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<インタビュー>VivaOla×Jimmy Brown、尊敬し合う2人が放つストレートなラブソング「RIGHT/WRONG」
Interview & Text:小野田雄
今年3月に2ndフルアルバム『APORIE VIVANT』をリリースした韓国生まれ、東京育ちのR&Bアーティスト、VivaOla。ブライソン・ティラーのアルバム『トラップ・ソウル』に触発された先進的な作風が話題となった彼が、韓国を拠点に、世界で活躍するR&Bアーティスト、Jimmy Brownをフィーチャーした新曲「RIGHT/WRONG」を完成させた。この楽曲は、Jimmy BrownがVivaOlaを迎え、2022年に発表した「bag on you」に続く両者のコラボレーション第2弾にあたるもので、英語、日本語、韓国語が飛び交うボーダーレスな作風は、グローバルに音楽が広がる現代の音楽環境を体現している。R&Bをルーツに、ジャンルや国籍の壁を越えた先でクリエイティヴィティを発揮する両者に、話をうかがった。
「それぞれのバックグラウンドからにじみ出てくる個性」
――まずはVivaOlaさんからJimmy Brownさんをご紹介いただけますか?
VivaOla:Jimmyは韓国を拠点にしつつ、ファンベースである北米やヨーロッパを視野に英語詞の曲を発表しながら活動しているアーティストです。彼は以前からグローバルなR&Bシーンで活躍していたので、その存在は知っていたんですけど、韓国人の共通の知り合いが僕とJimmyを繋げてくれて、実際に会わないまま、2022年にリモートで彼の楽曲「bag on you」にフィーチャリングで参加しました。実際に会ったのは、2023年8月、日本に遊びに来たJimmyと渋谷で会ったのが最初です。自分は00年代から10年代のR&Bを聴いて育ったんですけど、彼の声や楽曲から近しい音楽の影響が感じられて、一方的にシンパシーを覚えていたんですけど、よくよく話を聞いたら、Jimmy BrownのBrownは彼の大好きなR&Bシンガー、クリス・ブラウンから取ったということで、思わず納得しましたね。
Jimmy Brown:ありがとう。 自分にとってのVivaOlaの魅力も彼の美声にあると思っていて、「bag on you」を制作していた時もこの声があれば、絶対にいい曲になるだろうと確信して、フィーチャリングでの参加をお願いしました。そして、実際に出来上がった楽曲はもともとあったポジティブなバイブスが増幅されて、大好きな曲になりましたね。
VivaOla:自分は最新アルバム『APORIE VIVANT』にもフィーチャリングで参加してくれたBleecker Chromeの藤田織也くんと一緒によく制作しているんですけど、その時も「バイブスをキャッチしなきゃ」って言っていて、曲のサウンド感やスタイル以上にバイブスをキャッチすることが大事だと思っていて。「bag on you」ではお金で愛を表しているんですけど、お金というのは自分の作品でも気をつけて扱っているセンシティブなトピックなので、自分なりに試行錯誤して、お金があってもなくても、全てをあげてしまいたいくらい愛しているという上手い落とし所に着地させることが出来たし、同じ着地点をJimmyと共有することが出来てよかったなって。
――そして、「bag on you」のコラボレーションから2年を経て、今度はVivaOlaさんの作品にJimmyさんをフィーチャーする形で2度目のコラボ曲「RIGHT/WRONG」を制作することになった経緯を教えてください。
VivaOla:2022年は、自分にとって色んなコラボを形にした年だったんですけど、「bag on you」は数あるコラボ曲のなかでもミックスと歌詞とバイブスが一番好きな曲だったんです。そして、『APORIE VIVANT』以降、(クリエイティブ・レーベル/コレクティブ<w.a.u>のファウンダー)Kota Matsukawaをプロデューサーに、沢山曲を作るなかで、フィーチャリングを迎えたら、さらによくなりそうな曲があって、誰にお願いしようか相談していたんですけど、「Jimmy Brownがいいんじゃない?」という話になって。「bag on you」以降、Jimmyとは実際に会って、彼の人の良さに触れたことも踏まえつつ、今度は僕の曲にフィーチャリングで参加してもらおうということになりました。自分の曲のテーマは、心の葛藤だったり、色々あったりするんですけど、Jimmyとの新曲のテーマはストレートにラブ。ソングライティングは織也くんとの共作なんですけど、2人で「Jimmyがワクワクするような曲を作りたいね」と話ながら制作を進めていきました。
「bag on you」
――「bag on you」がJimmyさんの描くポジティブなラブが反映されているのに対して、今回の「RIGHT/WRONG」はVivaOlaさんのマナーに則ったポジティブなだけではないラブが描かれていますよね。
VivaOla:ちょっと暗いというか、そうですね。ただ、ご指摘のような暗さもありつつ、バースの部分は超ポジティブになったんですよね。サウンド的にJimmyにクリス・ブラウン的なボーカルアプローチを期待していたんですけど、グルーヴが倍速になる彼のバースにクリス・ブラウンを感じてうれしくなっちゃいましたね。
――3月リリースの最新アルバム『APORIE VIVANT』は、ブライソン・ティラーに触発されたトラップソウルをVivaOlaさんなりに具現化されていましたが、今回のサウンドアプローチはどう考えられましたか?
VivaOla:モード的には『APORIE VIVANT』の流れが続いていて、今回も音色的にはトラップなんですけど、楽曲はトラップじゃなくてもいいんじゃないかって。だから、ラップもトラップのようなたたみ掛けるようなアプローチじゃなく、フランク・オーシャン的なオルタナティブなラップを意識しましたね。
――JimmyさんはVivaOlaさんの楽曲についてはどう思われましたか?
Jimmy Brown:モダンなサウンドだよね。2人の共通点と異なる点はそれぞれのバースを聞けば分かるんじゃないかな。2人ともUSのR&Bがルーツにありつつ、声の伸ばし方も伸バース箇所とか喉の使い方に大きな違いがある。自分はR&Bに出会う以前、韓国の田舎で(韓国固有のジャンルである)バラードを聴いて育ったことが影響しているんだろうし、VivaOlaはR&Bに出会う以前に聴いていたロックやジャズを学んだ経験が関係しているんだろうと思う。ただ、そういう違いは考えて出るものではなく、それぞれのバックグラウンドからにじみ出てくる個性なんじゃないかな。
VivaOla:自分の場合、歌のアプローチを考え過ぎた結果、考えずに歌うことが多いのに対して、Jimmyはいい意味で考えずに、ありのままを表現しているアーティストなんですよね。2人とも考えずに歌っているという意味では同じなんですけど、自分とJimmyは音楽に対するアプローチの仕方が対極的だし、だからこそ、惹かれ合うし、1曲のなかで調和しているのかもしれないですね。
――VivaOlaさんとJimmyさん。対照的な2人が共鳴し合ったのが今回の「RIGHT/WRONG」なんですね。
Jimmy Brown:僕は至ってシンプルな人間なんだよ(笑)。
――2人のコラボレーションは今後も期待できそうですか?
VivaOla:前回の「bag on you」と今回の「RIGHT/WRONG」は送られてきたそれぞれのトラックにフィーチャリングで参加したワンタイムの企画物という位置づけなので、次また一緒にやるんだったら、スタジオでの共同作業でゼロから曲を作って、2人のダブルネームでリリースできたら面白いですね。
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