Text & Interview: 坂本ゆかり
Photos: 辰巳隆二

　2011年に韓国デビュー、2012年に日本デビューしたコヌ、インス、セヨン、ジュンQ、ドイヒョンの5人組グループMYNAME（マイネーム）。日本で積極的に活動し、日本語もネイティブ並みでもある、K-POP 2.5世代グループが、7月に日本デビュー13周年を迎えるのを機に日本で7年ぶりとなるミニアルバム『VIVID』をリリースする。

　7年の空白の間には、メンバー各人の入隊やコロナ禍などさまざまな事情があった。現在、メンバーのドイヒョンがグループ活動休止中。さらにジュンQが俳優活動を行っているために今作はコヌ、インス、セヨン3人での活動となる。3人でもあえて今、新作をリリースした理由を訊いた。

左から：コヌ、セヨン、インス

──ミニアルバム『VIVID』の全曲に、これからのMYNAMEの決意が表れている気がしました。制作にあたってのコンセプトは何だったのでしょう。

コヌ：7年ぶりのMYNAMEのミニアルバムですから、「僕たちの未来を鮮明に見せたい」という思いが一番大きかったですね。

セヨン：3人で話し合ったのは、「7年間待っていてくれたファンの皆さんのために、デビューの頃のように未来を見据えて、一歩ずつ進んでいこう」ということでした。

インス：MYNAMEは5人だけれど、今回は僕たち3人での活動になります。だから、参加できなかった2人の不在を感じさせない作品にすることも心がけました。

──参加できなかったジュンQさん、ドイヒョンさんに完成した『VIVID』は聞かせましたか？

セヨン：まだ聞かせていません。発売したら驚かせようと思っているので（笑）。

──『VIVID』には6曲が収録されているので、1人2曲ずつ紹介してください。

セヨン：僕は3曲目の「For You」と5曲目の「Forever You」を紹介します。2曲ともミディアムテンポのバラード曲です。タイトルを見てもらえばわかると思うのですが、7年間待ってくれた僕らのファン……MYgirl（MYNAMEのファンダム名）の皆さんに歌詞を伝えたい、ファンソングです。ぜひ歌詞を見てほしいし、ライブで一緒に歌ってほしいです。

──「歌詞を伝えたい」ということですが、お気に入りの歌詞はありますか？

セヨン：僕はラッパーなのですが、今回は3人ということもあり、歌のパートが増えたんです。だから自分の担当するパートが増えたけれど、「特にこの歌詞が好き！」と限定はしたくないんですよ。全編を通して伝えたい気持ちがあるから。

インス：俺は「BAD BAD HIGHER」と「Our Days」に関して話しますね。「BAD BAD HIGHER」はタイトル曲なので強い印象のある曲なのですが、未来志向な歌詞の内容は今のMYNAMEのポジションを表していると思います。

──「BAD BAD HIGHER」はハードなダンストラックなので、ダンスにも期待しています！

セヨン：うん、めっちゃ踊る感じです。

インス：DA PUMPのKENZOさんに振付をしてもらったんです。

セヨン：今までのMYNAMEの振付よりも、ヤングな感じで新鮮ですよ（笑）。見どころは、僕らのデビュー曲「Message」をオマージュした振りです。7年ぶりのアルバムなので、KENZOさんとも「原点に帰ろう」と話し合ったんです。MYgirlなら、すぐにわかると思います。

インス：1曲目の「Our Days」も説明します。セヨンが「For You」と「Forever You」を“ファンソング”と紹介したけれど、「Our Days」もファンソングだと思います。明るい雰囲気の曲なので、アニメのOSTとして似合いそうだなと思いました（笑）。

コヌ：僕はまず、4曲目の「With Or Without You」を紹介します。僕らは略して「WOW」と呼んでいます。

──6曲の中では、異色のヒップホップです。

コヌ：そうですね。タイトル曲の「BAD BAD HIGHER」以外は、ファンに気持ちを伝える優しい曲が多いので、ダンスパフォーマンスを見せる曲も入れたいなと思って。MYNAMEらしさを見せられる曲かな。2サビが終わってブリッジに行く前の、セヨンのパワフルなラップが一番のポイントだと思います。

そして最後のトラックとなる「We Are The One (with MYNAME)」は、僕が作った曲です。MYNAMEが日本デビューして13年が経ちました。その間には兵役に行ったり、コロナもあったり、辛い時期もありました。除隊後はそれぞれのソロ活動があり、ようやくまた集まってMYNAMEとして活動することができたという、そんな気持ちを曲にしました。バースからサビまでは優しい歌詞ですが、僕らが経験した辛さをセヨンのラップ部分で表現しています。ちょっとストレートすぎるかな……とも思った歌詞ですが、セヨンのラップはこの曲のハイライトかな。

実はミニアルバム『VIVID』のために作った曲ではなくて、5人で歌うためにだいぶ前に作っていた曲です。それを3人で歌って、4月12日にデジタル・シングルとして先行公開しました。

──セヨンさんのラップがポイントということですが。

セヨン：僕が今までやってきたラップとちょっとリズムが違って難しかったですが、歌詞がすごくよくて。僕は演技もやっているから、感情を入れて歌うことができました。よかったです。

インス＆コヌ：「よかったです」だって（爆笑）。

セヨン：うるさいな～、真剣に話してるんだから（笑）。

──コヌさんが作った曲を最初に聴いた時、インスさんとセヨンさんはどういう感触でしたか？

セヨン：（インスに向かって）コヌの家で聴いたよね？（コヌは）作ったらすぐ「聴いて、聴いて」って言ってくるから、もう50曲以上はコヌの曲を聴いてます（笑）。そんなたくさんの曲の中でも「We Are The One (with MYNAME)」は、すぐに「この曲、いいじゃん！」となった。

──活動していない間も、メンバーと会っていたんですね。

一同：そうです、そうです。

インス：たまに飲んだりして。「We Are The One (with MYNAME)」は、イベントのセットリストを決めるためにコヌの家に集まったときに聴かせてもらった。以前から「MYNAMEの曲を作ってよ」と言っていたけど、すこ～し酔っぱらってきたところで、この曲を聴かせてくれて。

──曲も歌詞も両方できていた状態で？

コヌ：メロディーに韓国語の歌詞が付いている状態でした。メンバーが「いいね」と言うから、歌詞を日本語にしたんです。

セヨン：「いいね」と言わないと拗ねるんですよ（笑）。

コヌ：MYNAMEとして2025年にMYgirlと会える場があるといいなと思いながら作りました。アルバム用の曲じゃなかったけど、アルバムに入れられてよかったです。

──4月のライブ【MYNAME LIVE 2025 -Blooming Days-】で初公開されましたが、ファンの皆さんの反応はどうでしたか？

インス：新曲をステージで歌うことは告知していたから、ファンの皆さんもすごく楽しみにしてくださっていたみたい。キラキラした目で見てくれたし、パワーもすごかった！　そんな中で「We Are The One (with MYNAME)」を歌ったから感情移入しちゃって……。セヨンは泣きすぎて歌えなかったくらい（笑）。そのときの気持ちを聞きましょう！

セヨン：はい（笑）。1部のステージで初めて歌ったんですけど、歌詞の意味を噛みしめていたら、いきなり頭の中に今までの活動が「ギューン！」って映画みたいに見えたんです。久しぶりのステージだったからいろいろ思い出して、ジュンQもドイヒョンも頭の中に出てきて泣いて……全然歌えなくなっちゃった（笑）。ファンの皆さんに「頑張れー」と応援されました。でも、インスとコヌは全然気付かなかったんでしょ？

インス：うん。自分のパートを歌うのに必死で、終わってから聞きました。

──7月にはまた、横浜ランドマークホールでライブがあります。どんな公演になりそう？

コヌ：アルバムリリース後のライブだから、新曲もやります。6曲全部やるかはまだわからないけれど、収録曲で初パフォーマンスになる曲も。もちろん懐かしい曲や、皆さんが聴きたい曲もあるし、ソロ曲もあるので、いろいろな面が見せられるライブにしたいですね。

インス：（取材時は）まだ全部は固まっていないけれど、ちゃんと準備をして、みんながガッカリしないステージにしないと！

セヨン：僕が振付をする予定の新曲もあるので、期待してください。でも、7年ぶりにアルバムを出して、新曲でライブをするってスゴイことですよね！　ドキドキです。ライブはずっとしてきたけれど、アルバム後のライブはやっぱり違う。メンバー3人も、ファンの皆さんも同じ思いじゃないかな？

──メンバー各人の入隊で、2017年から空白期間に突入。除隊後はソロ活動やユニット活動を行ってきましたが、改めてソロではなくまたMYNAMEとして活動しようとなった経緯を教えてください。

コヌ：僕らには、グループでの活動は当たり前のことなんですよ。ソロ活動もしているけれど、MYNAMEとしてデビューして、MYNAMEがあるからソロ活動もできた。だから日本でのMYNAME再始動もメンバーは即決でした。今回は残念ながら3人での活動ですが、気持ちはみんな、同じだと思います。

インス＆セヨン：うん。

セヨン：僕らはずっとMYNAMEとして活動したかったけれど、兵役やコロナがあって活動できなかっただけ。それ以外の理由はひとつもないんです。ソロ活動もしていたけれど、コヌも言ったように「MYNAMEのセヨン」という肩書があったからできた。MYNAMEは解散したわけじゃないです。ソロのときは「MYNAMEのセヨンです」と言うし、ユニットのときは「MYNAMEのIsY（インスとセヨンのユニット）です」と言う。僕らはずっとグループで活動しているから。

──常に中心はMYNAMEということですね。

セヨン：はい。僕の人生がMYNAMEです。

インス：僕はセヨンの考えとはちょっと違っていて。僕が一番大事にしているのは、自分を愛すること。欲ではなく、自分の人生を大事にしたいんです。そんな僕の人生において、MYNAMEはプレゼントなんです。だからこそ、MYNAMEのことを考えて生きているし、MYNAMEを守ってくれるファンへの感謝の気持ちを持ってステージに上っています。

──7年ぶりのリリースに「ドキドキする」という話もありましたが、「怖いな」という気持ちはなかったですか。

インス：ありますよ。7年前のアルバム『KISEKI』を聴いてくれた人が、今回のミニアルバム『VIVID』を聴いてくれるのかって不安はありました。ファンの皆さんにも人生があるから。

セヨン：だから、こういう取材が大事なんですよ！　MYNAMEが7年ぶりにアルバムを出すってことを知らないMYgirlがいるかもしれないから。

──久々の本格的な日本活動が始まりますが、自分以外の2人のメンバーに言っておきたいことはありませんか？

インス：コヌはリーダーだから、今まで「しっかりしなきゃ！」と気負っているところがあって心配していたのですが、最近はすっかり明るくなって、もう言いたいことはないです。

コヌ：明るくなったのは、けっこう前ですよ。

──何か心境の変化みたいなものがあったのですか。

コヌ：デビューしたころは……。

セヨン：カリスマだったからね（笑）。

コヌ：そう（笑）。会社がそういうキャラを作ってたし、リーダーとしての責任感もあったから。でも日本活動をするうちに、ファンの皆さんとコミュニケーションができるのが大事だなと思って、変わっていきました。今は、これが僕です。

セヨン：今はうるさい（笑）。車に乗ったらうるさいです。

──セヨンさんには。

インス：セヨンは、デビューして13年でいきなり末っ子になったんです。意外に合ってるみたい（笑）。今のテンションを7月まで……いや、年末まで維持してほしいです。

セヨン：末っ子だけど年なので、年末までいけるかわからないけれど、頑張ってやってみます（笑）。

──末っ子ポジションの居心地はどうですか？

セヨン：5人のときは真ん中だったから、すごく楽です。真ん中は上も下も見なきゃいけないけれど、末っ子は上だけ見ればいいから楽です。

──では、コヌさんからメンバー2人に。

コヌ：インスは、リーダーの僕を隣で一番支えてくれたメンバーです。今までのように、僕をずっと助けてくださいと言いたいです。

インス：問題ないです！

コヌ：若干、心配もあるんだけどね（笑）。次は、セヨン！セヨンはMYNAMEの活動も、自分の活動も、音楽を一番大事にやっている。ずっとずっと、今のままでいてください。

セヨン：はい！　一見やんちゃですが、真面目なんです、僕（笑）。そして僕は、インスさんやコヌさんに言うことがないくらい……。

コヌ：（間髪入れず）尊敬してる……だよね？

セヨン：うん。真ん中でも、末っ子でも、言うことないです。これからも今のままでいいです。

──『VIVID』は日本デビュー13周年記念ミニアルバムということですが、13年間活動してきて、特に思い出に残ってることはどんなことですか？

インス：僕は2017年の【MYNAME LIVE 2017『MYNAME』 ～さよならからはじまるSTORY～】の東京国際フォーラム公演。客席のみんなの美しい姿と、MYNAME 5人と、メンバーの両親たちの顔がすごく記憶に残っています。

セヨン：たくさんありすぎる！　でも僕は、ステージの上よりも、そこに上るまでの準備期間を思い出すな。

コヌ：僕もたくさんありますね。でも、コンサートかな。韓国でデビューしても日本でデビューしても、僕は音楽に関してあまり自信がなかったんです。でも日本デビューしてライブの楽しさを知って、音楽で出会う友達も増えた。そこから作曲を始めて自信が付いたし、今は完全に音楽が好きな人になったから。

──先ほど「コヌさんが明るくなった」というお話がありましたが、13年経って自分自身が変わったと思ったことは何でしょう。

コヌ：僕はちょっと明るくなったし、面白くなりましたよ（笑）。

インス：僕は厳しい生活をやめました。昔は疲れていても仕事の後にジムに行って、ケガしたりもしたんです。今は、ちゃんと休憩するようになりました。

コヌ：そうですね。昔はご飯も全然食べなかったよね。

インス：そう、炭水化物を食べなかった。その時間は本当にパボ（韓国語でバカ）でした。何でも余裕を持ってやらないとダメですよ。

──じゃあ、今一番楽しいことは何ですか？

インス：ジムです（笑）。そこは変わらないけれど、やり方が変化した。昔は「やらなきゃ！」だったけれど、今はちゃんと寝て、いいコンディションで行くようになった。

──身体と向き合っているということですね。セヨンさんは？

セヨン：ストレッチをちゃんとするようになりました。30代になって、ヘルニアになったりと身体がヤバくて（笑）。あと、歌に関してめちゃくちゃ興味が出てきました。僕はラップとダンス担当だけど、歌を勉強したり、兄貴たちから教えてもらったりしています。ずっと何かを練習しているのは、変わらないなぁ。自分が自分に厳しいから、足りない部分を補いたくて。そうしなきゃダメな仕事ですからね。

──「Our Days」の歌詞に〈その先にある未来信じて〉とありますが、皆さんが考えているMYNAMEの未来を最後にうかがいたいと思います。

コヌ：昔は「もっと大きいところでライブしたい」と言っていたけれど、今はMYNAMEとして少しでも長く歌いたい。

セヨン：僕はそこに一個追加して、長く歌いながら大きなところでライブをしたい！

インス：未来は見えないから、僕はそこに向けて備えるだけだな。だから毎日ジムに行って、毎日自己管理をしているんです。いつかの素敵な未来のための自己管理。

セヨン：うん、だから準備が大事なんです。今日、インスはジムの話しかしてなくない？

コヌ：インスは持っているカバンも重いよね。ダンベル入ってるの？

セヨン：これから覚えたい日本語は、筋肉の名前なんでしょ？

インス：そう（笑）。韓国語でもわからないのに、上腕二頭筋とか覚えたい。

セヨン：コンサートで脱いで、ひとつずつ説明したらファンが増えそう（笑）。

──筋肉名入りのTシャツをソログッズで作ってみては？

コヌ：いいね！

インス：売れる？

セヨン：売れるよ！

一同：アハハ（爆笑）！