Billboard JAPAN


Special

<わたしたちと音楽 Vol.34>Conton Candy 紬衣 バンドを通して、自分の感情に嘘をつかない言葉を届ける

インタビューバナー

 米ビルボードが、2007年から主催する【ビルボード・ウィメン・イン・ミュージック(WIM)】。音楽業界に多大に貢献し、その活動を通じて女性たちをエンパワーメントしたアーティストを毎年<ウーマン・オブ・ザ・イヤー>として表彰してきた。Billboard JAPANでは、2022年より、独自の観点から“音楽業界における女性”をフィーチャーした企画を発足し、その一環として女性たちにフォーカスしたインタビュー連載『わたしたちと音楽』を展開している。

 今回のゲストは、3人組ロックバンドConton CandyのVo. /Gt. 紬衣(つむぎ)。幼い頃から音楽が好きだったという彼女は、高校の軽音部で現在のメンバーと出会ってバンドを結成。2023年4月にデジタルリリースし、Billboard JAPANの“Heatseekers Songs”で2週連続1位になった「ファジーネーブル」は、青春を感じる爽やかなメロディと紬衣の透き通る歌声で同世代の若者から絶大な支持を得て、同楽曲のYouTubeのコメント欄には「登校時に聴くと元気が出る」「バイト先でファジーネーブルの注文が増えた」などのコメントが並んでいる。(Interview & Text:Rio Hirai[SOW SWEET PUBLISHING])

一声で場の空気を変える
バンドのボーカルに憧れた

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――「バンドをやりたい」と思うようになったのはいつ頃ですか。

紬衣:家族がロックフェスやライブなどの音楽イベントが好きだったので、私が小学生の頃から連れて行ってもらっていたんです。それで、ステージからの景色を想像してすごく魅力的に感じて、「自分もあの景色を見てみたい」と思うようになりました。チャットモンチーが出演していた【COUNTDOWN JAPAN】に行ったときに、本番前のリハーサルでボーカルの橋本絵莉子さんが一声発しただけで、フロアが「えっちゃんだ!」と盛り上がって。カッコいいなぁと思って、バンドというものに憧れるようになりましたね。


――現在のメンバーとは高校の軽音楽部で出会ったそうですが、どういう経緯でバンドを結成することになったのでしょうか。

紬衣:私が通っていた学校は軽音楽部の強豪校で、音楽をやりたいと思って進学する人も多かったんですよ。その軽音楽部には“育成バンド”という独自の仕組みがあって、まずは先輩が引いたクジによって引き合わされたメンバーでお試しバンドを組むんです。それで発表会をして、その内容で選抜バンドの組み合わせが決まる。そうやって選んでもらって結成したのが、今のConton Candyなんです。先生や先輩に指名されて「はじめまして、よろしくお願いします」という感じ。ちょっと特殊ですよね。


――それから今でも活動が続いているというのは、先生や先輩たちの先見の明があったのですね。そのときにはどんな女性像に憧れていましたか。

紬衣:私は幼稚園の頃からAKB48が好きで、もともとはアイドルになりたかったんです。ちょっと恥ずかしいんですけど(笑)。人前に出て、人を楽しませるのが好きな子供だったし、エンターテイナーに憧れていました。今は、社会の風潮にもブレない自分の軸を持った女性がカッコいいなと思います。そう思うようになったのには、バンドを始めて自分のライブのスタイルができたことも影響していると思うんですよね。「音源を聴いていると可愛らしいイメージだったけれど、ライブはパワフルなんだね」と言っていただくことが多くて。これまで自分が聴いてきた男性ボーカルのバンドにも影響されているのかもしれないけれど、どちらかというと、カッコよくてパワフルなステージングをする方向に寄っていっているのかな。


嘘をつかないことを大切に、
ダサい言葉もそのまま歌詞に

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――Conton Candyとして、楽曲やライブで表現したいのはどんなことなのでしょう。

紬衣:ほかのメンバーとも話しているのは、“ライブバンド”としてあり続けたいということですかね。バンドに限らず表に出る人はみんなそうだと思うんですけれど、観に来てくれる、応援してくれるお客さんがいないと成り立たない。だからこそ色々なところでライブして、たくさん吸収していきたいと思っています。ボーカルという個人的な立場で言えば、そのときに感じたことに嘘をつかないで歌っていきたいですね。等身大でいたい、といつも思っています。


――等身大でいたいと思うのは、何かそういう表現に勇気づけられたり、助けられた経験があるからでしょうか。

紬衣:そうですね。バンドを始める前はメロディ先行で音楽を聴いていたんですけど、今は無意識に歌詞に聞き入るようになりました。歌詞を書くとき、前は自分のことを書くのがすごく恥ずかしかったんですよ。もともと小学校の読書感想文も苦手で、自分がどう感じたかも全然書けなくて。さらにバンドでは、書いたものを歌うことで、人に自分の内面が見透かされるように思えてしまって抵抗があったんです。でも最近は、もっと自分について書いていこうと思うようになった。さまざまな気持ちをさらけ出せたら、それで誰か救えるかもしれないし、トライ&エラーで色々やってみたいなって。ダサく聞こえる言葉も、それが自分の気持ちなんだったらそのまま歌詞にしちゃえばいいんだって、最近は思うようになりました。


女性バンドが少ない理由のひとつは
ジェンダーバイアス?

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――Conton Candyは女性3人組のバンドで、結成6周年を迎えました。SCANDALは結成17周年で同一メンバーによる女性最長活動ロックバンドのギネス記録を樹立しましたが、女性メンバーでバンドを長く続けていくのは難しいと言われています。長く、健やかに活動を続けていくために気をつけていることはありますか。

紬衣:6年続けてこられた理由の一つには、私以外のメンバーが、私が書いた曲をすごく好きでいてくれているということがあると思います。今のところ、音楽的には同じ方向を向いていますね。「こういうバンドになっていきたいね」という会話はあまりしないのですが、インタビューなどを通じてメンバーの言葉を聴くと、「通じ合えてるな」と思ったりします。


――なるほど。じゃあ紬衣さんが自然体でいることが、バンドにとってすごくいい状態を保てているということですかね。

紬衣:そうですね。皆さんに、そういう状態を作ってもらっているという感じです。


――音楽活動を続けていくうえで、女性であることはどんな影響があると思いますか。

紬衣:プラスな面もマイナスな面もあるように感じています。「女性なのにすごいね」という言われ方をすることもあるし、「女性の3ピースだからこそできる音楽をやれてるよね」と言われたこともあります。ただバンド人口的には男性の方が割合が高いので、自分たち以外はみんなボーイズバンドという状況になることは多いですね。横のつながりも大切にしたいので、もう少し女性バンドがいたら良いのにな、と思ったりもして。でも自分たちしかいないからこそ、「女性バンドの良いところを見せてやろう」って気合いも入る側面もあるんです。


――高校時代は、周りにガールズバンドもいたのでしょうか。

紬衣:私たちのほかに、もう1バンドいました。ちなみに私、今、大学でジェンダーの授業を受けているんですよ。その時間帯でひとコマ埋めるために選んだだけだったんですけれど、けっこう面白くって。例えば“ジェンダーに関する表象”についての授業では、男性と女性のイメージが二項対立化していて、日本では特にそれが定着しているのだと教わりました。漫画やアニメの中でも固定観念が形成されて、例えば女の子はスカート、男の子はズボンとか……確かに自分の身の回りのことに置き換えてみても、女の子が目指すのはアイドル、男の子が目指すのはバンドマン、みたいなのってありますよね。そういうイメージが染み付いちゃってるから、女性バンドがまだまだ少ないのかな。


性別のイメージに囚われずに
自分のこだわりを貫いていきたい

――自分たちの考えに照らし合わせてみると、いかにジェンダーにまつわる固定観念があるか気付かされますよね。

紬衣:そうなんです。理想像の話に戻りますけれど、自分の芯がある女性が良いなと思うのも、そのジェンダーの固定観念を捨てていくことに繋がると思います。自分の高校でも、制服のスカートを履きたくなくてズボンを履いている女子生徒がいて、そういう自分のこだわりをまっすぐ表に出せる女性はカッコいいなと思ったんです。そうやって、どんどん多様性が受け入れられるようになると良いですよね。


――そう考えるような人が増えているような実感もあるのですが、2023年の年間Billboard JAPAN総合ソング・チャート“JAPAN Hot 100”では、100位にチャートインした楽曲の男女混合比は、男性64曲、女性19曲、混合16曲、非公開1曲です。この割合は毎年そう大きくは変わらないのですが、この結果についてはどう思いますか。

紬衣:その数を知ってびっくりしました。普段TikTokとかもよく見ているけれど、女性アーティストが少ない、男性に比べて聴かれていない、とは感じたことがなくて。私が通っている女子大では、ジェンダーレスを掲げていて、一つジェンダーレストイレがあるんです。それに、周りにもあまり極端な意見を持っている人がいることを感じたことはないですね。だからこれからチャートの結果も変わっていくのかなと思うのですが、私たちも「女性にアーティストになりたい」って思ってもらえるようにもっと頑張りたいです。


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