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<インタビュー>空気公団 山崎ゆかりが語る、最新作『景色一空』に込めた想い

インタビューバナー

 1997年にバンドとしてスタートして、2019年から山崎ゆかりを中心としたプロジェクトとなった空気公団は、バンドというより歌が生まれる場所だ。曲ごとにミュージシャンが集まって、山崎が思い描いたイメージを育てていく。最新作『景色一空』には、千ヶ崎学、奥田健介(NONA REEVES)、 笹原清明(Spangle call Lilli line)、五味俊也(キヲク座)など8名のミュージシャンが参加。優しくて切ない、普遍的な美しさを持ったメロディーを、味わい豊かなバンド・サウンドが丁寧に奏でる。そこには、初めて来た街を散歩しながら、どこか懐かしさを覚える時の不思議な郷愁が漂っている。自身初となるビルボードライブ横浜公演を前に、新作について山崎に話を聞いた。(Interview & Text:村尾泰郎 / Photo:Yuma Totsuka)

空が全部つながっているように、世の中の出来事は全部つながっている

――現在、空気公団は山崎さんのソロ・プロジェクトになりましたが、アルバムを制作するうえで気持ちの変化はありますか?

山崎ゆかり:とくに変化はないですね。テーマを決めて作品を作る、というところは同じですし、このメンバーだからこんな作品を作ろう、というふうには考えないので。

――作品ごとにミュージシャンに声をかけることになるわけですが、そこで何か心がけていることは?

山崎:自分で絵が描ける人です。こちらが「こういうふうにしてくれますか?」と指示して「わかりました」というのではなく、自分なりに考えて演奏してくれる人。いつも皆さんには好きに弾いてもらっているんです。私がイメージする通りに演奏してもらうのは簡単なんですよ。みなさん、百戦錬磨のツワモノなので。でも、私は楽器を弾いてくれる人の個性が演奏に出てほしいし、それをどんなふうに空気公団の音楽に混ぜようかな、と考えているんです。だから、こういう音を出して欲しいと具体的に伝えるよりも、この曲の女の子はこういう顔をしているんです、というふうに言ったりしています。

――お話を伺っていると映画を作っているみたいですね。良い役者さんをキャスティングして、役者さんの個性を役に反映させながら脚本で描かれた世界を膨らませていく。

山崎:それは良い例えだと思います! そこで私は監督みたいにすべてを仕切っているわけではなく、私も参加者の一人なんですよね。私が「こうしませんか」と言うこともあるけれど、それは指示ではなく提案。私はストーリーテラーみたいなところもあって、歌の世界を俯瞰しながら状況を伝えるような存在なんです。だから歌詞でも、あまり「私」とは言わないんですよ。

――山崎さん=空気公団ではない?

山崎:空気公団を結成した当時、バンドっていろんな形があってもいいんじゃないかと思っていて。バンドってメンバーが前に出るじゃないですか。取材をすると写真撮影もするし。私は人より音楽が前に出てほしかった。だからアーティスト写真も景色でよかったんです。

――バンドというより〈場所〉みたいな感じなんですね。だとしたら、山崎さんのソロ・プロジェクトになることで、作品ごとにミュージシャンが出入りできるので表現に広がりが出るような気もします。

山崎:確かに自由度は増しましたね。メンバーが固定している時は、メンバーの楽器は絶対使わないといけなかったり、〈この曲はこういうギターがいいな〉と思っても、外からミュージシャンを呼んでくるのは悪い気がしていたんですけど、そういう縛りがなくなったので。

――今回も曲ごとにギタリストやベースを変えたりしていますが、そういうアプローチができるようになったわけですね。

山崎:今回のアルバムでは、ドラムで入ってもらった五味(俊也)さんにバンマスになってもらって、五味さんと相談しながらミュージシャンを決めました。

――ドラムは全曲、五味さんが叩くことでアルバムに一本筋が通っています。

山崎:私はドラムが好きなんです。ドラムが骨で歌は皮膚。参加ミュージシャンは筋肉だと思っていて。骨がしっかりしていないと曲がどうなるのかわからない。だから曲作りはドラムからなんです。五味さんにまず、8ビートと16ビートを叩いたものを送ってもらって、それを聴いているうちに気分が高まって、曲が書きたくなってくる。そして、アルバムのタイトルを決めて、何曲あればタイトルにしたことを表現できるのかを考えるんです。その次はアルバムの構成を考えて、それが決まれば初めて曲を書き始める。自分が曲にしようと思っていたことや風景を思い出しながら。

――曲の題材になることを、常に記憶としてストックしているんですか?

山崎:今、という瞬間は1回しかないじゃないですか。そのことに中学生の頃に気づいてショックを受けたんです。それ以来、私は人の仕草や風景を心の中でカシャって撮るクセがあって。その記憶をパラパラめくりながら曲を書くんです。

――アルバムのタイトルを決めてから曲を作る、ということですが、今回の『景色一空』というタイトルには、どんな想いが込められているのでしょう。

山崎:去年の3月にみんなで神社に行った時に、空が全部つながっているように、世の中の出来事は全部つながっているんだって突然気づいたんです。今日、あの人にこんなこと言われちゃった、という日常の些細なことも遠くで起こっている戦争も全部つながっている。そう思うと世界に奥行きが生まれた気がしたんです。


――空といえば、アルバムのジャケットに映し出された空も印象的ですね。ラベンダー色の美しい色合いで。

山崎:「夜明けか夕方かどっちですか?」って聞かれることが多いんですけど、実は夕方なんです。この時間の空がいちばんきれいなのでジャケットに合うんじゃないかと思って。

――撮影をしたのはSpangle call Lilli lineの笹原清明さん。アルバムに収録された「染まる街」にはギターで参加されていますが、ジャケットの写真を思わせる曲名ですね。

山崎:この曲はあまり巧みじゃないギターが欲しいな、と言っていたら、笹原さんがやりたいって言ってくれたんです。巧みじゃないからって(笑)。

――自分から(笑)。でも、曲の雰囲気にあっていますよね。収録曲のなかでは、山崎さんは「時の解決」を特に気に入っているとか。

山崎:歌詞に「涙があふれてしまう前に 早く朝を呼んできて」という一節があって、CDの帯に入れたいくらい気に入っているんです。今回のCDに帯はついてないですけど。よく「時が解決してくれるよ」って言いますけど、実際はそう簡単には解決してくれない。物事は簡単に忘れられないし、忘れたくないこともあるという歌なんです。

――美しいメロディーの曲ですが、サックスを重ねたアレンジがアクセントになっていますね。

山崎:サックスの鈴木広志さんに、音を入れてほしい場所を指定して自由に吹いてもらいました。歌詞に「聞こえるのは電車の音」という一節があるんですけど、鈴木さんは電車の音をサックスで表現してくれたそうです。


――そのほか、バラエティ豊かな曲が空気公団という空の下でつながっているようなアルバムです。

山崎:アルバム全体のバランスを見ながら、できるだけいろんな身の丈の曲を作ろうと思っていて。例えば「白銀の少女」は珍しくライブを意識して作った曲なんです。これまで、あまりそういうことは考えてこなかったんですけど、ライブで「待ってました!」みたいに盛り上がる曲があるといいなと思って。


――それはビルボードライブ公演が楽しみになりますね。今回のステージはどんな内容になりそうですか?

山崎:今回は6人編成で、新作からの曲を中心にしながらカバーもやろうと思っています。空気公団を結成した頃は、ライブのことは全然考えていなかったんですよ。だから、どんなふうにライブをするのかはいろいろ試行錯誤をしてきていて。最初から最後まで姿を見せずにやったこともありますし、アルバムの音を完全再現しようと思って、1曲の4小節しか弾いてないミュージシャンにも参加してもらったこともありました。ライブとしてひとつの世界を確立してればいい、と思うようになってからは、私はいちばん端っこに座って歌っています。風みたいな存在でいようと思って。

――風ですか。空気公団の歌はメッセージやイメージを押し付けてこない。余白がある歌なので、歌を聴いた時の自分の気持ちが、歌に反映されるような気がします。

山崎:だから、昔は一人でいらっしゃるお客さんが多かったんです。でも、最近は友達同士やカップルとか、2人連れのお客さんが増えてきた。そういう変化も嬉しいですね。以前の空気公団は、建物の高いところにしか窓を作っていないような感じだったので、どこから入ったらいいのかわからなかったのかもしれないですね。

――建物の管理人室だけ窓に明かりが灯っているみたいな?

山崎:そうです(笑)。最近は窓が増えてきたので覗きに来やすくなったのかもしれない。ライブで私たちの歌を聴いてくれた人が、自分の中に何かを見つけてくれたら嬉しいですね。もし、何かに悩んでいたら、空気公団の歌がそこから抜け出すための小さなかきっかけになってくれたら良いな、と思います。


撮影協力:SEE MORE GLASS


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