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<コラム>スティーヴ・ジョーダンがThe Verbsを通して伝えるロックンロールの奥深い魅力
世界最高峰のグルーヴ・マスター、スティーヴ・ジョーダンとミーガン・ヴォスが結成したThe Verbsが東京・横浜・大阪のビルボードライブを含むジャパン・ツアーを開催する。2010年に奥田民生が正式メンバーとして加入したことも話題となった彼らの14年ぶりとなる日本公演に期待が高まるなか、スティーヴ・ジョーダンのキャリアと功績、ソロ活動30周年を迎えた奥田民生との関係、The Verbsが奏でるサウンドの魅力をスティーヴ・ジョーダンのコメントを交えながら繙いてみたい。
この記事は、2024年11月発行のフリーペーパー『bbl MAGAZINE vol.202 12月号』内の特集を転載しております。記事全文はHH cross LIBRARYからご覧ください。
Text:Kyoko Sano(Do The Monkey)
スティーヴ・ジョーダンとミーガン・ヴォスが結成したバンド、The Verbs
The Verbs(ザ・ヴァ―ブス)は、ドラマー/プロデューサーとして多岐にわたる活動で幅広い支持を集めるレジェンド、スティーヴ・ジョーダンと彼の妻であるシンガー・ソングライターのミーガン・ヴォスによって結成された。「僕たちがバンドを始めたのはいっしょに曲を作り始めてからで、自分たちがユニークな存在であることに気がついたからなんだ」と、スティーヴは語る。
1stアルバム『And Now…』(2006)は、ラリー・キャンベルも参加し、ミーガンとスティーヴはペダル・スティールギター、ヴァイオリンを演奏。ザ・フーやディアンジェロで活躍するピノ・パラディーノが1曲ベースで参加し、キース・リチャーズのソロ作やツアーでコーラスを務めた故バビ・フロイドがトースティングを担当し、スティーヴ自身がエンジニアを務めている最重要作。これまでに発表した3作のアルバムは、すべてスティーヴとミーガンがプロデュースしている。
The Verbs+奥田民生として開催された2006年の初来日公演は、ギターにザ・セクションで知られるダニー・コーチマー、ベースにピノ・パラディーノという音楽ファン垂涎のメンバーでステージを披露した。
そんな名だたるメンバーを招集できるスティーヴ・ジョーダンのキャリアもまた華々しい。1957年、ニューヨークに生まれ、1970年代からサタデイ・ナイト・ライブ・バンドやブルース・ブラザースなどで頭角を現し、以降はジャズのソニー・ロリンズやブルースのB.B.キング、ボブ・ディラン、エリック・クラプトン、ドン・ヘンリーといった大御所までジャンルを横断して大活躍。1986年にはローリング・ストーンズのアルバム『DirtyWork』への参加をきっかけに、キース・リチャーズと共にチャック・ベリーの映画『Hail!Hail! Rock 'N' Roll』に出演。キースのソロ・アルバム『Talk Is Cheap』の共同プロデュースと共作により日本のロック・ファンにも一躍その名が知られる存在となった。
以降もアリシア・キーズの「If I Ain't Got You」、ブルース・スプリングスティーンの『Devils and Dust』などのビッグヒットに携わり、プロデューサーとしては自身が参加するジョン・メイヤー・トリオの『Continuum』、ジョン・スコフィールドの『That's What ISay』、ハービー・ハンコックの『Possibilities』でグラミー賞を獲得。と、彼の八面六臂の活躍は枚挙に暇がないが、2021年8月に鬼籍に入ったチャーリー・ワッツに代わってローリング・ストーンズのツアーと18年ぶりの新作『Hackney Diamonds』に参加したことは記憶に新しい。
▲Alicia Keys - If I Ain't Got You
奥田民生との出会いとThe Verbs加入の経緯
The Verbsに話を戻すと、2010年には奥田民生が正式にメンバーに加入したことが発表され、奥田もギターで参加した2ndアルバム『TRIP』をリリース。
スティーヴと奥田の出会いは、奥田のソロ・デビュー時の90年代半ばに遡る。
ニューヨークでレコーディングされた1stアルバム『29』(1995)にスティーヴが初めて参加し、以降も『FAILBOX』(1997)、『E』(2002)、『Fantastic OT9』(2008)と度々共演を重ねている。シンプルながらも骨太なサウンドは奥田民生の音楽の魅力でもあるが、ソロ初期から懐の深いスティーヴのドラム・プレイと共鳴し合い、30年にわたり信頼を築いてきたからこそ、The Verbsへの加入は可能になったのだろう。
奥田が加入することになったのも、来日したスティーヴがThe Verbsの音源を気に入った奥田に「君がメンバーになってくれたら日本にライブに行くよ」と声をかけたことが発端らしい。2010年に開催された2度目の日本公演は、スティーヴ、ミーガン、ピノに奥田の4人編成で行われ、世界トップクラスのミュージシャンと共にギタリストとして堂々と渡り合い、存在感をアピールする奥田の姿をさらに印象づけた。2010年の公演では、バンドのオリジナル楽曲に加え、奥田のアルバム『OTRL』から「わかります」「たびゆけばあたる」、ユニコーン時代の名曲「ターボ意味無し」を披露して喝采を浴びた。
2011年よりベースがエリック・クラプトンやジョン・スコフィールドでスティーヴと組んでいた名匠ウィリー・ウィークスに代わり、2015年には1960~70年代の名曲をカバーした3rdアルバム『Cover Story』を発表。奥田にとって初の海外でのライブとなったL.A.公演を成功させている。
14年ぶりのジャパン・ツアーがビルボードライブで実現
The Verbsはこれまでに彼らのレーベル、〈ジェイヴィー・レコード〉から3枚のアルバムを発表し、2018年には「Pleaser」、「Simple Kinda Girl」の2曲を配信リリース。
モダン・ロックンロールの魅力がたっぷり詰まったバンド・サウンドを変幻自在に聴かせてくれるが、ミーガンはクラシックのピアニストとして、スティーヴはクラシックのパーカッショニストとして幼少期を過ごしていたことがバンドが持つ豊かな音楽性の鍵になっているという。「その経験がロックンロール/パワーポップ/パンクの曲作りのアプローチおいて、何が重要かをそれぞれ異なる視点で与えてくれる」と、スティーヴは語る。
どこかパンキッシュな雰囲気を醸しているのは、ヴォーカルのミーガン・ヴォスがニューヨークのパンク・クラブ、CBGBの常連であったガールズ・バンド、The Antoinettesのメンバーであったことも影響しているのだろう。
▲The Antoinettes - "What I Say" (Live From CBGB's)
「僕もCBGBで演奏することを夢見ていたんだけど、そのチャンスはなかったんだ」というスティーヴの意外な一面が見えるのも面白い。スティーヴ曰く、「好きな音楽に向かい合い、本当にやりたいことを実現させることができる場所」がThe Verbsなのだ。
そんなロックンロールの奥深い魅力を余すところなく伝えるThe Verbsの14年ぶりのパフォーマンスが、この12月、ビルボードライブ3会場を含めたジャパン・ツアーで実現する。今回は東京、大阪、京都、広島公演には2月に行なわれたミシェル・ンデゲオチェロのビルボードライブ公演に帯同したマルチ・プレイヤーのクリス・ブルース、横浜公演にはウィリー・ウィークスがベースで登場。近日発売予定だというアルバムからの新曲も披露されるというから、ますます進化した彼らのプレイを堪能できるに違いない。
数々の名盤にその名を刻み、多くのミュージシャンに影響を与えるメンバーを擁する奇跡のバンド、The Verbsの多彩な音楽と極上のグルーヴを至近距離で堪能できる絶好のチャンスをお見逃しなく!
公演情報
【The Verbs feat. Steve Jordan, Meegan Voss, Tamio Okuda and Willie Weeks】
2024年12月8日(日)神奈川・ビルボードライブ横浜
1st Stage Open 15:00 Start 16:00 / 2nd Stage Open 18:00 Start 19:00
公演詳細
【The Verbs feat. Steve Jordan, Meegan Voss, Tamio Okuda and Chris Bruce】
2024年12月10日(火)-12月11日(水)東京・ビルボードライブ東京
1st Stage Open 16:30 Start 17:30 / 2nd Stage Open 19:30 Start 20:30
公演詳細
2024年12月13日(金)京都・京都磔磔
Open 18:30 Start 19:00
2024年12月14日(土)京都・京都磔磔
Open 17:30 Start 18:00
公演詳細
2024年12月17日(火)広島・BLUE LIVE 広島
Open 18:15 Start 19:00
公演詳細
2024年12月16日(月)大阪・ビルボードライブ大阪
1st Stage Open 16:30 Start 17:30 / 2nd Stage Open 19:30 Start 20:30
公演詳細
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