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<インタビュー>Kroi×Bluey、「Kinetic」を生んだ邂逅――ロンドンで結ばれた信頼と敬意

インタビューバナー

Interview & Text:小川智宏
Photo:Kaito Ono、Yusuke Kusaba
Interpreter:原口美穂


 Kroiの2026年第一弾となる新曲「Kinetic」がリリースされた。今回、Kroiは彼らのキャリアのなかで初めて外部のプロデューサーとコラボレーション。しかもそのプロデューサーというのが、半世紀にわたって第一線で活躍し続けるジャズ・ファンク・バンド、Incognitoの中心人物であり、すばらしいギタリストでもあるBlueyだというのだから驚きだ。メンバーもかねてから大ファンだったというBlueyと、ロンドンのBlueyのスタジオで作られた「Kinetic」は、KroiらしさにIncognitoのエッセンスがミックスされた、とてもリラクシンでグルーヴィな1曲に仕上がった。今回、来日に合わせてKroiとBlueyの座談会が実現。ともに音楽を作り上げる過程で生まれた両者の固い絆がうかがえるトークセッションとなった。(※関は体調不良のため欠席)


――今回はKroiの楽曲「Kinetic」をBlueyさんがプロデュースされたということで、この座談会が実現しました。本当にビッグなコラボレーションが実現したなと。

Bluey:私にとっても大きなことでした。


――今回、このコラボが実現したのはどのような経緯だったのでしょうか。

内田(Vo./Gt.):去年、我々は【The Great Escape】というイギリスの音楽フェスに出たんですけど、その時に「せっかく行くならロンドンでレコーディングしたいよね」という話があって。今までKroiはプロデューサーを入れて楽曲を作ることはまったくなかったので、現地のアーティストやプロデューサーと一緒にお仕事してみたいと思ったんです。で、僕が「それなら絶対Blueyがいい!」って言って(笑)。ダメ元でお願いしたら、レーベルのスタッフとのご縁もあって、受けてくださったという。


――つまり内田さんは、もともとBlueyさんのビッグファンだったと。

内田:大好きです。メンバーもみんなIncognitoは本当に大好きですし、自分は本当に音楽との出会いの始まりの一歩目みたいなところで影響を受けているので、本当に嬉しいです。今こうやって話をしている、この状態も夢みたい。

小さい頃からドラムを習っていて、そのときに発表会があったんですよ。子どもたちがJ-POPやアニソンを演奏した後に、一番最後に「講師演奏」という枠があって、ドラムの先生が自分の好きな曲を演奏する時間があったんです。それを見ていて「この曲は何だ?」と思って演目表を見たら、Incognitoという人たちなんだというのを知りました。それが小学校低学年くらい。そこからめちゃくちゃ聴いて、自分でも叩いてみたりしていたので、本当に自分にとっての音楽の初期衝動なんですよね。


Bluey:このコラボレーションのお礼を彼のドラムの先生に言いたいですね。



――実際イギリスでセッションした時はどうでしたか?

千葉(Key.):プロデュースしてもらうのが初めてだったので、すごく楽しかったです。普段だったら全部自分たちで決めなきゃいけないところを、足りなければ言ってくれるし、提案もしてくれる。信頼できるというか、すごくいい経験になりました。3日間ほど一緒にスタジオに入ったんですけど、毎朝集合した時に、Blueyは僕たちをスタジオの横にあるカフェに連れて行ってくれて。Blueyはサラダを食べて、僕たちはサンドイッチやコーヒーを飲んで。そういう一連の流れのなかで、日を重ねるごとに曲を作る以上の絆というか、交流ができて仲良くなれた。すごく貴重な経験になっています。


Bluey:彼らが到着した時、私はすでにカフェで立って待っていたんです。すると友人が「彼らだとどうやってわかるんだ?」と聞くので、私は「車が着けばわかると思うよ」と答えました。実際、車から降りてきた彼らは、まるでアニメのキャラクターのようでした(笑)。スタジオに入る前に、まず真っ先にカフェに来たよね?


千葉:Blueyのスタジオの扉がよく分からなくて、タクシーの運転手さんがカフェの前くらいに止めてくれたんです。



Bluey:カフェで会うことのよさは、堅苦しさを壊してくれるところです。「さあおいで、みんな何を食べる?何を飲む?」といった感じで、すぐに(Kroiのメンバーと)打ち解けました。


内田:Blueyはサラダを食べていたんですけど、そのカフェにはフォークしかなくて、でも「箸で食べたい」って言って、最初はマドラー2本で食べていました(笑)。


千葉:あと、最初の日にトルコ料理を食べに行きました。


Bluey:そうそう。これは私が人々によく伝えている大事なことの一つですが、これまで多くのツアーをして、多くのことを見てきました。プロデューサーとして、そして人生において学んだことの1つは、私たちがこの惑星にいられる時間は短いということです。だから、できるだけ多くの思い出を作らなければなりません。人生とは何か?それは思い出を作ることです。私はいつもバンドやアーティストに、「型破りなことをしなさい」と言っています。スタジオにこもって毎回同じことをするのではなく、旅をしましょう。異なる現実と触れ合うのです。私が初めてバリのスタジオにレコーディングに行った時や、山の中に曲を書きに行った時と同じようにね。


――益田さんは何か思い出ありますか?

益田(Dr.):やっぱりBlueyはレジェンドなので、緊張して、「ちゃんとプレイできるかな?」と思ってたんです。で、スタジオに入った瞬間に「誰がドラマーだ?」と聞かれて「俺です」と言ったら、いきなりサンドイッチをめちゃくちゃ食わされました。


Bluey:その通り。その後も彼はたくさんのサンドイッチを食べ続けていました。



――長谷部さんは?

長谷部(Gt.):僕は中学生の時にギター教室に通っていて、カッティングを練習するにあたって、ギターの先生がIncognitoの「Colibri」という曲を課題曲として教えてくれたんです。それで練習したのがIncognitoとの出会いで。Kroiでもカッティングはめちゃくちゃ使うので、その最初の一歩目のアーティストなんです。今回のレコーディングでその本人の前でギターをプレイしたのは、すごく緊張したけど楽しかった。しかも「Colibri Sound Recorders」というBlueyのスタジオで弾けたのがすごく感動的でした。



Bluey:スタジオではエンジニアのモー(Mo Hausler*)の役割は大きかったです。彼らのように鋭く独自のバイブスを持っているミュージシャンと仕事をする時は、透明性のあるエンジニアが必要。すべてが確実にレコーディングされているか、時間をかけすぎていないか、最高の音を素早く録れているか。この透明性こそが、今回のセッションを本当にうまくいかせたのだと思います。


*Mo Hausler = Blueyと共にロンドンの音楽スタジオ「Colibri Sound Recorders」を運営し、Incognito、Citrus Sunなど近年のBlueyのプロジェクトの殆どで協働しているレコーディング / ミックス / マスタリングエンジニア。

内田:ミックスもそのMoさんに、やっていただいて。すごいいいサウンドにしてもらいました。


――うん。いつものKroiとはやっぱりちょっとタッチが変わった感じがしますよね。

内田:そうですね、Incognitoサウンドみたいなところはありつつ、曲は自分たちが作ってプレイしているので、ちゃんとKroiとIncognitoのサウンドが融合したものになったのでよかったです。


Bluey:彼らの旅路の一部になれたことは素晴らしいことです。ですが、私はその旅路のほんの小さな一部に過ぎません。最も大きな部分は、彼らが全員素晴らしいミュージシャンでありながら、Kroiという共通の音を見つけ出したという事実です。それは簡単なことではありません。彼らは怜央のソングライティングを信じているし、怜央は彼らの演奏や観客とコミュニケーションをとる能力を信じている。お互いの中に強さを見出しているのです。彼らはお互いに何ができるかを分かっているし、お互いのベストを引き出している。


――お話を伺っていると、単に一緒に音楽をやった仕事仲間というより、何かすごく深いところで繋がったというか、信頼し合えたんだなと感じます。

内田:今回Blueyと3日間ずっと一緒にいて、こうやってコミュニケーションを何度も取らせていただいて思うのが、Blueyの周りに愛がずっとある感じがすごくして。パーカッションを入れてくれたジョァン(João Caetano)も、同じくBlueyを敬愛している仲間みたいな感じだったから自分たちも一緒に仲良くなって。Blueyの周りにある愛にみんなが引き寄せられて、素晴らしいプレイヤーが集まってくる。そこに自分たちも引き寄せられて辿り着けたというのが嬉しいです。


長谷部:ジョァン、プレイしてくれる時にずっと大声でレッチリの「Under the Bridge」を歌っていて。


Bluey:その時だけでなく、1年中ずっとですから。でも私は彼をシャットアウトすることを覚えたんです(笑)。それもプロデュースの一部ですよ。プロデューサーとして、この男はうっとうしいけれど、トラックの上では最高だということを知っておく必要があります。だから、うっとうしさをスイッチオフして、演奏を活かすようにしなければなりません。それがこのバンドにおける私のメインスキルです(笑)。



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Blueyと一緒にできて
初心に戻れたし、進化もできた


――スタジオの雰囲気というのも当然日本とは全然違ったわけですよね。

千葉:スタジオ自体があまり大きくないんです。6畳か8畳くらい。それが逆にめっちゃ良くて。本当に今話しているこのくらいの距離でずっと制作していたんです。すごくアットホームな雰囲気で、そういう雰囲気込みで仲良くなったって感じがします。


Bluey:私のスタジオは狭い環境です。でも彼らのようなバンドなら、限られたものを最大限に活かして仕事ができるはずだと思いました。アーティストによっては「ここでは仕事はしない」と言う人もいるでしょう。「ここは壮大で巨大なスタジオじゃない」とね。ですが、Kroiからは土の匂いがします。彼らは地に足がついている。だから、いいシチュエーションでした。


――この「Kinetic」という曲には、そんなスタジオの雰囲気どおり、すごくリラックスした空気が漂っているなと感じました。

Bluey:私は今でも、自分が仕事をしているほとんどのバンドよりも、彼ら(Kroi)の方がエネルギーがあると感じています。それは音楽の中に、ソングライティングの中に、そして演奏の中に、それを感じることができる。火の玉のようです。でも、彼らがこれまでにやってきたことのなかで、おそらく最もクールダウンした作品だということもわかります。年寄りと仕事をするとそうなりますよね(笑)


長谷部:場所とかスタジオとか環境が全然違うし、3枚目のアルバムを出した後、インプットしていた時期だったので、Kroiの新しい一面が見れた曲になったなと思います。


益田:伊豆とかアメリカとかでレコーディングしたりもしたんこともあるんですけど、そこで録った曲を聴いている時に、レコーディングした時の匂いや情景が思い浮かぶんですよね。これも確実にそのなかの一つ。新しい記憶ができました。


千葉:スタジオの空気感をパッケージングした曲ですからね。カラフルなスタジオで……あと記憶といえば、トルコ料理屋さんに連れて行ってもらった時に、Blueyが10皿くらいお勧めしてくれて、腹がちぎれるかと思いました(笑)。


Bluey:ホストとして、人々に体験を味わってもらうのは義務だと思っていますから。トルコ料理店に行くなら、一度にすべての味を楽しむことはできません。だから、みんなで違うものを注文するんです。いいことですよ。



後日、無事再会を果たした関とブルーイ


――最初に入っているBlueyさんの声もすごくユニークなアイディアですね。

内田:そうなんですよ。あれもBlueyがバッキングコーラスを録ってくれた流れで、急遽録音してくれたもので。


Bluey:彼らがあまりに幸せそうだったので、私を関わらせてくれたことが本当に嬉しかったんです。だから自分自身を紹介させてほしいと。私のオーディエンスのためにね。なぜなら、今私たちがしていることは、単にスタジオで行った作業だけではないからです。これから続いていく作業なのですから。私は世界中のIncognitoファンに、Kroiと一緒に仕事をしたことを知ってほしいのです。トラックの冒頭で「Bluey from Incognito」と言えたことは、私の幸せでした。あれは私なりの「ありがとう」の伝え方だったんです。


――わかりました。最後に改めて、内田さんから「Kinetic」に込めたものを話していただけますか?

内田:この曲を作った頃、Kroiはタイアップのある楽曲制作をどれくらい極めるかみたいなところに精を出していた時期で、ハイパワーな作品が続いていました。それがロンドンで制作するとなった時に、もう一度自分の原点というか、そういうものに触れて、本当に自分の今作りたいものを一回表現してみるというのをやりたいと思ったんです。Blueyと一緒にできてまた初心に戻れたというのもあるし、進化もできたし。間違っていなかったなと思います。

さっきBlueyが話していたことは、Incognitoの音楽を聴いて自分たちが感じてきたもので。だから会った時にすごいグルーヴできた。みんなが英語を話せるわけじゃないけど、みんなワッと笑って。それが起きた時に、音楽から伝わってくるエネルギーで、ちゃんと人って教わって育っていくんだなというのがわかりました。自分たちがやっていたことが間違いじゃなかったという気づきがあったので、それは本当に、いちばんよかったです。


Bluey:彼らはドラえもんと仕事をするんだと思っていたかもしれないですけどね(笑)。彼も「青い」(blue)ですから(笑)。


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