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<わたしたちと音楽 Vol. 49>miwa 変化し続けてきた15年間、これからも挑戦を続けられる理由
米ビルボードが、2007年から主催する【ビルボード・ウィメン・イン・ミュージック(WIM)】。音楽業界に多大に貢献し、その活動を通じて女性たちをエンパワーメントしたアーティストを毎年<ウーマン・オブ・ザ・イヤー>として表彰してきた。Billboard JAPANでは、2022年より、独自の観点から“音楽業界における女性”をフィーチャーした企画を発足し、その一環として女性たちにフォーカスしたインタビュー連載『わたしたちと音楽』を展開している。
今回ゲストに迎えたのは、来年活動15周年を迎えるシンガーソングライターのmiwa。毎年11月には、ビルボードライブで【miwa CLASSIC】というライブシリーズも開催している彼女は最近、カナダへと移住した。15年間、変化と挑戦を続ける彼女の原動力について聞いた。なお、インタビューはポッドキャストとしてもBillboard JAPANのSpotifyとYouTubeチャンネルで配信されている。(Interview:Rio Hirai[SOW SWEET PUBLISHING] l Photo:Shimpei Suzuki)
生演奏の良さを生かした、
【miwa CLASSIC】も4年目に
――今年も11月に大阪、東京、横浜の3都市のビルボードライブを巡るツアー、【miwa CLASSIC IV】が開催されました。この【miwa CLASSIC】はどういうツアーなのでしょうか。
miwa:【miwa CLASSIC IV】では、私はアコースティック・ギターを持ち、もう1人、アコースティック・ギターのオバタコウジさん、あとはバイオリンの須原杏さん、チェロの村岡苑子さん、それとビルボードライブにあるグランドピアノをejiさんが演奏する、生楽器の良さを感じていただけるライブです。ビルボードライブは客席とステージの距離も近いので、楽器そのものの音を肌で感じていただきたいと思っています。セットリストも、毎年新しい曲とアレンジにチャレンジしています。
――【miwa CLASSIC】ライブシリーズも4回目ということで、バンドメンバーとも絆が深まってきたのではないでしょうか。
miwa:そうですね、バイオリンの(須原)杏ちゃんとチェロの(村岡)苑子ちゃんとは「THE FIRST TAKE」で出会い、それからビルボードライブでご一緒するようになりました。毎年チャレンジングな曲も用意しているので、一緒に挑戦する仲間として息の合った良い演奏ができるようになったので、私自身もライブがいつも楽しみなんです。
――大学在学中にデビューし、大学を卒業する3月に初めての武道館公演を実現させたmiwaさん。20代から30代 にかけてアーティストとして活躍してこられましたが、一般的にも特に女性はライフステージの変化などが著しい時期だと思います。
miwa:友達が就職活動をしているときに、「私は音楽でやっていくんだな」と思っていたけれど、やっぱりどこか半分は学生気分でしたね。それが音楽一本になって仕事としてプロ意識が芽生えました。それからは、年々ファンの方々への思いも強くなり、責任も感じるようになりました。逆に変わっていないのは、挑戦し続けること。大学を卒業してから10年後に大学院に通い始めたり、2024年秋にはカナダに移住したり、楽曲も新しいジャンルに挑戦するようにしています。1つのものに執着せずに、留まらないでいたいんです。
常にアップデートすることで
輝きを届けたい
――挑戦し続けられるのはどうしてなんでしょうか。
miwa:「常に行列ができるラーメン店は、常に味をアップデートしておいしくなり続けている」と思ったんです。「やっぱりこの味おいしい」と思うということは、実は前回よりもおいしくなっているんじゃないかって。ヘアメイクさんと話していてそれに気がついて、自分もそんなアーティストでありたい、と思うようになりました。常に良くなり続けて、常に輝きを増し続けられるような。少しずつそうやって成長を遂げられるアーティストでいたいです。
――ラーメン店から発想を得ていたとは意外でした! 少しビルボードジャパンのチャートのお話をさせていただきたいのですが、2023年の“JAPAN Hot 100”年間チャートで男性アーティストの楽曲が64曲、女性アーティストの楽曲が19曲、 混合グループが16曲、性別非公開のアーティストの曲が1曲という結果でした。この比率はこの年に限らず、例年続いているのですが、miwaさんをはじめ素晴らしい女性アーティストがたくさんいるのになぜだろう、という疑問から、この「わたしたちと音楽」というシリーズがスタートしています。この、チャート上のジェンダーギャップについてはご存知でしたか。
miwa:特に意識したことはなかったですね。ジェンダーギャップというと、ロック・フェスティバルでは女性アーティストの枠が限られているのを感じていました。すごく狭き門ですよね。実力があればそれを突破できるはず、と逆境をバネにしてきました。
――女性であることは、人生にどんな影響を与えていると思いますか。
miwa:すごく変化が多いなと思っています。デビューした19歳の頃と今の自分とでは価値観も大きく異なって、大事にしたいものや時間の使い方も全然違います。住む国も変わってしまうくらい、19歳のときの想像を大きく上回って変化しています。だからこそ、固執したり執着しないことが大事なんじゃないかな。自分のやりたいようにうまく運ばない瞬間もあると思うんですが、それも受け入れてみると、強さが生まれるんだと思います。
女性のキャリアを長い目で見て
サポートしてほしい
――今のmiwaさんがキャリア1年目の自分にアドバイスをするとしたら?
miwa:そうですね、1年目はいろんなことがいっぱいいっぱいで右も左もわからなくて、とにかく目の前の仕事に全力で臨んでいた感じです。うまくできないこともたくさんあって、悔しくてステージを降りてすぐに泣いてしまったこともありました。経験を積むしかなかったですね。練習はたくさんするほうなので、どんなときも準備を万端にしようと、頑張って練習を続けました。
――それが15年分積み重なって、今のmiwaさんがいるんですね。では、女性が音楽やエンタテインメントの業界で活躍するにはどんなことが必要だと思いますか。
miwa:そうですね。やっぱり女性のキャリアの中では、 どうしてもお休みをしないといけない期間が誰でも生じると思うんですけど、そういったときにその空白の期間をどうみんなでサポートしていくのかが非常に大事になってくんじゃないかなと思っていて。女性のキャリアを長い目で見て、途切れさせずに活躍し続けられるように、周りのサポートがキーだと思っています。
――miwaさんは15年のキャリアの中で、慶応義塾大学の大学院で音楽神経科学を学んで2023年3月に修了された ということなんですけれども、大学院でのご経験っていうのは、今の活動にどんな影響があると思いますか。
miwa:年下の同級生と話す機会もあって、学び直したのはとても良い経験になりました。音楽をさまざまな視点から真剣に考えて、科学的に証明しようとしているっていう取り組みがあることを知れたのがすごく嬉しくて。幸せな人生を送るために、音楽が有効に働くことが科学的に立証されていて、音楽の可能性を改めて感じました。私は、研究対象をライブにしたのですが、感動はどうして生まれるのかを研究しました。自分が伝えようとしているものもお客さんに届いているし、お客さんが応援してくれる気持ちやステージを見て感動してくれる気持ちも、ステージにいるアーティストに届いているというのを、改めて実感することができましたね。
自分が選んだ道だから、
納得して歩んでいける
――ライブや大学院進学など挑戦を重ねてきたmiwaさんですが、これから挑戦したいことはなんでしょうか。
miwa:今はカナダと日本とを行ったり来たりする生活がうまくいくのかが挑戦ですね。海外に住んでみたいっていうのも1つの夢だったので。来年は活動15周年ですし、ファンの皆さんと直接会って時間を共有したいです。
――最後に、女性たちへメッセージをお願いします。
miwa:女性の生き方はすごく変化や選択肢が多くて、どの道を選ぶのもその人次第だと思うのですが、年齢的なこととか、常識的なこととかで、いろいろ言われがちな場面もあるかもしれません。でもそれぞれ自分の選択を信じて、自分らしく生きていくことが、生まれてきて本当に良かったなって思える瞬間だと思います。自分の選択に自信を持って、 周りの人と比べず年齢や常識にとらわれず、自分らしく、自分の選択を信じて一緒に生きて行きましょう。
――すごく素敵なメッセージをいただいたと思うんですけれども、やっぱりそう思うのは、miwaさん自身が自分の選択を信じてきたからなんでしょうか。
miwa:そうですね。やはり迷った時は自分を信じることだと思います。例え失敗してしまっても、「自分が選んだ道だから軌道修正しよう」って思えたら、またそこから挑戦すればいい。違う道もたくさん人生にはあって、ただ開けた扉が違っただけで、また全然違う扉を探してそっちの道に行けばいいだけなので。
プロフィール
神奈川県出身の女性シンガーソングライター。高校時代に音楽活動を開始し、下北沢や渋谷を中心に弾き語りライブを行う。2010年3月にシングル「don't cry anymore」でメジャーデビュー。伸びやかで透明感のある歌声と等身大の歌詞で注目を集める。大学生活と並行しながら音楽活動を継続し、2011年4月には1stフルアルバム『guitarissimo』を発表した。2012年にリリースしたシングル「ヒカリヘ」がヒットを記録し、翌13年、初の日本武道館公演を開催。2013年から2016年まで4年連続でNHK『紅白歌合戦』出演を果たす。その後も数々のオリジナルソングやタイアップソングを発表しながら精力的なライブ活動を展開。2023年3月、慶應義塾大学大学院の修士課程を修了したことを報告した。
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