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<インタビュー>檀れい、ディズニー名曲に支えられヒロインとリンクした過去 渾身の3曲で届けたいメッセージとは

Text & Interview: 服部のり子
©Disney
宝塚出身で、現在は俳優として活躍する檀れいがディズニーの名曲をカバーした『檀れい・シングス・ディズニー』でソロ歌手デビューした。収録曲は、映画『ムーラン』の主題歌「リフレクション」の日本語版と中国語版、映画『リトル・マーメイド』の主題歌「パート・オブ・ユア・ワールド」の3曲だ。檀は今年3月までNHK Eテレの番組『中国語!ナビ』に出演していたが、日本人アーティストがディズニーの名曲を中国語で歌うのは珍しい。そのあたりのことも含めて、長いキャリアの中でなぜ今、ソロデビューを果たすこととなったのか、そして、そのデビューをディズニーの名曲で飾ることとなったのかなど、話をうかがった。

──これがデビューシングルと聞いて、意外でした。今作でソロデビューなんですよね?
檀れい:そうです。宝塚時代に舞台の中継やレコーディングなどの経験はありますが、それは歌劇団のメンバーとしてだったので、私自身の、という意味では今回が初めてになります。
──周年記念でもないですよね。きっかけは、なんでしょうか?
檀れい:2021年頃から少しずつ「歌を歌いたい、もっともっと歌っていきたい」という思いが芽生えてきて。テレビ番組『題名のない音楽会』でオーケストラの伴奏とともに歌う機会があり、改めて音楽の素晴らしさに触れ、何かできないかと思い、2022年が30周年記念の年でしたので、記念ライブをさせていただきました。それ以来、毎年ライブを続けているんです。そして、2023年にディズニー100周年記念のアニメーション映画『ウィッシュ』のオーディションのお話がありまして、アマヤ王妃の日本語吹替と歌唱を担当しました。
『ウィッシュ』をきっかけに、ディズニーサイドから「今度はCDを出してみませんか?」とお声掛けをいただいたのが今回のはじまりです。歌を本格的に再開して、歌のことをいろいろとやり始めたら、今回CDデビューするというご縁につながりました。なので、私自身がこのソロデビューに一番ビックリしています(笑)。
──ビックリとは? 檀れい名義のCDを出したいという思いはなかったんでしょうか?
檀れい:最初は「私のCDが出るの?」って。こうしてCDが出るのはとてもうれしいことなんですけれども、宝塚を退団してからずっとお芝居ばかりをやってきたので、まさか自分にこんなチャンスが巡ってくるとは思っていなかったんですね。お声を掛けていただいた時は、うれしかったんですけれども、逆に「私でいいんでしょうか?」と思っちゃったくらいです(笑)。

──ディズニー作品は、もともとお好きでしたか?
檀れい:子供の頃からディズニーの世界が大好きで、宝塚音楽学校に落ちたら、ディズニーランド®️で働こうと思っていたくらいなんです。本当に(笑)。なので、吹き替えのオーディションのお話をいただいた時もうれしかったですし、受かった時は「やった~!! わたしが受かった!」って世界中に叫びたかったくらい。
──そんな大好きなディズニーには名曲がいっぱいあります。その中から、まず「リフレクション」を決められた理由をお聞かせください。
檀れい:ディズニーにはすばらしい楽曲がたくさんあるので、「どうしよう、何を歌えばいいんだろう?」と本当に悩みました。すでにカバーされている方もたくさんいらっしゃるし、私にできることは何かと考えた時に、ディズニーの楽曲は、その時々に私に寄り添ってきてくれたことを思い出しました。歌だけでなく、作品としても。だから、私は大好きなんだと気づいたんです。
「リフレクション」は、このCDのキートラックで、日本語版は(1998年公開の)アニメーション映画の歌詞です。芸能界に入って、役を演じている私と演じていないありのままの私、みなさんが思う檀れいという人間は、一体どっちなんだろうと考えたことがあります。「みなさんが捉えている私のイメージってそんな感じなの?」「私は何を求められているんだろう、どうあればいいんだろう」って悩むことが多々あったんですね。そんな時の思いをこの楽曲にのせて歌うことができたらと思い、「リフレクション」を選びました。
──日本語版の「リフレクション」は、セリフから始まりますよね。とても新鮮な印象を受けました。
檀れい:演じる仕事を主にやってきたので、シンガーより演者、俳優のイメージのほうが強いと思い、セリフから入りたいと思いました。そのセリフも、私が抱いてきた本当の私、ありのままの私を模索する“心の声”、“心の言葉”です。そこから徐々に歌になっていくカタチを音楽監督の森大輔さんに作っていただきました。
森さんにお伝えしたのは、日本語版も中国語版も根底にある孤独を意識してほしいということ。日本語版は、孤独ではあるけれど、「いつか本当の自分を見てもらいたい」という祈りのような気持ちもあるので、そんなアレンジをお願いしました。
森さんから、はじまりは真っ暗な部屋にひとり、椅子もしくは床にポツンと座り、「私はこうありたいんだ」という自分の心の声が歌になっていき、広い世界が広がり、最後にまた真っ暗な部屋に座っている小さな自分に戻っていく、というイメージでアレンジしたとお聞きしました。私も歌っていて自分の思いを表現することができたと思っています。
──その歌のイメージ、解釈は、中国語版も同じですか?
檀れい:中国語版の歌詞は実写版『ムーラン』(2020)のもので、日本語の歌詞と中国語の歌詞では、内容が違うんですね。私が中国語の歌詞で読み取ったものは、根底には孤独があるけれど、もっと強い決意でした。「目に見えている自分と、心の中にある本当の自分は違う」といったことを歌っています。
壮大な大地に吹き荒れる風のなか、ひとり自分の足で立っている姿が私の中にあって。歌詞の解釈として愛する人のことを歌っていると考える方もいらっしゃいますが、私はこの楽曲をレコーディングするにあたり、自分自身を愛さなければ、という風に捉えたんですね。自分自身を大切にする、本当の自分を大切にして生きていくんだ、と。そういう強いイメージで「リフレクション」を歌いました。同じ楽曲で、孤独という共通点はあるけれど、日本語と中国語では“願い”と“決意”、そこに違いがあると思います。
聴いてくださる方に「同じ曲なのに、こんなにも違うのか」と思ってもらえたら、おもしろいなと思います。歌詞の捉え方、言語が持つ強さの違い、さらに森さんの楽曲の表現の仕方だったり、私が抱いているイメージだったり。そういうものを「リフレクション」の2曲に感じていただけたらなと思います。
──もう1曲、映画『リトル・マーメイド』の主題歌「パート・オブ・ユア・ワールド」を選んだ理由は?
檀れい:私にとっての光の世界はエンターテインメントだったんですね。そんな光の世界・宝塚に飛び込んだのは10代の終わりでした。自分の大好きな世界に飛び込んでみたけれど、どうやって進んでいけばいいのか、どうしたらもっともっとなりたい自分になれるんだろうかともがいていた時にディズニーのアニメーション映画『リトル・マーメイド』に出会ったんです。ヒロインのアリエルが無邪気に、スプーンやフォークなど、船から落ちてきたものや陸から海に流れ込んできたものが何なのかもわからずに「ねぇこれ、私は20個も持っているのよ。すごいでしょ!」って言いながら、陸への憧れを歌います。陸の上で走ったり、歩いたりするための足が欲しいと歌い、最後にアリエルが「私は陸に行きたい」と心の底から歌った時に、彼女にとって陸の上が光の世界なんだと感じました。その時に、どうしたらなりたい自分になれるんだろうと葛藤している私の気持ちと、ヒロイン、アリエルの抱える葛藤がこの曲を通してリンクしたんです。この曲はエンターテインメントのスタートラインに立ったばかりの頃の気持ちを思い起こさせてくれる、私にとっての人生の大事な曲です。
──今おっしゃった無邪気で純粋な気持ちがあの弾むような歌唱につながっているんでしょうか。
檀れい:やっぱり弾んでいました(笑)? レコーディングが終わって、みんなで一緒に聴いた時に、ちょっと恥ずかしくなったんです。「こんな少女のように歌っていて恥ずかしい!」って。そうしたら、森さんに「そういう聴き方、楽しみ方をするのは檀さんだけですよ」って言われました(笑)。
──はい、私もそう思います。では、最後に読者の方にメッセージをお願いします。
檀れい:今回は、私の個人的な好きという気持ちだけで選んだのではなく、私の人生のその時々の気持ちにふと寄り添ってくれた楽曲を歌っています。みなさんの心を鷲掴みするディズニーの楽曲のすばらしさとともに、私自身の思いをみなさんに届けることができたらうれしいです。
リリース情報

CD『檀れい・シングス・ディズニー』
2025/5/28 RELEASE
UWCD-5001 5,800円(tax in.)
『檀れい・シングス・ディズニー』
2025/3/21 DIGITAL RELEASE
購入・再生・ダウンロードはこちら
公演情報
2025年7月8日(火)・7月9日(水)、東京・丸の内 COTTON CLUBにてライブ開催予定。
詳細は後日発表。
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