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<インタビュー>来年デビュー40周年の節目を迎える浅香唯、キャリアを重ねての心境面における変化やビルボードライブ公演への想いを語る
Interview :吉本秀純
1985年に歌手デビューを飾り、翌年に連続TVドラマ『スケバン刑事Ⅲ~少女忍法帳伝奇』において主役の三代目・麻宮サキ役に抜擢されてブレイクを果たした浅香唯。近年もドラマやミュージカルへの出演で活躍し、シンガーとしての公演もコンスタントに続けていた彼女が、3度目となるビルボードライブでの公演を9月7日(土)に大阪、14日(土)に横浜で開催する。来年にデビュー40周年の節目を迎えるのを前にしてますますアクティブな動きをみせる彼女に、キャリアを重ねての心境面における変化や、ビルボードライブという特別な音空間へのこだわりについて語ってもらった。
――最近では、新歌舞伎座での公演や、5年ぶりとなった三姉妹コンサート(浅香唯・大西結花・中村由真)でのコンサートなど。また、2022年には日本麻雀協会のプロテストに合格されたりと、以前よりも多彩な活動を繰り広げられるようになった印象がありますが。
浅香唯:うーん、どうなんでしょうね。広がったとは思っていないですけど、昔ほど構えなくなったし、考え過ぎなくなったというか。50歳になって、きっと今まで生きてきた50年よりもこの先の方が短いんだろうな…とか自分の人生設計を考えた時に、なんか楽しまないと勿体ないだろうなと思うようになったんですよね。だから、私が出来ることだったり、私がやって誰かが楽しんでくれることは、数も限られてきているんだろうなと思うと、ちょっと欲張ってもいいのかなというか。やらない後悔よりもやった後悔をしようと考えるように変わったので、意外と積極的になったのかもしれないです。
――なるほど。どこか吹っ切れたような印象を受けます。2020年にライザップのCMに出演されたことも、かなり大胆な試みで驚かされましたし。
浅香唯:昔なら絶対に考えられないことだったし、私の中ではめちゃくちゃチャレンジでした。アフターがあるとはいえ、ビフォーの姿は女性としては出したくない気持ちの方が大きかったですけど、(その時に)どうしても変わりたい自分がいて。それは姿だけじゃなくて、気持ちの部分でも変われるんじゃないかというのがあったので、絶対に無理と思うことをやってみようと。やっぱり50歳という節目の年でもあったので、ここで自分で乗り越える大きな何かがあって欲しかったというか。だから、48歳や49歳ならやってなかったかもしれませんね。
――そうした流れの中で、2022年から毎年行うようになったビルボードライブでの公演も、浅香さんにとって新たな挑戦の一つだったと思うのですが。
浅香唯:「はい、もう私の中ではかなり大きいチャレンジと言いますか。やっぱり、それ相応の方々が立つステージなので、私はちょっとキャラクター的に違うんじゃないのかな…というのが最初はありました 。
――海外の大物アーティストなどのイメージが強くありますよね。
浅香唯:そうなんですよね。ただ、それこそやってみないとわからない的なところもあるし、一回だけ立たせてもらおうかな、というのはありました。
――22年に初めてビルボードライブ大阪で開催したステージは、代表曲を中心としたセットで臨まれたと思いますが。
浅香唯:東京ではそれまでにも年一回のペースでライブを続けていたんですけど、大阪はライブ自体をするのがすごく久々だったので。ホントにもうシングルのオンパレードくらいの感じでやらせていただきました
――初めて立ったビルボードライブのステージの印象はどうでしたか?
浅香唯:まず、ステージと客席の間が近いことで、お互いがドキドキしてしまったみたいな。たぶんあんなにお客さんとステージの距離が近い空間というのは他にはないだろうと思うので、ホントにお客さんと一体化して一緒に作り上げていく雰囲気がありました。そして、私のライブに通ってくださるお客さんというのは、やっぱり前の方に詰め寄って、聴いて歌って踊るという方が多いですけど、ビルボードライブは自分が好きなように優雅に音楽を楽しむ空間という独特のムードがあって。一回目は、私もお客さんもそれに戸惑いつつ、お互いに探りあっているところがあったと思いますね。〝いいよ、みんなもっと飲んで、ご飯食べながらでいいんだよ〟みたいな(笑)
――通常のライブハウス公演などとは、少し楽しみ方が変わりますもんね。
浅香唯:勧めないとなかなか遠慮しちゃってる親戚、みたいになってましたね(笑)。知っている顔はたくさんいるんですけど、どこかよそよそしいというか。でも、去年に2回目をやった時には、その探り合いもなくなってきて、私もビルボードの空間で歌いたいと思う曲を選んだり、もっとこうしようかなと思う部分を見つけられたところがありました。だから、2回目の時にはアルバムだけに収録されている曲とかも歌わせてもらったりしましたね
――ビルボードという空間ならではの浅香唯がより見えてきた、と。
浅香唯:12月のバースデーライブでは毎年テーマを決めてやっているような感じですけど、ビルボードに関してはビルボードの雰囲気の中で私が歌いたいと思う曲を選んでいます。だから、結構難しいところもあるんですけど、次の3回目のステージも、ビルボードさんだから歌ってみようという曲もありますし、今まであまり歌ってこなかったけど歌ってみようという曲もあると思います。
――浅香さんの曲のレパートリーは、かなり豊富にありますよね。初期のアイドル時代と90年代以降でも曲のタッチはかなり違いますし。
浅香唯:そうですね。私は16~7歳で歌っていた曲でも、バリバリのアイドル時代なのにアルバム収録曲にはすごく大人っぽかったりとか、センチでメロディアスな曲もあって。今歌っても素敵だなと思える曲がたくさんあるんですよ。ただ、なかなかいつものライブにはハマらなかった子たちも多かったんですが、今回はビルボードというイメージの中で選べるので、難しいけれど面白さでもありますね。なので〝これ誰の曲?〟って思うのも出てくるかもしないですけど、私の曲です(笑)
――とは言っても、もちろん外せない曲というのもたくさんあるとは思いますが。
浅香唯:いつも削っていくのが大変ですね。あの曲を歌うならこの曲も歌おうかなとか、こういう流れになるんだったらココではあの曲だよねとか、いろいろ入れていくと、とんでもなく長いステージになりますし。あと、今まで曲を極端にアレンジしないでやってきたのも、毎回必ずライブに来てくださる方たちには多少アレンジしても楽しんでもらえると思うんですけど、30年ぶりに久々に来ました!という方のことも考えると、リハーサルの時に違うアレンジを試してみても、やっぱオリジナルに近いアレンジで聴きたいと思うよねと、結局は原点に戻ることが多いですね。例えば「C-Girl」をボサノバ風にされても、何十回とライブで聴いてきた方ならまだしも、久々に観に来たライブでそれだと私がお客さんだったとしてもちょっと違うなぁと思うだろうし。
――ちなみに、曲をリリースした当時と今では、浅香さんご自身にとって違う響き方や意味合いを帯びてきた曲などはありますか?
浅香唯:当時というよりは、年代ごとに変わってきたかもしれないですね。感じ方も違いますし、表現の仕方が変わってきたりしたこともありますし。例えば、同じアレンジの「セシル」でも、やっぱりその時その時の私によって変わってきたと思いますし、歌って意外とその人がどう歌うかということにすごく左右されるなと感じますね。自分で歌いながら、すごく自分自身に刺さりまくっている時もあります(笑)
――また、来年にはデビュー40周年という大きな節目を迎えますが、これまでの歩みを経て変わってきたことや、逆に変わらなかった部分についても聞かせてもらえますか?
浅香唯:40年周年というよりも、年齢的に考え方が〝よし、飛び込んじゃえ!〟みたいな風には変わってきたなと思います。ずっと石橋を叩いて叩いて渡るタイプというか、叩き過ぎて壊して渡れなくなるくらいに慎重な方だったんですけど、意外と飛び込んでしまえば、飛び込んだ先にはもがいていれば助けてくれる人も必ずいて、行っちゃった方がいいことが多いので。ホントはもっと若い時にそうなれていれば良かったんですけど。
――キャリアを重ねてくるとむしろ守りに入りがちですけど、逆によりオープンになられているのが素晴らしいですね。
浅香唯:確かにもう失敗はしたくない年代ではあるので、その気持ちもよくわかるんですけど、私は逆に若い時に〝守り〟に入っていたので、こういう人がたまにはいてもいいのかなと。でも、私の周りの同じ年代の特に女性は、ある程度の年齢になってからいろいろ始めている人が多いですけどね。習い事を始めたり、新しいことにチャレンジしたり。意外と女性の方が冒険心があるのかもしれないです。
――なるほど。では最後に、開催が迫ってきたビルボードライブでの公演について、今回のポイントなどを改めてお願いします。
浅香唯:私は構えていきますけども(笑)、皆さんはぜひ肩の力を抜いて、おいしいお酒と料理を食べに来たついでに〝あ、浅香唯も歌ってるよ〟くらいの気持ちでリラックスして遊びに来てもらえれば、また新しい空気感が生まれるのかなと思っています。バンドのメンバーはもう古い付き合いの人達がほとんどですし、今回はビルボードの公演では初めてコーラスの方にも加わってもらうので、コーラスありきでやろうと考えている曲もありますし、音の広がりもまた変わってくると思います。
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