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<インタビュー>DOMOTOとして今、「愛のかたまり」を歌う理由――“僕らの愛”の形を見つめ直すふたりの現在地

Interview & Text:本間夕子
Photo:Shintaro Oki(fort)
13thシングル『Hey! みんな元気かい?』のカップリング曲として2001年に発表されて以来長きにわたって愛され続けてきた楽曲であり、2024年大晦日から2025年1月にかけて開催されたドーム公演【KinKi Kids Concert 2024-2025 DOMOTO】では、新たに歌詩を加えた形で披露され、そこに込められたふたりの強く大きな愛情がファンを歓喜させたことでも大きな話題を呼んだ「愛のかたまり」。そのセルフカバーが、DOMOTO初のデジタルシングル曲としてリリースされる。当時22歳だった堂本光一が作曲、堂本 剛が作詩を手掛けたこの曲が、二十余年の時を経た今、新たに鳴らす音色はどんな響きをあなたの心にもたらすだろうか。DOMOTOとしての第一弾作品に今作を選んだ理由、託した想いについて、彼らの言葉を届けたい。
DOMOTOの1stデジタルシングルに
「愛のかたまり」を選んだ理由
――DOMOTOとして活動をスタートされて3か月あまりが経ちますが、何かご自身のなかで変化を感じたりはされていますか。
堂本光一:正直、何もないですね。そもそも改名の第一目的は我々のファンの方にこれまで通り安心して応援していただける環境を整えることでしたから。なので変化はまったく感じていないです。
堂本 剛:僕たちを取り巻く環境に関してはいろいろ変化した部分はありますけど、このふたりの関係性はずっと変わらず、お互いに意思の疎通を図りながら、尊重し合いながら今に至っているので。
――そうしたなか、DOMOTOの1stシングルとして「愛のかたまり」がデジタルリリースされます。2001年にリリースされた13thシングル『Hey! みんな元気かい?』のカップリング曲でありながら、ファン投票で1位を獲得するなど時代を超えて愛され続けてきた楽曲であり、また、光一さんが作曲、剛さんが作詩を手がけられた合作曲でもあるこの曲のセルフカバーを第一弾作品として選ばれた理由とは?
剛:カラオケでたくさんの人に歌っていただいていたり、著名人の方々がSNSなどに歌唱されている動画をあげてくださっていたり……自分たち的にはちょっと意外でもあるんですけど、すごく多くの方に認知していただいている曲なんですよね、この「愛のかたまり」は。みなさんに大切にしていただいてきたなかで、僕たちの間でもこの楽曲への想いとかが、作った当初以上に大きくなったりもしていて。
光一:今、自分たちにできること、自分たちが理想とするもの、そうしたいろんなことを話し合うなかで、我々としての想いやメッセージを伝えられるのはこの曲なんじゃないかな、と。
剛:どなたかに楽曲提供していただくという選択肢もあったでしょうけど、改めてここから自分たちらしい一歩を力強く踏み出すと考えたときに、ここはやっぱりふたりで作った楽曲がいいよねという話になったんですよね。これまで僕たちが共作した楽曲は結構ありますし、新たに作るという案もあったんですけど、先ほどお話ししたようにたくさんの人が愛してくださっている「愛のかたまり」を今一度リニューアルしてリリースするところから始めることに決めたんです。
――リニューアルの大きなポイントとして、歌詩が加筆されました。これは光一さんからの発案だったそうですね。
剛:はい。ドーム公演(【KinKi Kids Concert 2024-2025 DOMOTO】)を行うにあたって、光一くんは演出のひとつとして考えていたと思うんですけど、「この曲を今の僕たちに重ねて歌いたいから、ちょっと歌詩を書き加えてほしい」とオーダーいただいて。
光一:やっぱり、まずはライブで今の自分たちから何か伝えられることができればという想いがあって、それで剛くんに一部、詩を足してほしいって相談したんです。「愛のかたまり」のオリジナルでは間奏になっているパートがあるんですが、そこにBメロの〈変わっていく あなたの姿〉という歌詩を、“自分たちも変わってはいくけれど、より素敵なものになっていく”みたいなニュアンスの言葉で新たに表現して加えることはできないだろうかって。それを受けて書いてくれたのがこの歌詩なんです。

――剛さんはその相談を光一さんから受けたとき、どんなお気持ちでした?
剛:結構、急に来たので(笑)。でも、それに応えるのもクリエイターの仕事だと僕はいつも思っていますし、クリエイティブをやっていれば順番とか全部すっ飛ばして舞い降りてくるアイデアがあることもわかっていますし、そういうものは僕も大事にしていますからね。「光一くんがそう思ったなら、その想いを最大化しよう。それが自分のできることなら、しっかり自分が応えよう」っていう、それだけなので。
光一:でも最初に伝えたときは「ああ……うん」がリアルな反応でしたけどね(笑)。
――実際、加筆作業はいかがでしたか。やはり難しいものだったのでしょうか。
剛:もともとあるものを変えるって相当難しいですよ。ファンの方にとってはこれまでの歌詩で認知していただいているものですし、変えるにしろ、何かを加えるにしろ、かなりの覚悟が必要だし、ちゃんと成立させるテクニックも必要じゃないですか。すごく難しいなという気持ちはありつつ、でも光一くんとの関係性として、自分はそれを厭わずに応える立場にいると思ったので、とにかく頑張ろう、と。
――剛さんが加筆された歌詩をご覧になった光一さんの感想は?
光一:自分はどうしてもコンサートの演出面を考えてしまうので、演出としてそこにハマるかどうかっていうのがまずいちばんでしたけどね。もちろん、それは事前に剛くんに伝えていますし、しっかり汲み取ってくれたと思っています。
――歌詩自体は女性目線ですが、今回、書き加えられた部分は〈僕ら〉と一人称が男性になっていますよね。この視点の転換にはどういった意図があるのでしょう。
剛:「男性的な感覚が一瞬入るのもいいだろうな」ぐらいのニュアンスでしたけどね。ここまで曲のなかに登場していない男性像、そういったものがちょっとちらつく雰囲気があってもいいのかな、みたいな。歌の主人公が〈あたし〉と言っているので、〈あたしたち〉という表現でも書けたとは思うんですけど、(字数が増えることで)メロディに音符を増やすのもちょっと違うかなとか。いろいろ考えていくなかで〈僕ら〉になりました。
もちろん、光一くんのオーダーがただ単に「歌詩、ちょっと変えたいねん」っていうものではなかったというのも大きいですけどね。環境がガラッと変わるなか、たくさんふたりで話し合って、いろんな決意を交わし合ってきた時間というのも僕らにはあると思うし、そうした今の僕たちを感じ取れるようなものにしたいという意志があったから、だったら〈僕ら〉みたいな言葉がまず必要なのかなって。そうやっていろいろ模索しながら書いたものをお渡ししたら「いいね」と言ってもらえて、そのまま採用されたという感じです。
光一:ただ、完成した曲に関しては聴いてくださる方に自由に捉えていただければ、それでいいと思うんですよ。女性目線の歌詩に対して、その部分だけ男性側のアンサーが聴けるという捉え方もできるでしょうし、ストーリーとして曲全体を楽しんでもらうのもいいと思うんです。我々からのメッセージだと捉えていただくのももちろんいいですけど、それは聴き手の自由ですから。自分自身、もはやこの曲を女性目線だと意識するまでもないところまで来ている気もしますし。

リリース情報
「愛のかたまり」
- 2025/12/3 DIGITAL RELEASE
関連リンク
ふたりが思う〈僕らの愛〉
――サウンドに関しても伺わせてください。今回セルフカバーするにあたって目指していた音像などはありましたか。
光一:基本的に、オリジナルに勝るものはないと自分は思っているんです。カバーにはカバーなりの良さもありますけど、何よりやっぱりオリジナルがいいんですよ。なので、それに勝るものを作るのは正直、なかなか難しいんですけど。でも、そのなかでも何かしら、聴き手が音から想いを馳せることができるようなものをアレンジから作れないかなということで、わかりやすいところで言うと、冒頭にオルゴールの音色を使ったりしているんです。ただ、それはこういう意味なんだよって説明してしまうのは非常に野暮になるので、しませんけどね。そこは聴いた方がどう感じるかだと思います。
あと、コード展開とかもちょっと変えたりはしているんですよ。どうしたって吉田建さんに手がけていただいたオリジナルのアレンジが素晴らしいので、それに関しては建さんにもご了承いただいて、オリジナルの匂いは残しつつ、新しくなっている部分もあるという形にして。両立させるのはかなり難しかったですね。
剛:このリリースをきっかけに新たな方々にも「愛のかたまり」を認知していただけたらいいなと思いますし、自分たち自身、ライブで何度も歌ってきている大切な曲なので、ここからまた違う影響を与えてくれるんじゃないかという期待も込めて、ちょっと令和的なアレンジを施したサウンド感になりました。
――では、ボーカルについてレコーディングで何か意識されていたことは?
光一:ボーカルにしても、やっぱりオリジナルがいちばんだとは思うんですよ。その当時にしか出せない色というものがありますし。でも、せっかくセルフカバーするなら、何か変化を感じてもらったほうがいいんじゃないかということで、サビに関しては完全にふたりのパートが分かれる形を取っています。もともとはユニゾンで主旋律を歌っていて、そこにコーラスで自分が3度上を重ねていたんですけど、今回はそれぞれ違うラインを歌っているので、より“ふたり”というものを感じられる、ふたりだからこその響きになっているんじゃないかなって。それに関しても、もちろん聴き手によって感じ方は違うでしょうし、ユニゾンのほうがいいという方もいらっしゃるとは思うんですけど。
――すごく興味深いお話です。
光一:ちょっと補足をすると、もともとの曲を作った当時はカラオケがすごく流行っていた時代でもあったんです。主旋律に対して3度上のハーモニーラインっていうのは、非常に気持ちよくハマるんですね。そういったところも、当時はすごく意識しながら作っていたんです。さっきも言ったように、オリジナルのレコーディングでは、ふたりでユニゾンしている主旋律に対して、自分が3度上のコーラスを重ねているんですけど、今回は主旋律を剛くん、3度上のハーモニーは自分で完全に歌い分ける形にしていて。そうなると、ハーモニーラインがより明確に聴こえてくるはずなんですよね。「愛のかたまり」は今でもカラオケで多く歌われているそうですし、そういった意味では今回、完全にパートを分けることによって、そういった部分もより意識してもらえるんじゃないかなって。そういう想いも多少はありました。
――剛さんはいかがでしょうか。
剛:この楽曲を今、改めてリリースするっていう……いろんな時間を経てのレコーディングだったので、すごく不思議な感覚でしたね。今回、加筆した部分以外でも〈あなたでよかったと歌うの〉とか〈あまりに愛が大きすぎると/失うことを思ってしまうの〉とか〈今だけを見て生きていればいいのにね〉とか、いろんな歌詩があるんですけど、その一つひとつをファンの方への想いに重ねながら歌うみたいな瞬間もすごく多かった気がします。ファンのみなさんもいろいろな気持ちをたくさん抱いてくださっていることはわかっていますし、でも、僕たちも本当にたくさんの気持ちを経験して今、ここに至っているので。言葉や文字にするには難しい想いも含めて、お互いに今を一生懸命に生きているよねっていう気持ちを、全部この「愛のかたまり」には乗せたっていう感じですかね。
それは、光一くんも絶対にそうだと思うんですよ。お互いにいろんな気持ちがあると思いますけど、ふたりが話し合って選択しているすべてのものは結果、ちゃんと“愛”にたどり着くと信じ合いながら、一歩一歩今を歩いてるという感じなので。そういう特別な関係性のなかに宿る感情ってあるじゃないですか。よくある名前でもないのにたまたま苗字も一緒だし、そういうご縁とかも含めて改めて感じる瞬間もすごく多いですし。前に歌ったときは、ここまでの特別な感情ってそんなになかったはずなのに、今はいろいろなものを乗り越えてきた数だけ、歌にも歌詩にも宿っている気がします。
愛のかたまり -Promotion Movie- / DOMOTO
――ところで、ずばりおふたりが思う〈僕らの愛〉とは?
光一:やっぱり、音楽に対して非常に真剣に向き合ってきた二人組なので、変わらずそれを届けていくこともそうだし、最初にも言った通りファンの方が安心して応援していただける環境を整えていくこと、それ自体もやっぱりファンに対しての愛を持って動いていかないとできないことで。たくさんの愛情をいただいているからこそ、しっかりお返ししていかないといけない、そういう想いですね。
剛:やっぱりいろんな環境の変化のなかで、応援してくださる方、ライブに会いに来てくださる方々には、感謝してもし切れない想いがたくさんあるんですよ。これだけ環境が変化すれば、ファンのみなさんにも影響するものは大きいと思うんですけど、でも、その影響を少しでも、ひとつでも多くポジティブなもの、笑顔とかそういうものに変えたい一心でやっているので。時間がかかっても、一つひとつ丁寧に、愛を持って向き合っていきたい。その気持ちは消えないですから、本当にずっと。
――この先、DOMOTOの音楽はどんなふうになっていくのでしょう。
光一:我々には我々しか出せない音楽っていうものがあって、それを信じているから今も活動することにしているわけですからね。それは楽曲制作にしてもそうだし、ふたりで歌うことにしてもそう。どちらにおいても、「まだ何か魅力あるものが作り出せるんじゃないか」っていう想いがあるからこそやっているわけで、やっぱりそこは大きいと思うんですよ。
――たとえば今後、チャレンジしてみたいジャンルとか。
光一:ないですね。我々は我々の音楽を作るだけなので。これまでもずっと流行りに流された音楽をやってきてはいないですし、そこは変わらず。“DOMOTO”になったからこうしなきゃとか、そういう感覚もまったくないですしね。そのときそのときでどういったものを生んでいこうか、真摯に向き合いながら放出していく作業だったので、そこは今までと変わらない形でやれたらなと思っています。
剛:僕もいろんな可能性を追求したいので、断言はしなくていいと思うんですけど、個人的にはふたりだけで作ったアルバムをリリースしてみたいです。もちろん、いろんな方々に楽曲提供していただいた素晴らしい曲をどんどん歌って、どんどん世の中に放っていきたい気持ちもめちゃくちゃありますけど、ふたりでああだこうだ言いながら悩んで作るアルバムもちょっとやってみたい。せっかく10代から音楽番組をやらせていただいて、音楽に関わることが多くなって、結局のところ、このふたりは兎にも角にも音楽をずっとやっている人生じゃないですか。だから、そういう作品もありなのかなって。でもまずは何より、どれだけ環境が変わっても、そのなかで作っていける愛の形をふたりでたくさん模索していきたいですね。

リリース情報
「愛のかたまり」
- 2025/12/3 DIGITAL RELEASE



























