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<インタビュー>日韓の歌姫がバトルする『日韓歌王戦』がスタート、日本人代表メンバーとオーディション仕掛け人が感じた韓国での手応え

インタビューバナー

 韓国発の歌姫発掘オーディション番組『トロット・ガールズ・ジャパン』は、韓国からも現役トロット歌手やアイドルなどが参加するなど、様々なキャリアや経験を持つ12歳から50歳までの“強者”54組57名が事前審査を通過し、予選に参加。昭和から平成にかけての名曲を歌い熱い戦いを繰り広げ、2月23日に行われた決勝戦で福田未来がトロットビーナス=チャンピオンに輝いた。そして『トロット・ガールズ・ジャパン』で上位進出した7名と、韓国のオーディション番組『現役歌王』の入選メンバーがバトルする番組『日韓歌王戦』が韓国で4月2日からスタートした。

 日本では4月16日からWOWOW/ABEMAで放送されるが、韓国では平均視聴率が10%を超えるという人気で、日本代表出場者にも大きな注目が集まっている。その日本代表の7人(東亜樹(欠席)、歌心りえ、かのうみゆ、住田愛子、natsuco、福田未来、MAKOTO.)と、このオーディションの仕掛人・プロデューサーのチョン・チャンファン氏に『日韓歌王戦』について話を聞いた。(Interview&Text:田中久勝)

チョン・チャンファン氏(プロデューサー)が感じた手応え

――まず『トロット・ガールズ・ジャパン』を日本で開催しようと思ったのか、教えてください。

チョン・チャンファン:私は韓国の『PRODUCE 101』というオーディションの日本バージョンをやった経験があり、そこから生まれたのがJO1です。2022年には『青春スター』という、アイドルボーカル、シンガー・ソングライターを発掘する初めての日韓合同のオーディション番組をプロデュースしました。今回はもう少し上の世代に向けた音楽のオーディションをやってみたらどうだろうと思い、韓国でトロットのオーディション番組がすごく人気があったので、これを日本でやってみようと思いスタートさせました。


▲チョン・チャンファン

――オーディションをスタジオで観させていただいたことがありますが、歌手、観客、そして審査員も巻き込んですごい盛り上がりでした。手応えはいかがでしたか?

チョン:まずトロットがどんな音楽かを日本の方に理解していただく必要があります。トロットは日本統治時代に韓国に入ってきた演歌が源流です。その後韓国は1960~70年代は海外の音楽を自由に聴くことができず、ジャンルの幅が狭くトロットが幅広い世代から愛され、今も絶大な人気を誇っています。日本は海外からの文化を積極的に取り入れた結果、音楽のジャンルが広がり演歌のシェアは少なくなっていきました。トロットの定義も変化してきました。色々な音楽と融合しながら若いリスナーに親しまれ、オープンな音楽になっていると感じています。だから日本の年齢層が高い方達が昔学生時代に聴いてきた、演歌や歌謡曲やフォーク、ニューミュージックを若い人が歌うことで、当時の感覚が甦ってきて、名曲達もさらに聴き継がれると思いこのオーディションを企画しました。演歌から生まれたトロットが里帰りし、日本で一緒にそのオーディション番組をやることで、素晴らしい文化交流ができたと思います。

――『日韓歌王戦』は韓国ではオンエアが始まり、高視聴率を弾き出しているとお聞きしました。手応えはいかがですか?

チョン:日韓戦の第1回目の視聴率が11.9%という、最近の韓国の音楽番組の中では突出した数字でした。それが全てを語っていると思います。最終回には20%を超えるんじゃないかと期待しています。韓国のシンガーは視聴者にはもうおなじみの実力者なのですが、日本のシンガーは新鮮で斬新、魅力的に映ったようで、すでに熱狂的ファンもいます。

――では日本からの7人は韓国では、すでに有名人なんですね。

チョン:1か月後には空港でセキュリティが必要になるのではないでしょうか(笑)

――『トロット・ガールズ・ジャパン』の今後の展望をお聞かせください。

チョン:『日韓歌王戦』が終了したら、韓国でスピンオフ番組も制作することになると思います。6月30日には日本で初めてのライヴを予定しています。出場者がただ歌を披露するステージではなく、意外性のある面白い演出を考えているので楽しみにしていてください。そしてソロなのかユニットなのかまだ発表できませんが、デビューに向けての準備もしています。

日本代表のメンバーが、韓国で得たもの

――『日韓歌王戦』の韓国での盛り上がりが凄いと今チャンさんのお話から伝わってきましたが、みなさんはどう受け取っていますか?

福田未来:もちろん海外での番組収録は初めてでしたが、とにかくお客さんの熱量が凄かったです。一緒に歌った韓国のトップ7はみなさん超有名で、私達7人も日本を代表してきているということでお客さんが熱く迎えてくださって嬉しかったです。すごく愛されている番組なんだなって思いました。


▲福田未来

MAKOTO.:スタッフさんはもちろんお客さんの熱量が凄かったです。韓国にいる知り合いからも、すぐに連絡が来て幅広い層の方から支持されている番組なんだなって実感しました。

かのうみゆ:もっとアウェー感がある中で歌うのかなと思っていたら、お客さんからの応援、声援が凄くて、もうステージに出た瞬間、緊張がなくなり、伸び伸びとリラックスして歌えたような気がします。

住田愛子:私も同じでアウェー感が半端ないのかなと思っていたら、お客さんが韓国のトップ7が登場した時と変わらないくらい声援を贈ってくださって、しかもその歓声がものすごく大きくて圧倒されました(笑)。緊張するかなと思っていましたが、逆にその声援に勇気をいただいて、すごくテンションが上がって、いいパフォーマンスができたと思います。

――韓国でレッスンを受けたとお聞きしました。

住田:テクニックはもちろんですが、自分自身の元々のレベルをグッて引き上げてくださったレッスンだったなって思いました。

福田:日本では発声や基礎的なことが中心なんですが、韓国はその曲をとにかく追求していくというレッスンでした。本当に一言一言 表現にこだわって、引き算をすることを教えてもらった気がします。それによって今まで歌っていた曲が、抑揚がすごくついてより立体的になったと思います。日本に戻ってきて友達に歌を聴いてもらったら「違う人みたい」って言ってもらえるぐらい成長できたレッスンでした。


▲住田愛子

――韓国のトロットのトップ7の歌はどうでしたか?

歌心りえ:安定感というのはいうまでもなく、でも無理のない発声なのにすごくパワーを感じました。もちろん感情は迸っているのですが、リラックスして歌っているというか。もう表現力が凄すぎて、出場者の一人でトロットのスター・パク・ヘシンさんに「どうしたらそういう歌が歌えるんですか?」って、トレーニング方法とかを教えてもらおうと思って聞いてみると「大切なひとと時を過ごすこと、好きな食べものを食べて、美味しいお酒を飲むことよ」って(笑)、心構え、メンタルを大切にすることを教わりました。

natsuco:りえさんもおっしゃったように歌唱力の素晴らしさはもちろんですが、やっぱりトロット歌手としてのプライドや、自分が理想とする表現というものが明確にあって、それは番組で高いレベルの中で勝ち抜いてきたからこそ得ることができたのかなと思いました。お客さんの巻き込み方も含めて見習うべきところがたくさんありました。


▲natsuco

――見せ方、表現方法はどんな工夫をしましたか?

かのう:私は小さい頃から人前で歌ったり、ステージに立ったりするのがすごく好きで、歌っている時の表情や視線の送り方もずっと研究してきました。韓国に行って、演出をしてくださる作家さんやボイトレの先生から「歌っている時の表情がすごくいいから、それをもっと生かしたパフォーマンスにしましょう」って言っていただけて、これまでやってきたことは無駄じゃなかったんだって思えました。

MAKOTO.:私はステージで「堂々とやっているね」と韓国の作家さんに言っていただけたのですが、実はすごくあがり症で、でもステージに上がった時にグッと入り込んで感情を爆発させるというか。韓国のトップ7、日本のトップ7、周りに素晴らしい教材ともいうべき人がたくさんいるので研究して、自分が培ってきたものと融合させてもっといいパフォーマンスにしたいと思いました。あとはやっぱり演出担当の作家さんがひとり一人についてくれていたので、作家さんの言うことを素直に聞くということが一番の近道かなと思います(笑)


▲MAKOTO.

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日本と韓国の違い、将来の夢


――日本代表としてのプレッシャーはありましたか?

歌心:楽しくいい緊張感を持ってパフォーマンスするために、自分との対話がいつも通りできるかがプレッシャーでした。だから私は日本代表って言えません。言って、考えてしまうとさらにプレッシャーがかかるというか、日本代表なんておこがましくて言えません、という感じでステージに立っていました。

natsuco:私も日本代表なんておこがましくて言えません。ただ今回、日韓戦ということで元々トロットは演歌が日本から韓国に繋がって、共通した音楽の文化だったという部分の理解から、日本の曲、韓国の曲、両方への理解をしっかり深めて、そこに自分らしさを乗せるということを意識して歌いました。本当に温かい環境の中で歌えたので、プレッシャーはなくなって私も含めて自由に伸び伸び歌えたメンバーが多かったと思います。


▲歌心りえ

――今回の日韓戦は文化交流の一環という側面もあったと思います。

MAKOTO.:私が唯一韓国語をしゃべれたので、通訳としても双方の人達と色々なお話をすることができましたが、一番の文化交流はステージで私達は韓国の曲を、韓国の方は日本の曲を歌ったことだと思います。

――日本と韓国の番組の作り方の違いなどは感じましたか?

歌心:出演順が本番直前までわからないところは『トロット・ガールズ・ジャパン』もそうでしたが、『日韓歌王戦』はバトルが始まって、お客さんの反応とか点数の差とかで出演順が変わったことがあって、「えっ今、変えるんですか」って驚きましたが、新鮮でした。流れを見てもっと面白くさせようとか、展開が変わっていくんじゃないかということを予測しながら歌う順番を変えていくスタイルにはびっくりしました。大変だったのはリアクションです(笑)。韓国の方が歌っているときと日本のメンバーが歌っているとき、みんなのリアクションが求められるんです。声を出してもいいし、オーバーなリアクションが求められて、そこが日本の番組との大きな違いでした。

かのう::韓国は本番直前に全て決まって、私達も対応力が求められるというのは、韓国に行く前から薄々気づいていましたが(笑)、お客さんの反応を見て進行がどんどん変わっていくところは素晴らしいなと思って。それから私達に対しての気遣いやケアが本当に手厚くて、常に「大丈夫だよ」って声をかけてくれました。日本の番組のいいところもあるし、韓国は韓国のよさがありました。


▲かのうみゆ

――今回の日韓戦のために3週間、韓国に行っていたとお聞きしました。

住田:とにかく音楽漬けの3 週間でした。私ってこんなにも音楽、歌が大好きだったんだなって改めて感じた時間でもありました。たくさんいい刺激をいただいて、学ぶこともたくさんあって、色々なことを吸収できました。私は高校生ですが、学校の勉強の他に韓国語の勉強も頑張ってみようと思いました。あと韓国はご飯がすごく美味しくて、日本に帰ってきてからは食卓にキムチがないと違和感があるくらい好きになりました(笑)

natsuco:私は普段 会社員をしていて、貯めに貯めた有給休暇を使って韓国に行ったのですが(笑)、本当に毎日歌えること、上司に連絡しなくていいことが幸せでした(笑)。オフィスでは鼻歌もなかなか歌えないですが、スタジオの中では鼻歌をいくら歌っても怒られることがないので、それだけで幸せでした。日本に帰って周りから「機嫌が良くなったね」ってよく言われるので、韓国での3週間は大きな影響がありました。

――16日からWOWOWとABEMA TVでスタートする日韓戦が楽しみですが、みなさんの今後の目標を教えてください。

歌心:『日韓歌王戦』がいい経験になって、もっと歌を頑張ろうと思いました。本当にいくつになっても挑戦ってできるんだなということを実感しました。健康第一で、これからも歌を心で歌い続けていきたいです。

かのう:韓国で歌えて光栄でしたし、TikTokも韓国のファンの方がすごく増えて、いつか韓国でライブをやりたい、メディアに出たいという夢があったのですが、今回それが叶ったので本当に嬉しかったです。日本と韓国を行き来しながらライヴをやりたいですし、何より自分が楽しく歌って、末永くやっていきたいです。

福田:私は死ぬまでに名曲といわれる曲を残すという夢がずっとあります。それは変わらない夢ですが、大好きな韓国に行ったことでまたひとつ夢というか目標ができました。それはビールが大好きなので韓国のビールのCMに出たいということと、そのポスターが飲食店に貼ってあるのを見てみたいです。韓国で有名になりたいです。私が韓国を大好きなように、韓国の方たちにも私を大好きになってもらいたいです。


▲福田未来

住田:私はダンスもやっているので、ダンスパフォーマンスを通しても人の心を動かす歌い手になりたいという夢があります。でもまだ16歳なので、とにかく色々なことにチャレンジしていきたいです。とにかく全部やってみて楽しいなって思うものを極めていきたいです。

MAKOTO.:私は元々K-POPアイドルに憧れて韓国で練習生として5年間過ごしました。だから自分にとって韓国で活動するということは、他の人とはちょっと違った思いがあって。「日韓歌王戦」で“オールラウンダー”というキャッチフレーズをつけていただいたので、その名に恥ないようにもっと頑張って、日本と韓国を行き来して文化の懸け橋的存在になりたいです。

natsuco:私の目標は二つあって、まず曲を書いてみたいです。今回「トロット・ガールズ・ジャパン」で日本の名曲を歌い継ぐということを経験させていただいて、日韓戦で韓国の曲にも触れることができて、両方の国の人の心に響くような曲を書いて、歌って届けたいです。それからライヴをたくさんやりたいです。私もMAKOTO.さんと同じように、日本と韓国を行き来しながら、音楽もファンも繋いで、日韓の文化交流の役に立ちたいです。



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