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<インタビュー>自分たちにとってYOASOBIとは何なのか――Ayaseとikuraが自問する、結成5年目以降の在り方
Interview & Text: Takuto Ueda
Photo: Mayuka
小説を音楽にするユニット、YOASOBIが結成5周年を迎え、これを記念した自身初のドームライブ “超現実”を間近に控えている。
2019年11月にデビュー曲「夜に駆ける」で彗星の如く登場して以降、J-POPシーンの新時代を切り拓いてきたYOASOBI。2023年はTVアニメ『【推しの子】』オープニング主題歌の「アイドル」が、それまでの目覚ましい記録をさらに更新する大ヒットを打ち立てた。その年のビルボードジャパン各種年間チャートにおいては、メインの“Hot 100”をはじめとする計5種類のソング・チャートでトップに立ち、アーティスト単位で集計される“Artist 100”でも念願の首位を獲得。また、同年9月には「夜に駆ける」が同チャート史上初となるストリーミング10億回再生を突破するなど、まさしく“超現実”ともいうべき驚異的なキャリアを歩んでいる。
そうした激動の5年間を経て、あらためて自分たちの在り方とも向き合い、新たなフェーズに進もうとするYOASOBIのふたりにインタビュー。節目を迎えた現在の心境、確かなネクストステップを提示している今年の楽曲「UNDEAD」や「舞台に立って」の制作過程、ドームライブへの意気込みなど、語ってもらった。
「5周年」の節目を迎えて
――2019年10月1日に結成し、先日ついに5周年を迎えたYOASOBI。まずは節目のアニバーサリーを迎えた今の心境をお聞かせいただけますか?
ikura:ドームに向けての打ち合わせや、5周年を記念したイベントをたくさんやらせていただくなかで、本当にここ最近、ようやく実感し始めました。YOASOBIを始めたときは、こんなに人生の中で大きくなっていく存在だとは思っていなかったし、そのままなだれ込むように今の生活になっていったので、あっという間と言われたらあっという間なんですけど……中身の濃密さで言ったら10年ぐらいをぎゅっと5年にしたぐらい、いろんなことがあった日々で。
――「もう5周年」でもあるし「まだ5周年」でもある。
ikura:でも、5年という区切りはすごく大きいですよね。新人枠からはもう脱したところにいるのかな(笑)。でも、自分たちとしては新しいスタートを切るつもりで5周年を迎えようと思っていたので、「ここからさらに成長していかなきゃ」みたいな意気込みもあります。
――Ayaseさんはいかがですか?
Ayase:言ってしまえば3周年、4周年と心境はそんなに変わらないけど、今年は出す曲しかり、プロモーションしかり、“5周年”をベースに動いていて。なんとなくキリがいい5周年のおかげで気合いを入れ直すというか、「ここで新たにYOASOBIを再スタートさせましょう」みたいな気持ちになれた感じはありますね。
――今年のいろんな活動はある種、5周年プロジェクトの一環ともいえる?
Ayase:そうですね。これはポジティブな意味なんですけど、去年は「アイドル」が国内外多くの方に聴いていただけて、さらにありがたいことに“Artist 100”の年間1位に選んでいただくことができました。国内で目標としていたことを達成することができ、今はすごく爽やかな気持ちで5周年の活動に取り組んでいます。世間的にはあまり気にならないことかもしれないけれど、僕らの気持ち的にはそういった評価も大事だったし、「ランキングで勝つ」みたいなことも明確に思っていたので。
――肩の荷をひとつ下ろせたような感じ?
Ayase:本当にそうですね。4年目まではいただいた話に対して全力で何かをやる、そのなかで良い結果を出すために頑張る、というのが多かったけど、5年目以降は自分たちが何をしたいか、どんなふうに見られたいかをちゃんと整理して、これからYOASOBIをどんなふうに育てていきたいか、そもそも自分たちにとってYOASOBIとは何なのか?みたいなことを改めたうえで再スタートを切る一年だなって感じです。
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――明確に5周年モードが始まったのはいつ頃から?
Ayase:去年のいつだろう、夏とか?
ikura:そうね、夏か秋ぐらいから考えていたと思います。
Ayase:ただ、ちゃんと動き出したのは年明けてからになります。結構最近になりますが、【コーチェラ】から帰ってきたぐらいの頃かな。
――おふたりとも「当初は長く続くプロジェクトになると思っていなかった」というお話を度々されていますが、実際に5周年を迎えてみて、ここまでYOASOBIを続けてこれた要因やモチベーションって何だと思いますか?
Ayase:いっぱいあるんですけど。
ikura:そうだね。
Ayase:このふたりの信頼関係がちゃんと生まれたこともあるし、バンドメンバーや支えてくれるスタッフたち、ファンの皆さんが応援してくれたことももちろんある。あとは個人的に、チャートであったりも一つ目標として意識していたので、あと一歩届かないみたいなことが多かったのは大きくて。「もうやめてやる」とか「曲書きたくない」みたいに思うこともあったけど、もうひと踏ん張りすれば届きそうな目標があった。それは希望だったし、モチベーションにつながりましたね。これだけ仲良くやれていても、たぶん結果が伴っていなかったら、どこかで心は崩れていた気がします。
――ちゃんと前進している実感があったからこそですね。
Ayase:そういう目標が、それこそより大きくスケールアップしたのが今年に入ってからで。今度は数字とかじゃなく、社会の中でYOASOBIをどういう立ち位置にしていきたいか、みたいな漠然とした感じに変わっていきました。この5年目で改めて見直すきっかけにもなり、今はまたそれがモチベですね。
――ikuraさんはいかがですか?
ikura:1年目から5年目まで、モチベーションの形はどんどん変化していたのでひとつに絞るのは難しいんですけど……昔からずっと今みたいな音楽生活を夢見てシンガー・ソングライター活動をしていたので、YOASOBIを始めてから1~2年目は、やっとチャンスに巡り会えたといううれしさと、それを継続させなきゃいけない、チームと一緒に自分も成長しなきゃいけないという気持ちがモチベーションでした。自分の経験したことのない、新しい挑戦が降りかかってくる毎日だったので。
――学生時代からシンガー・ソングライターとして、自主的に活動されてきましたもんね。
ikura:そこから3年目、4年目と経って、アリーナツアー(2023年4月~6月の【YOASOBI ARENA TOUR 2023 “電光石火”】)を経験したときに、すごく大勢の人がYOASOBIというプロジェクトに夢を託してくれて、大きな宇宙船みたいなものに一緒に乗って動いているような感覚が自分の中にあったんです。最初はひとりでプレッシャーを感じていたこともあったけど、あくまで乗組員のひとりとしてYOASOBIに夢を乗せていいし、そうやって全員が想いを乗せている立場なんだって気持ちに切り替わって、自分がYOASOBIでどんな表現をしたいかとか、YOASOBIにおけるikuraの立ち位置が定まった感じがしていて。なので、携わってくれている人たちの存在も大きなモチベーションですね。
「YOASOBIが完成した瞬間」
――ふたりの関係性みたいなお話もありましたが、そこの絆が固まったのはどんな瞬間でした?
Ayase:やっぱりアリーナツアーだよね。
ikura:だね。それまでは、たとえば武道館とか、一つひとつの断片的な目標になることが多かったけど、ツアーは数か月間、みんなでひとつの目標に向かっていく。そういうのは初めてだったし、そこでAyaseさんがすごくアツい話をしてくれて、私的にはそれが「YOASOBIが完成した瞬間」だと思ったんですよね。「これからもYOASOBIとして生きていくぞ」って気合いがすごく入った感じがしました。
――ikuraさんは大学の卒業もありましたよね。
ikura:Ayaseさんと出会ったのは18歳のときだったんですよ。最初は現場での緊張感とかもなかったんです。そこから物事をちゃんと深く考えて行動できるようになっていって。そこは大人になっていく過程で変わった部分なのかなと思います。
――Ayaseさんから見て、ikuraさんの変化は感じていましたか?
Ayase:どうだろう。よく一緒に遊んだりはしていたものの、深い話みたいなことはしてなくて。それができるようになったのが、それこそアリーナツアーのときだったんですけど、ikuraが成長したからなのか、たまたまなのかは分からなくて。もともと物事を冷静に見れる人だなとは思っていましたけどね。活動の中を通じて、二人で成長していっていると思います。
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公演情報
【YOASOBI 5th ANNIVERSARY DOME LIVE 2024 “超現実”】
2024年10月26日(土) 大阪・京セラドーム大阪
開場 15:30 / 開演 18:00
2024年10月27日(日) 大阪・京セラドーム大阪
開場 14:30 / 開演 17:00
2024年11月9日(土) 東京・東京ドーム
開場 15:30 / 開演 18:00
2024年11月10日(日) 東京・東京ドーム
開場 14:30 / 開演 17:00
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