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<インタビュー>DEAN FUJIOKA 初のフルオーケストラ公演 音楽で旅する時間と感情の物語をテーマに届ける、本人待望のステージとは



インタビューバナー

 俳優・モデル・映画プロデューサーなど多彩な顔、活躍を見せるDEAN FUJIOKA——その活動の原点にはアーティストとしての顔があり、 2023年には日本での音楽活動開始から10周年を迎えた。そんな彼が「表現者としての旅の過程で必ず通らなければいけない、通りたいと思っていた」 という初のフルオーケストラコンサート【billboard classics DEAN FUJIOKA Premium Symphonic Concert -旅人-】を、 12月9日東京芸術劇場コンサートホール、19日京都コンサートホール 大ホールで開催する。“音楽で旅する時間と感情の物語”をテーマに、 観客と共にこれまでの人生を辿る音楽の時間旅行に出かける。10周年を機に、新たなフェーズに入ったというDEANの現在地と、 表現者として“その先”をどう捉えているのかが垣間見えるコンサートになりそうだ。コンサートへの意気込みを尋ねると、 このコンサートを誰よりも楽しみにしているワクワクが隠せないDEANがそこにはいた。 インタビューは昨年行なった初のビルボードライブツアーについてから始まった。
(Interview & Text:田中久勝 | Photo:石阪大輔)


昨年のビルボードライブツアーを振り返って

── 昨年初めてビルボードライブツアーを行ない、お客さんと至近距離でコミュニケーションを交わし、大きな刺激になったと思います。

DEAN:あのツアーも今回のビルボードクラシックスと同じように、やらなければいけない、いつかやりたい、 歌い手として絶対通らなければいけない場所だと思っていました。自分は職業としてのアーティスト、 歌手としてのスタートがすごくありがたいことにキャパが大きな会場からスタートだったので、 逆にお客さんに近い距離で歌を届けるということができていなかったのが、ずっと心残りでした。 もちろんハコのサイズの大小は関係ないけど、そのハコの鳴りとか、そこにみんなで集まっている瞬間の奇跡みたいなものを、 どう楽しむか、コミュニケーションを楽しむかだと思います。でもこのまま例えば正攻法にハコを大きくしていくという目標を持って前に進んでいくとしたら、 決定的に何か欠けていると思いました。 大阪城ホールや日本武道館、大きなハコでやらせてもらって、でもビルボードライブではお客さんと目が合いまくりだったし、 恥ずかしいくらいの近い距離で本当に刺激になったし、大きな収穫がありました。

── あの距離感は何も隠せないし、自分を曝け出すような感じだったと思いますが、 お客さんひとり一人に届いてる感じを実感でき、やみつきになったのではないでしょうか?

DEAN:本当にそうです。でも次またやらせていただくとしたら、全く同じ形ではダメだと思っていて。 今回初めてビルボードクラシックスのステージに立てるということで、それを経て前回とは違う意味を自分も見出さなければいけないと思います。 それは公演数や編成やセットリスト、色々な変化が考えられますが、昨年とは全く違う意味をそこに生み出すことができるかどうか、 また別の勝負が待っていると思うので、楽しみです。

DEANFUJIOKA

初のフルオーケストラとの共演、待望のステージ

── 今回の【billboard classics DEAN FUJIOKA Premium Symphonic Concert -旅人-】が決まった時はまずどんな思いで受け取りましたか?

DEAN:もう待ってましたっていう感じでした。もちろんフルオーケストラをバックに歌うことは、 歌い手としては責任重大だし、緊張感も伴うと思いますが、表現者としての旅の過程で必ず通らなければいけない、通りたいと思っていました。 ようやくその時が来たんだなって武者震いしました。

── 夢が叶った瞬間ですね。DEANさんが思うオーケストラサウンドの魅力は?

DEAN:母がピアノ教室を開いていたこともあって、家ではいつもピアノの音が鳴っていたし、 小さい頃からクラシック音楽は身近で、オペラやバレエも観に行っていました。そういうオーセンティックな魅力はもちろんですが、 例えば僕がリスペクトしているヘヴィメタルバンド・メタリカがオーケストラと共演した時に感じたのは、 ジャンルを超えたときになんていうかクラシックが持つ本当の潜在的な何か、ヒリヒリするような本性のようなものが露わになると感じました。 電子音楽と重なった時やクロスボーダーで表現する時のオーケストラの存在感の大きさ、美しさは圧倒的だし、その可能性の大きさはすごいと思います。

DEANFUJIOKA


コンサートタイトル"旅人"に秘められたストーリー

── ロックやポップスとオーケストラが融合した音源は、新鮮なまま時を超える感覚があるし、ライブは忘れられない瞬間になります。

DEAN:そう思います。今回時を超えて旅をするというテーマにしたので、ぴったりだなって思って。 旅って色々な旅があって、旅行、時空を超える旅、感情の旅、それからその瞬間的なものの奥に行くような感覚という旅もある。 だから今回のコンサートも自分が思いもよらないような旅の結末にたどり着けたらいいなって素直に思います。 それを含めて劇場に足を運んでくださる方々と一緒に旅をして、どこが着地点なのか人それぞれ感覚は違うと思いますが、お互いにそこに何か発見があるといいなと思っています。

── DEANさんのライブはストーリー性がある、シアトリカルな内容で没入感が強く、みなさんワクワクしながら観ている印象が強いです。今回はどんな内容になりそうですか?

DEAN:全貌は観てのお楽しみということにしたいのですが、ストーリーがしっかりあって、その連続性の中に縦と横の軸があると思っていて、 そこで1曲1曲を積み重ねていって最終的にどんな感情に、どんな景色にたどり着くのかというイメージのものにしたい。そういうセットリストを考えています。

── 今回セットリストを作る時、もちろん今回のテーマに沿ったものという意識はあったと思いますが、よりオーケストレーションが映える曲、 オーケストラサウンドにしたら意外な面白さが出てきそうな曲、という観点もあったのでしょうか。

DEAN:その全部かもしれませんが、バランスです。ここはやっぱり音の力を借りよう、ここはこの楽曲が持つ言葉の力がどう響くかとか、 その共鳴させるものの違いというか。BPMの展開やサウンドももちろん考えるし、メロディや歌詞も重視するし、正直オーケストラでやったことがないからどうなるかわからないけど、 もう今までやってきた経験値を総動員してトライします。

DEANFUJIOKA


音楽探求は次のフェーズへ その先にあるものを見つける旅

── DEANさんの音楽を聴いていると、色々な音楽を自身の中で消化し、それを作品に昇華させてきたと思います。それが2023年の10周年を超えて、 初のベストアルバム『Stars of the Lid』をリリースした後からの作品は、違うフェーズに入ってやるべき音楽を追求している、そんな転換期を迎えているのでは、と感じました。

DEAN:昨年発表した「In Truth」という楽曲は、ベスト盤制作と同時期に、 ドラマの撮影で台湾に滞在中にラップトップとスマホで作って歌入れをして。音楽を始めた当初目標にしていた、ラップトップを持って世界中で表現活動をするという スタイルがもうできた、これで終わりかなって思ったんです。じゃあ次はどういう形でDEAN FUJIOKAっていうアーティストが楽曲を生み続けるのか、 出し続けるのかということを探す期間でもあったのかもしれません。体制の変化も含めておっしゃる通り過渡期だったと思います。

── 次へ向かって歩き始めたDEANさんにとって、このフルオーケストラコンサートは大きな意味を持ちそうですね。

DEAN:おっしゃる通り僕は今まで色々なサウンド、ジャンルの音楽を旅してきて、ひとつのゴールというか、そこで終わりではないけれど、 あのタイミングで1チャプターが終わったみたいな感覚はありました。そこから先は例えば違うアーティスト名になってもいいくらい、音楽を進化させたいと思ったし、 そういうタイミングでビルボードクラシックスのステージに立たせていただくのは、どこか運命的なものを感じています。

── DEANさんは日本と拠点のインドネシアを行き来して、さらに海外での活動にも注力していて、まさに今回のライブのタイトルのように“旅人”だなって思います。

DEAN:僕はパウロ・コエーリョの『アルケミスト 夢を旅した少年』という本が大好きで何度も読み返していますが、 読み終わった後どう感じるかは人それぞれだと思いますが、なぜ旅人が旅をするのかというと、自分なりの仮説として「愛を知るため」だと思っていて。 それを表現の真ん中に据えることで、どんな歌詞、サウンド、音源、ライブが必要なのかがおのずと見えてくるはずなんです。今回のコンサートも一緒に旅をして、 その先にあるものを見つける楽しさをみなさんと共有したいと思っています。

── ライブが終わった後、お客さん一人ひとりとDEANさんの心に何が降ってくるのか、楽しみですね。

DEAN:自分の心の持ちようだったり、何を求めるかだと思いますが、僕自身のことでいうとやったことないことにトライしたいという気持ちや、 今まで何度も歌ってきた歌を全く違うアレンジで歌うことで何を感じ、それが自分の中でどんな反応になるのか。例えばオペラやバレエを観終わって劇場を出た時に、 観る前とは確実に違う顔、人間になっていると思うんです。そういう感覚を自分も含めてそこにいる全員が味わうことができたら、 その時その場所にいるという奇跡の瞬間みたいなものの意味が、生まれるのかなと思っています。

コミュニケーション 変わらず中心にあり続けるもの

DEANFUJIOKA

── 改めて、音楽を作る上で、DEANさんが一番大切にしていることを教えてください。そしてそれは変わっていないか、変わったのか。

DEAN:やっぱり変わらないものとしては、それはちゃんとコミュニケーションとして成立するかどうかです。 基本は自分がやりたい音楽を提示して、それは様々な挑戦から生まれるもので、それを聴いてくださったから何が戻ってくるか、 もしくは戻ってきたときにそれをちゃんと受け止められるか、そして確信が持てるかということをずっと大切にしています。音楽を聴いていただき、何かを感じてもらえるか、 ライブに来ていただいて楽しんでもらえるか、それがコミュニケーションだし、そこが中心にあることは変わらないです。 変わったなと思うのはもっと“歌い手”としてありたいという気持ちが強くなったかもしれません。

── シンガー・ソングライターというよりも、シンガーとしてもっと歌に特化してみたい、と。

DEAN:歌でのストーリーテリングみたいな部分の比重を増やせたらいいなと思って。そのために楽曲がどういう形になるべきか、 サウンドやアレンジがどうなるかという捉え方です。 そこは先ほど出てきた、ベスト盤の前と今とでは全く違う気がします。これまでは曲を作る時、 歌を楽器の一部として捉えていたので、全体の中でどう鳴り響いているかを俯瞰しているような感覚が強かったけど、 今は歌でどこまで奥行きや余白を出すことができるかという思考になっています。

── DEANさんはアーティストとしてだけではなく、俳優など様々な“顔”を持っていますが、表現者としてDEANさんの中で音楽と演技の比重はどういうバランスになっているのでしょうか?

DEAN:確かにDEAN FUJIOKAを構成する成分の比率みたいなものは自分でもすごく興味があって、たぶんそれぞれ相互作用しているとは思いますが、 自分自身はひとつの球体みたいなものだなと思っていて、その時どっちの面に光が当たっているかという差だと思っています。

── 演技をしている時もアーティストとしての感性が作用している部分もある。

DEAN:やっぱりセリフを発する時、自分はその役としてどうリズムを取って、表現するかという部分に、 アーティストとしての感性を応用することができるし、どっちが元でどっちが応用先かっていうのはないくらいの球体というか。でも確実に交差する技術もあるし、 結局呼吸のコントロールだと思います。演技ってどちらかというと内面から滲み出るもので、それはやっぱり心拍数の変化だったり、生理的なものが皮膚の表面に出るから、 そのミラー効果をお客さんは見て感情移入していくのだと思います。息をのむ、という表現がありますが、呼吸のコントロールで、リズムや音量のトーンをコントロールしているので、 歌も演技も、いまこうしてインタビューしている瞬間も、コミュニケーションをとっているという意味では一緒だと思う。キリがないくらい、 共通する部分と全く違う部分がたくさんあると感じています。

(衣装:ZEGNA / ゼニア)


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