Special
<わたしたちと音楽 Vol. 67>後藤真希 “いい子”にならなくていい、自分らしく輝く生き方

米ビルボードが、2007年から主催する【ビルボード・ウィメン・イン・ミュージック(WIM)】。音楽業界に多大に貢献し、その活動を通じて女性たちをエンパワーメントしたアーティストを毎年<ウーマン・オブ・ザ・イヤー>として表彰してきた。Billboard JAPANでは、2022年より、独自の観点から“音楽業界における女性”をフィーチャーした企画を発足し、その一環として女性たちにフォーカスしたインタビュー連載『わたしたちと音楽』を展開している。
今回のゲストは、今年デビュー25周年を迎えた後藤真希。13歳でモーニング娘。に加入し、グループ卒業後もソロアーティストとして走り続けてきた。「いい子ちゃんにならないほうがいい」と考えながら25年を経た今、13歳の自分に送りたいという意外な言葉の真意とは。そして、華やかな世界を生き抜いてきた彼女が大切にしてきた視点について語った。(Interview:Rio Hirai[SOW SWEET PUBLISHING] l Photo:Yu Inohara)
デビュー25周年を迎えて
経験を重ねて見えたもの

――25周年おめでとうございます。節目を迎えた今、どんなお気持ちでいらっしゃいますか。
後藤真希:本当にあっという間に時間が経ったなという気持ちです。ライブを始めいろいろなお仕事を経験して、自分の引き出しがたくさん増えました。昔の自分を振り返って、今なら「もっとこうしたほうがいいよ」とアドバイスができると思います。
――今回リリースされるアルバム『COLLECTION』には、モーニング娘。時代の曲のソロ・バージョンも収録されています。当時の自分と今の自分を比べて、変わったと思うのはどんなところでしょうか。
後藤:いろいろ変わったと思います。やっぱり13歳ってまだ中学2年生で、見た目は金髪だったけど、中身は全然子供だったりして。子供から大人になったという意識もありますし、1つひとつのお仕事に対する考え方も、この25年でどんどん変わっていきました。モーニング娘。時代はつんく♂さんにプロデュースしていただいて、与えられた課題をいかに自分で消化してやっていくのに必死だったんですけど、今は自分で考えて、自分自身を作っていく、という感覚でやっています。
――逆に、変わらないところはありますか。
後藤:性格はけっこうそのまんまというか……私、生まれ育った地元で長く暮らしていて。「芸能人だから都会に住んでいるんでしょ」というイメージもあるかもしれないのですが、あえて住むところを変えずにいるおかげなのか、自分の価値観や性格、落ち着くものも、何も変わらずに過ごせてるような気がします。分かりやすく仕事のオン/オフの切り替えができるのは、生まれ育った町にいるからなのかなって思ってます。
グループからソロへ
“いい子ちゃん”にならない生き方

――グループからソロへと活動の形が変わりましたが、自分をどう奮い立たせていますか。
後藤:ソロになるときは、ものすごく不安でした。今までメンバーや周りの大人に助けてもらっていたところが多かったんだなって実感して。でもソロになってからは、私を応援してくれている人たちに向けて、自分はどうあるべきなのかを考えることが自分自身の勇気づけになっています。より良い自分を皆さんに見せていきたいという意識ですね。
――過去のインタビューを拝見していると、後藤さんのアイドルとしての矜持を強く感じます。それはいつ、どのように生まれたのでしょうか。
後藤:私たちがモーニング娘。だった時代はアイドルってけっこう体育会系で。何かに染まっていくわけでもなく、自分自身をちゃんと見せていきながら個性を生かしていくことが大切でした。ファンの方とのコミュニケーションや、自分がやりたいこと、求められていることを理解しつつ、また違う方面で自分らしくアプローチしていく挑戦もさせてもらえる。そういうところから自分自身のアイドル観が育まれてきたのかなと思います。
――その個性を認めてくれたのは、ファンの方々や周りのスタッフだったのでしょうか。
後藤:なかなかそういうわけにもいかなくて。昔は今ほどSNSもなかったので、見てもらえるのはテレビだけの世界。自分の個性を理解してもらうことはけっこう難しかったんです。音楽番組でのトークで自分がどういう人間か伝えることもできましたが、テレビだけではなく、ライブやイベントで自分を知ってもらえる機会をたくさん持てたことが、それぞれの個性が強いという強みになっていったのかなと思います。
――唯一無二の追加メンバーとして、モーニング娘。に13歳で加入して鮮烈なデビューを果たしました。振り返って、当時の自分にかけたい言葉はありますか。
後藤:活動してきていろいろ思うのは、「“いい子ちゃん”にならないほうがいいよ」って。優等生とか“いい子ちゃん”って、グループや組織の中では安心できる立ち位置だと思うんです。でもそこに慣れてしまうと、何かを挑戦すると人の目につきやすくなって、それが良いこともあれば、悪いほうにも行ったりする。あえて“いい子ちゃん”にならないほうが、自分のやりたいことをちゃんとはっきり言えるし、やっていける。そういう姿勢のまま続けていってほしいなって、今の私なら言うと思います。
笑顔でいるために
俯瞰で見る力

――周りと違うことを恐れたり、従順であった方がいいと思う若い女性も多いと思います。だからこそ後藤さんの「そのままでいいよ」という言葉は、多くの女性を勇気づけます。では、後藤さんが憧れる女性像はどんな女性ですか。
後藤:気持ちを楽しく、幸せにしてくれる、キラキラした笑顔をちゃんと持てる人です。表情って今の気持ちがすぐに出るから、周りの人も見て心配したり、いろいろ考えさせてしまったりする。自分自身でその気持ちをちゃんとリセットしつつ、明るい表情でいられる人はすごく憧れますね。
――笑顔でいるために心がけていることや、心がくじけそうになったときの自分の励まし方を教えてください。
後藤:私、昔から物事を俯瞰で見る癖があって。嫌なことや悲しいことがあっても、俯瞰で見てみたら、あんまりそうでもないなって思えるんです。落ち込んでいるときでも、一旦落ち着いて考えてあげることで、こんなことで落ち込んでてもしょうがないなって思える。一旦落ち着かせるっていうのが大事なのかなと思います。
――その達観した姿勢は、いつ身に付いたのでしょう。
後藤:本当に小さいときから、そういうふうに見る癖があります。
――あの怒涛の時代も、俯瞰の目線で乗り越えてこられたんですね。13歳であのグループに入るとなると、確かにその視線がないと飲み込まれてしまいますよね。
後藤:そうなんです。毎回真正面で受け止めようとしていたら、物事に追いつけないし、気持ちがもたない。デビューしてからは、なおさら物事を落ち着いて一旦見て考えるという癖が強まった気がします。
女性が輝くために
新しい挑戦へ

――女性が輝いていくためには、どんなことが必要だと思われますか。
後藤:人って、やりたいことをやれているときに、イキイキすると思うんです。何か挑戦するときも、「自分には無理だ」とか考えずに、何でもとりあえず挑戦してみる。「ダメだったらまた考えればいいや」という感じで、どんどんやりたいことを身につけていくと自分のポテンシャルも上がると思うので、そういう姿勢が大事なんじゃないかな。
――後藤さんは、積極的にいろいろなことに挑戦していくタイプなんですね。
後藤:そうですね。興味あることはとにかく調べてみて、とことんやるタイプです。
――後藤さんがこれから挑戦していきたいことを教えてください。
後藤:昔から美容に興味があって好きなので、美容関連で皆さまの役に立てることができたらいいなと思います。あとは、25周年を記念したライブやイベントが9月にあったんですけど、皆さんからとても良い反応をもらえて、次に挑戦するときの支えになっているので。また新しいステージを考えたり、みんなが想像してないことをやってみたいなと思ってます。25年間芸能界に居続けて、まだこうやってこの世界でパフォーマンスができるというのに自分でもびっくりしているんですよ。何かを続けていくというのはなかなか難しいことだと思うので、一度夢を持ったら、とりあえず続けてみる。自分が好きなことなら何があっても続けてみるという気持ちを心に置いて、毎日頑張っていけたらいいなと思っています。
プロフィール
東京都生まれ。1999年に13歳でモーニング娘。の3期メンバーとしてデビュー。2002年にグループを卒業後、ソロアーティストとして活動。2014年に結婚し、2人の子どもの母親。2020年にはゲーム実況や美容情報を発信するYouTubeチャンネル『ゴマキのギルド』『ゴマキとオウキ☆』を開設。2021年以降は写真集もリリースし、『ramus』『flos』などが大ヒットを記録。2025年にデビュー25周年を迎え、アルバム『COLLECTION』を発表した。
関連リンク
ビルボード・ジャパン・ウィメン・イン・ミュージック 関連リンク
関連商品






























