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<インタビュー>GOOD BYE APRIL「今だからこそ“共感”というテーマ」メンバー4人それぞれ成長を遂げ絆も深めた2025年、林哲司プロデュースの新作『SYMPATHY』を語る

昭和シティポップの巨匠・林哲司をプロデューサーに迎え、奇跡的な化学反応を生み出したニューシングル『SYMPATHY』。本作のリリース日、11月5日にGOOD BYE APRILの公開生配信インタビューが行われた。今回の記事では、メンバー4人(倉品翔(vo,g,key)、吉田卓史(g)、延本文音(b)、つのけん(dr))の2025年を振り返りつつ、新作について語ってもらったその生配信の模様+αで未公開部分をテキスト化。視聴者が「笑いながら泣いています!」などのエモーショナルなコメントを書き込むほど、このバンドの絆の強さと確かな成長ぶりが明確化されたハートフルなインタビューになっているので、ぜひご覧いただきたい。
Interviewer:平賀哲雄
メンバーでこういう話はあんまりしないので、なんか恥ずかしいです(笑)。
--2025年も佐橋佳幸さん、伊藤銀次さん、南佳孝さん、そして、今回の林哲司さんなど錚々たるレジェンドたちとのコラボレーションもありましたが、メンバーそれぞれにとってどんな1年になったか聞かせてください。では、つのけんさんから。
つのけん(dr):バンドとして順調に前へ進めているなと感じた1年でした。その分、今年はわりとずっとバタバタしていたんですけど、その合間にちょくちょく息抜きする時間をより大切にしていました。

▲つのけん
--どんな息抜きをしていたんですか?
つのけん:サウナに行きまくっていました(笑)。考え事をするのにサウナってちょうど良いんですよね。例えば、自分のドラムのパフォーマンスについて「ライブでこういうことをしたいな」とか集中して考えたりしていて。そんなことを繰り返していたら、気付いたら11月になっていました。
一同:(笑)
つのけん:ちなみに、今日も行ってます!
--肌にツヤがあるなと思っていました(笑)。音楽体験的にはいかがでした?
つのけん:それこそレジェンドの方々とご一緒させていただく機会が増えたりとか、はじめましての方と共演することもありましたし、成長できるきっかけがたくさんあって。それは今回リリースされた『SYMPATHY』にも反映されていると思いますし、各メンバーのプレイや音づくりにギュッと詰めることができたんじゃないかなと思います。あと、今使っているドラムセットの良い部分をより引き出せるようになってきたなって。自分でも分かるぐらい、プレイヤーとしてのスキルを上達させられていると感じましたし、ドラマーとしても良い1年を過ごせているなと思います。
--せっかくメンバー全員揃っているので、こんな質問もしてみたいんですけど、他のメンバーから見た2025年のつのけんさんはどうだったか。プレイヤーとしての印象でもいいですし、こんな出来事があった的なエピソードでもいいので、ぜひ聞かせてください。
吉田卓史(g):やっぱりサウナ?
一同:(笑)
倉品翔(vo,g,key):年々、みんなで成長していこうと思っている中で、進化の「進」が「深」のほうの深化に変わってきているなと感じますね。上手い下手の次元じゃなくて、曲を演奏するということに対する、音の深みをよりすごく感じるようになってきた。

▲左から:倉品翔/つのけん/延本文音/吉田卓史
--褒められていますが、いかがでしょう?
つのけん:嬉しいですね! わりと自分にご褒美をあげたいタイプではあるので、前に叩いた音源と新たに叩いた音源を聴き比べて「良い感じだな」と思ったら「よし、飯食いに行こう!」みたいなことはやるんですけど、メンバーでこういう話はあんまりしないので、なんか恥ずかしいです(笑)。
延本文音(b):つのけんのドラムプレイに関しては、それこそレジェンドの皆さんからも「つのけんのドラムがヤバい!」と絶賛していただいていますし、つのけんの存在が世間にバレ始めている(笑)。佐橋さんとかも大絶賛しているし「年下のミュージシャンとしては、若手としては」とか関係なく、ベテランの人が同じ目線で見ても「すごいドラマーだ」と評価されているんですけど、私個人としては人間的な部分での成長も感じる1年だったというか。このあいだ、みんなで友達のバンドに会いに韓国まで旅行しに行ったんですけど……
--仲良いですね! 完全にプライベートで?
延本文音:完全にプライベート。楽器、持ってないです! で、海外だったので、国内旅行と違っていろいろ面倒な部分もあるじゃないですか。飛行機を予約するところから、そういうことをつのけんが責任持って全部やってくれて! 結成当初はそんなキャラじゃなかった気がするんですけど、オカン的な目線で「しっかりしたなぁ」って(笑)。なので、すごく感謝しましたし、感動しました!
つのけん:他のメンバーが制作に追われていたりすると「それが終わったあとに楽しいことが待っていたらいいだろうな」と思って、それでいろいろ準備とかしておいて、終わったあとにもう何も考えずみんなで遊びに行けたらいいじゃないですか。なので、今回の韓国旅行も勝手にいろいろ調べてました!
--今、愛おしいなと思いました。
一同:(笑)
延本文音:本当に助かりました!
吉田卓史:ちなみに、僕はつのけんとふたりで楽しい友達ライフが送れた1年でした(笑)。リハ終わりとかにレンタサイクルでチャリンコ借りて、ふたりで家系ラーメンを食いに行ったり。とある用事があって、つのけんが車を運転してくれたときも「このまま横浜行くか!」みたいな。本当に行きはしなかったんですけど、完全に大学生ノリなんですよね。大体サウナに連れて行ってくれるのもつのけんですし、おかげで楽しい1年を送ることができました!
--ほのぼのする話(笑)。
倉品翔:韓国に行ったときも、朝6時半にふたりして起きて2時間散歩していたんですよ。ビックリした!
吉田卓史:その日はてっぺんまでみっちり予定があったので、ほとんど寝ずに早起きしてふたりで散歩していました。1分でも時間を無駄にしたくなくて。
--ふたりの時間を無駄にしたくなかったと(笑)。
倉品翔:なんかヤバい(笑)。
延本文音:結成1年目みたいな遊び方してる。
--では、続いて、吉田さんにとっての2025年はどんな1年だったか聞かせてください。
吉田卓史:めちゃくちゃ早かったですね! 今年の1月に沖縄のイベントでライブしたんですけど、それが2年ぐらい前に感じるぐらい。それは歳を取ったせいなのか、やっていることが多いからなのか。それぐらい今年は仕事でもプライベートでもいろんなことがありましたし、あとは自分で言うのもアレなんですけど、心がちょっと広くなったなと。いろいろ受け入れられるキャパが大きくなったと感じます。音楽にしても、対人関係にしても「平和に生きたいな、ハッピーに生きたいな」と思うようになりました。

▲左から:倉品翔/つのけん/延本文音/吉田卓史
--それだけ今は良い人生を送れているんでしょうね。では、皆さんから見た2025年の吉田さん。
倉品翔:彼はすごく几帳面で心配性でもあるから、ひとつひとつ丁寧にやりたい人なんですよ。だから、スケジュールが立て込んでくると、真っ先に心配になるんです。でも、忙しかった今年を乗り越えられたから「もう全然大丈夫だろうな」って安心しました。あとは、日々お酒を飲みすぎていないかだけが心配です(笑)。飲み始めると止まらないんで。
吉田卓史:いやいや、全然!
--帰らないタイプですね?
吉田卓史:いまだに朝までいけます!
--本当に人生楽しんでるじゃないですか(笑)。
一同:たしかに(笑)。
--バンド内に親友もいて。
一同:(爆笑)
延本文音:しあわせだなぁー!
倉品翔:でも、そういう感じで楽しみながら、この1年を一緒に乗り越えられたのは、頼もしいなと思いました。
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延本文音:あと、今年は佐橋さんとの制作が「リ・メイク」と「LADY PINK PANTHER」で2回あったので、本人はどう思っているか分からないですけど、佐橋さんと接したことによってすごく変わっている気がして、それが今年は彼にとってハイライトだったんじゃないかな。来年は佐橋さんとライブで同じステージに立つんですけど、それもまたやったことがないことなので……
吉田卓史:怖い!
一同:(笑)

▲左から:倉品翔/つのけん/延本文音/吉田卓史
延本文音:でも、佐橋さんのギターをいっぱい弾かせてもらったりとか、間近で佐橋さんにギターのアドバイスをもらったりとか、その経験が彼の新しい扉を開けたんじゃないかなと思います。
吉田卓史:何が勉強になったとか明確に言い表せられないんですけど……自分はさっき倉品が言っていた通り、音楽に対しても几帳面というか「ここがきっちりしないと先に進めない」みたいなタイプで。でも、佐橋さんは「音楽はたのしいんだよ」みたいな表情でずっとやってはるんで、その音楽や演奏との向き合い方によって、どちらかと言うとメンタルの面で救ってもらえた感じはしますね。
延本文音:続いて、親友の……(笑)。
--つのけんさんから見た今年の吉田さん。
つのけん:。さっき、卓史も言っていたように、この1年はこれまでと変わらず……いろんなところへ遊びに行ったりとか(笑)。
吉田卓史:メンバー全員そうなんですけど、その中でもつのけんはほんまに何もしゃべらんでもいい人なんですよね。会話がなくても成立する仲というか。
つのけん:逆に言えば、卓史こそ居てくれるだけでメンバー間の空気を落ち着かせてくれたり、賑やかにしてくれたりする。よりそういうところがバンド内で確立されていっているように感じましたね。あと、ギターのプレイに関しては、結成当初と比べたら天と地の差ぐらい上手くなっていますし……
吉田卓史:天と地(笑)。
つのけん:彼自身の几帳面なところもプラスに働いて、良い意味で選択肢が増えたなって。「こういうプレイだったら、こうかな」「これはこれでいいんだな」みたいな感じで、引き出しがすごく増えてきているなと思いますね。なので、こっちからの「こういうプレイでギター乗せてほしいんだけど」といったリクエストにもスムーズに応えてくれるから、よりいろんなグルーヴがつくりだせるようになりましたし、これからもっともっと幅を広げられそうな気がします。
--では、続いて、延本さんにとっての2025年。
延本文音:私は遊びにも行かないし、趣味もないし、推しもいないし……だからふたり(つのけん&吉田卓史)が羨ましいなって思うんですけど(笑)。
倉品翔:このふたりが楽しそう過ぎるから(笑)。
つのけん:うさぎがいるだろ?
延本文音:私はうさぎと遊んでいるんですけど(笑)。本当に今年はベースプレイが試されるレコーディングが多くて「こんなの、弾けないよ」みたいなことを求められて。それを越えなきゃいけない曲が何曲もあって、最後は5弦ベースも弾きましたし。なので、とにかくベースをいっぱい弾きましたね。あと、歌詞もいっぱい書きました。歌詞に関しては、伊藤銀次さんと出逢えたことが大きくて、銀次さんが私の歌詞の「こういうところがすごく良い」と褒めてくれて、それまで私の歌詞ってヘンだと思っていたんですけど、でもそれが良いんだなって。私が求められている歌詞って正統派じゃないんだなということが分かって、それで腹が決まったというか「自分のカラーを怖がらず出していいんだ」という気付きがありました。それで救われましたし、迷わなくなりました!
--延本さんも修行と成長の日々だったんですね。皆さんから見ていかがでした?
倉品翔:たしかに、以前と比べて「迷いがなくなってきたな」と感じていました。それはベースプレイや歌詞もそうなんですけど、人生として。このバンドを続けていく、この人生を続けていくことへの迷いがなくなってきて、より芯が強くなっている。元々すごくコツコツ努力できる人で芯はめっちゃあったし、「みんなで一緒に頑張ろう」という部分での柱になってくれていたんですけど、それがより太くなった。
延本文音:オカン的な。
--より良い家族になってきたと。
一同:(笑)
倉品翔:そうですね。もう長くやっているので。
--来年で15周年ですもんね。だからこそ、変化がなくなっていくことも有り得るわけですけど、このタイミングで全員が成長していると言い切れる感じは理想的ですよね。
倉品翔:たしかに。
つのけん:延ちゃんは今年いちばん進化したんじゃないかな。
延本文音:そうなんだ? 恥ずかしいな、これ(笑)。

▲左から:倉品翔/つのけん/延本文音/吉田卓史
つのけん:自分とベードラでリズム隊として演奏していく中で、グルーヴが明らかに変わったんですよ。だから、こっちもドラムを叩いていて「めっちゃ気持ち良い!」みたいな瞬間がめっちゃあったりして。数々の試練があったから「ここを乗り越えれば! がんばれー!」ってずっと応援していたんですけど。
延本文音:ハハハハ! 応援してくれているなとは思っていた(笑)。
つのけん:例えば、デモ音源をつくるときって、倉品が大まかな部分をまずつくって、それを受け取って僕がリズムを変えたりするんですけど、そこに乗っかってくるベースを聴いたときに「これ、面白いな! こう来るんだ!」と思って自分もパターンを変えたりすることが増えたんですよ。それが楽しくて。そういう意味でも、より良い音楽をつくれている実感のある1年でしたね。
吉田卓史:延本は、今年も良いお酒をいっぱい呑めたよね?
一同:(笑)
延本文音:共通の友達が結構いるんですよ。
吉田卓史:それで一緒に飲んだり。俺と延本はいちばん付き合いが長いんですよ。もう18年ぐらい? それでこういう関係性ができること自体が不思議やなって思うし、僕も応援していましたね。結局、自分がやることって自分しかできへんから。その中でいちばんコツコツやるのは、たしかに延本やなって思いますし。
延本文音:「この曲、誰がいちばん大変か」みたいなことは分かるもんね。それで「あ、苦戦してるな」っていう空気があるんですけど、そのときはみんなお互いに「がんばれ」って応援しています。
--本当に良いバンドですね。このインタビュー配信を観て泣いているファンもいるんじゃないですか?「ファンでいてよかったな」と思えるエピソードが次々出てきている。
吉田卓史:ほんまに仲が良いんですよ! 普段もこのまんまですから。なので、来年も一緒に良い酒が飲めたらええなって思います。
延本文音:そうね。来年もいっぱい飲酒しましょう(笑)。
--そして、倉品さんにとっての2025年。
倉品翔:個人的には、新しい章に入った感じというか。バンドとしてもそうなのかな。成長痛を感じる、次のステップへ進まなきゃいけない1年だったと感じていて。去年はこれまで積み上げてきたものを全部回収した作品をつくれた感じがしたんですけど、今年は別のフェーズで。それとはまた違ったものを自分自身に対して求める気持ちが強くなってきて、だから1年の中でもいろいろ変わってきていますね。年の後半になるにつれて、その気持ちがより強くなっている。そういう意味では、アティチュードは変わらないんですけど、自分でページを捲らなきゃいけない年だったと思います。

▲倉品翔
--そのうえで成長痛をいちばん感じた瞬間は?
倉品翔:うーん……やっぱり作曲ですかね。今年もたくさん制作したんですけど、それが終わった今、より次に対して「もう一剥ぎ、二剥ぎしなきゃいけないな」って感じていますし。
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何の作為もなく、自分が感動して生まれた曲だった
--皆さんから見た今年の倉品さんはいかがでしたか?
倉品翔:怖いな。あんまりそういう話を普段聞かないから。絶対に思っていることはあるんだろうけど(笑)。

▲左から:倉品翔/つのけん/延本文音
吉田卓史:倉品はこう見えて熱い人なんで、自分ともマジメな話をわりとするんですよ。でも、今年はずっと忙しそうだったので、あんまり良い酒を飲めてないかなって(笑)。
一同:(笑)
吉田卓史:倉品はいちばん最初のゼロイチをつくる人なんで、それを生み出す苦しみがある。だから、もちろん応援しているんですけど、僕がギターのフレーズを入れるときとかは、逆に「良いんじゃない?」って軽い感じで言ってくれるから助かる部分はありますね。自分は考えすぎてしまうタイプなので。それも含め、いろんな部分で今年も頼もしい存在だったなって。僕らは倉品の曲が好きでバンドを始めたわけなんで……なんかこっぱずかしくなってきた(笑)。
--つのけんさんはいかがでしょう?
つのけん:僕は制作でリズムパターンのやり取りをすることが多いんですけど、その度にらっしー(倉品)が驚くようなリズムを絶対に提供しようと思っていて。デモで送られてきたものを何倍も超えた、曲の景色が変わるぐらいのビートを送ろうと。それは今年ずっと意識していて。で、良い反応が返ってきたときは「よっしゃ!」ってなります。めっちゃ嬉しい! あとは、ライブパフォーマンスも含め、僕らの生み出すグルーヴの上に乗っかるボーカルの力強さみたいなものもより感じるようになりましたし、それがより濃く出た1年だったんじゃないかなと思います。
倉品翔:たしかに、制作ではゼロイチの段階でその土台を組むやり取りをすることがどんどん増えていますし、そこは年々委ねるようになってきています。
--延本さんは、倉品さんに対してどんなことを感じてきましたか?
延本文音:アレンジが良くなったなって。シンセの感じとか「こういうことができるようになったんだ」というか、自分たちの今までの曲になかったようなエッセンスがいっぱい増えたなって。そこにいちばん成長を感じましたね。あと、ピアノが上手くなったとも思うし……私たちって先生が増えたじゃないですか?
--とんでもないレジェンドの先生がたくさんいますよね。
延本文音:でも、先生たちは私たちのことを生徒と思っていないじゃないですか。だから、喰らついていくしかないんですよね。ある意味、対等に見てくれているので、それは喜ばしいことであるんですけど。なので、倉品もすごく喰らいついていっているなと感じていました。「ひとつでも多く盗んでやるぞ、ここで学んで帰るんだ」みたいな。でも、やっぱりそういう人たちに可愛がられるので、皆さんからもいろいろ教えてくれるし、それを次に活かしているんだなって感じます。
倉品翔:嬉しいですね。ボロクソ言われなくてよかった(笑)。
延本文音:それはオフラインで(笑)。
--そんな成長を遂げた4人による、2025年の締め括りとなるニューシングル『SYMPATHY』が完成しました。この作品はどんな背景やイメージから生み出された曲だったんでしょう?

▲シングル『SYMPATHY』
倉品翔:メジャーデビュー曲からお世話になっている林哲司さんと再び一緒に制作したんですけど、その制作をスタートする入り口の段階では、この曲は存在していなかったんです。で、林さんとやり取りをしていく中で、別軸の制作の過程で聴かせてもらった曲があったんですけど、それにえらく感動してしまって。「こんなに素敵な曲があったんだ」と。で、その曲を聴いた瞬間にバァーってこの曲が出来たんですよ。本当に一筆書きみたいな感じで、つくった過程をまったく憶えていないぐらい、こぼれ出るように出来ちゃった曲で。それで、急遽「これをリリースしよう!」という流れにガラっとシフトしたんです。自分的には何の作為もなく、自分が感動して生まれた曲だったので、そういうことはなかなかないこともあって、嬉しい体験でしたね。そういう曲だったからこそ、ここにあるテーマやメッセージはすごく本質的な、普遍的なものになっていると思います。
--その曲を聴いて、どんな印象を持たれましたか?
延本文音:私的には「めっちゃ倉品らしい曲だな」と感じました。このバンドを組み立てのときに感じていた、出身地である長野県の佐久の空気を纏っているなって。「夜明けの列車に飛び乗って」という曲もそうだったんですけど、音楽的なルーツというより生命的なルーツを感じるというか。で、良い意味でこねくりまわしていない感じ。だから「久しぶりにこういう曲が来たな」って。で、歌詞もサビの部分が一緒に出てきていたので、それに合わせて物語を編んでいく感じでしたね。ただ、歌詞はこねくりまわしたんですよ(笑)。
倉品翔:そうだね。今年のタームでは、延本と歌詞を共作している曲はそんなにないんですけど、この曲に対してはそれぞれ書いたものを混ぜたりしていて。
延本文音:この曲はそのサビを活かしていく為にも、絶対に物語が乗っていたほうがいいと思ったので、私がシチュエーションとかいろいろ考えて、その物語を注入していきました。
倉品翔:衝動的につくった曲だからこそ、歌詞も衝動的に第一稿は書いちゃっていたので、それを俯瞰してもらってストーリーと心情のバランスを取っていった。そういう工程でしたね。
--つのけんさんは、この曲にどんな印象を抱いて、どんなアプローチをしていったんでしょう?
つのけん:延ちゃんといっしょで「久々にこの感じが来たな!」と思って。今、こういう曲に対して演奏するとしたらどういうアプローチになるんだろうと、結構ワクワクしたというか。デモの時点で明らかに初期衝動感はめっちゃ残っていたんですよ。なので、自分も聴いたまんまの感覚で1回ざっくり叩いてみようと。それが最終的にいちばん良かったんです。昔だったら、その感じで叩くと主張がちょっと弱かったり、音の抜けが良くなかったりして、全体的に平らになっちゃうというか、一体にはならないことが多かったんですけど、今回はこれまでいろいろ経験させてもらったことがちゃんと活きていて。当時と同じことをやっても深みが違うし、幅がグッと広くなっていたんですよね。それがこの曲にはすごく合っているんだなと思いました。
--吉田さんはいかがでしたか?
吉田卓史:まず曲聴いて「ええやん」って。イントロの感じが洋楽の好きな感じやったりとか、Bメロのケツのキメかな。ああいうのは「昔はなかったかな」って感じましたね。「アレンジャーが入れました?」って感じのフックっぽく感じたから「すごっ!」と思って。で、ギターに関しては、あんまり憶えていない系の曲ですね。「どうやってやったっけ?」みたいな。
倉品翔:吉田くんもあるんですよ。基本的には考え込みたいタイプなんですけど、天然で完成するときがある。それは、この曲自体が衝動的な曲だったからかもしれない。だから、曲に呼ばれるままに弾いて、いつの間に出来ていたんだと思います。

▲左から(写真右側):倉品翔/つのけん/延本文音/吉田卓史
--その曲を共に生み出した林哲司さんは、GOOD BYE APRILにとってどんな存在だったりするんでしょう?
倉品翔:まずは林哲司さんの楽曲の大ファンだったところから、メジャーデビュー曲「BRAND NEW MEMORY」でご一緒させていただいて。今回でご一緒するのは3作目なんですけど、その3作を通して林さんイズムを誰よりも深く理解できたと言い切れるぐらい、深いやり取りをさせていただいています。それは、それだけたくさんのことを林さんから学ばせていただいているということでもあるし、そもそも林さんのつくる曲が好きだったから、そのエッセンスをちゃんと自分たちのものにしたい想いが強くあったので、それをこの3作目でより強固なものにできたんじゃないかなと思いますね。林さんがレジェンド的存在であるということを抜きにしても、ここまで音楽的なシンパシーを感じ合える関係性ってなかなか築けないと思うんです。同世代でもそんな相手はいないので。そういうレベルのシンパシーを僕らは感じています。
延本文音:私は林さんの曲縛りでカラオケ歌っているような、ただのキモヲタだったんですけど(笑)。なので、最初「BRAND NEW MEMORY」でご一緒させていただいたときは、緊張しすぎちゃって! でも、林さんのスタンスはずっと変わらなくて、ずっとジェントルマンで、私たちのことを年齢とか関係なくいちミュージシャンとして見てくれるし、音楽性も認めてくれていて。だから、勝手にこっちが緊張していただけなんですけど、その後「Love Letter」があって、今回で3作目だったので、私は完全に猫をかぶるのをやめまして(笑)。一緒にごはんとかも行って、私がこういう人だって漏れ出してしまっていたので。でも、そのほうが林さんもすごくリラックスしてくれて、もう今やお父さんみたいな。
一同:(笑)
延本文音:或いは、生徒とすごく仲の良い先生みたいな。いろんなことを教えてくれて、すっごい尊敬できる先生。レコーディングも私たちが良いプレイをしたら、コントロールルームで「良いね!」って一緒にはしゃいでくれるし。最近あった面白い話とかもしてくれるし、本当にお父さんのような先生って感じですね。そんな関係性になれたことが心から嬉しいです。林さんってメインが作曲家、編曲家じゃないですか。だから、簡単に会えるタイプの芸能人じゃないというか。それがまさか一緒に中華料理を食べに行ったりとか、ケータリング食べながらゲヘヘと笑ったりとか……
吉田卓史:ゲヘヘ?
延本文音:私がね!
倉品翔:あんまり聴いたことのない擬音(笑)。
延本文音:私が普通にデュフデュフ笑ったりとか(笑)。そんな時間を過ごせる喜び! でも、一緒にいるときは忘れちゃいますね。あまりにも楽しく一緒に制作しているので。良い意味で憧れの人だと忘れちゃうぐらい、すごく調和していると思います。
--そんな林哲司さんプロデュースの新曲「SYMPATHY」、ファンやリスナーの皆さんにとってどんな存在になってほしいなと思いますか?
倉品翔:「SYMPATHY」って共感という意味ですけど、これもメロディが勝手に持ってきた言葉だったんです。「愛はSympathy」ってメロディが言っちゃってるっていう。それを自分で紐解く過程があったんですけど、見えないものってそこにロマンティックさや思いやりがあるし、すごく大事だなと思って。今の時代って何でも可視化することがすごく簡単だし、何でもすごくイージーに手が届いてしまうんですけど、見えていないことに対していろいろ想像したり、共感したり、想いを寄せることって、実は人生をいちばん豊かにしてくれるものなんじゃないかなとすごく感じるんです。なので、今だからこそ「共感」というテーマで、見えないものをイマジネーションで繋ぐという本質的なメッセージを届けるべきだなって。この曲のメロディが教えてくれたそれをリスナーの皆さんにも感じ取ってもらえたら嬉しいです。

Interviewer:平賀哲雄
GOOD BYE APRIL / SYMPATHY (Official Music Video)
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