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<インタビュー>まらしぃ、堀江晶太(kemu)、ヒトリエのゆーまおがビルボードライブ公演に向けた意気込みを語る

インタビューバナー

Interview & Text:柴 那典


 まらしぃが、堀江晶太(kemu)とヒトリエのゆーまおと共にピアノトリオライブ【marasy, Shota Horie, Yumao at Billboard Live】をビルボードライブで開催する。

 インターネットのピアノ演奏動画投稿からキャリアをスタートし、ボカロPや楽曲提供など多彩なフィールドで活躍するピアニストのまらしぃ。kemu名義でボカロPとしても活動しPENGUIN RESEARCHのベーシストや作曲家としても活躍する堀江晶太、ヒトリエのドラマーであり、さまざまなアーティストのサポートも務めるゆーまおは、それぞれ10年以上の親交を持つ盟友だ。ネットカルチャーに出自を持つ3人が持つライブへの思い、ピアノトリオ編成でのステージに向けた意気込みをインタビューにて聞いた。

「ようやくこの3人で一緒にステージに立てた」

ーー3人が最初に一緒にステージに立ったのはまらしぃさんが主催した2022年の【まらフェス2022 in 日比谷野外大音楽堂】でしたが、どんな体験でしたか?

まらしぃ:その時は告知をしているわけではなく、シークレットという形でライブのアンコールに出てくれたんです。最初にやった曲が堀江くんと作った「十年越しのラストピース」だったんですけど、その時のお客さんのどよめきがイヤモニ越しにも聴こえてきて。会場の開放的なムード、ようやくこの3人で一緒にステージに立てた嬉しい気持ちもあって、すごくいい時間でした。


88☆彡 / まらしぃ×堀江晶太(kemu)×ゆーまお【まらフェス2022】


堀江晶太(kemu):もともとインターネット・ユーザー同士の友達みたいな縁でしたし、日の当たらないところでコソコソと話していた我々が、野外で音楽を一緒に演奏する日が来るとは思ってなかったので、不思議なこともあるんだなあって、しみじみしたのを覚えていますね。

ゆーまお:その日は僕ら3人とじんくんもいたんですけど。まらしぃくんとは10年くらい前に初めて会って、そこから一緒にお仕事したりとかちょいちょい会う機会があって。その後に堀江くんとじんくんともそれぞれ別で一緒にお仕事させていただく機会があって。そういう縁がここで全部集まるんだ、みたいな感じでしたね。インターネットから始まった自分のキャリアがここでまとまるんだと、ちょっとした集大成になってました。

ーー2020年に発表された「十年越しのラストピース」が3人の初のコラボでした。これはどんなきっかけから生まれた曲だったんでしょうか?



十年越しのラストピース / まらしぃ × 堀江晶太(kemu) feat.初音ミク(Hatsune Miku)



まらしぃ:一つの転機になったのは新型コロナウイルスだと思います。堀江くんもゆーまおさんも第一線でそれぞれ活躍されてたんですけど、コロナで全部が止まっちゃった時期があって。そのタイミングで時間ができて、堀江くんとネットで朝まで通話したり、一緒にオンラインでセッションしたりしていたんです。そして気付いたらその場にゆーまおさんもいて。そういう流れから楽曲を一緒に作ろうとか、ライブを一緒にやってくれないかとか、そういうところに繋がっていったんです。

堀江:もともと交流はあったけど、それまではそれぞれ余裕がなかったということがあって。否が応にも時間を持て余す瞬間があったので、お互いに寄り道してみようかって思えたっていうのはあると思います。

ーーその後にも「88☆彡」などコラボはたびたびありましたが、改めて相性の良さを感じたというのもあったんでしょうか。

堀江:寄り道のつもりだったけれど寄り道ですまなくなった感じは確かにありますね(笑)。

まらしぃ:相性の良さという表現が正しいかわからないけど、一緒にやっててとにかく楽しいし、すごく刺激的なので。「またやりたいな」から「またやろうよ」「次もやりたい」って自然となっていったという。

堀江:尊敬できるミュージシャンだし、一緒にやるといいものが生まれるというワクワクとかクオリティー面での期待もあるんですけど、出身が似た者同士というのも大きくて。各々の成長したものを見せられる、新しい次元で対話できるということ自体がすごく嬉しいのもあります。思い出話に終始しない同窓会みたいな感じがすごく心地いいなと思います。

ゆーまお:僕は二人を見ていて、相性がいいんだろうなと思います。なのでそこに自分も一緒にいれるのが嬉しい。ドラム頑張っててよかったな、やめなくてよかったなっていう感じですね。



88☆彡 / まらしぃ × 堀江晶太(kemu) feat.初音ミク(Hatsune Miku)× KAITO



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  1. 「いかに“いつも通りの僕ららしくすることだけ”」
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「いかに“いつも通りの僕ららしくすることだけ”」

ーー皆さんインターネットに軸足を置いたところから活動をスタートしたわけですが、ライブをやることの醍醐味についてはどう思っていますか?

まらしぃ:ライブは聴いてくださる方の目の前で演奏させていただける機会で、いつもありがたいなと感謝しているというのはあります。加えて、演奏する側の視点からすると、特にこうやって素晴らしいメンバーとご一緒する時は、やっぱり勝負というか「対戦よろしくお願いします」みたいな感じになるんですね。自分が自分のフィールドで積み重ねてきたもの、できるようになってきたことを、お互い持ち寄ってきてくれているというのがわかるので。いい演奏だったなって思ってもらえるような、特別で大切な、没頭できるような時間にしたいですね。

ゆーまお:バンドでもお仕事でも、普段は歌モノのバンドをやっていることがほぼ全てなので。自分の音楽活動においてはドラムでは結構引き立てる役目が多い印象があるんです。自分がキャリアの中で体験していない「対戦よろしくお願いします」みたいな精神性を持ち合わせていかないと沈んでしまうな、という感覚は去年のブルーノート東京の際に感じましたね。なので、ビルボードライブに向けては今一度そういった意識でチャレンジしたいというのはあります。





ーー今、ゆーまおさんが仰ったように、去年にはブルーノート東京でトリオ編成のライブがありました。まらしぃさん、堀江さんとしては、どんな手応えがありましたか?

まらしぃ:いまお話しさせていただいた通り、僕はライブに対していい感じに気合を乗せるのは楽しいなと思っていますし、それが一つの醍醐味だと思っているところがあって。ブルーノート東京さんやビルボードライブさんは、ライブパフォーマンスをさせていただく最高峰の場だと思っているので。普段、ネットで夜な夜な雑談してるところから始まって、セッションして曲を作ってインターネット上で発表して、それを皆さんに見ていただく場がこういう場所になったということに対しては、嬉しい、楽しいというより「ちょっと気合い入れないとヤバいな」という思いはありました。でも、いざステージでビシッとした格好をして演奏を始めたら、3人で最初に「なんか一緒にやろうよ」みたいなことをネットで話してたのは、こういうことがやりたかったんだなって思えた。それは今でも覚えています。





堀江:野音の時の延長線上になるんですが、ここにも行くのかみたいな感じがしましたね。特にブルーノート東京の時は、人生というのは不思議なもんだなっていう感じがしました。もちろん場所の伝統とか歴史とか格式はあると思いますけど、相応しいかどうかっていうのは、結局我々がどこまで音楽に向き合うことができるかどうかでしかないなと思って。僕らができるベストをつくす他はないなと思ってステージに上がったんですけど、逆に、最善をつくした後は、もう自分らしくあるしかないなってステージ中に思いました。手を抜かないで頑張ったあとは、いかに“いつも通りの僕ららしくすることだけ”だなって。それがすごく心地よく思えた、というのはありました。

ーー10月のビルボードライブの公演はどんなステージにしたいと思っていますか?

まらしぃ:さっき堀江くんがお話ししていたように、もちろん後悔がないように準備した状態ですけれど、そこから先のいかに楽しめるかというところに今回チャレンジしたいな、というふうに思っています。僕は少し臆病なところがあるのでドキドキもするんですけれど、やっぱり特別な時間になりますし、いかにそれを思いっきり楽しめるか。そして終わった後、またこのメンバーで一緒にやりたいってすぐに言えるようなライブにしたいなと思っています。お客さんもそういうふうに感じてもらえたら、何より嬉しいですね。僕たちのファンだけでなく、ビルボードライブさんのファンの方もたくさんいらっしゃると思うので。耳の肥えた方の前で聴いていただくのは、やはりある意味勝負だと思っているし、どういうふうに思っていただけるのかも興味のあるところですし。いい時間にしたいなと思っています。

堀江:自分がそもそもビルボードライブをすごく好きなんです。自分はロックバンドをやっているので、普段のステージは人が集まってもみくちゃになって熱狂することが多いんですけれど、実は自分が好きで観に行くのは、アル・マッケイ・オールスターズとかアラン・ホールズワースとか、そういう方々の来日公演だったりするので。酒を飲んだり、食事をしながら友人と行ってリラックスしながら音楽を浴びてゆっくりして聴くのがすごく好きなんですよね。なので、そのステージに上がることをすごく嬉しく思います。ライブハウスで熱狂というところとは別の音楽体験をステージでやれる機会はそんなに多くないのですし、自分がもともと好きな、“お酒を飲みながらゆったりマイペースに楽しむ音楽の場所”をこのメンバーで作っていけるということがすごく楽しみですし、素晴らしい機会をいただけたなと思ってます。

ゆーまお:僕は、自分らしくいきたいというのがざっくりした次のライブの目標ではあるんですけど。前回のブルーノート東京の2ステージ目のときに、堀江くんが「ゆーまおさん、僕はロックでいきます」っていう風に言って、とんでもないライブをしていたのを見て「ああ、縮こまっちゃいけないな」って思ったのを覚えていて。太く繊細な音を出したい、ということを目的の一つとして頑張りたいなと思っています。

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