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<インタビュー>歌で誰かの人生を表現する――ホロライブ4期生の天音かなた、1stアルバム『Unknown DIVA』で紡いだ12篇の物語

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Interview:Takuto Ueda

 ホロライブ4期生としてデビューした“天界学園に通う天使”、天音かなたが1stアルバム『Unknown DIVA』をリリースした。

 全12曲入りの本作は、みきとPやsasakure.UKといったボカロ系クリエイターから、藤田淳平(Elements Garden)、やなぎなぎ、つんくまで、ジャンルを超えて豪華制作陣が参加しており、天音かなたの幅広い音楽遍歴が濃縮された一枚となっている。また、楽曲ごとに練り込まれた世界観や物語を豊かな表現力で紡ぐ歌声は、幼い頃からミュージカルに触れ、まるで“役を演じる”ように作品と向き合う彼女ならではの個性も感じさせる。

 2021年8月に投稿された初のオリジナル曲「特者生存ワンダラダー!!」を皮切りに楽曲のリリースを重ねつつ、一人のシンガーとして、そして一人のVTuberとして、周囲からのプレッシャーや自身のコンプレックスを乗り越えながら歩んできた天音かなたの4年間について、そしてアルバムの仕上がりについて、本人にたっぷり語ってもらった。

自己主張の気持ちも大事

――2019年12月にデビューした天音さん。当時、どんな夢やモチベーションを抱いて活動を始めたのでしょう?

天音:デビュー当初はとにかく「がむしゃらに頑張らないと」って気持ちが大きかったです。ホロライブというのは先輩やスタッフさんたち、そして応援してくれるリスナーさんたちの積み重ねの上に成り立っているって意識がすごくあって。デビューしていきなり登録者が数万人いたり、まだ何も活動していないのに応援してもらえているという環境が、4期生がデビューしたときにはすでにあったんですね。なので、自分もお返しをしていきたいという想いが一番のモチベーションだったし、それは今も変わらないです。

――自分も一人のVTuberとしてホロライブに貢献していきたいと。

天音:はい。あと、もう卒業しちゃったんですけど、同期の桐生ココがすごく面白くてバズっていたので、負けないようにっていう焦りもちょっとありました。私は実況とかやったことがなかったし、ゲームに関してもデビューして初めてSwitchを買ったぐらいなので、いろいろ努力しなきゃいけないなって。もともと歌は好きだったので、その先にライブやリリースが実現できたらいいなという野望はありました。

――アーティストとして活躍されている所属タレントも多いホロライブですが、そういった音楽活動へのサポートも期待していた部分だった?

天音:時はまだオリジナル楽曲を出すような所属タレントは少なかったんです。イノナカミュージックに所属していたすいちゃん(星街すいせい)とAZKiちゃんぐらい。なので、もちろん音楽はやってみたいとは思いつつ、まずは配信を頑張ろうと思っていました。

――先ほど話にもありましたが、4期生がデビューした頃、すでにホロライブはVTuberの大手事務所でした。周囲からの期待とプレッシャーは大きかったかと思いますが、天音さんはどんなふうに乗り越えてきたのでしょう?

天音:他人と比較するのってけっこうメンタルがやられると思ったので、あえて周りを意識しないようにしていたんです。そうではなく過去の自分と比べてどこが良くなったか、みたいなことをかなり考えてきたんですね。そうやってちょっとずつ進んできた感覚があります。あとは、リスナーさんがどんなことをしても応援してくれるので、そういう人がいるなら頑張ろうという想いも強かったです。

――そんな3年間を経て、ご自身ではどんなVTuberになったと思いますか?

天音:まず、ちゃんと喋れるようになったことが大きいです。もともと一人喋りはまあまあ得意だったんですけど、コラボみたいに大人数で話すのは苦手だったんですね。「みんなは自分ではなく先輩たちの声が聞きたいよな」みたいな気持ちがすごくあって。でも、あまり卑屈にならず、もうちょっと自分に自信を持ってもいいのかなと思えるようになりました。地道に地道にではあるんですけど、今では喋りすぎと言われるようにもなったり(笑)。ゲームもまだまだ苦手な部分はあるけど、配信は最低限できるぐらいにはなったのかなって。まだまだ一人前とまではいかないけど、ようやく自分の足で立てるようになってきた。そんなふうにVTuberとして成長してこれたのかなと思います。

――逆に言えば、デビュー前は他人と自分を比較したり、周囲に気を遣いすぎてしまうところがあった?

天音:ありましたね。誰かが傷つくなら自分の意見は飲み込むとか、自分が我慢すればいいとか。それでも日常生活は問題なく生きてこれたけど、VTuberには「もっと自分を見て」とか「もっと目立ちたい」みたいな自己主張の気持ちも大事だと思うので、我慢して人に譲るだけじゃダメなんですよね。そういう壁は初めてでした。

――ある意味、VTuberになることでそういう自分を変えたかった?

天音:ホロライブに入ってからは「自分を変えたい」と思うようになりましたけど、そもそもの入ったきっかけは正直、もうちょっと軽めだったというか。デビュー前に病気で片耳が聞こえなくなってしまって、それまで聴いていた音楽が好きじゃなくなってしまって。すごくへこんだし「もうええわ」って感じだったんですけど、そんなときにオーディションが開かれることを知って、「ここで受かれば人生変わったりするのかな」と思って、少しわらにもすがる感じで応募したのがきっかけでした。

――そこから実際に歌との向き合い方も変わっていった?

天音:自分みたいに片耳が聞こえなくなった歌手の方もいるけど、やっぱり歌のレベルが落ちてしまう、みたいなことを聞いたりもしていて。そのときは自分も「だよね」と思ったし、歌はやめようかと思っていた時期が最初の1~2年目の頃はありました。でも、ゆっくりではあるけど、少しずつ覚悟が決まっていって、3年目ぐらいに「今の自分の状態でもっと良くするにはどうすればいいだろう」と考えて、いったん歌の癖を1年ぐらいかけてなくして、もう一度向き合い直す努力をしてきたんです。

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