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イェーセイヤー 『フレグラント・ワールド』 インタビュー
一度聴いたら病み付きになるキャッチーなメロディ、エキセントリックで芸術性の高いポップ・センスで人気を博すNYブルックリンの異色のエキスぺリメン タル・ユニット、イェーセイヤー。2010年にリリースされた前作『オッド・ブラッド』で確立したカラフルで躍動感溢れるグル―ヴィーなダンス・サウンド から一変した約2年ぶりとなる最新作『フレグラント・ワールド』は、前作の中毒性をキープしつつも、R&B、ディスコ、ジャズなど様々な要素を取 り入れた彼らの新たなる挑戦を象徴する転機作に。前進し続けるイェーセイヤーのクリス・キーティングとアナンド・ワイルダーに2月12日に代官山UNIT にて行われた初となる東京公演の前に話を訊いた。
大舞台にひるむことなく、
クリエティヴィティーを貫くのは大変だけど大切なこと
??昨日のグラミー賞は見ましたか?
クリス・キーティング:いや、残念ながらまた見てないんだ。
アナンド・ワイルダー:僕はニューヨーク・タイムズ紙のアプリから送られてくる受賞者速報は見たよ。
??以前フランク・オーシャンのファンというのを公言していたので、彼の賛否両論だったパフォーマンスについて訊きたくて。
クリス:どんな感じだったの?
??プロジェクションをバックにキーボードでのソロ・パフォーマンスだったのですが、彼の下半身にあたる演壇の部分に曲名「Forrest Gump」にちなんでひたすら走っているという映像が映写されていて。授賞式らしい大がかりなプロダクションでは無いものの、とてもインパクトがあって興味深かったです。
クリス:『サタデー・ナイト・ライブ』は知ってるよね。あの番組では大体のアーティストがあまりいい演奏をしないんだけど、彼のパフォーマンスは唯一素晴らしくて、今でも印象に残っている。とてもパーソナルで知的で、サウンドも素晴らしかった。大舞台にひるむことなく、クリエティヴィティーを貫くのは大変だけど、大切なことだ。彼はその精神を体現している希少なアーティストの一人だと思うね。
??そしてイェーセイヤーが以前リミックスを手掛けたゴティエも3冠に輝きましたね。
アナンド:彼は「最優秀レコード賞」を受賞したんだよね?でも「最優秀楽曲賞」というカテゴリーもあって…とても不思議。
クリス:イギリス人はグラミー賞を受賞出来るのに、アメリカ人はマーキュリー賞にはノミネートされないというのは、なんだかフェアじゃないよね(笑)。
アナンド:僕の個人的な意見を言うと…あの『ザ・シンプソンズ』のエピソードは見たことがある?昔ホーマーが、5週連続全米チャートで1位を獲得して、グラミー賞を授賞していたことが発覚して、その回想シーンで酔っぱらってトロフィーを窓の外へ落とすんだけど、ゴミ投げんなよって投げ返されるんだ。あのエピソードは、全体的に音楽業界をシニカルな視点で斬っているから、機会があったら見てみて。60年代に遡ってもそうだけど、ビートルズが初期のベタなポップ・ソングでグラミー賞を獲ったり、芸術性やセールスでもなく、その時の音楽業界を反映するものであって、その部分は今でも変わってないね。
??ゴティエのリミックスもそうですが、他に最近手掛けたものではBastilleの「Overjoyed」のリミックスがとても印象的でした。彼の情緒的で映画のサウンドトラックのような音世界をより不気味でアンビエントにしていて。
クリス:リミックスは、クラブでプレイするようなヒットに変えるか、その逆を行くかの2種類に大体分かれるからね。2曲とも元々ポップな要素はあったから、逆に不穏な要素を引き立たせる方が興味深いと感じたんだ。特にこの2曲は、個人的にも面白いプロジェクトだったな。
??曲をアレンジするというのは、ある意味ライブでも行っていますよね。特に初期の頃の曲は、演奏を観る度に進化しているように感じます。
クリス:実はこれは曲の演奏の仕方を忘れちゃうからでもあって…。
アナンド:アハハ。もちろんパフォーマンスをより面白くして、アーティストとしての成長を見せたいからでもある。特に僕達の場合は、3人以外はメンバーが流動的で、ドラマーが生音で演奏したり、それをコンピューターで再現したり、その時の編成によって曲の演奏方法が違ってくるから。
??いつもどのようなパフォーマンスをするか予測出来ないというのは、イェーセイヤーのライブの魅力でもあると思います。この曲はこう、という観客の固定概念がある"シングル"的な曲がないから可能なのかもしれないですが。
クリス:もしあったら今頃俺たちは大金持ちになってる(笑)。みんなが聴きたい曲が1曲しかないのはつらいね。シングルを演奏したら観客が半分以上帰ってしまうという光景は、観客として何度も経験したことがあるから。
アナンド:まさにゴティエがそうだよね。
??ビーチ・ハウスのアレックスもまったく同じことを言ってました(笑)。
クリス:あの曲は瞬く間に大ヒット曲になったからね。
アナンド:でも僕たちは絶対そんな風にならないという確信を持っているよ。ゴティエにしてもあの1曲だけ爆発的に売れたのは本当に残念だよ。だって彼の作品からは、商業的なポップ・ミュージックとは違う、変わった音楽を作ろうという姿勢と努力が伺えるから。
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リリース情報
関連リンク
フレグラント・ワールド
2013/02/06 RELEASE
UICO-1253 ¥ 2,409(税込)
Disc01
- 01.フィンガーズ・ネヴァー・ブリード
- 02.ロンジヴィティ
- 03.ブルー・ペーパー
- 04.ヘンリエッタ
- 05.デヴィル・アンド・ザ・ディード
- 06.ノー・ボーンズ
- 07.リーガンズ・スケルトン
- 08.デーモン・ロード
- 09.ダメージド・グッズ
- 10.フォーク・ヒーロー・シュティック
- 11.グラス・オブ・ザ・マイクロスコープ
- 12.ブルー・ペーパー (ライヴ・プール・セッション) (日本盤ボーナス・トラック)
- 13.ヘンリエッタ (ライヴ・プール・セッション) (日本盤ボーナス・トラック)
- 14.ロンジヴィティ (ライヴ・プール・セッション) (日本盤ボーナス・トラック)
- 15.リーガンズ・スケルトン (ライヴ・プール・セッション) (日本盤ボーナス・トラック)
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