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<インタビュー>武瑠『TO BE LIKE THRILLER feat.IKE, 星熊南巫, 4s4ki』特集記事(3者との対談&MV撮影レポート)



<インタビュー>武瑠『TO BE LIKE THRILLER feat.IKE, 星熊南巫, 4s4ki』特集記事(3者との対談&MV撮影レポート)

 SuGの39日間限定復活ツアー完遂後、新たな世界観の作品を精力的に発表し続けている武瑠。先日の【武瑠 TOUR 深世界 FINAL TO BE LIKE THRILLER】で初披露された最新コラボ作品『TO BE LIKE THRILLER feat.IKE, 星熊南巫, 4s4ki』がこのたびリリースされた。

 この特集記事では、ロック、アイドル、ハイパーポップと出自のフィールドは違えど、それぞれにジャンルレスで自由な表現の在り方を追い求めてきた教祖的存在感のある4人の異端児による貴重な対談インタビュー(武瑠×IKE、武瑠×星熊南巫、武瑠×4s4ki)を交えながら、MV撮影レポートも掲載する。完成したMVと合わせてご覧頂きたい。

取材&テキスト:平賀哲雄

◎武瑠×IKE「本当に新しい音楽をやっている人たちなんだな」

 今秋某日、関東某所で早朝から行われた新曲『TO BE LIKE THRILLER feat.IKE, 星熊南巫, 4s4ki』のMV撮影。武瑠いわく「最強の映像制作チーム」のもと、まずは武瑠とIKEのソロカットと武瑠×IKEの2ショットシーンから撮影はスタートした。スモークに包まれた暗がりの空間には、黒いテーブルに4つの椅子。テーブルの上に乗り出して狂ったように踊り出す武瑠に「スウィッチの入れ方、半端ねぇ!」とIKEは驚いていた。そんなIKEは繊細さとダイナミクス、振り幅のある動きでラスボス感ある迫力のパフォーマンスを展開。また、2ショットシーンの撮影では、火花が散るような見つめ合いから背中合わせで歌い踊ったりしながら、それぞれの個性とエモーションを入り乱れさせていた。

<インタビュー>武瑠『TO BE LIKE THRILLER feat.IKE, 星熊南巫, 4s4ki』特集記事(3者との対談&MV撮影レポート)

▲武瑠『TO BE LIKE THRILLER feat.IKE, 星熊南巫, 4s4ki』MVキャプチャ

--武瑠×IKE。このふたりが絡むのって初めてですよね?

武瑠:公式では初かな。お互いが活動休止したときとか、大事なポイントでふたりでご飯食べに行ったりはしていたんですよ。そもそも15年前ぐらいには会っていて。ほぼ同じぐらいのタイミングでメジャーデビューしたんですよね。

IKE:武瑠のほうがちょっと早いぐらいかな。

--今回、MV撮影で初めてふたりでパフォーマンスしてみていかがでしたか?

武瑠:動きもキャラも全然被らず、それでもピッタリ息が合ってめっちゃ良い感じでした!

IKE:ナイステイクだったよね! 武瑠のスウィッチの入れ方が凄かった!

武瑠:JOKERをイメージしました(笑)。

IKE:それまでヘラヘラしていたのにさ!

武瑠:ヘラヘラ(笑)。

IKE:撮影が始まったら「めっちゃクールじゃん!」と思って。

--コラボ楽曲「TO BE LIKE THRILLER feat.IKE, 星熊南巫, 4s4ki」の制作自体はいかがでしたか?

IKE:結構、無理なことを言ったんですよね。武瑠がサビを創ってきたんだけど、それが良かったから「まだあるかもしれない」ってプリプロを自分でやって、それをぶっ込んで「武瑠、どうかな?」って提案させてもらって、そこからもう一度整理してもらったんですよ。だから、武瑠はプロデューサーの役割を担ってくれたんです。

武瑠:タイミング的に「この時期にまた変わるの、すげぇ大変」とは思いました(笑)。

IKE:武瑠の頭の中ではフィックスしたモノが出来ているところに、俺がもう1個ぶつけちゃったんです。でも「TO BE LIKE THRILLER」というワードを自分の中でもちゃんと解釈したらイメージが湧いたし、サビは最大限活かしたいところもあって。それで俺のアイデアをぶん投げたんです。

武瑠:最初「TO BE LIKE THRILLER」っていう歌詞でサビのメロは創っていたんですけど、メロの数が多くなって返ってきて。そういうときって最初は「うわ、変わったぁ」って思うじゃないですか。でも、家で冷静に聴いてみたら「こっちのほうが良いっぽいぞ」と思って。コーラスの絡みとかめっちゃ良かったし。

<インタビュー>武瑠『TO BE LIKE THRILLER feat.IKE, 星熊南巫, 4s4ki』特集記事(3者との対談&MV撮影レポート)

▲武瑠『TO BE LIKE THRILLER feat.IKE, 星熊南巫, 4s4ki』

IKE:武瑠って本当に正直で、自分の意見が真っ直ぐあるんですよね。イメージがしっかりあるがゆえに最初は「うっ!」って人一倍感じると思うんですよ。だけど、素直だから、何回かリスニングしたのちに「IKEくん、これ良いかも」っていう意見にパン!と変わってくれた。それって普通はクリエイターとしてなかなか曲げられない部分だと思うんですよ。これがめちゃくちゃ捻くれた感性だったら「いや、自分の考えでいく」ってなるけど、これは俺以外の皆さんのテイクに対してもそうなんだけど、良いモノは「良い!」ってちゃんと言ってくれるんです。

武瑠:「TO BE LIKE THRILLER」の頭に歌詞を足せばハマる感じだったんですよ。それで「WE'RE JUST TO BE LIKE THRILLER」にしたらすげぇ良くて!「じゃあ、このまんまコーラスにも活かそう」みたいな感じであのサビになったんです。

IKE:サビは創ってみたものの、譜をハメてくれたのは武瑠なんですよ。俺がはみ出るモノを創っちゃったところに帳尻をしっかり合わせてきてくれて、このサビが出来上がったんだよね。

武瑠:でも、おかげでめっちゃ強いサビになりました!

IKE:武瑠のプロデュース力でビックリしたのは、最後に4人の声を切り刻んで入れるというアイデア。自分の頭の中には全くない部分だったから驚いた。

武瑠:あれ、意味不明すぎて面白いですよね(笑)。

IKE:うん!

武瑠:俺は映像をイメージしてから曲を創るんですけど、今回は4人のアーティストの首脳会議みたいなイメージだったんですよ。アーティストってファンの代弁者的立ち位置であるとも言える気がするので。サビのあとのところは4人が意思疎通しようとしてみんな同じ言葉を言っているんだけど、アウトロで「やっぱりそれぞれバラバラでいいや。無理やり同じにする必要はないんだ」と気付いて、違うメロとかを歌い始める。音楽的に言ったらごちゃついているんだろうけど、でもそれが面白いかなと思って。

IKE:本当に面白い作品になったんじゃない?

武瑠:制作をつづけながら、みんなの書いた歌詞を見てても感じたんですけど、俺はアーティストとファンの関係って宗教に似てると思っていて。その上で、過去も全肯定してアップデートしていく価値観を提示する存在になりたいなと。違う考えや存在を否定しあうことなく、いろんな考え方を肯定する宗教のイメージでこの曲は仕上げることにしたんです。

IKE:自分が担当した部分で言うと、今回は4人のコラボ曲ということもあって、4という数字をどうしても歌詞に入れたくて。それでいろいろ考えた結果、花がある人たちが勢揃いしているし、いつもギリギリのところで音楽活動している4人が狂い咲く様を表現したくて「四面楚歌の花が乱れ狂い咲く」という歌詞を書いたんですよね。4つの花。それが踊り狂ったり、歌い狂ったりしながら乱れ咲くイメージ。サビ頭の英語は絶対的に格好良いことは分かったうえで、だからこそ日本語のハッキリした音でも何かを伝えたかったんですよね。MVもきっとこの4人なら乱れ狂い咲くと思っていたので。

<インタビュー>武瑠『TO BE LIKE THRILLER feat.IKE, 星熊南巫, 4s4ki』特集記事(3者との対談&MV撮影レポート)

▲武瑠『TO BE LIKE THRILLER feat.IKE, 星熊南巫, 4s4ki』MVサムネイル

--確かにその通りのMV撮影になっていますよね。まったくタイプの違う、それぞれの狂い咲き方をしている。

IKE:本当にタイプが違うからこそ出来た曲なんでしょうね。

武瑠:だからこそ、めっちゃ並列で創っている感じがしました。

IKE:大変だったでしょ?

武瑠:大変は大変でした(笑)。自分の良いところでも悪いところでもあるんですけど、誰かをフィーチャリングするときに「自分を後ろに引きすぎなんじゃないか」って思うときもあるんですよ。その作品単体で見ちゃうから。でも、今回の曲はみんな並列で、例えば大サビの部分を任せていた4s4kiが「うわ! こういう声の重ね方をしてくるんだ? 意味わかんない! スゴっ!」と思う内容に仕上げてくれたり、伝達ミスで生まれたアウトロに入っていくところの星熊さんのフロウみたいなところも、当初は予定していなかったけど、「これ、めっちゃ良いから使おう!」と思ったり。そういう刺激や面白さがたくさんありました。

IKE:そういう想定外も素直に受け取る力が武瑠にはあるから、否定せずに取り込むんですよね。

武瑠:特に今回は「どうせなら、自分ひとりじゃ出来ないモノを創りたい」と思っていたので、そういう姿勢になったんだと思います。だから、IKEくんのアイデアに対しても「あんなサビが来るんだ? Bメロ、8小節だったところを7小節にするんだ? この発想は自分にはなかったな」って素直に凄いと思ったし。

IKE:それぞれは素直にやっているんだけど、驚きはあるよね。

--そういう意味でも、本来交わらないモノが交わったコラボになっているわけですよね。

武瑠:今回のコラボは、最初はIKEくんとやろうと言ってて。それとは別に4s4kiとも「なんかやろうよ」と話していたんですけど、でも「これ、一緒にしたほうが面白そうだな」と。で、もうひとり誰か入れたくて、4s4kiと話していたときに「星熊ちゃんが良いんじゃないか」って。俺もソロのMV観てて「面白い世界を持ってるな」と思っていたから誘ったんです。それで、IKEくんに「この4人でどうですか?」って確認したら「めっちゃ面白いじゃん」と言ってくれて、実現に至ったんですよね。

IKE:この4人の中では、僕がいちばん年上になってしまうんですけど、やっぱりニューエイジ感というか「本当に新しい音楽をやっている人たちなんだな」と思いました。そういうところと関われることは、音楽的にも人間的にも有難いですよね。刺激をもらえるし。

武瑠:俺はこの話が決まった時点で、絵が浮かんでいて。やっぱりサビの頭にIKEくんのシャウト気味な声が入るイメージはあって、そこにトラップっぽいラップとか入ったりしたら、絶対に面白いバランスになるなと思っていたんです。実際、そういう曲になったし、むしろ想像を超えて凄いモノが出来たなって。

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◎武瑠×星熊南巫「日本で何か爆発を起こそうとしているから、きっとここまでやるんですよね」

 武瑠×IKEの撮影後、ポップでカラフルな衣装に身を包んだ4s4kiと、シックでミステリアスな衣装を身に纏った星熊南巫が登場。カメラ向かってテーブルの左端の椅子の上で猟奇的にはしゃぎまわり、テーブルに乗り上がって暴れる4s4kiと、右端の椅子に座り込んで貫禄を見せつけながらリズムを刻んでいた星熊、その対照的な存在感が他に類を見ない世界を生み出していく。撮影の合間の映像チェック時、4s4kiは星熊がモニターに映る度に「エロっ!」と騒いでいた(笑)。そんな妖艶な星熊のひざまくらに横たわったり、抱き合うように寝そべるふたりの姿はまるでオブジェのような造形美を誇る。4s4kiも「異世界交流!」と叫んでいたが、まさしく両極の交わりが新世界のアートを生み出した。

<インタビュー>武瑠『TO BE LIKE THRILLER feat.IKE, 星熊南巫, 4s4ki』特集記事(3者との対談&MV撮影レポート)

▲武瑠『TO BE LIKE THRILLER feat.IKE, 星熊南巫, 4s4ki』MVキャプチャ

--4s4kiさんとの2ショットシーン、撮影してみていかがでした?

星熊南巫:私とは対極的で、4s4kiちゃんがアッパーな感じなので、なんか「テトリスがハマった」みたいな(笑)。神画が撮れたかも!

--静と動で、星熊さんはめちゃくちゃ妖艶さが出てましたよね。武瑠×星熊南巫、このふたりの接点は?

武瑠:DMです(笑)。今日、初対面なんですよ。

星熊南巫:そうなんです。初めましてで。

武瑠:我儘ラキアというグループの存在は知っていたんです。字面が強いから。で、星熊さんのソロプロジェクト・DEATHNYANN(デスニャン)の結構激しい、ヘッドピースとか付けていたMVを観て「凄い飛ばしてんな!」と思っていて。そのあと「TOKYO 神 VIRTUAL」というソロ楽曲のMVを観たら、トラックと世界観が超良くて「え、こんな人がいるんだ?」と思って調べたら「あ、我儘ラキアの人なんだ!」と。変な話「この感じがアイドルシーンで受けるの? この人がアイドルやってるってどういうことなんだ?」と思って(笑)。それぐらい独特の世界観に感じたんですよ。

星熊南巫:嬉しいです。

武瑠:で、今回のコラボ曲を複数人でやるのか、IKEくんとふたりでやるのか悩んでいたときに「この人とやりたい」と思える人がなかなかいなくて。最初、外国人のラッパーを入れようと思ったんですけど、MVを撮ることとか考えると大変すぎるから辞めたり、二転三転したんですよね。で、4s4kiと今回のトラックを担当したTokiと3人でまた別の曲を創ろうとしていたんですけど、それぞれ単発でやるよりみんな集まる系のコラボのほうが面白いかなと思って、4s4kiに「誰とやるのがいちばん良いと思う?」と聞いたら「星熊ちゃんじゃない?」って。それで「あー、あの「TOKYO 神 VIRTUAL」の人だ。たしかにやってくれたらいいね!」と思ってDMしたんです。

--4s4kiちゃんのイチ推しでもあったわけですね。

星熊南巫:ソロは我儘ラキアとやっていることが全く別で。私はロックねーちゃんと思われがちなんですけど、意外とバンドはあんまり通ってきていなかったりして、実は違う部分が結構大きくて。それで、自分がいちばんやってみたい音はソロでやろうと。で、「私って本当はこういう人なんです」みたいな名刺になる曲を打ち出そうと思って「TOKYO 神 VIRTUAL」を創ったんですよ。なので、連絡もらったときに、その曲が良いと思ったって言ってくれていたから、本当の自分の創りたいモノを認めて下さってると思って、まず武瑠さんのことを調べてみたんです。SuGのことは、高校生のときにまわりの子たちが好きだったから知っていたんですけど、改めてソロの作品も含めていろいろチェックさせてもらって。ニューウェーヴというか、こういう新しいモノを創ろうとしている人たちが集まっているプロジェクトなら、ぜひご一緒したいと思って。

--これまでもコラボ自体はやっていたんですか?

星熊南巫:やってはいるんですけど、海外の人と一緒にやることが多くて。この時代だから、別にどこに住んでいようが、どこで生活しようが関係なくインターネットで良いと思った人と音楽はやれるじゃないですか。でも、日本に住んでいるうえですごく孤独を感じることがある。難しい音楽をやっているのは分かっているけど、こういうカルチャーとかシーンが日本にもあればいいのにと思っていて。で、ないならつくりたいなと思っていたときに今回のお話をもらったので、すごく嬉しかったです。

<インタビュー>武瑠『TO BE LIKE THRILLER feat.IKE, 星熊南巫, 4s4ki』特集記事(3者との対談&MV撮影レポート)

▲武瑠『TO BE LIKE THRILLER feat.IKE, 星熊南巫, 4s4ki』MVキャプチャ

--今の話、武瑠くんがずっと感じてきていたことでもありますよね?

武瑠:そうですね。だから、ハイパーポップとか出てきたときに「あ、やっと出てきてくれたんだな」と思いました。ただ、ファン同士があんあまり溶け合わなかったから……

星熊南巫:ひとつのカルチャーに根付いた、それを信仰している人たちはなかなか他のカルチャーを受け入れられなかったりしますよね。

--でも、そういう孤独や理想を持ち合わせている者同士がコラボすることは、すごく有意義ですよね。『TO BE LIKE THRILLER feat.IKE, 星熊南巫, 4s4ki』実際に共作してみていかがでしたか?

星熊南巫:トラックを聴いたときに「どういう感じになるかな。とりあえず自分らしいモノを入れてみよう」と思って。ただ「これって混ざり合うんかな?」とも思いました(笑)。ジャンルがみんなバラバラだから。でも、今回のテーマの解説がファイルに入っていて。それを読んだときに「すごく面白いな。深くまでいろんなことを考えながら見てるから、こういうテーマが思いつくんやな」と思って、であれば、それに絶対応えられるアンサーというか、美しさを自分は表現しなきゃいけないなと。その結果、自分の中でも新しい世界が開けたし、めっちゃ素敵な世界観の作品が完成したなって思いました。

武瑠:みんなが意思統一できるように、最初に映像チームと衣装さんとメンバーに伝える企画を考えるようにしているんですけど、その企画と別に、それぞれの属性とか理解したうえで「具体的に誰がどこを歌うのか? ここはどうすればいいんだろう?」みたいなことを決めていくのが物凄く難しかったんです。それぞれの解釈で「ここはこういうメロになるな」「じゃあ、こっちは調整して減らさなきゃ」みたいな感じで変わる部分が多かったから、10回ぐらいやり直しているんですよ。進んで戻って、また進んで戻ってをずっと繰り返していたので、本当は全員と連絡取れるプロデューサーみたいな立ち位置になれたほうがラクだったのかなと思いつつ、でも、解釈違いで返ってきたモノが面白かったりして。

--みんなの想定外の発想が曲をどんどん面白くしていったと。

武瑠:例えば、それぞれのバラバラのヴァースを引っ張ってきて、フェーダーとか上げ下げしながらリミックスして「それぞれの正義や宗派って別に交わらなくていいよね」というオチにしようと思ったとき。それを歌割りと一緒に4s4ki経由で星熊ちゃんに伝えたら、どこかで混線して(笑)。星熊ちゃんから新しいフロウが入ってきて「やべぇ、使わないのに新しいの考えてもらっちゃった!」と思ったんですけど、聴いたら「あれ、これは〆に良いかもしれない!」みたいな。

星熊南巫:良かったです(笑)。

武瑠:マジで面白かったです! あと、単純に3人のフィジカルがクソ強かった。声のパワーとか。俺、歌うの、ちょっとイヤになっちゃったもん(笑)。

星熊南巫:でも、そもそも「これをやろう」と思うパワーが何より凄いですよね。この人数のメンバーを集めて、これだけの映像チームの人たちも集めて、衣装さんも集めて、すごい労力をこの1曲の為にかけているじゃないですか。今日、このMV撮影現場に来て「凄いなぁ」ってずっと圧倒されています。

<インタビュー>武瑠『TO BE LIKE THRILLER feat.IKE, 星熊南巫, 4s4ki』特集記事(3者との対談&MV撮影レポート)

▲左から:4s4ki/武瑠/IKE/星熊南巫

--コスパのこと考えたら、絶対にここまでやらないですよね。

星熊南巫:日本で何か爆発を起こそうとしているから、きっとここまでやるんですよね。誘ってもらった時点でそれは感じていたから、だったら絶対に協力したいと思ったし、今回のテーマの「アートとか音楽とかにも宗教的な要素があって、人がそれを信じることで成り立っている」という解説を読んだときも「ほんまにそうやな」と思って。それに対して自分はどう表現するか、すぐ悩んで。で、私が勘違いして、大サビで「うーん、自分にとっての音楽の宗教ってなんだろう?」と考えたものをめっちゃ込めました!

武瑠:結果的にそれがこの曲の〆っぽくなった。面白いよね。おかげで絶対にひとりじゃ出来ない曲になりました。

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◎武瑠×4s4ki「武瑠くんの創るモノにすごく影響を受けていた」

--武瑠×4s4ki、ふたりが最初に出逢ったきっかけは?

武瑠:DMです。みんな、DMで知り合ってる(笑)。

4s4ki:私が「聴いてくださーい!」って。

武瑠:「おまえのドリームランド (feat. KOTONOHOUSE) 」を送ってくれたんだよね。

4s4ki:そうそう! 私はSuGのファンだったから、武瑠くんからいろいろ影響を受けていまして。あの曲を送ったのは、武瑠くん、中田ヤスタカ、ポーター・ロビンソン。

武瑠:え、その並びに俺が入ってるの(笑)?

4s4ki:その結果、全員と接点を持つことができたんですよ!

<インタビュー>武瑠『TO BE LIKE THRILLER feat.IKE, 星熊南巫, 4s4ki』特集記事(3者との対談&MV撮影レポート)

▲武瑠『TO BE LIKE THRILLER feat.IKE, 星熊南巫, 4s4ki』MVキャプチャ

--武瑠くんのどんなところに影響を受けたんですか?

4s4ki:中学生ぐらいのときに、いろんな音楽を雑食的に聴いていたんですけど、「この人が誰よりも好き!」みたいな人はいなくて。それこそ中田ヤスタカもポーター・ロビンソンも同じぐらい好きで。でも、SuGってパッケージングとして全部のクオリティが高いバンドのイメージだったんですよね。リリックとかアレンジとかコードとかメロディとか音楽もそうだけど、ビジュアル面や演出面も全部凄かった。あと、今になって思うのは、感情がすごく分かりやすかったんですよね。ダイレクトに伝わってきたんです。で、私はキャッチーなモノもすごく好きだったんで、武瑠くんと好きなモノのセンスが合っていたんだと思うんですよね。だから、武瑠くんの創るモノにすごく影響を受けていた。

--武瑠くんは、DMを送られた時点で4s4kiちゃんのことは知っていたんですか?

武瑠:いや、知らなかったです。当時、よくそういう「一緒にやりたいです」みたいなDMが送られてきて、作品を一応チェックするんですけど、どれも良くなかったんですよ。「俺のどこが好きなんだろう? 本当に俺の曲聴いてる?」みたいな(笑)。

4s4ki:めっちゃ分かる(笑)。

武瑠:でも、その年に4s4kiと(sic)boyとインスタで知り合って。自分の音楽を聴いていた人で、自分の延長線上で音楽活動をしていて、自分も学べる人が「やっと出てきたんだ!」と思って。だから、4s4kiの曲を聴いたときは「もっと早く出会いたかった」と思ったし、そこで「一緒に1曲つくろう」と話していたんですけど、ちょうどコロナ禍だったから頓挫しちゃって。それでも、いつか実現したいなと思っていて……

4s4ki:やっと叶いました!

--実際に『TO BE LIKE THRILLER feat.IKE, 星熊南巫, 4s4ki』共作してみていかがでしたか?

4s4ki:さすがですよね! みんなの得意な部分を活かしながら曲づくりも出来たし、武瑠くんから「MVに力を入れたい」と聞いていたので、曲もMV先行でイメージを膨らませていっているんですよね。そういう映像から曲を創るというのも私にとっては初めての経験だったんで、シンプルに「こういうやり方もあるんだ!」ってめちゃくちゃ勉強になりました。またひとつ武瑠くんに教えてもらったなって感じ!

--師匠みたいですね。

4s4ki:武瑠くんは師匠ですよ!

武瑠:でも「映像はこういう風にしよう」と思っていたけど、自分が創っていたサビから変わっているんで。前半はIKEくん、後半は完全に4s4kiが創っているから「こういうメロになるんだ!」と思って。最初はもっとK-POPっぽい感じだったんですけど、めちゃくちゃ良くなった!

4s4ki:みんなの良さが本当に出てる!

武瑠:ただ、スケジューリングは大変でした。普通にムズすぎるじゃないですか、それぞれリモートでやり取りしながら分割で作品を創るのって。単純に「8小節、自由にどうぞ」だったら簡単だけど、これだけの人数で絡み合いながら共同制作していると「ここのメロ」って文章で送っても「どこのメロ?」ってなっちゃうし(笑)。だから電話して歌ったりして。そんな感じですげぇ難しかったけど、でも「個性を掛け算するのは得意なのかも」とちょっと思いました。ひとりで創るより、誰かが生んだ素材と一緒に考えるほうが向いているのかもしれない。みんなのテイクをもらって、みんなすげぇ良かったし、それこそ「こんなやり方があるんだ?」って勉強になったし。普通にビビった。

4s4ki:武瑠くんにそう言ってもらえる日が来るなんて! 当時の私からしたら感動の瞬間です!

<インタビュー>武瑠『TO BE LIKE THRILLER feat.IKE, 星熊南巫, 4s4ki』特集記事(3者との対談&MV撮影レポート)

▲武瑠『TO BE LIKE THRILLER feat.IKE, 星熊南巫, 4s4ki』MVキャプチャ

--その4人の個性のぶつかり合いの凄みは、今日のMV撮影からもヒシヒシ感じています。あの4ショットは、続編のストーリーを創ってほしいと思うぐらいインパクトがある。

4s4ki:ほとんどアニメ!

武瑠:(笑)。それぞれのバージョンがあったら面白いですけどね。映像は難しいかもしれないけど、それぞれがライブでやるときは、AメロとかBメロとか自分が歌っていないところを勝手に違う内容にして歌ったりとか。或いは歌詞そのままで、例えば自分がIKEくんのパートを歌っても面白いだろうし。そういう「音楽は自由なんだよ」感を出したくて、この4人で創った楽曲でもあるので。

4s4ki:現時点でも「音楽は自由なんだよ」っていうことを私は知れました。これだけ個性バラバラな4人が自由にやっても意外とまとまるんだっていう。今日のMV撮影だって、事前に細かく誰がどう動くかなんて話し合ってないのに、自然と全員まったく違う動きをしていたし、みんながちゃんと主張してぶつかり合って、それがまとまっているというのは凄いこと。この4人なんてアーティストの中でも特に独自の世界観を持っている4人だから、なおさらそう思う。

--きっと『TO BE LIKE THRILLER feat.IKE, 星熊南巫, 4s4ki』を聴いて、MVを観た人たちもそう感じるでしょうね。

4s4ki:それぞれのファンみんな納得すると思いますよ。みんなが喜んでくれると思う。

武瑠:それはすごく意識していて。以前「1 2 3 for hype sex heaven feat.SKY-HI,TeddyLoid,Katsuma(coldrain)」を制作したときも4人それぞれの個性を均等に発揮していたと思うんですけど、フィーチャリングしている人たちの満足度が低くなると、曲の純度も落ちると思うんですよね。だから、今回もそれぞれの演者とそのファンたちも喜んでくれる作品にしたいと思っていて。

--実際、4人が純度100%で表現している印象は受けます。

4s4ki:本当にそう思う!

武瑠:あと、単純にひとりで制作することに飽きちゃっているんですよ(笑)。だから、フィーチャリング相手から何かを得ながら制作したいんですよね。

4s4ki:凄いね。アウトプットしながら同時にインプットもしているってことだ!

武瑠:今回はそんな感じがした。でも、みんなが凄すぎて2日ぐらい凹んだ(笑)。エンジニアさんに「これ、どうやって歌ったらいいんだろう?」って相談したり。GOMESSにも相談したかったからレコーディングに来てもらって。結果「敢えて削ぎ落しましょう」みたいな。

4s4ki:そうやって深く考えるのって武瑠くんの強みだと思っていて。楽観的すぎないから、永遠に悩みながらも進化していくんだろうなって。

<インタビュー>武瑠『TO BE LIKE THRILLER feat.IKE, 星熊南巫, 4s4ki』特集記事(3者との対談&MV撮影レポート)

▲左から:星熊南巫/武瑠/IKE/4s4ki

武瑠:4s4kiは特にコーラスの重ね方が意味不明だった。

4s4ki:アハハハ!

武瑠:めっちゃ面白かった。ポイントでがなるようなハーモニーを入れたり、「何それ? どうやって思いついてんの?」みたいなところがすげぇあって。重ね方、すげぇ謎。

4s4ki:トラックメイクしているみたいなイメージ。

武瑠:たしかに「本当に声を楽器にしているんだろうな」って思った。ただ作曲しているだけだと思いつかない作り方をしている。

4s4ki:それは私の個性だし、みんな歌い方もクセある人たちだし、それでまとまるのがめっちゃ気持ち良いですね!

武瑠:先日、ハイパーポップのイベントに行ったんですけど、4s4kiにすごく影響を受けている人たちがいっぱいいて。「そりゃそうなるだろうな」とは思ったんですけど。

4s4ki:嬉しい! 私も武瑠くんから影響を受けて、そんな私からも影響を受けている人たちがいて。そうやってどんどんいろんな音楽の幅が広がっていって、次の世代へ、また次の世代へ、ずっと続いていくことはミュージシャンとして誇らしいことですよね。

武瑠:清春さんが10年ぐらい前に「武瑠くんみたいなタイプはこの先どんどん孤独になって苦しい時期がやってくる。ただ、自分のフォロワーでめちゃくちゃセンスの良い奴や超えてくるような奴がどんどん出てきて、俺もそうなんだけど、めっちゃ凄いクリエイターとかが「好きです!」って助けてくれるフェーズがやってくるから、がんばれ!」って言ってくれたんです。「それまで持ち堪えろ!」って(笑)。最近、実際にそうなっていて、今日のチームも衣装さんとかメイクさんとか「ずっと観てました!」って集まってくれている。

--4s4kiちゃんもその中のひとりですよね。  

4s4ki:いやぁー、嬉しいですね!

武瑠:いわゆる地続きのジャンル、V系シーンにあのままいたら孤独すぎてそれを味わえなかったから、今の展開に切り替えたらそういう人たちとたくさん出会えて、自分もまた学んでいる。それが『TO BE LIKE THRILLER feat.IKE, 星熊南巫, 4s4ki』みたいな作品に結実できるのは、すごく嬉しいですね。

4s4ki:それはやっぱり武瑠くんが良いモノを創ってきたからですよ。だから、私も今ここにいるわけで。

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◎武瑠「ちゃんとそれぞれの世界の教祖たちでした!」

 満を持しての4ショットシーンの撮影へ。先程、武瑠がJOKERをイメージしてパフォーマンスしたと話していたが、個性豊か過ぎる4人が揃うと、そこはまるでゴッサム・シティ。アニメやゲームの世界から飛び出してきたキャラクターのようでもある。いや、ほんと、この4人が主人公の映画かアニメ、誰かつくってくれないかな。そう願わずにはいられないほど、4人のパフォーマンスにはそれぞれのストーリー=個性が乗りまくっていた。

 百聞は一見に如かず。詳しくは、完成したMVを観て感じ取ってほしいが、ここまで子供のようにワクワクする映像作品は珍しい。すべての撮影後「あー、たのしかった!」と満面の笑みで叫んでいたIKEに、互いのことを「可愛い、めっちゃいい!」と称え合いながら喜んでいた星熊南巫&4s4kiの様子からも、このMV撮影に明確な手応えを感じていたことは明白だった。武瑠の感想は最後に綴るが、この記事を読み終えたら何度でもこのMVを堪能してもらいたい。

<インタビュー>武瑠『TO BE LIKE THRILLER feat.IKE, 星熊南巫, 4s4ki』特集記事(3者との対談&MV撮影レポート)

▲左から:星熊南巫/武瑠/IKE/4s4ki

--最後に『TO BE LIKE THRILLER feat.IKE, 星熊南巫, 4s4ki』のMVを4人で撮影した感想を聞かせてください。

武瑠:映像チームもメイクチームも衣装チームも、そして、演者もすごく良い感じでチームワークが取れていて。演者もスタッフ陣もクリエイター陣もほぼノーミスで予定より2時間ぐらい早く撮影が終わりました。今までここまで巻いたことはないし、あり得ないぐらいスムーズに進んだんですよ。奇跡ですね。4人ともこんなにバラバラで我が強いのに、4人揃ったときにちゃんと空気感とパフォーマンスを調和しつつ掛け算することが上手く出来ていたので、その結果だと思います。特に細かい打ち合わせもしなかったので、感性でカバーしていたんでしょうね。「この人がこう動くんなら、自分はこうしよう」みたいなことが自然と出来てしまう。ちゃんとそれぞれの世界の教祖たちでした(笑)!

取材&テキスト:平賀哲雄

武瑠『TO BE LIKE THRILLER feat.IKE, 星熊南巫, 4s4ki』MV

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