Billboard JAPAN


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<インタビュー>THE BEAT GARDEN、傷を力に変えた5人の新体制初アルバム『MADE IN DAMAGE』で光る強みと個性

インタビューバナー

Text & Interview: 黒田隆憲
Photos: Yuma Totsuka

 THE BEAT GARDENが、約2年2か月ぶりとなるニュー・アルバム『MADE IN DAMAGE』をリリースした。本作は、3人体制から5人体制となって初めての作品であり、「傷」や葛藤をポジティブに昇華し、個々の物語をリアルに映し出した全11曲を収録。新メンバーのKAIとkowta2の加入によって、ハーモニーの厚みやサウンドの表情が大きく広がり、グループとしての新章を鮮やかに描き出している。

 恋愛の機微を軽やかに描く「恋ってスタディ?」や、切なさを秘めた「ラベンダー」、ストレートな愛情を歌う「1分の1のラブソング」など、各楽曲のジャンルや温度感の振り幅も豊か。メンバーそれぞれの声や言葉が立ち上がり、これまで以上にパーソナルな感情が息づく。Billboard JAPANのインタビューでは、アルバム制作の背景やタイトルに込めた思い、新体制で挑む初の全国ライブハウスツアーへの意気込みをメンバー全員に語ってもらった。

左上から(時計回り):藤掛昌斗、KAI、U、kowta2、渡部怜

──前作『Bell』からおよそ2年2ヶ月ぶり、新体制での初めてのアルバムになります。まずはアルバムタイトルのテーマや由来をお聞かせください。

U:タイトルのきっかけは、「ロックアルバムっぽい響きにしたい」というシンプルなものでした。新体制になってフレッシュな空気はありますが、僕ら3人(U、藤掛昌斗、渡部怜)はこれまで10年以上活動を続け、その歌や音楽は、常に自分自身の葛藤や不安から生まれてきたものが多いんですよね。それに、この半年間でKAIやkowta2と多くの時間を過ごし、2人の人生や音楽活動にも順風満帆ではない時期や紆余曲折があったことを知りました。新体制とはいえ、いわば「傷を抱えた者同士」が出会って5人になった。「MADE IN DAMAGE」には、そんな「傷」があったからこそ出会えたメンバー、言葉、メロディーへの思いを込めています。

──KAIさんの加入により、ハーモニーなどにどんな変化がありましたか?

U:まず、ライブでもユニゾンの厚みが格段に増しました。怜と昌斗は地声が低めで、僕はミッド〜ハイの中間くらい。以前は僕に合わせて2人が少し高めに歌ってくれていましたが、今回はローに振り切り、そこにKAIのハイトーンが加わって、三声から四声になるだけでこんなにも厚みが変わるのかと驚きました。

KAIはもともとロック出身で、初めて聴いたときは女性ボーカルのバラードを歌っていて、それがすごくよかったんです。アルバムではトップレンジではなく、あえて低めのキーを歌ってもらいましたが、そこから別の色気や優しさ、甘さのようなものが引き出されました。おそらくKAI自身も初めて気づくレンジだったと思いますし、その声色を一緒に探しながら、いい形に仕上げられたと思います。

KAI:加入して初めてのシングル「Happy Ender」と、カップリングの「She」では、どちらもメインでサビを歌わせてもらいました。このアルバムではリード曲を含め、サビを担当しない曲もあり、それが逆に「自分はTHE BEAT GARDENの一員なんだ」という実感につながっています。サビを歌わないポジションでは、ハイトーン以外のレンジで声の使い方や色を変え、曲に合わせて表現するという新しいチャレンジもあり、とても刺激的な経験でした。

:ボーカル4人になってから、それぞれの声色の特性をより活かせるようになりました。僕にとってラップは大きな強みであり、やりたいことをどんどん形にできる環境になってきています。例えば、「世界線〜ラブ☆ピース〜」(以下、「世界線」)はUさんのキーに合わせた低めの設定で、KAIがサビを歌っています。KAIはロックが得意で、ハイトーンなのに耳につくことなく、聴きやすくて疾走感がある。そのバランス感も含めて、新しいサビの形を作れたと思いますね。

──同じく正式加入した、kowta2さんの役割や音楽的な影響についてはどう感じていますか?

U:kowta2はユーモアにあふれていて、かれこれ5〜6年一緒にいますがネガティブな空気になることがほとんどない。明るい性格が声にも表れるので、ブースでも照れがなく自然体でパフォーマンスできますね。「世界線」のサビ前の〈3、2、1!〉というカウントは、彼がオリジナルで入れたものです。THE BEAT GARDENの音楽に遊び心やユーモアを入れてくれるkowta2の存在感は、今後ますます大きくなるでしょうね。

kowta2:サポートの時は、とにかく「サポートに徹する」意識で動いていました。でも正式メンバーになってからは、アレンジ面もそうですし、アートワークやグッズ制作などにも関わるようになりました。そうやってグループに貢献できるのがすごくうれしいですね。一緒に加入したKAIは頼もしい同期だと思っていますし、お互いに助け合いつつ、新たなTHE BEAT GARDENを一緒に作っていけたらと思っています。

──3人の頃と比べて雰囲気などは変わりましたか?

U:全然違います。kowta2がふざけると、こちらも本気で乗っかりたくなるし、笑いすぎてお腹が痛くなることもあるくらい(笑)。ステージングに関しても、3人の時から自由ではありましたが、5人になってさらに自由度が上がりました。アレンジもフューチャーポップな曲から思いっきりコミカルな曲まで、振り幅がさらに広がりましたね。

:3人の時は「3人で一つの声」というか、「声色が似ている」と言われることも多かったんです。それはそれでいい面もありましたが、今はそれぞれの個性が際立った気がしますね。声色の違いも自然に出てきていますし、得意・不得意をお互いに補い合えるのも助かっています。

──歌詞は主にUさんが手がけています。以前と比べて書きたいテーマや視点に変化はありましたか?

U:大きく変わりました。『Bell』までは、ラブソングでも「好き」という言葉をなるべく使わずに好きな気持ちを伝えることを意識していました。それに、「3人全員に似合う言葉じゃないと使いたくない」という意識が自分の中でとても大きかったんです。

でも、「これは書いちゃダメだ」というブレーキが外れ、今作では自然にペンが進みました。ラブソングも、心の根っこにあったものが、そのままメロディーと一緒に出てくるというか。以前はメロディーを聴きながら言葉を考えていましたが、今回は歌いながら同時に言葉が出てくる。苦労して絞り出すのではなく、自然にありのままが形になった感じがしますね。


──「ラベンダー」はKAIさんが歌詞を担当しています。

KAI:デモの段階でメロディーと一緒にタイトルもUくんが考えてくれたのですが、「ラベンダー」という言葉には「ラブ」と「エンド」が含まれていることに気づき、失恋ソングにしました。

ラベンダーという花は、枯れるときに色を残したまま枯れていきます。それを「好き」という気持ちを残したまま年を重ねていく女性の目線と重ねています。1番の〈枯れてく私はラベンダー〉と2番の〈きれいに飾られたカレンダー〉で韻を踏んでいます。付き合っていた頃は、あなたとの予定がたくさん書き込まれていたカレンダーが、今は真っ白なまま。その寂しさをサビの切ないメロディーに乗せました。ストレートに「悲しい」とか「寂しい」と書くのではなく、比喩的な表現を多く入れることで、その切なさがより引き立てばいいなと。

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──アルバムの中で、思い入れやこだわりのある曲をそれぞれ教えてください。

kowta2:僕は「世界線」ですね。さっきUさんが言ってくれたように、この曲は僕の掛け声がたくさん入っているんです。レコーディング当日に「この部分を歌ってほしい」とUさんに言われ、「どんなテンションでいきますか?」と聞いたら「素のままでOK!」とのことだったので、そのまま楽しんでやったものが使われています。

KAI:作詞・作曲で関わった「ラベンダー」と「フレンズ」にはもちろん思い入れがありますが、それ以外だと僕も「世界線」です。とにかく楽しくて、リリースイベントでもすでに数回披露しました。オブリガート(メロディーを引き立てるために欠かせない伴奏部分)が洋楽っぽく、シャウトもできるので、とても気持ちいいんです。僕はライブで暴れたいタイプなので、それが許される曲ですし、お客さんも一緒に暴れられる曲です。9月からのライブハウスツアーでも、そういう空間になるのが楽しみです。

昌斗:僕は「ラブコメディ」ですね。少年時代を思い出させるような懐かしい曲調で、自分らしさをそのまま出せるし、嘘偽りなく歌える感覚があります。〈君の秘密の丘を登りたい〉という一節は、男としての気持ちが詰まっていて特に好きです(笑)。

U:この曲は、アルバムの中で最後に作った曲です。平成とフューチャーポップをテーマに、ロックの要素も加えました。最初に「恋ってスタディ?」ができて、「これがTHE BEAT GARDENの新しい代名詞になる」という感覚があり、その並びでも違和感がなく、かつ個性のある曲を作りたいと思ったんです。アルバム最後の1枠だったのもあり、「もっと思い切ってやろう」と決めて平成のヒット曲を彷彿とさせるテイストを散りばめました。

:僕は「恋ってスタディ?」です。Uさんのデモを聴いて「こういう歌詞が乗るんだ」と驚きました。今のビートにぴったり合っていて、軽やかさと少しのだるさが今の季節感にも合っている。イヤホンで聴いても、ライブで歌っても楽しい曲ですし、新しいお客さんが「なんだろう?」と興味を持ってくれるのも魅力です。表題曲でもあるので、大切にしたい1曲ですね。

U:「恋ってスタディ?」は、お風呂場でサビを鼻歌で作ったのが始まりです。ロック寄りの、「Happy Ender」のミディアムバージョンのようなイメージでした。KAIと電話で話しているときに「このサビ、踊れそうですよね」と言われて、「そういうふうにも聞こえるんだ!」と新しい発見がありました。5人の声のレンジを意識しながら、音程や配置も細かく調整して作っています。

──Uさん自身はどうですか?

U:僕は「1分の1のラブソング」が気に入っています。さっきも言ったように、これまでは「好き」という言葉をあまり使わないようにしていましたが、この曲でははっきり「大好き」と言っています。3人の時だったら、おそらく照れくさくてできなかったと思いますが、KAIとkowta2が加わったことで、もっとストレートに歌っていいと思えるようになりました。まだライブでは歌っていませんが、ライブハウスで披露するのが楽しみです。まっすぐ歌いたいですね。



──個人的には「わたし」が好きです。〈幸せは他の誰でも無い わたしの中で生まれるの〉という一節は特に印象に残りますが、どんなふうにして生まれたフレーズですか?

U:うれしいです。この曲は、ドラマ『あの子の子ども』の主題歌として書き下ろしたものです。高校生が妊娠してしまう話で、僕自身の経験とは違いますが、「若いながらの不安や苦しさ」という部分には共感できました。両親が共働きで家にいないことが多く、僕は学童に通いながら育ったんです。帰り道はいつも一人だったし、母親の自転車の後ろに乗ってスーパーへ行く子を見ると、ちょっと胸が痛む――そんな子どもながらの切なさを長く経験してきたんですよね。

とはいえ、学童の先生やお姉さん、近所の方々にとても優しくしてもらいました。今こうやって音楽を幸せに続けられているのも、事務所の方々やメンバーのおかげですし、一人だったらどうなっていたのかと思います。そうやって誰かに支えられてきたけれど、さらに深く噛み砕くと、「幸せは私の中にある」と自分で思えることが、本当の強さなのではないかと感じたんです。ファンやメンバーが僕の書いた言葉を自分のように歌ってくれることで、その強さを持てた。そんな気持ちで書いた曲ですね。


──〈大切は他の誰でもない あなたとの間に生まれるの〉という歌詞もいいですね。対象そのものではなく、その人との「間」にあるものにフォーカスする気持ちは、どこから生まれたのでしょうか。

U:自分で自分を大切にすることはもちろん大事ですが、それだけでは限界があると思うんです。努力や自信も、誰かに言われる「すごいね」のひと言のほうが心に響くことってありますよね。「大切(なもの)」も同じで、自分だけにフォーカスして守ろうとすると、逆に傷つけてしまうこともある。だからこそ、他者との間でこそ、本当に長く続く「大切」は生まれるし、渡し合えるのだと思います。

──矢印が、自分だけでなく相手にも向いていることが大事というか。

U:まさに。相手を大切にすることで、その気持ちがまた自分にも返ってきて、お互いを大切にできる。そういう瞬間こそ、尊くて美しいと感じるんですよね。

──フリーライブやツアーも控えていますが、この5人体制でのライブへの意気込みを、それぞれお聞かせください。

:今回が5人でまわる初めてのライブハウスツアーです。新メンバーが加わったことで、ボーカルの色がより明確になり、ライブでは各メンバーが自分の持ち味を思いきり表現できる環境になりました。お互いの見せ場を全力で支え合う、そんな強みを活かしたライブになると思います。

昌斗:未知数な部分も正直まだありますが、『MADE IN DAMAGE』はいい意味でわがままを通して作った作品です。そのよさを最大限にライブで表現できるよう、メンバー全員でアイデアを出し合ってセットを組みました。お客さんが加わって初めて完成する部分も多いので、どうか力を貸してほしいです。初めてのライブという気持ちで、一緒に作っていくツアーにしたいですね。

KAI:今回はアルバムを持って全国をまわれること自体が嬉しいです。リリースイベントでは、新しく足を止めてくれる人たちも増えています。そういう方々も巻き込んで、一緒に盛り上げていきたいと思っています。

kowta2:暑い日が続くので、どうか熱中症対策だけは忘れずに! 5人でのライブハウスツアーは初めてですが、回を重ねるごとにレベルアップしていくはずです。セットリストはジェットコースターのような構成で、途中に小休憩も挟みつつ、最後まで楽しめる内容にしています。来てくれた人には、単に観るだけじゃなく「体験」してもらえるパフォーマンスを届けますし、DJの固定概念もいい意味で壊せると思っていますね。

U:フリーライブでは、毎回終演後に100人以上フォロワーが増えるという、今までなかった現象が起きています。ショッピングモールのような流動的な場所でも、足を止めてくれる人が増えているのは、このアルバムが持つ新しさの証拠だと思っています。ライブでは予定調和を壊すような展開を作り、「聴く」よりも「一緒に歌う」ライブにしたい。歌詞カードにもみんなで歌うパートを書きました。知っている人も知らない人も、思いきり声を出して楽しんでほしいですね。

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