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JAMOSA 『SKY』インタビュー
絶賛ブレイク中のJAMOSAが何を想って『何かひとつ feat. JAY'ED & 若旦那』を歌い、このタイミングでニューアルバム『SKY』を発表するのか。今に悩みながらも懸命に生きている人々へのメッセージとして。また、JAMOSAというアーティスト像、人間像を本質的に知ってもらう為のインタビューとして。このテキストはご覧頂きたい。
3月11日~被災地から届いたメッセージ
--『何かひとつ feat. JAY'ED & 若旦那』大ヒット。レコチョクランキングで1位を獲得し、2011年2月度のレコチョクアワード月間最優秀楽曲賞も受賞しましたが、この状況にはどんなことを感じていますか?
JAMOSA:こんなにいろんな人に聴いてもらえるなんて……。今まで「ひとりでも多くの人にJAMOSAの歌を届けたい」っていう願いがあったんですけど、この曲を通してドリームを獲得したというか、より多くの人に聴いてもらうきっかけになりましたね。いろんなドアが開いて、みんなにJAMOSAのことを知ってもらうことができました。
--最初に1位獲得の報せを受けたときはどんな感じだったの?
JAMOSA:「まさか? 1位?」って感じで。ドラマ「美咲ナンバーワン!!」の主題歌になったことが大きいんですけど、そのドラマが終わっても多くの人に聴いてもらえているので、楽曲自体も凄いんじゃないかなって思います。本当にレインボーみたいな楽曲で、毎日向き合う度に色が変わっていくんですね。歌っていても今日の自分の“何かひとつ”を思い浮かべさせてくれる。毎回新しい曲を歌っている感じがするので、私以外の人も「飽きない」って思ってくれているのかなって。
--あと、東日本大震災の後に、ラジオを聞いていたら元気を送りたいからって『何かひとつ』をリクエストしている人がいて。それだけ力を与えられる曲として受け止めている人がいることには、どんなことを感じる?
JAMOSA:Twitterとかブログとかmixiを通して私のもとにもそういうメッセージを頂いています。被災地の人たちから「JAMOSAの歌をボリュームを一番小さくしながら、それでも聴きたいから聴いています。それで勇気が出ます」みたいなことを言われると、どんなに小さくても伝わるものは伝わるんだなって感じる。被災地の状況って想像する以上のものだと思うんですね。分かろうと思っても分かりきれないほどの恐怖と戦ってる皆さんのことを考えると、本当に胸が痛くてしょうがない。でもそういうところで私の曲が少しでも心の支えになってるって聞くと「音楽をやり続けてよかった」って思います。
--東日本大震災が起きた3月11日には何をしていたんですか?
JAMOSA:私はオフで江ノ島に行っていたんですね。そしたら地震があって「津波が来るから、江ノ島から出ちゃいけません」「高台に上がってください」って言われて、状況がよく分からなかったんですよ。それで高台に避難したら、そこには子供やおばあちゃんもいて。みんな「あと何時間ぐらいここにいなきゃいけないんだろう」って、不安な気持ちでした。結局2時間ぐらいで津波注意報は解除されて、その後にニュースで東北で起きていることを知ったんです。私が避難している間に想像していた以上の状況になってましたね。
--前回、ハイチ地震被災地復興チャリティソングの話を聞いたときに、99年の台湾での大地震のときに悔しい想いをしたと話してくれましたが、今回の東日本大震災もそのときの状況と重なりましたか?
JAMOSA:そうですね。とうとう母国でも起きてしまったかって……。私、その地震の次の日にライブをする予定だったんですね。だから本当にいろんなことを考えさせられたし、あとは二次災害、三次災害で水が飲めなかったりとか、放射能の問題があったりとか、みんな苦しい想いをしているから、私も含めてみんな毎日いろんなことを考えてるんじゃないかなって。
--確かに、あの震災があって誰もが自分は何をすべきか、どう生活するべきか、考えたと思うんですが、JAMOSAはどんなことを考え、どうしていきたいと思いましたか?
JAMOSA:とにかくストップすることは良くないなって。1日でも早くみんなが立ち上がらなきゃいけないときに、私がストップしても何にもならない。とにかく歌い続けること。あとは私が出来る限りのことを絶対にこなしていきたいなって。時間がかかってもノンスパンでやっていきたいなって思ってます。ひとつずつやっていきたい。
--5月11日にリリースするニューアルバム『SKY』のキャッチコピーは「広い空の下、上を向いて届けたい歌。。。無限大の愛を込めてみんなの元に。」となっていますが、今作を発表する上で震災のことは意識しました?
JAMOSA:そうですね。このアルバム自体は震災前に作ったものなんですけど、元々『何かひとつ』も「男の人も女の人も子供もお婆ちゃんもみんな元気にしたい。背中を押したい」っていう気持ちを込めていたし、そうした想いは小さい頃からあったんですよね。今回のアルバム『SKY』にも「ポジティブに上を向いてほしい」って願いを込めているから、1曲1曲がエネルギーに溢れた曲になっていますし、それが皆さんを応援する音楽として届いてほしいです。
Interviewer:平賀哲雄
汗と涙がいっぱい詰まったアルバム
--アルバムタイトルの『SKY』にもそういう想いを込めてるの?
JAMOSA:ひとつはそうですね。あともうひとつは、私の心の変化に喩えているんです。今作の前に『何かひとつ』『LUV~collabo BEST~』があったんですけど、オリジナルアルバムを出すのは『RED』から2年ぶりなんですよ。私はその期間の中で「若旦那と一緒に曲作りたい」とか「スピッツの『チェリー』をカバーしてみたい」とか、いろんなことをイマジネーションすることが出来たんです。「毎年アルバム出さなきゃ」と思っていると、そういう時間が少なくなっちゃうんですよね。目の前のことをひたすらこなして、空を見上げることも忘れてしまう。でもふと空を見上げたら気付くことがいっぱいあったり、心が呼吸できるようになったりする。そうやっていろんな可能性に気付いていく中で取り組めたアルバムなので、ダブルミーニングで『SKY』というタイトルにしました。
--では、そのアルバムについて詳しく聞いていきたいんですが、まず仕上がりを自身で聴いたときはどんな印象や感想を持たれましたか?
JAMOSA:「出来た!」って(笑)。大変だったんですよ。イマジネーションしたからって「これやりたい」って言うことは簡単じゃないし、その為にいろんなことをやらないといけないから。そういう意味でも今回は1曲1曲にすごく時間をかけたんです。なので、今作『SKY』は汗と涙がいっぱい詰まったアルバムですね。
--JAMOSA史上最もバラエティに富んだ、音楽的カテゴリーを超えたアルバムになっていますが、『何かひとつ』を発表する前後ぐらいからこうしたアルバムにするイメージはあったの?
JAMOSA:そうですね。『何かひとつ』をリリースする前からこのイメージはありました。ずっとこのアルバムに向かっていろんなことを考えていたので。
--また、全体を通して前向きなリリックが目立ちます。まず1曲目に『何かひとつ』を持ってきたのはどんな想いから?
JAMOSA:雲ひとつない空を1曲目に持ってきたかったんです。最初から泣きウタじゃダメだと思って、背中を押したり、すっきりしてもらえたりする、アルバム『SKY』に一番相応しい曲が『何かひとつ』でした。
--それに続く2曲目の『もしも願いが叶うなら』。めちゃくちゃポップでキュートで爽快なナンバーになっていますが。
JAMOSA:この曲は女の子らしいかなって思いましたね。今までこういう元気でカラフルな曲をひとりで歌ったことが無かったから、そういう意味では『もしも願いが叶うなら』をひとりで形に出来た達成感がありました。あと、本当に前向きで「みんなが持っている願いを叶えていこう」って背中を押せる曲にしたかったので、コンセプトとしては『何かひとつ』にも通ずるものがあると思います。
--ちなみに『もしも願いが叶うなら』の声はね、男心くすぐりますよ。
JAMOSA:くすぐりますか(笑)!? 初めて言われた! ありがとうございます。
--そしてポジティブナンバー3連発目『BEAUTIFUL WORLD feat.KG & AILI』。MONKEY MAJIK『Around The World』をサンプリングしていますが、これは誰のアイデアで?
JAMOSA:みんなで考えましたね。「サンプリングやりたいな」っていろんな曲を聴いている中で『Around The World』が格好良かったから「これで曲作るしかないっしょ?」ってなって。AILIは10年以上の付き合いになるお友達なので「彼女にぜひ作ってもらいたい」とお願いして仕上げてもらったんです。あと、KGはライブ現場でバッタリ会ったりとかしてて、本当にソウルフルな人だったから「こんな黒い人もいるんだ、日本に」と思って(笑)気になっていたんですよ。それで「お願いしたいな」と思っていたら、あっちも気になっていたらしくて、すごく良いタイミングで一緒に曲を作れることになりました。お互い海外生活が長い同士で故郷を思い出しながら歌いました。「あなたのBEAUTIFUL WORLDは何なの?」っていうテーマなんですけど、みんなが聴いて何を思い浮かべるのか気になりますね。『何かひとつ』や『もしも願いが叶うなら』と同じように。
--あと、今作にはスピッツ『チェリー』のカバーが収録されています。今回この曲を歌おうと思ったのは?
JAMOSA:メロディがとても好きなんです。とてもポップでアッパー寄りの曲だと思うんですけど、メロディが泣きメロというか、切ない! 鳥肌立つし、泣けちゃう。「この不思議な曲を私がカバーしたらどうなるんだろう」っていう発想から、レコーダーをカラオケに持っていって(笑)自分で『チェリー』を歌って。それをスタッフに渡して。この曲のメロディと私の声が活かされるように、アコースティックで音数が少ないアレンジにしました。
--とても優しいアレンジのバラード曲に生まれ変わってますよね。
JAMOSA:そうですね。カバーってそんなにやれるものじゃないので、すごく新鮮だったし、こうやって生まれ変わったものをみんなのもとへ届けられるのが嬉しい。やっぱり良い曲は良い曲じゃないですか。20年経っても、100年経っても。だからこの曲の良さがずっと伝わっていけばいいな!
Interviewer:平賀哲雄
あのときの試練はこの為にあったのか
--また、今作は“2人”でどう歩いていくか、歩いていきたいか。そうしたラブソングがとても多いですよね。例えば『これ以上やさしくしないで』もそうですし。
JAMOSA:人間それぞれ向く方向が違うし、同じ方向を向けなかったらぎくしゃくするじゃないですか。恋愛で言えば、友達以上恋人未満みたいな。でもそれって気持ちがあるからどうしようもないんですよね。「もう私はアンタのこと好きじゃない」って言えば簡単なんだけど、そんなに人の気持ちって簡単じゃない。だからと言って一緒に過ごしていて優しくされても辛くなっちゃうし。『これ以上やさしくしないで』では、そういうサンドウィッチなシチュエーションを思いっきり曲に表したかったんですよね。たくさんの女性が共感してくれるんじゃないかなと思って書きました。
あと、このアルバムは「JAMOSAのアルバム」と思って聴くよりも、鏡を見る感じで自分と向き合いながら聴いてもらいたいんですよ。だから別に自分の生き方を押しつけるつもりはないし、このアルバムを聴いてみんなが元々持っているもの、願いたくなったりとか、「いつまでもこの人といたい」と思ったりとか、感謝したりとか、そういう人と人が生きていく上での本質的なものに気付くきっかけになればいいですね。
--人は誰かと支え合って生きていくべきで、そこにはいろんな葛藤や感情が生まれるんだけれども、それをすべて受け止めていくことが重要である。ということをJAMOSAはすごく知ってますよね。
JAMOSA:私の場合は何でもどうにかしようとするんです。辛くても。後ろ向いてもしょうがないし、目の前に現れた課題をただ単に「わぁ~、面倒くさいな」と思うのか「なんでこの試練が私に与えられたんだろう」と思うのかで、結果は全然変わってくると思うんですよ。楽曲制作でも人と人の付き合い方も。だから私はひとつひとつの課題をこなしていく。後から「あのときの試練はこの為にあったのか」って思えることっていっぱいあるので。もちろんその瞬間瞬間は感情的になって怒ったり、苛立ったりもするけど、やっぱり向き合うことが大切。
--全部向き合って解決していくのって物凄くパワー使いません?
JAMOSA:はい。もう疲れますね(笑)。
--それでも向き合うんだね。あと、恋の歌でも愛の歌でも、それによって人が元気になったり、助けられたりする瞬間がある。今作はそれを信じてる人が作ったアルバムだと感じたんですが。
JAMOSA:LOVEは本当に大きい存在だし、課題でもあると思うし。前作のコラボベストにも『LUV~collabo BEST~』というタイトルを付けてますけど、愛ってすごく不思議なエネルギーを持ってるじゃないですか。私もそのエネルギーを受けて「曲を書きたい!」と思ったり、感情が生まれたりするから、それが思いっきり曲に出てるんです。
--今作『SKY』において、特にエモーショナルに響くラブソングは『ありがとう』だと個人的に感じているんですが、この曲はどんな想いや背景があって生まれたんでしょうか?
JAMOSA:この曲はですね、実はこのアルバムの為に作っていた曲ではなくて、5年前に書いてレコーディングしていた曲なんです。それで『SKY』を作っていくタイミングで「ここだ!」と思って収録することなりました。人間って何でもすぐあたりまえのようになっちゃって「ありがとう」とか言えなかったりするじゃないですか。でも時は経っていくし、いろんなことが起こっていくし、もしかしたら言えないままお別れすることになるかもしれない。それは実際にいろんな人を失ってから自分も気付いたこと。で、お父さんが病気になったときに「感謝しなきゃ」ってすごく思ったんですよ。自分がこうやって生きているのってお父さんとお母さんのおかげだし、それに感謝するのって基本中の基本。そういう曲を書いたら、みんなも共感してくれるんじゃないかなと思って作ったのが『ありがとう』ですね。
--そしてその『ありがとう』の後に『BOND~キズナ~ feat. 若旦那』でアルバムを締めるという。どれだけ泣かしたいんだという(笑)。
JAMOSA:(笑)。雲ひとつない空として『何かひとつ』でアルバムの幕を開けたので、最後はしっとりした夜『BOND~キズナ~ feat. 若旦那』で終わりたかったんですよね。アルバム全体で1日の空を描きたくて、こういう曲順になっているんです。あと『BOND~キズナ~』は弟とのキズナがきっかけで生まれたんですけど、リリースしてからライブで歌う中でいろんな人とのキズナを感じるようになって。人間はひとりじゃない。何かしら繋がっているって。そういう想いがあって『BOND~キズナ~』はこのアルバムの最後に絶対入れたかったんです。
--そんなニューアルバム『SKY』、世にどんな風に響いていってほしい?
JAMOSA:今は皆さん、心も栄養不足になっていると思うんですよ。だから体の栄養にはなれないけど、心の栄養になってほしいなと思います。『SKY』というタイトル通り、上を向いてほしいし、前に進んでほしい。あとはもう「ひとりじゃないよ」っていうことですね。
--今作のリリース後はどんな展開を考えていたりするんでしょう?
JAMOSA:ワンマンツアー【JAMOSA Live Tour 2011】があるので、このアルバムの曲たちを直接届けたい。あと、このツアーで行かないところでも頑張ってライブをしに行きたい。被災地でも許されるところであれば行きたいし、とにかく日本中に歌を届けたいです。
Interviewer:平賀哲雄
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