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ザ・ヴァージンズ 『ストライク・ジェントリー』インタビュー
ザ・ストロークスのフロントマン、ジュリアン・カサブランカスが立ち上げた音楽レーベル、Cult Records(カルト・レコーズ)の第1弾アーティストとなるザ・ヴァージンズ。2009年に日本デビューを果たし、同年の【FUJI ROCK FESTIVAL】にも出演。ルー・リード、イギーポップ、パティ・スミス、ソニック・ユースなど名立たるバンドの前座を務め、人気TVドラマ『ゴシップ・ガール』に出演するなど、一躍スターダムへ伸し上がったが、長いツアーで疲弊してしまった結果、活動休止状態に。
「ザ・ヴァージンズの音に初めて触れた瞬間、なんて最高なバンドがNYにいたんだ、って驚いたよ。そして、彼らは絶対に後世に残るようなクラシックなロック・アルバムを作れると確信した。だから、今回自分のレーベルでアルバムを発表できて光栄だよ」とジュリアンも太鼓判を押す彼らが、2013年3月、フロントマンのドナルド・カミング以外のメンバー・チェンジを経て、一皮、二皮も剥けた最新作『ストライク・ジェントリー』を満を持してリリースする。
自分の内面から湧き出るインスピレーションを形にすること
▲「FLASHBACKS, MEMORIES,
AND DREAMS」MV
?? デビュー作『ザ・ヴァージンズ』のリリースから、約6年…最新作『ストライク・ジェントリー』は、ドナルド以外のメンバーを一新して制作されたそうですが、まず新たに加入したバンド・メンバーとの制作活動ついて教えてください。
ドナルド・カミング:この1年間、新たなバンド・メンバーと共に一緒に曲を書いて、レコーディングを行った。彼らはリハーサルを行っているアパートに住んでいて、作業をしていない時もよくそこでつるんでる。バンド以前に友達だったから、彼らが新たにザ・ヴァージンズに加入するのは自然な流れだった。このアルバムが僕にとって特別なのは他のメンバーも曲を書いていて、それが完成した作品にとって欠かせない重要な部分であるということ。
??活動休止時期が長かったものの、今作を制作する上で、デビュー作の成功やそこで確立したサウンドやイメージに対する外部からのプレッシャーは?
ドナルド:活動を休止していたのは、ある意味そのイメージをぬぐい捨てたかったからでもあるんだ。そして自分がもっと情熱をかけられる音楽を作ることに集中したかった。このアルバムの僕の目標は、自分の内面から湧き出るインスピレーションを形にすることと僕達4人のミュージシャンの自然体で等身大のパフォーマンスを音楽に反映する事だったんだ。
??では今作に収録されている曲はいつ頃から書き始めたのですか?
ドナルド:このアルバムの曲はすべて新しいもので、このバンド編成が固まった昨年の3月から作り始めた。後はスタジオに入った夏頃に書いたものだよ。
??バンドとして活動する前には、主に詩などを書いていたそうですが、ソングライターとしての詞と音楽の位置づけについて教えてください。
ドナルド:個人的に、詞と音楽が対等である作品を目指したいと思っている。だから前作のクラブっぽい踊れるサウンドとは異なったパーソナルな作品にしたかった。形になる経緯はその曲ごとで異なるけれど、バンドと一緒に演奏しながら音楽を通じて自分を表現する方が、僕にとっては楽なんだ。
??ソングライターとしての成長も伺えますが、今回の作品のインスピレーションとなった出来事や経験などありますか?
ドナルド:僕が初めて曲を書き始めてから多くの変化を経験してきた。何を伝えたらいいのか、伝えたいことがあるのかわからない時期さえあった。ブリティッシュコロンビアにある自分の農場に妻といた時に、今まで一度も聴いたことがなかったとあるレコードをかけたら、不思議と自分の頭の中にはりつめていた蜘蛛の巣が消えて行ったんだ。その瞬間何がしたいのか、ということを確信したね。
??徐々にツアーも始めていて、昨年の終りには南米ツアーを行っていますが、新曲に対してのファンの反応は?
ドナルド:あまり僕たちのライブを観たことがない観客を相手にライブをする時は、古い曲と新しい曲を半々ぐらいで演奏するけれど、反響はすごく良かったね。特に南米をツアー出来たのは、夢みたいだった。ライブを行った国々、そこで出会った人々、すべて最高だった。また戻りたい場所の一つだね。
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自分の信念を貫くことや自分にとって意味がある作品作りを続けること
??長年友人である写真家のライアン・マッギンレーが、アルバムの1stトラック「Prima Materia」のビデオの監督を務めていますが、これはどのような経緯で?
ドナルド:活動を休止していた時期に、ライアンはいい支えとなってくれた。僕が音楽を作ることやライブをすることを後押ししてくれたし、とても協力的だった。バンドとして再びステージに立つ準備が出来た時に、パフォーマンスのビデオを作りたいと申し出てくれた。ヴァージンズ初期の頃のライブを撮影していたみたいに。このビデオは、僕達の新たなる章を象徴しているから、僕にとってはこれからもずっと意味がある作品だと思うね。それにライアンは天才だから何を作っても素晴らしい作品に仕上げる。出来上がったものを見た時、圧倒されたね。
??ドナルド自身もアーティスト、写真家として多方面で活躍していて、ライアンはもちろん、奥さんのオーレル・シュミットなどNYのアートシーンに所縁のあるアーティストと数多く交流がありますが、その部分は自身の音楽にも反映されていると思いますか?
ドナルド:直接的な影響というよりは、自分の信念を貫くことや自分にとって意味がある作品作りを続けることを教えてくれるというインスピレーションになっているね。
??では、ジュリアン・カサブランカスが主宰を務める"カルト・レコーズ"との契約はどのような経緯で?
ドナルド:アルバムのレコーディングが終盤に近づいていた頃、自主リリースするか、レーベルと契約してリリースをするか何も決まっていなかった。メジャー・レーベルと契約の経験から学んだことは多くて、その中には二度と味わいたくない出来事もあった。だから共通の友人からジュリアンが会いたがっていると聞いた時はすごく興奮したね。初めて会ったときからいい雰囲気で、最初のミーティングでほぼ決定したんだ。
??今年はそのジュリアンが所属するザ・ストロークスやヤー・ヤー・ヤーズなど70年、80年代初頭のパンクやポスト・パンクに影響されたNYCを拠点として活動するバンドが挙って新作をリリースしますね。
ドナルド:確かにそうだね。とりあえず自分たちのアルバムをリリースするのは、とても楽しみにしている。シーンとかは関係なく、今は自分たちにしか作れない音楽を作っていると感じているから、聴き手にもそれが伝わってくれると嬉しいね。
??では現在NYCを拠点として活動しているお気に入りの新人バンドがあれば教えてください。
ドナルド:Grand Rapidsっていうバンドが、すごく好きだよ。まだ若いけれど、歌詞も素晴らしいし、才能を持っている子たちだね。是非チェックしてみて。
??そして遂に新作がリリースというタイミングですが、デビュー作と今作のリリース時の心境を比べると?
ドナルド:自分が作ったものを世に出すのは、いつでもいい気分だよ。今回は特に以前みたいにハイプや周りからの期待が少ない分、気が楽だし、自分たちが好きなことを自由にできるからクールだね。
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ストライク・ジェントリー
2013/03/13 RELEASE
XQJH-1022 ¥ 2,268(税込)
Disc01
- 01.Prima Materia
- 02.Wheel of Fortune
- 03.Flashback, Memories, and Dreams
- 04.Figure on the Ice
- 05.Impressions of You
- 06.What Good is Moonlight
- 07.Travel Express (from me)
- 08.The Beggar
- 09.Amelia
- 10.Blue Rose Tattoo
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