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<インタビュー>グソクムズとスカート、共演記念対談――リスペクトし合う二組がお互いを語りつくす

インタビューバナー

Text: 村尾泰郎 / Photo: 堀内彩香

 澤部渡のソロ・ユニット、スカート。東京の吉祥寺を拠点に活動する4人組バンド、グソクムズ(たなかえいぞを、加藤祐樹、堀部祐介、中島雄士)。ソングライティングと日本語歌詞を大切にして活動する両者がビルボードライブで共演することに。グソクムズは今年4月にメジャーデビュー・アルバム『ハロー!グッドモーニング!』を発表して新境地を切り開いたが、スカートは2017年にメジャーデビューして以来、その唯一無二のポップ・センスで独自の世界を築き上げてきた。どちらもインディー・シーンで音楽性と技術を磨き、メジャーに飛び込んだ先輩と後輩。それぞれリスペクトし合う両者に、今回の共演に向けて話を聞いた。

歌ものバンドが出てきたのがすごく嬉しかった(澤部)

――スカートとグソクムズのキャリアはどれくらい離れているんでしたっけ?

澤部渡:僕がデビューしたのは2010年です。

たなかえいぞを:僕らは2021年です。


――ということはひとまわり違うんですね。

澤部:10年上の先輩って一番人生に影響がない先輩じゃない?(笑)

たなか:そんなことないですよ(笑)

加藤祐樹:2010年といえば14歳。俺はGReeeeNしか聴いてなかった。

堀部祐介:そんなことないでしょ(笑)

中島雄士:俺は20歳だったけど、ゲームをやりすぎて廃人一歩手前でした(笑)


――音楽どころじゃなかった(笑)。ということは、グソクムズの皆さんはスカートがデビューしてから知ったわけですね。

たなか:20代前半の頃、吉祥寺の飲み屋でよく呑んでたんですけど、そこにceroの橋本(翼)さんとかカクバリズム界隈の人が出入りしてて。そこでスカートがよくBGMで流れていたんです。ちゃんと聴くようになったのは「ODDTAXI」がきっかけでした。偉そうな言い方になってしまうんですけど、コード進行やメロディーラインがツボをついてくるんですよね。「なるほど、こうやればいいんだ」って、すごく勉強になりました。


▲「ODDTAXI」MV / スカートとPUNPEE

澤部:あの曲を書いた時は超スランプだったんですよ。コロナが流行り出してすぐくらいだったんですけど、その時に曲が書けなくなってしまって。それですごく焦って、滅多にないんですけどコード進行から書いたんです。それでもメロディーが書けないから、今度は歌詞の冒頭の一節だけ書いて、それでようやく書けた。普通とは違うやり方だったんですけど、それがうまくいって良い曲にもなったので思い出深いですね。


――澤部さんはどういうきっかけでグソクムズを聴くようになったのでしょうか。

澤部:ラジオで「すべからく通り雨」を聴いて、こういう歌ものバンドが出てきたんだ、って思ったんですよ。それがすごく嬉しくてバンドのことを調べたら、当時は“風街系”という言葉がよく使われていて。はっぴいえんどをルーツに持つバンドって定期的に現れると思うんですけど、その新しい波が来たなって思いました。


▲「すべからく通り雨」MV / グソクムズ

堀部:いつも僕らの写真を撮ってくれるフォトグラファーがいるんですけど、その方が(レコードショップで)澤部さんが僕らのファースト・アルバムのレコードを持ってレジに行ったのを見たって連絡してくれたんです(笑)


――そういう情報が寄せられた(笑)。澤部さんは覚えてますか?

澤部:覚えてます(笑)。渋谷のタワレコですよ。ふらっと行ったらアナログが並んでて、買わなきゃって思ったんです。

堀部:それが発売日だったんですよ。初めてお会いした時に、そのお礼を言いました。


――買ったアルバムを聴いて、これまでの歌ものバンドとの違いを何か感じられました?

澤部:郊外の雰囲気があると思いました。ここ 10年くらい、シティ・ポップ・ブームというのもあって、若いポップ・バンドが山手線の内側を描きたがる風潮を感じていたんですけど、グソクムズはそうじゃない表現をとっている気がして。それがかっこよかった。あと、メンバー全員、曲が書けるっていうのが羨ましいんですよ。そういうバンドを僕もやりたかったので。


――でも、メンバーが集まらなかった?

澤部:良い時期に集まらなかったんです。いま、スカートでキーボードを弾いている佐藤優介くんともっと早く出会っていたら、一緒に曲を書くバンドをやっていたかもしれないですね。でも、彼と出会った時はもうスカートを始めてたし、今さら曲も書いてよとは言いにくくて。


――グソクムズは、曲が書けることがメンバーの条件というわけではなかったんですか?

たなか:そういうわけではなかったですね。最初は僕と加藤でバンドを始めて、ずっと2人で曲を作ってたんです。そのあと、肉付け的な感じでメンバーを増やしていったんですけど、堀部や中島さんが曲が書けるのを知っていたので頼んでみたんです。それは僕と加藤が自分たちの曲に飽きちゃったっていうのもあるかもしれないですね。いろんなメロディーやコードを入れてみたかったんです。

加藤:そのわりには最初の頃は文句言ってたよね(笑)

たなか:「コードが難しい」とか「キーが低くて歌いづらい」とかね(笑)

中島:「今までのグソクムズにはない感じの曲を書いてほしい」って言われて曲を書いて渡したら、「これはグソクムズっぽくない」って言われたり(笑)

加藤:それは、イマイチだったけど気を遣って言い方を変えたの(笑)。他のメンバーが書いた曲って最初は意見を言いにくいんですよ。

澤部:そうだよね。あとでほぐれてくると「これは違う」って言えるようになるけど。

たなか:自分が書いた曲のことを他のメンバーに言われるのは、パンツの中を見られるより恥ずかしい(笑)

堀部:でも、4人で曲を書くようになって音楽性が広がった気がします。誰かが書いた曲が採用されると、これがいけるんだったらこういう曲を書いてみようって新しいタイプの曲に挑戦したり。


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バンドとソロ・ユニット

――4人とも曲を書くことに対しては意欲的なんですね。

中島:みんな曲を書くのは好きだと思います。普段、曲を聴いているときに、このアレンジかっこいいな、とか、こういう曲調のなかにこういうメロディーが入っていたら面白いな、と思ったら自分なりにそれを表現できないか考えたりするし。だから常にいろんな曲を聴くようにしています。

堀部:他のメンバーが書いた曲に知らず知らずの間に影響を受けたり、触発されたりもしますね。

加藤:最近、シンプルなコード進行がいいんじゃない?っていうブームがあったね。


――メンバーが刺激を与え合って一緒にアルバムを作り上げているのが伝わってきますね。スカートは澤部さんのソロ・ユニット。シンガー・ソングライターとバンドの中間という立ち位置ですが、澤部さんとスカートのメンバーとの関係性はどんな感じですか?

澤部:基本、メンバーは僕がやってることに興味ないんですよ(笑)。レコーディングとかツアーの度に、すみません、皆さん手伝ってください、ってお願いするんです。だから、たまにメンバーから「そのコード、ちょっと違うんじゃない?」って言われたりすると嬉しい(笑)


――バンド感が味わえる(笑)。今からバンドをやってみようとは思わないのですか?

澤部:そこは難しいところで。何か大きな出来事があればやってみようかと思うかもしれませんが、いまの付かず離れずの関係性がスカートにとってベストの距離感なんじゃないかと思います。


――それにしても、メジャーデビューしてからそろそろ7年が経ちますが、自分のやりたい音楽を大切にしながら映画やドラマの主題歌、CMを数多く手がけてきて、最新作『SONGS』は13曲中10曲がタイアップ。理想的な状況ですね。

澤部:自分でも信じられないですね。自分にしかやれないものがあるはず、と思ってやってきて、映画の主題歌の話が初めてきた時は本当に嬉しかったですよ。変にやり方を変えないでよかったと思いました。さっきも話をしましたけど、コロナで曲が書けなくなって1年くらい経った時、ウェブCMの依頼が来たんですよ。そのディレクターの方が「スカートさんの『静かな夜がいい』とか『視界良好』が好きで、とにかくいい曲を書いてください!」って言ってくださって。うわー! これは熱くなるやつだ、と思って、いろいろ悩みながら作ったのが「海岸線再訪」という曲で。そこからまた曲が書けるようになったんです。



▲「海岸線再訪」MV / スカート

――ちゃんと曲が届いていたんですね。「海岸線再訪」が収録されている最新作『SONGS』は外向きのアルバムだと思いました。しかも、シュガー・ベイブの名盤と同じタイトルというところにも決意を感じさせたりもして。

澤部:僕も外向きなアルバムだと思います。それはやっぱり、コロナだったりスランプだったりしたことを乗り越えて作ったこととか、外部から頼まれて書いた曲が多いことが関係していると思います。『SONGS』って名乗ることを決めた時は、すごい勇気がいりましたよ。でも、前向きにも後ろ向きにもそうとしか言えないアルバムだし、もう開き直るしかないなと思って。



――グソクムズのメジャーデビュー・アルバム『ハロー!グッドモーニング!』も外に向かって開かれたアルバムのように思えました。新しい自分たちを出していこうという意気込みが伝わってきて。

澤部:メジャー一発目でしょ? そりゃあ、気合入るよね。

たなか:今回のアルバムは、これまでよりもいろんな人が聴く作品になるんだろうなっていうことは意識していましたね。あと、アルバムとしてかっちり構成されたものにしたいと思っていたんです。だから、どんなタイプの曲をどんな順番で並べるのか。レコードで聴くとしたら、どのタイミングでひっくり返すのか、ということも細かく考えて作りました。

堀部:前のアルバムはメンバーそれぞれが好きな曲を書いて詰め込んだものだったので、今回はもっとコンセプチュアルなものにしようと思ったんです。

澤部:確かに、一枚のアルバムとしてちゃんと作られてますよね。最後の曲と1曲目が繋がるような演出があったりして。ちょっと変な言い方ですけど、おお、若者がアルバムを作ってるって思いました(笑)。これ、ちゃんと伝わるかわかんないんですけど、“アルバム”という意識って、この10年ぐらいで失われつつあるじゃないですか。そういうものを若者が提案してくれるっていうのは、すごく嬉しいですね。


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アルバム1曲目は「びっくり枠」

――『ハロー!グッドモーニング!』収録曲のなかでは、澤部さんは「シグナル」が一番好きだとか。

澤部:そうです。バンドが出てきた時に“風街系”とか“吉祥寺の感じ”とか、わかりやすいイメージがあるのって、すごい便利なんですよ。聴く側もやる側も。でも、それを脱ぎ捨てようっていう意思を「シグナル」から感じたんですよね。アルバムの1曲目だったし。違ったら申し訳ないですけど(笑)

堀部:「シグナル」は僕が書いたんですけど、アルバムのコンセプトが決まる前に書いたんです。それで曲を書いて出した時に……

加藤:文句言われたよね。「これアルバムの1曲目で大丈夫なの?」って。


澤部:えーっ! そうなんだ。

たなか:「シグナル」は2000年代のJ-ROCK感があったんです。それが自分たちなりに昇華できるのかなっていう懸念があって。でも、これまでアルバムの1曲目には聴く人をびっくりさせるような曲を持ってきていたので、今回はその「びっくり枠」にはピッタリだと思ったんです。だから、賭けみたいなところはありましたね。

加藤:それで、リズムをずらしたら面白くなるんじゃない?ってやってみたら案外うまくいったね。


――そうやってメンバーで知恵を出して曲を完成させていくところがバンドっぽくていいですね。

澤部:いいですよね。羨ましいです。


堀部:あと、ライブ活動がかなり積極的になってきたのもアルバムに影響を与えていると思います。今まではリスナーの人たちって顔が見えなかったんですけど、ライブだともうそこにいるわけじゃないですか。バンッと鳴らしたものに盛り上がってくれる人たちを見られたのが、すごく刺激になりました。

たなか:うん。ライブでこういう曲できたらな、と思って作ったりすることで、今までにはなかったアプローチが出来たりもして。

――それは大きな変化ですね。そういえば昨年、初めてスカートとグソクムズはライブで共演しています。お互いに初めてライブを見てどんな感想を持ちました?

たなか:インディーで活動していた頃からスカートのことは知っていたので、とうとうスカートと対バンできるようになったのか……と思いましたね。

加藤:それで(スカートの)ライブを見た後、「良い曲しかなかったね」っていう話をしていましたね。

たなか:俺らにはできないコード進行とかね。

堀部:あと、思った以上にロック・バンドで驚きました。

澤部:そうなんですよ、気持ちは無骨なロック・バンドなんです(笑)

中島:僕はスカートの歌で印象的なのは澤部さんの声なんです。だからライブで生の声を聴いて、こんな感じなのか!って。

澤部:ありがとうございます。グソクムズのライブはレコードとはまた違って、すごい熱量があって頼もしかったですね。

たなか:気持ちはパンク・バンドなんで(笑)


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ビルボードライブで共演へ

――今度はビルボードライブで共演。澤部さんはスカートとしては初めてですが、サポート・メンバーやゲストとしてステージに立ったことはありますよね。グソクムズは今回初めて?

たなか:そうです。実は会場に行ったこともなくて。

――メンバーでビルボードライブに行ったことがある人は?

堀部:僕は何度かあります。最近ではバーナード・パーディーとか。

澤部:うわあ、僕も行きたかったんだよね。まだ現役バリバリ?

堀部:バリバリです。バスドラとかめちゃくちゃデカくて、すげえ楽しかったです。あとはデイヴィッド・T・ウォーカーとか。

澤部:シブい!


堀部:だから、僕にとってビルボードライブは憧れのミュージシャンが立つステージなんですよ。

加藤:そういうところに俺たちが立って大丈夫なの?

堀部:ここに来る時に加藤くんが、ビルボードライブでやる時ってスーツ着なくても大丈夫なの?、って(笑)。Tシャツで大丈夫だよって言っておきました。

たなか:でも、お客さんはワイン片手にオリーブとか食べながら観ているんでしょ?

堀部:結構、踊ったりもしてるよ。

たなか:そうなんだ! 楽しそうだね。やっぱりライブは踊ってなんぼだから。


堀部:ビルボードライブはレストラン形式の会場だから、普段僕らがやっているライブハウスとはちょっと雰囲気は違うけど、そこで新しく出会えるお客さんもたくさんいるかなと思っていて。それはすごく楽しみにしていますね。

澤部:スカートとしてビルボードライブでやるのは今回が初めてなので、どんな風にしようかなっていうのは今いろいろと考えてます。弾き語りの曲は全体の時間だけ決めておいて、その場の雰囲気でやる曲を決めることが多いんですけど、今回はあらかじめ決めておこうかなと思ったりもして。


――グソクムズは何か考えていることはありますか?

加藤:ビルボードライブ経験者の堀部がちゃんと考えてくれていると思います(笑)

堀部:数々のレジェンドが立った格式があるステージなので、皆さんキレイな服装で来てください。僕らもビルボードライブ仕様で出ます(笑)

たなか:さっきと言ってることが逆だろ!(笑)。お客さんが構えちゃうと僕らも構えてしまうので、いつも通りラフな気持ちで見にきてほしいですね。

中島:グソクムズってビルボードライブに立つような感じの人たちじゃないと思うんですよね。だから、ご飯食べながらゆっくりグソクムズ見れるんだ。行ったことないし行ってみようかな、ぐらいの感じで観に来てほしいですね。ビルボードライブみたいな空間とグソクムズのコラボを楽しんでもらうというか。


加藤:そうだね。初めてなんで温かな目で見守ってほしいです。

堀部:ハードル下げたな(笑)

澤部:僕はビルボードライブでのライブの尺ってちょうどいいと思ってて。パンパンに2時間、3時間やるのも最高ですけど、ちょうどいいところで終わる感じがするんですよ。そういう尺感も最高なんで、ビルボードライブ未体験の方には、ぜひ足を運んでもらいたいですね。

――もしかしたら、ジョイントで何かやるっていうことも?

澤部:去年、一緒にライブをやった時はやれなかったので、今回は何かできたらいいなって思っていて。

たなか:やりたいですよね。

澤部:実はこの後、それを話そうかと思っていたんですよ(笑)

たなか:じゃあ、この後、早速!(笑)


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