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<インタビュー>NOAが紡ぐ区切りの物語――5周年ライブと新曲「Just Say It」で見せた幕引き

インタビューバナー

Text & Interview: Mariko Ikitake
Photos: 鳥居洋介

 アーティストデビュー5周年を迎えたNOAは、ひとつの節目を迎えた。次のステップとして、自身を深く追求し、暗い側面も見せることで深みを増し、真のアーティストに近づこうとしている。常に成長する姿を見せるために切磋琢磨してきた彼からは、まだ見ぬ可能性を感じさせる。

 彼の次章のキーとなる“闇”の存在を打ち明けた5周年ライブ【NOA 5th Anniversary Special Live "LiGHTS"】では、新曲「Just Say It」がNOANAとともに歩んだ日々をよりスペシャルなものにした。「好きな人のために好きな人を諦める」ピリオドを描いたこの曲は、NOAとSARVRL、KIYOKIの同世代チームによって生み出された、夏の終わりの一曲。9月下旬、5周年ライブの余韻から一息ついたNOAに、切なさ漂う最新曲について話を聞いた。

──ずっと温めてきた1日限りの5周年記念ライブを終えて、今の心境はいかがですか?

NOA:正直、もっとあの時間を噛み締めたかった気持ちがあります。ステージから見た景色や感じ取ったことはすごく覚えてるんですけど、気持ちが入っていたからこそ、今まで以上に終わった後の「大丈夫だったかな?」が多かった気がします。このライブで届けたかったことがちゃんと伝えきれたのか不安が湧き上がって。あまりにも葛藤とワクワクの時間が多かったからか、今は「最高だった!」っていう気持ちと「やばい、もう次に向けて動かなきゃ!」っていう気持ちがごちゃごちゃしてます。

──前回のツアー“~Flashing Lights~”は光の中に消えていく演出で終わりました。今回は十字架のような光と暗闇が交差するスタートで、前回との繋がりはありますか?

NOA:タイトルをFlashing Lightsにした理由は、光こそ僕がデビューしてから大切にしているキーワードだからです。今思い返せば、前回のその光の中に消えていく流れからオープニング映像を作った気がします。今回は今まで以上に闇にフォーカスしたので、そこがうまく伝わるように心がけました。

──闇を見せるべく、タイトルを“LiGHTS”にしたわけですよね。

NOA:そうです。闇があるから光があるというか。暗闇の中にいる時間はあったけど必ず光はあって、それがNOANAだったので、「僕の光は皆さんです」っていうことを一番伝えたかったんです。

──NOANAがNOAさんにとってそういう存在であることは伝わってきました。どうして闇の部分を見せようという気持ちになったのでしょうか?

NOA:この5年間を振り返ってみて、そういう部分を見せてなかったなと思ったんです。別に隠してたつもりはないんですけど、次のステージに行くには必要なことかなって。明るい部分だけを見せるのではなく、この5年間ずっとあった闇の部分も見せることでアーティストとして深みが増すと思いましたし、人間味も出てやっと本物になれるというか。もちろん光の部分も僕ではあるんですけど、本当の自分には闇の部分も含まれていて、光の部分だけ見せ続けていても、それは偽りなんじゃないかなと思って。闇の部分も知ってもらうことで本当の僕が伝わると思うし、見せることで共感性も増すと思うんです。

──光と闇のバランスが必要ですよね。ライブ後、NOANAからどんな反応がありましたか?

NOA:少し衝撃を受けたNOANAもいれば、自分と重ねる方もいたようです。社会人の方からは楽しいだけの毎日じゃないから自分と同じで安心したっていう声もありました。「もっと応援したくなった」「もっとNOANAに頼ってね」って言ってくださる方もいて。自分を見せてもいいんだって思わせてくれる言葉ばかりでした。

──“Chaos to revive”(混沌からの再生)の幕を開けた「BURN」は、SNSのネガティブな部分がもとになった曲でしたよね。

NOA:はい。それをすべて燃やし尽くしてしまおうっていう意味で、あのパートを「BURN」で始めました。そのパートの前に流した映像では僕の心の奥を見せられたと思っていて、その流れで「BURN」をパフォーマンスすることで、この曲の意味も聞こえ方も変わったと思うし、実際にそういう反応もありました。

──そういった心に抱えるネガティブな部分、傷や怒りはなかなか消えないものですよね。

NOA:はい。でも、僕って忘れっぽいところがあって、鮮明に覚えているわけじゃないんです。なので、ライブの準備のために過去の嫌だったこととか気持ちがダウンする理由を思い返してみました。なんで嫌な気持ちになったのかを理解しないと謎のトラウマだけが残るんですよね。

──文字にしてみると、答えが見えてきたり、頭の中が整理できてモヤモヤが消えたりするって言いますもんね。

NOA:それは本当にあると思います。セトリを作りながら、「なんで自分はこれが嫌なんだ?」って嫌な思い出を書きだしてみたら、いろんなものが見えてきました。そのときに向き合わずにあやふやにしてきたのがいけないんだろうなって、改めて思いました。

──続く「Multiverse」、そして本編最後のナンバー「LIGHTS UP」は、どういった気持ちで書いた曲ですか? 当時のマインドはダークなところにいたのでしょうか?

NOA:「LIGHTS UP」を書いたときは、長い練習生時代を経てやっと自分の曲を出せる、もしかしたら自分にもスポットライトが当たるかもしれないっていう気持ちがありました。「Multiverse」はコロナ禍に書いた曲で、こんな世界じゃなかったらどうだったんだろうっていう気持ちで書いたので、歌詞の刺さり方は今でも当時と変わらないんですが、曲を聴いて頭の中に浮かぶ風景が変わりました。(2023年の)有明アリーナでもこの2曲をやってるんですけど、あのときの響き方が40だとしたら、今回は90ぐらい。自分の曲だけど、自分にも奥深いところまで響いた気がします。

アンコールの映像内でも言ったんですけど、デビューして1週間で辞めたいと本当に思ったんですね。韓国で見てきたデビューと日本のデビューの根本的な違いとか現実を目にして、デビューする前のワクワク感が無駄に思えちゃって、気持ちがすごくダウンしたんです。違いがあるのはしょうがないし、すぐにパンデミックが始まってしまって、自分の期待との差が大きすぎて、「ここまで頑張ってデビューしたのに、また試練を乗り越えなきゃいけないのか!」っていうショックで闇に陥ってました。

──その悔しさもあって、今のNOAさんがいるわけですね。当日は「Ticket」「Seasons」のあとに新曲「Just Say It」が初披露されました。〈離れるわけないよ〉の後の、この好きな人のために好きな人を諦める曲に胸が締め付けられました。

NOA:矛盾してますね、ハハハ(笑)! バンドセクションの最後にやりたかっただけで、その振り幅は意図したものではないです。ライブの準備の過程で「Just Say It」が完成して、アレンジがバンドサウンドっぽくなったので、これはバンドでやる必要があると思って、急遽入れました。

──7月にリリースされた「Merry Go Round」は夏の曲ではないとおっしゃっていたので、この曲が夏の曲にあたるわけですね。

NOA:そうです。夏の終わりって寂しいですよね。その切なさをラブストーリーで表現しようと考えて、ただ切ないだけじゃなく、好きな人のために好きな人を諦めるっていう複雑な気持ちやもどかしさ、交差する感情を描こうと思いました。

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「好きな人のために好きな人を諦める」っていうキーワードが、その情報が解禁された後、より鮮明に伝わる気がしているんです

──ライブ初披露、そして音源配信後に、NOANAたちからどんな言葉が届いていますか?

NOA:ライブに来てくれたNOANAからは、悲しい・切ないっていう感情よりも、キラキラした思い出を思い出す曲のように聞こえたようです。新鮮って言ってくれる方もいて、いろんな反応がありました。

──共同制作されたSARVRLさん、KIYOKIさんとどう進めていったんでしょうか?

NOA:二人とも僕より年下で若いんですよ。同世代で一曲作ってみるアイデアが出て、僕が1年以上前に作ったデモを二人が気に入ってくれて、それから活発なコミュニケーションが始まりました。できたその1曲目があまりにもよすぎて。「この曲を絶対に出したい」って思って、本格的な作業に移りました。

KIYOKIくんが書いた歌詞は完全に別れた相手に向けたものだったんですけど、僕は付き合う前、その相手のことが好きなんだけど相手はそうじゃないとか、この人が幸せになることを考えたらその相手は自分じゃないって思っている、そういう気持ちにしたかったんです。対象の幅が広いほうがいろんな人が共感できるかもっていう気持ちもあって。その点を二人に伝えましたし、僕もそう意識して作りました。

──少し自信のないキャラクターが出ていますよね。

NOA:サビではstayとgoの二択があるんですけど、最後はもう諦めきっているというか。最後に音がパチっと切れることですべてが終わったことを感じさせますよね。僕の中では完全に無理だろうなっていう気持ちが強くて、「あのとき君にああ言えばよかった」「あのときこうしていれば」っていうモードが切なさを足してる気がします。


──歌われる前に一瞬、言葉を詰まらせているように見えました。実体験をもとに曲を書かれていると思うので、もしかしたら相当ダメージを受けた思い出だったのかな、なんて思ったのですが……

NOA:たくさんの方から「泣きそうになってたけど大丈夫だった?」って言われたんですけど、ホント無意識だったんですよ(笑)。切なさを伝えたかったし、気持ちが高まっていたから、そう見えたのかもしれないですね。僕も不思議です。切ない歌詞と反してトラックは明るめで、そのバランスが好きだし、すごく好きで大事な曲でもあるから、そう見えたのかも。

実はまだ詳細を明かせないんですけど、この「好きな人のために好きな人を諦める」っていうキーワードが、その情報が解禁された後、より鮮明に伝わる気がしているんです。皆さんにはそのときに詳しくお話ししますね。

──楽しみにしています。言えなかった後悔や言われて悔しかったこと、叶えられなかったことはたくさんありますか?

NOA:うーん……あるっちゃありますね。後悔の気持ちが曲を書くきっかけになったりしますし、それこそ「Ticket」もそういう後悔があって書いたものです。でも今は、少なからず次に繋げようとしていますね。ただ後悔して終わるだけにはしないようにしてます。

──すでにマインドは“これからの5年”に向いていると思います。

NOA:これからの5年は、2020年から2025年までに培ったものをしっかり繋いでいく年だと思ってます。僕の中では5年刻みで考えていて、次の5年は新たな変化を見せなきゃいけない大事な年だと思っているんです。長年の目標でもあるワールドツアーを叶えるための時間が始まるんじゃないかなと。

──アジアだけでなく、アメリカやヨーロッパへも視野を伸ばしていくということですね。次のアルバムがどうなるのか、すでに楽しみです。

NOA:常に制作は行っています。ストックもたくさんありますし、横浜BUNTAIで披露した「Eyes On Me」はまだ途中なので、全部がしっかり結びつくアルバムにしたいと思っています。

──今年は【SUMMER SONIC BANGKOK】の出演、そしてJay Parkとのステージ共演もあり、叶えられたこともありましたよね。

NOA:小さい頃から大好きだったJay Parkさんと同じステージに立てたことはすごく嬉しかったですし、そこで終わらせるのではなく、しっかりと何かに繋げていきたいです。バンコクは温かく迎えてくれて、ライブの反応もとてもよかったし、久しぶりに現地のファンと会えて僕も楽しかったです。最後に会ってから2年ぐらい経っていたので、待っていてくれたことも嬉しかったですね。これも1つの縁だと思っているので大事にしていきたいって強く思いました。

──12月にはビルボードライブツアー、そして来年1月にはホールツアーが控えています。NOANAがNOAさんにまた会える日まで、もう少しの辛抱が必要ですね。

NOA:去年に比べて今年はNOANAと会う機会が少なかったからこそ、横浜BUNTAIがより貴重で特別な日になったと思います。もちろん頻繁に会うことも大好きですけど、時間を空けることでその1回を大事にできるし、僕も成長を見せることができる。「最後に見てから2〜3か月しか経ってないのに、もう成長してる」って思ってもらいたくて、すごいものを見せたいと思っています。

──それぞれのツアーでは、どんな姿を届けようと考えてますか?

NOA:去年のビルボードライブはクリスマスにフォーカスしましたが、今回は5周年を振り返りながら、年末でもあるのでパーティーじゃないけど、みんなとワイワイ過ごしたいと思っています。【LiGHTS】でやってない曲をメインにやりたいなって、なんとなくセトリを組んでますし、「こんな曲もやってくれるんだ!」って思ってもらえそうな曲も披露したいなって。【LiGHTS】でもホールツアーでも聞けない楽曲がビルボードライブでは聞けると思います。

ホールツアー初日の1月10日は僕のデビュー日でもあるので、6周年の1日目ということで、その始まりをしっかり伝えたいです。新たな5年の区切りの始まりを皆さんに感じてもらえるライブにしたいと思ってます。

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