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<インタビュー>山中拓也(THE ORAL CIGARETTES)×Masato(coldrain)が語る、ロックバンドとして走り続けた今、思うこと
Interview & Text:小川智宏
Photo:大城為喜
THE ORAL CIGARETTESの新曲「DUNK feat. Masato (coldrain)」は、先輩と後輩……というよりも「盟友」という言葉のほうがしっくりくる、coldrainのフロントパーソン・Masatoをフィーチャーしたコラボ曲。「いつ出会ったか覚えてない」というほどの長い交友関係のある両者のコラボレーションが、なぜ今このタイミングで実現したのか。そこにはオーラルとcoldrain、2つのバンドの今のモードや向き合っているフェーズが大きく関係していると思う。それぞれがそれぞれの角度でシーンを見つめ、その中で戦い続けている両者の熱いぶつかり合いを、ぜひ楽曲から、そして以下の対談から感じ取ってほしい。
爪痕を残すっていうのは規模感とイコールじゃ絶対ない
――おふたり、付き合いは長いですよね。
Masato:めっちゃ長いっすね。なんかいつの間にか……。
山中:出会いはマジで覚えてない(笑)。何やったんすかね。知らんうちに仲良くなってたっすね。
Masato:ツアーに出てもらったりとか……なんでなんだろうな(笑)。繋がりでいうと、俺らのTRIPLE AXEとオーラルのONAKAMAみたいな世代感があって。それでいったら、ブルエン(BLUE ENCOUNT)のほうが俺らは先にやってたりして。フェス行ったら全部でフォーリミ(04 Limited Sazabys)が出てるみたいな年もあって。オーラルとはどこで仲良くなったんだろう。
山中:たぶん、バンドで仲良くなるより前に俺とMasatoくんが仲良くなってて、普通に飲みに行ったりしてたんですよね。その流れでツアー誘ってもらったりとかして。
――そんな感じでずっと仲良かったけど、曲でコラボするのは初めてで。なぜ今このタイミングでこうなったんですか?
山中:なんか混ざり方がわからんかったっていうのが正直あって。俺らのベクトルもちょっと違う方向に当時向いてたし。これはMasatoくんにもたぶん言ってないですけど、コロナ前にフィーチャリングアルバムを出したときに、ヤマダマサヒロっていう、coldrainを撮ってる俺と同い年のカメラマンと飯に行って「Masatoくんってコラボ頼んだらやってくれるのかな」みたいな話を俺が軽く言ってたっぽいんです。ヤマダも仲良い拓也とMasatoくんがやるならバリ熱いからやろうよって。それがなんとなく頭の片隅に残っていたんですよね。で、3、4年経ってから楽曲作ろうってなっていくタイミングで、もう頭の中で完全にMasatoくんに参加してもらおうって考えになってて。それで頼んでみたら、マジで速攻「いいよ」って言ってくれた。
――じゃあ、曲自体もMasatoさんが参加するっていうイメージのもとで作ってたってことなんですか?
山中:最初は、俺がバスケを見に行ったときがあって。そのチームにめっちゃかっこいい選手がおって、「こいつの曲を作りたい」ってなったんですよね。それで先にトラックをうちのギターのシゲ(鈴木重伸)と一緒に作っていったんですけど、そうやってできあがっていくなかで「これ、Masatoくんの声ほしいな」って思って誘ったっていう。
――Masatoさんは山中さんから声をかけられたとき、どんなことを思いました?
Masato:もしかしたら、世の中的には意外性がちょっとあるフィーチャリングだと思うんです。でもバンドマンとしてのメンタル的にはすごく合うというか、自然に感じたというか。だから驚かなかった。やるなら今だなっていうタイミングで来た気がするから、なんか、軽く聞こえたら嫌ですけど、ちょっと運命も感じました。すごいバンドマンとしてのシンクロ率みたいな、やりたいこととか作りたい流れだったりっていう面で会話していてもすごく波長が合う感じっていうのをすごく感じてたから、こういうところでまたみんなが予想してないことをできるっていうのは嬉しかったし、そういう意味では「やらないわけがない」って思ってました。
――もらった曲についてはどうでしたか?
Masato:ヴォーカリストとして参加するというのは結構やらせてもらっている方だと思うんですけど、だいたいみんな、絶対にサビをくれないんですよね(笑)。1番のサビから歌えたことがほぼなくて。だいたい曲送られてくると、「ライブでいったら俺、途中までずっと待って出てくるんだろうな」みたいなのが多くて。だから「いちばんおいしいやつきた」って思った(笑)。しかもそれでビデオまで作るみたいな話だったから、「いいの?」って感じでした。
山中:「いいの?」って言ってたっすよね。
Masato:でもそれが、なんていうんだろうな、最近どうか分からないですけど、僕らが育った時代のヒップホップのフィーチャリングっぽいというか。俺が小学校の頃に聴いたDragon Ashの「Grateful Days」とかから始まるんですけど、ヴォーカルがサビ歌わないの? ぐらいの感覚というか、「そんなにくれるの?」みたいなところが嬉しかった。交互に歌うみたいなのが拓也とできるっていうのは上がりましたね。
「DUNK feat.Masato (coldrain)」 Music Video)
――山中さんから見てMasatoさんというバンドマン、ヴォーカリストはどんなふうに見えているんですか?
山中:Paleduskとかとみんなでいるときとか、この間CrossfaithとSiMと俺らとフォーリミのGENくんとかで飯行ったときもそういう話したんですけど、「なんかMasatoくんって全部セコない?」みたいな(笑)。生まれたてのアメリカベイビーみたいな顔して、めっちゃイケメンやし、マジでバンド界で言ったら上から5本の指に入るヴォーカリストやなって思うし。自分では絶対歌えへんものを歌ってくれるから、そこは超リスペクトしてます。
――逆にMasatoさんから見た山中拓也というのはどういう人ですか?
Masato:これはオーラルってバンドにもつながると思うんですけど、俺はずっと「もっと売れるはずだ」って言ってるんですよ。
山中:それ、ずっと言うやん(笑)。
Masato:やり方次第ではもっと売れるのにバンドマンであり続ける、泥臭くあり続けるところが常にあって。もっとキラキラすればいいのにバンドに執着してるっていうか。拓也もいろんな人に「お前らはもっと売れろ」みたいなことを言ってるし、俺らもオーラルに対してそれを言ってるっていう、変なピラミッドみたいなのができてて(笑)。
山中:(笑)。
Masato:だから最初出会ったときとかは「別なんだろうな」と思っていたんです。「別だけど関われる」っていうところでおもしろさを感じたんですけど、年々まったく同じ感覚でやってるやつなんだっていうのがわかってきた。それがステージにも出てるし、本当だったらもっと無難にというか、もっと幅広く愛されるヴォーカリストのはずなんですけど、変なところで尖っていく。それがかっこよさっていうか、見てて飽きない。曲もそうですけど、常に「かっこいいとは何か」みたいなのを突き詰めてるっていう意味では、それが楽曲にもステージにも出てて、見ててこっちがワクワクするヴォーカルであり、バンドであるなっていう気はするので。
――オーラルはこの2、3年、ライブハウスのカルチャーに改めてフォーカスして活動をしていて。そこはcoldrainとシンクロする部分も大きそうですね。
山中:そうですね。シンクロする部分もあるし、やっぱりそこが自分に合ってんねやっていう。【PARASITE DEJAVU 2022】でさいたまスーパーアリーナでワンマンをやった日に「走り続けてきたなぁ」感がそこでめっちゃあったんですよ。ずっと大きいところに向けてとかマスに向けて20代をめっちゃ駆け抜けてきたんやなあって思って。その後のことを考えていったとき、アリーナツアーをやって、行けるんやったらドームまで行こうみたいな、20代で描いてたそのラインを想像したときに、確かにそれはすごく嬉しいことやと思うし、超魅力的なことやと思うけど、今までたくさんのアーティストがドームやってる中で、本当の意味で音楽シーンに爪痕を残したのは誰なんやろ、みたいな。爪痕を残すっていうのは規模感とイコールじゃ絶対ないな、みたいなところにはずっと違和感を感じていて。
――なるほど。
山中:俺は小さいときからL’Arc〜en〜Cielにも憧れていたけど、RIZEにもすごく憧れてて、その爪痕の残し方というか、シーンの中での超重要感みたいなものをずっと感じているんです。そういう爪痕の残し方もあるし、ああいう人がいたから俺らみたいな若いバンドマンが上がってこれたんやなっていうのをすごく感じてるから。TRIPLE AXEもそうだけど、俺はそっちの方がやってて楽しくて、魅力的やなって思うんです。たとえばAge Factoryが下から出てきて「拓也くんの後輩なんです」みたいなところから入ってくる。そういうのでロックシーンがどんどん活性化されていって、ほんまにかっこいい奴らしか集まってこうへんみたいな。その感じにめちゃめちゃワクワクするので、そっちに振り切ったって感じ。で、たぶんそこにMasatoくんがいてくれてたからシンクロしていったんだと思います。
――まあ、それが裏を返せばMasatoさんが言うように「もっと売れるはずなのに」という部分でもあるんだと思うんですが、それこそが山中さんの考えるかっこよさでもあるし、存在意義でもあるという。
Masato:いやまあ、ダメなとこでもあるけどね(笑)。
――(笑)。
Masato:いや、なんていうんだろうな。俺はある意味ではオーラルにはラルクと戦ってほしかったっていうか、「ロックシーンとは」みたいなところから外れたところで超ビッグバンドになってるみたいな未来が最初に見えたから。それって、動員数とかじゃないところで、ステージから出てるんですよ。だからこいつにどれだけ「もっと行きましょうよ」みたいなことを言われても、「いや、お前が行って見せてくれよ」って(笑)。
山中:朝7時まで喋ったっすね、チェーン店で(笑)。
Masato:「英語やからって諦めんといてくださいよ」ってめっちゃ言われた。でもそれはたぶん、俺がある意味でいちばん何かを諦めてたときかもしれないし、でもみんながみんな、そうやって自分たちの活動とか行動で見せていくタイミングは常にあるし。ロックシーンもいろんなところに分散されると思うんですけど、その中でやっぱりオーラルとcoldrainって違うなかでも同じ位置っていうか、属してるようで属しきらないところがお互いあるから。そういう意味で大事なときに拓也の言葉は響くし、行動とか活動も「やっぱこうくるか」って見てるところがあるんで。だからこうやってコラボとかはしていなくても、バンドとしての繋がりっていうのは常に強い。それを確信したのが、やっとツアー呼んでくれたとき。
――こないだ(2023年の【2MAN VS TOUR「MORAL PANIC」】)じゃないですか(笑)。
Masato:俺は一生見てたんですよ。ライブハウスでいろんなバンド呼ぶ企画やってたときに「一生呼んでくれねえ」と思って。でも去年大阪で2デイズ呼んでくれたときは、俺らもここからもう一段階上げていくみたいなのがあんまり見えなくなってきてたタイミングで。「あ、全然違う客層なんだ」みたいな。フェスだと混ざってるからわからないんですよね。オーラルのお客さん、俺らのこと知ってるようで全然知らないな、みたいな。フェスで見るぐらいには知ってるけど、ライブハウスの俺らのライブを全然見る機会がない人たちがそこにいて、「じゃあいかにしてそこを奪いに行けるか」みたいな気持ちになれたし、それだけ楽しい対バンになったし。それが嬉しかったし、またそのときに夢が広がったなと思って。
山中:それもたぶん、2人で一緒にいたときに帰り際にMasatoくんに言われたんですよね。「俺ら一緒にいつやんの?」みたいな。俺、Masatoくんと居すぎてて、もう誘ってると思ってたんですよ。自分らのイベントに何回も誘ってる気になっちゃってた。「あれ、俺らのイベント出てないですか?」「いや、出てないよ」って(笑)。一緒に居すぎててちょっと麻痺ってた。
Masato:その会話した3日後くらいに連絡がきました(笑)。マジで思い出したように。
山中:coldrainがツアーに誘ったりしてくれとったから、ライブハウスでやることとかもわりとあって。でもそうか、俺らからは誘ってなかったっけって。そういう気づきがたまたまちょうどいいタイミングであって、最終的にこれに繋がってるんちゃうかなって思ってますね。
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数字じゃない戦い方をしているから。
やり方はいっぱいあるんだなって思う。
――オーラルも2019年にベストを出したり、埼玉・さいたまスーパーアリーナでのワンマンをやって、ひとつ節目を迎えたじゃないですか。一方coldrainも15周年を経て愛知・日本ガイシホールでのワンマンをやって、今はTRIPLE AXEのラストツアーをやっていて。これも節目だと思うんです。そういう節目を超えて次に向かっていくというフェーズというのも共通している部分なのかなと思ったんですが。
山中:俺、ガイシ観に行ったんですけど、めっちゃよかったんですよね。武道館のときもめっちゃ思ったんですけど、coldrainってセコいなと思ったのが、普段も普通にかっこいいライブするけど、ああいう節目のライブは全部ヤバいんですよ。ちゃんと決めてくるところがすごいなと思って。俺らも1回目の【PARASITE DEJAVU】とかはそうだったんですけど、節目をめっちゃ大切にしてるんやろうなと思って。そこはリンクしてるかもって思ったっすね。
Masato:なんかでも、たぶん求めてることっていつも一緒で。ライブハウスだったらライブハウスでのいちばんいい楽しみ方を見つける、アリーナだったらアリーナのいちばん楽しい遊び方、フェスだったらフェスの、っていう。それを常にやってる感じなんです。そういうなかで1個のきっかけとしてこういうコラボも出てくるっていうか。僕らの周りって常にお互い利用し合ってるんですよ、いい意味で。お互いを高める瞬間が勝手に生まれてくるっていうか。だから、俺は一個下の世代って勝手に思っちゃってるんですけど、TRIPLE AXEの3バンドとONAKAMAの3バンドでいったら、世の中の数字や知名度でいえば早い段階でONAKAMAのほうが上に行ったんですよ。でも【DEAD POP FESTiVAL】とか【BLARE FEST.】とか【HAZIKETEMAZARE FESTIVAL】っていう俺ら(TRIPLE AXEの3バンド)がやっているフェスにも喜んで出てくれるっていうか、ちゃんとかましに来てくれる。特にこの世代はすごく熱いなって思うし、あまり後輩とは思ってないですけど、仲間であり後輩であり友達であるみたいな感覚を持ててるんだと思う。
――そもそものジャンルは違うし、昔だったら交わらなかったような2バンドだとは思うんですよ。でもその壁がどんどんぶっ壊れて、混ざり合うことでどんどん新しくておもしろいものが生まれているっていう。混ざるところは混ざり合いつつ、それぞれに大きなイベントやフェスをやって間口もどんどん広げていってっていう姿は2バンドに共通しているところなのかなと。
山中:広げてる部分も別やからおもしろいですよね、coldrainとオーラルって。海外のバンドとかをあんなに呼び始めたバンド主催のフェスは【BLARE FEST.】が初めてやと思うし、そっちを広げられる強みをcoldrainは持ってるし、俺らは俺らで、特にコロナ前とかは、テレビに出てる人たちというか、俺らが普通に生活してたら絡まない人たちと俺らのシーンの橋渡し役みたいな感覚で、鬼のようにロックバンドを呼んだあとにVaundyに出てもらうとか、普通は絶対に交わらないところを交わらせていくことでロックシーンをもっともっと上げていく作業をやって。そこで全員が仲良く仲間としてやってたらどんどんシーンが広がっていくし、シーンの知名度みたいなのは上がってくるやろうなって思って今は動いてますね。
Masato:昔はダイバーの数がどうとか、周りのバンドと変な競り方をしてたんですよ。でも今はお互いを認めたなかで、数字じゃない戦い方をしているから。やり方はいっぱいあるんだなって思う。だからって俺らもアリーナやるし、世界にもまた出ていくしっていう。全然終わってないよっていうか。これは前にTOSHI-LOW(BRAHMAN)さんが言ってたんですけど、「“登る”から“延ばす”ことに変わるから」って。そのバンドの命をデカくするんじゃなくて、どこまで続けられるかっていうマインドになる瞬間が来るから、っていう。その気持ちすげえわかるし、だからって手を抜くわけでもないし。違う戦い方になってきましたね。
――今のオーラルもそのマインドに近いところでやってるのかなって感じがするんですけど。
山中:俺らはなんか戻ってますね。今話にあったTOSHI-LOWさんの言葉は、俺も早いながらもちょっとわかっちゃってる部分があるから。でも俺も全然諦めてないし。MasatoくんとMAH(SiM)さんと3人で飲んだときに「諦めんといてくださいよ、もっと行きましょうよ」みたいな話をしたんですけど、その気持ちは今いちばん強くて。MasatoくんとMAHさんにも言ったけど、こんなにかっこいいライブする先輩がいて、これだけ音楽かっこいい人たちがいるのに、ここが日本のロックシーンの中心やってテレビで放送されないことにむちゃくちゃ違和感を感じてるんですよ。だから俺らは、目標だったアリーナツアーが終わった後にもう一回自分たちのシーンに回帰することで、オーラルを大きくする感覚で自分たちの大切な仲間とかほんまにかっこいいって思ってる人たちのシーンをガバって丸ごと持ち上げられるような動き方をしたいし、そこに対してワクワクしてるんです。
――今回の「DUNK feat.Masato (coldrain)」という曲も、発端はバスケからインスピレーションを受けているかもしれないけど、やっぱり現場、ライブハウスの風景を思い浮かばせるものになっているし、そこにおふたりの情熱があるんだなっていうのが伝わってきます。
山中:これ、Masatoくんにいちばん最初に送った音源があるんですよ。「これです」って。で、「いいじゃん」って言ってもらったんだけど、俺はずっとモヤモヤしていて。それでレコーディングまでに全部イチから作り直して、もう1回送り直したんです。じゃあ何にモヤモヤして全部メロとかも変えたんやろって考えると、もっとライブの画が見えてもいいんじゃんみたいなのがなんとなく自分の中であったんです。俺らとMasatoくんがライブのステージに上がっているところまで想像したほうがいいよなって思って、それも踏まえて作り直したんです。だから若干振り回しちゃったんですけど、最終的には変えてやっぱりよかったって思う。
――ライブでぶち上がりそうですよね。
山中:そこはもう、完全に夏フェスでMasatoくんと勝ちに行こうと思ってるので。楽しみにしていてほしいですね。
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