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<コラム>なとり 「Overdose」に続く代表曲「絶対零度」でいっそう拡大させる、世界規模での存在感



コラム

Text:Maiko Murata

 なとりが、最新曲「絶対零度」でその存在感をますます拡大させている。

 2021年5月からTikTok上でオリジナル楽曲の発表を始めた、現在21歳のシンガー・ソングライター、なとり。2022年9月7日に、自身初のリリース音源として発表した「Overdose」がTikTok→ストリーミングを中心にヒットし、2022年9月21日公開のBillboard JAPAN総合ソング・チャート“JAPAN Hot 100”にて初登場にして26位にチャートインすると、その翌週9月28日公開チャートでは10位と、さっそくトップ10入り。これによって、ニューカマーの多くが最初に登場する、いわばヒットの布石となるチャート“Heatseekers Songs”を飛び級する爆発力をみせた。

「Overdose」はその後もCDリリースはおこなわれず、デジタル配信のみのまま、2022年12月21日公開チャートまでトップ10以内をキープし続ける。2023年1月には、Spotifyが選ぶ“その年に飛躍が期待される次世代アーティスト”『RADAR : Early Noise』に選出されたことで“なとり”というアーティスト自身がいっそう注目を集めたこともあり、その後もチャートインを続け、2023年の年間“JAPAN Hot 100”(集計期間:2022年11月28日~2023年11月26日)では9位と、全く無名の新人としては驚異の成績をたたき出した。このように、リアルライブ等はおこなわず、TikTok上のみで活動する全く無名の新人アーティストが、ある1曲(の一部)で突如注目を集める→その支持がストリーミングに移行し爆発的に認知が増える→“JAPAN Hot 100”のトップ10にいきなり登場→さらにストリーミング支持を集めチャート上位に残り続ける、というケースはその後、「晩餐歌」のtuki.、そして「鬼ノ宴」の友成空と続いていくのだが、なとりはこの系譜の先駆けであったといえる。


Overdose / なとり


 新世代シンガー・ソングライターらしく、デジタル配信を活動の主軸とするなとりは、「Overdose」以降もコンスタントに新曲をリリースする。SpotifyのCMソングに起用された「フライデー・ナイト」や、打って変わって「エウレカ」のようなギターの存在感がある楽曲、また「Overdose」のアンニュイでシニカルな雰囲気を踏襲する「Sleepwalk」と、振れ幅のある新曲をほぼ隔月ペースで発表。2023年12月20日には、先行配信を含め当時までにリリースされたデジタル・シングル+新曲の計13曲をまとめた1stアルバム『劇場』をリリース……と、アクティブな活動を続けてきた。

 なかでも特筆すべきは、2024年4月5日にデジタル・リリースされた「絶対零度」だ。講談社が運営するマンガアプリ『マガジンポケット』に連載されている同名マンガが原作のTVアニメ『WIND BREAKER』オープニング・テーマへ書き下ろされた楽曲で、歪んだギターが印象的な、「Overdose」「フライデー・ナイト」で想像される“なとり”のイメージを一新するようなロック曲である。配信後初週となった、2024年4月17日公開の“JAPAN Hot 100”では93位に登場し、そこからは15週にわたってトップ100入りを達成。リリース直後の勢いは、CMタイアップ曲としてお茶の間で流れる機会が多かった「フライデー・ナイト」よりは小さくまとまったものの、各指標の“息の長さ”では勝っている。

 また「絶対零度」は、リリース日の2024年4月5日から最新(2024年8月5日)まで、ちょうど4か月間の主要デジタル・プラットフォームにおけるストリーミング再生数(実数値)をサービス「LUMINATE」で確認すると、全世界[※]では「Overdose」が約6,000万回、「絶対零度」が約6,900万回と、「Overdose」よりも高い再生数を記録していることがわかる。さらに日本においては、この差は約1,500万回と大きく広がっている。

 さらに、なとりの楽曲の世界での動きに注目すると、特にアメリカにおいて、「絶対零度」リリースの4月5日以降、ストリーミング再生数のベースが上昇していることがわかる。元々、なとりの楽曲は「Overdose」をきっかけにタイ、インドネシア、フィリピン、ベトナムなど、特に東南アジア諸国からの支持を集めていたのだが、「絶対零度」はそれらの国々より、アメリカや韓国、台湾でより高い再生数を記録している。つまり、「Overdose」で東南アジア諸国に“見つかった”ことで(その後のリリース曲も含め)安定した再生数を獲得できているように、なとりは「絶対零度」をきっかけに、今度は音楽市場規模が世界1位のアメリカでも同様に、自身の楽曲が安定した支持を集める可能性を手にした、といえるのだ。


なとりのアメリカにおけるストリーミング再生数
(「LUMINATE」より)


 安定した支持を獲得し続けるためには、楽曲単位ではなくアーティスト単位での存在感を大きくしていくことが欠かせない。そして、そのためには「複数楽曲が常に聴かれている」という状況をつくることが非常に重要だ。なとりは「絶対零度」で、その存在感をいっそう拡げる一歩を踏み出した。なとりは、すでに次作として、藤ヶ谷太輔と奈緒がW主演をつとめる映画『傲慢と善良』の主題歌へ新曲「糸電話」を書き下ろすことが発表されている。今後の作品でこの流れをいっそう加速させていけるか、注目だ。


絶対零度 / なとり


※「LUMINATE」における「全世界」(Worldwide)は、同サービスが集計対象とする「世界200以上の国と地域すべて」のこと。
※※「LUMINATE」は米国ルミネイト社が法人向けに提供している分析サービス。
https://www.billboard-japan.com/luminate/


なとり「絶対零度」

絶対零度

2024/05/22 RELEASE
SRDL-4723 ¥ 2,500(税込)

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Disc01
  1. 01.絶対零度
  2. 02.聖者たち

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