ちで音楽と対峙できてるの?

JASMINE:新しいことに挑戦していくって決めたので、今は超テンション上がってます。その決め手は出逢いです。EDMとかダブステップとか、エレクトロサウンドに出逢って、今それが世界的に流行ってて、日本ではまだそこまでじゃないんですけど、でも超格好良いんで。で、私との相性もすごく良かったんで、そっちでガシガシにチャレンジしていきたいんです。音楽をやってるアーティストとしての見せ方もそこで変わってくるだろうし、吸収しながら出していくのが楽しい。

--EDMを受け容れる、それは自分の中ではスマートな流れだったんですか?

JASMINE:ヒップホップとかR&Bとか、黒くてグルーヴィーなものが基本的に好きですけど、高校生のときとか、周りの子たちはトランスとかサイケとか聴いてて、一緒に踊ったりしていたので、全然OKです。

--で、その作品が『High Flying』になる訳ですけど、EDMを自分の音楽にしてみてどんなことを感じました?

JASMINE:もっと知りたい。もっと音楽の中で自分に何ができるのか知りたい。

--つい最近、ツイッターで「流行りのもの(ある程度 時代を読みとれてるもの)+ 好きなもの(ルーツやメッセージやジャンルなど)+似合うもの(色や形やフィーリング)=そいつらしいファッション」って書いてましたけど、あれって『High Flying』のこと?

JASMINE:おぉ! そんなつもりで書いた訳ではないんですけどね。普通にファッションを見てて、「渋谷にいる女の子たちって、自分に似合っているファッションしている子もいれば、流行りに乗ってるだけの子もいて、思い思いだけの子もいるな。なんで中間取らないんだろう?」って思って書いたんです。私、ファッションも音楽もスルッと自分が出てきちゃうんですよ。考え方とか生き方とか。自分を出すつもりがなくても勝手に出ちゃう。

--その出ちゃった新曲のタイトルが「High Flying」。高く飛びたい。これはJASMINEの心の表れ?

JASMINE:夢です。小さいときから夢でよく空を飛ぶんで。

--比喩じゃなく、本当に空飛びたいっていう話だ(笑)。

JASMINE:はい(笑)。

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やっぱり世界を見てます。
「こっちにもいるぞ!」って言いたい。

--この曲には「あたしはもっと高くを目指してるんだ」とありますが。

JASMINE:あ、それは野心とかの方ですけど。でもこの曲のイメージは、道玄坂をチャリンコでわぁー!って超スピード出してる映像なんです。空が飛びたくて!

--それ、PVにしたら凄いことになりそうですね。

JASMINE:危ない、事故が起こる(笑)。

--朝っぱらから命懸けで急降下して飛ぶ!みたいな。

JASMINE:ハハハハハハ!

--「JASMINE、飛んだ!」

JASMINE:『E.T.』の世界になっちゃう(笑)。

--ちなみにJASMINEが目指している高みってどんなところなの?

JASMINE:やっぱり世界を見てます。だから世界の音楽をチェックしてるんだと思うし。「こっちにもいるぞ!」って言いたい。

--渋谷の道端人間が最終的に世界へ飛び出すと。

JASMINE:そうです! 世界で活躍している人は凄いから、どんどん良いところを吸収していきたい。前までは自分が他のアーティストに嫉妬しちゃいけないと思っていたんですけど、とある人に「なんで嫉妬しないの?」って言われてから「嫉妬してもいいんだ」と思って。私に換えられるんであれば、嫉妬したっていい。すべてを前向きにしたいな。

--最近嫉妬したアーティストは?

JASMINE:クリス・ブラウン。本当はシンガーでもダンサーでもなくて、ただの目立っていた子をあの位置まで成長させただけって聞いて。

--腹立ちますね(笑)。

JASMINE:「え、それであそこまで行くんだ?」みたいな(笑)。超悔しい。たしかにクリス・ブラウンを好きな人って、クリス・ブラウンのキャラクターが好きって言ってて。最初は何を言ってるんだろうと思ってたんですけど、それを知って納得しました。

--JASMINEもキャラクター負けはしてないと思いますけどね。ちなみにやがて世界へ行けるイメージ、ヴィジョンはあるんですか?

JASMINE:何かが超見えている訳ではないですけど、世界に向かう気しかない。

--その為にも、JASMINEは2010年代の主役になっていい人だと思うので、もっともっと世間を翻弄してほしいです。

JASMINE:そうしたいです。驚かせるのは好きだし、もっと引っ張っていきたい。「新しい道はこっちだよ!」って。そこにみんなグワァー!って流れていっちゃう感じが理想です。

--もっといろんなところにケンカ売ってもいいですよね。気に入らないアーティストの……好きなアーティストでもいいですけど、ライブに殴り込んで「ちょっと歌わせろ」みたいな。

JASMINE:危ないですね(笑)。

--それで「おまえ、やるなぁ……」みたいな。で、打ち上げで酒呑んで仲良くなる(笑)。JASMINE、野生児なんだから、それぐらい好き勝手やらないと病んじゃうよ。

JASMINE:好き勝手できないときは、本当に病みます。「あれダメ、これダメ」っていう状況に入っちゃうと……小さくなっちゃうんです。でも今は新しいことを好きにやれているので、めっちゃ健康。

--あと、今作には「BED」。初期DOUBLEの名曲カバーが収録されています。このタイミングでカバーしようと思ったのは?

JASMINE:真逆ですよね。新しいことをやる裏で、超テッパン。みんなが知ってる間違いないことをやる。新しいことだけだと受け容れるのって難しいじゃないですか。だからその後ろでちゃんと「私もいるよ」って支える。そういう意味で「BED」はばっちりハマってくれました。あと、この曲が好きだったんです。自分にない世界観だから、当時は「大人の世界ってすげぇ~」って思ってて(笑)。でも歳を重ねると共にそれを理解していったので、今の私なりの解釈でカバーさせて頂くことにしました。

--じゃあ、DOUBLEのライブに乗り込もう。「TAKAKOセンパイ! 私の「BED」聴いて下さいっ」って。

スタッフ:平賀さんが責任取ってくれるんですか(笑)?

--そうですね……怒られたら「I'm Sorry」って曲作ってリリースしよう。あくまでポジティブに。

一同:(笑)

--さ、そろそろ〆に入っていきたいんですが、この先はどんなことを歌っていきたい? やっていきたい?

JASMINE:アゲ。アゲ…………アホ。

--アゲとアホ?

JASMINE:アゲは……アホだと思う。理性を超えたところにアホはあると思うんですよね。

--アホ以外の言い方もあると思いますけど(笑)、最後にもうひとつ。2ndアルバムっていつ出るんでしょう?

JASMINE:今年出したいとは思ってます。それに向けてガツガツ。

--どんな作品になればいいなと思ってますか?

JASMINE:アホ……ではないです。

--今、アホやっていくって言ったじゃん!

JASMINE:(笑)。「ONLY YOU」とかもあるんで。…………でも一見アホみたい。

--もう分かんないよ(笑)。

JASMINE:でも実はアホじゃない。

スタッフ:あの、アホ以外の言い方を……(笑)

Music Video

JASMINE「High Flying」

High Flying

2013/05/29 RELEASE
AICL-2541 ¥ 1,068(税込)

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Disc01
  1. 01.High Flying
  2. 02.BED
  3. 03.High Flying (Instrumental)

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