Billboard JAPAN


Special

<対談>ELAIZA×ポルカドットスティングレイ・雫 様々な表情を見せる2人だからこそ作り出せる“変身”と“強さ”



FREAKインタビュー

Text & Interview:森朋之
Photos:筒浦奨太

 ELAIZAからデジタルシングル「FREAK」が届けられた。「Utopia」(『NHKみんなのうた』2024年6-7月)、岡崎体育の提供曲「たましい」に続く3か月連続のリリースとなる新曲は、ポルカドットスティングレイの雫が手がけた楽曲。緻密かつ奔放なサウンド、起伏に富んだメロディ、凛としたボーカルが響き合う極上のロックチューンに仕上がっている。

 Billboard JAPANでは、ELAIZAと雫の対談をセッティング。以前から交流があったという両者に、2人の関係性、「FREAK」の制作、活動に対するスタンスなどについて語り合ってもらった。

──ELAIZAさんの新曲「FREAK」は、雫さんが作詞・作曲・編曲を手がけています。ELAIZAさんの強さがまっすぐに伝わるロックチューンで、タイトルのインパクトもすごいですね。

:タイトルは音で決めたところもありますね。オーディエンスのみなさんが「FREAK!」って言いやすいかなって。

──なるほど! ELAIZAさんと雫さんの交流はいつ頃からはじまったんですか?

ELAIZA:私が出演したドラマ(『左ききのエレン』)の主題歌(「女神」)をポルカドットスティングレイが担当したのが最初ですね。その後、ちょっと時間が空いて雫ちゃんのラジオにおじゃまして。そのときに……

:「これは友達になれるやつだ」って。

ELAIZA:そう。ラジオなのに素で喋っちゃう感じがあったし、同郷(福岡県)だから言葉使いも似ていて。初めてプライベートで遊んだのは去年の最初くらいかな? ポケモンセンターに行って、あとはお互いの家で喋って。普段のやりとりも、けっこうどうでもいいことが多いんですけどね。平成に流行ったものをLINEで送り合ったり(笑)。ただの友達です。

──雫さんがすぐに「友達になれるかも」と思うのは、かなり稀なのでは?

ELAIZA:みんなに言われてる(笑)。

:私、友達がいないことで有名なので(笑)。仕事だとワーッと話せますけど、友達になれそうと思うことはほぼないんですよ、確かに。基本“どうせ嫌われてる”からスタートするんで。

ELAIZA:わかる。

:わかるんだ(笑)。この人なら甘えて大丈夫っていう“バブ”センサーが働かないと仲良くなれないんですよ。

ELAIZA:私も同じタイプです。雫とはTシャツと短パンでも会えるし(笑)、お互いにすごくシンパシーを感じたんですよね。今回の「FREAK」も、きっかけは雑談だったんです。「いろんな曲をやってみたいんだよね」って話したら、雫が「私だったらこういう曲を作るけどね」ってどんどんアイデアを出してくれて。アイデアというか、オタクの理想?

:そう(笑)。これまでのエラちゃんは、BPMがめっちゃ早い曲がなくて、どちらかというとオシャレな感じの曲が多い印象があって。すごいバンドサウンドで、がっつり踊れるロックも歌ってほしいって思ったんですよね。エラちゃんも「フェスやライブで盛り上がる曲がほしい」って言ってたので、「任せてよ!」って(笑)。

──確かに「FREAK」は、これまでのELAIZAさんの楽曲はテイストが違いますよね。

ELAIZA:そうですね。(1stアルバム)『失楽園』は、小さい頃から耳にしていた音楽――ジャズ、R&B、ソウルだったり――が中心になっているけど、どんなジャンルも否定する気はないし、いろんな音楽が好きなんですよ。『失楽園』を作っていたときも、まずは自分のルーツに沿った音楽をやることで、「この先はもっと自由に遊べるな」と思っていたので。最初に人前で歌ったのは昭和歌謡だったりするし、今回は純粋に「ロックをやりたい」と心から思ったということですね。しかも第一線でやっている雫が作ってくれて。最初のデモ音源のときから、「最高! 素敵!」という感じでした。

:1回もダメ出しがなかったんですよ。「え、いいの?」と思うくらい、全部OKでした。

ELAIZA:メロディも歌詞もデモのままですからね。サウンドに関してはいくらでも遊べるというか、「これもいいね」「こっちはどう?」という感じでいろんな方向に行ったりしたけど、最終的にはギターサウンドのなかでピアノも楽しそうに遊んでるようなアレンジになって。それもすごく我々らしいなと思います。

:楽しくはしゃいでいる感じもありつつ、すごくまとまりがあるオケになりましたね。エラちゃんは音楽の知識もすごくあって。

ELAIZA:6年生の頃からPro Toolsを使って編集とかミックスをやってたので、ある程度のことはわかるのかも。

:音感もいいしね。しかも感覚的な話もできるから、すごく助かってます(笑)。

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──歌のレコーディングはどうでした? BPMが早くて言葉が詰まっているパートもあるので、歌いこなすためにはかなりテクニックが必要だと思うんですが。

ELAIZA:レコーディング、すごく楽しかったです。

:イエー!

ELAIZA:ハハハ(笑)。『失楽園』のときは拍のなかで遊びながら歌える曲が多かったんですけど、「FREAK」みたいにカツカツカツとリズムが決まっている曲も好きなんですよ。一瞬、「呂律は大丈夫かな」と思いましたけど(笑)、すぐ慣れました。

:ディレクションもさせてもらったんですけど、エラちゃんは本当に歌が上手いから個人的にずっとテンション上がってましたね。

ELAIZA:「上手い!」「いいね!」って(笑)。

:私、そこまでたくさん提供してきたわけではないんですが、歌が上手い人だとやっぱりテンションが上がるんですよね。特にエラちゃんは私が作る曲に合ってると思うんですよ。日本語を英語っぽく捉えるのも上手いし、アクセントの付け方も「そうそう、そこなのよ!」という感じで。本当に楽しいレコーディングでした。

ELAIZA:「どこまでロックに寄せるか?」というのも意識してましたね。幼少期の頃はエイミー・ワインハウスやビョークが好きだったんですけど、彼女たちのビブラートの幅だったり、発音の仕方なども付け加えたくて。デモ音源は雫が歌っていて、それもすごくいいんですけど、ただ真似をするのも違うじゃないですか。あと、雫が指示書を作ってくれたんですよ。

──歌の指示書ですか?

ELAIZA:そうですね。歌詞のイメージボードだったり、(歌詞に登場する)キャラクターの思いだったり。「ここはウィスパーのほうがいいかも」みたいなことも書いてあって。雫は「これは自分用だから、気にしないで」って言ってましたけどね。

:癖で作っちゃうんですよ、そういうものを。

ELAIZA:なので私も、それを参考にしつつ、あまり真面目に受け取り過ぎないようにしてました。ただ「FREAK」の歌詞にはしっかりした軸が1本通っているので、そのアティチュードだけは忘れないようにして。

:エラちゃんが言ってたことをもとにして書こうと思っていたんですけど、だんだんいろんな思いが入ってきて。エラちゃんの強い女の部分も見たいし、エラちゃんに言ってほしいことも歌詞に入れたり。エラちゃんはBメロの歌詞を気に入ってくれたみたいです。

ELAIZA:〈あなたに、みんなにあって私に無いものは何?〉ですね。

:傍から見ると、完璧でカッコいい人に見えちゃうと思うんですよ。「エラちゃんは何でも持ってるでしょ」って。だけどエラちゃん自身は、この歌詞に共感してくれたっていう。

ELAIZA:いちばん好きな歌詞です。

:そして最後には自分がいちばん言ってほしい言葉を入れて。

──〈いつまでもそこで泣いてんの?〉ですね。

:甘えたい自分が出ちゃってますね(笑)。

ELAIZA:私自身は「FREAK」の歌詞を自問自答だと解釈していて。俳優としていろいろな役をやらせてもらってますけど、そのたびに「もし自分が違う選択肢を選んでいたら、こういうふうになれていたかも」って思うんですよね。たとえばギャルの役をやったときは(映画『SUNNY 強い気持ち・強い愛』)、「こういう快活さで生きることもできたんじゃないかな?」って思ったり。

──あのとき違う道を選んでいたら……というのは誰しも思うことですよね。

ELAIZA:それは「FREAK」のミュージック・ビデオにもつながっているんですよ。私が5人ぐらいに変身して、それを私が監視カメラで見てるっていう。

:いろんなエラちゃんが見られます!!

ELAIZA:雫の願望も入ってるんですよ。MVの打ち合わせをZoomでやったんですけど、「こういう女も登場させたい」「こんなキャラクターは?」って我々がずっとはしゃいでいて(笑)。

:スタッフのみなさんはじっと聞いてましたね(笑)。

ELAIZA:たぶん「そのアイデアは難しいな」って思ってたんじゃないかな。

:でもさ、そう思われるとわかったうえで話してたじゃない?

ELAIZA:うん。まずは「こんなことをやりたいです」という願望をマックスに伝えないといけないと思って。

:そうだよね!

ELAIZA:最初は「全員が殺し屋で、武器も用意してアクションをやりたいです」って言ってたんですよ。それは難しいということになっても、「だったら“強さ”を伝える別の手段って何だろう?」という方向に行けるので。


──やりたいことを無邪気に話す一方で、「現実的にはこうだよね」ということもわかっていて。そのバランスも2人の共通点なのかも。

ELAIZA:いろんな事情を踏まえて、「最大限、うちらにやれることをやります」という感じなのかな。誰かに丸投げするのではなくて、「今回、私はこれをやったよ」と話せるほうがいいし、リスナーのみなさんもそのほうが嬉しいと思うので。

:わかる。そのスタンスって「気づいたら仕事しっぱなし」ってならない?

ELAIZA:すごーくなるね(笑)。

:私もめちゃくちゃ仕事好きだと思われてるんですよ。まあ、好きなんですけどね(笑)。

ELAIZA:そうだよね(笑)。自分の名前、自分の顔で出す作品だから、責任を取らなくちゃいけないという気持ちもあって……。でも、だからこそ岡崎体育さんや雫にお任せしたかったんですよね。そうすれば自分を過信しないことを学べるし、自分の領域を広げることにもつながると思ったので。ときには甘えるのも大事かなって。

:わ、まさかのバブ返し(笑)。

ELAIZA:持ちつ持たれつです(笑)。

:エラちゃんから連絡もらうと、めっちゃ嬉しいからね。仕事してるときにLINEが来ると「え、何なに?」って笑顔になります(笑)。

ELAIZA:“うちの猫が床に落ちてた”みたいなことばっかりだけど(笑)。

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ゲーセン行こう(笑)!

──6月リリースの「Utopia」、7月リリースの「たましい」、そして今回の「FREAK」とそれぞれテイストが違っていて。これもELAIZAさんの今のモードなんでしょうか?

ELAIZA:そうですね。最初にも言いましたけど、いろいろやりたいので。この3曲を続けて聴くと「どうかしてるな」って思いますけど(笑)。

:めっちゃいいと思うけどね。私、アルバム作るときは絶対に曲のテイストが被らないようにするから。「え、違う人が作った?」くらいに。

ELAIZA:確かにそうだよね。

:曲数は限られてるけど、そのなかでいろんな顔を見せたいし、誰が聴いても絶対に推し曲が見つかるようにしたくて。

ELAIZA:今はアルバム全部ではなくて、曲をピックアップして聴く人も多いからね。私たちは世代的にアルバムで聴くことが多かったじゃない?

:CDでね。

ELAIZA:小さい頃なんて、DVDプレイヤーにCD入れて聴いてたから(笑)。今もアルバムをダウンロードすることが多いし、次のアルバムも一つの作品になるようにしたいです。まずはコンスタントに曲を出していきたいですね、今後も。芝居(俳優業)のおまけではなくて、みなさんの生活のなかで、ちょっとでも近くにいられる瞬間を作りたいので。

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──期待してます! ポルカドットスティングレイも新曲「JO-DEKI」から第2章に突入。お二人とも忙しい日々が続くと思いますが、次に休みが合ったら何します?

:え、どうする? 外行く?

ELAIZA:暑いからな~。あ、でも、ゲーセン行きたくない?

:ゲーセン?! いいかも。

ELAIZA:涼しいしね。お母さんの顔色を伺いながらコインゲームをやってた子供の頃の私に、好きなだけゲームをやってる姿を見せたい(笑)。

:ゲーセンをテーマにした曲作ろうか?

ELAIZA:いいね。じゃあ仕事ってことでゲーセン行こう(笑)。

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