Interview：永堀アツオ

　SennaRinが1月20日に新曲「NOD」をデジタルリリースした。

　本作はフジテレビ金9ドラマ『院内警察』のオープニングテーマで、SennaRin自身もお気に入りの1作になったとのこと。今回は本作について深堀りするインタビューを実施。プロデューサー・澤野弘之から受けた「英語と日本語が混じった、暗号チックな歌詞でもいいんじゃない？」というアドバイスから生まれた、様々な言葉とリンクしていく歌詞、そしてドラマとの親和性など、本人が語ってくれた。 さらに、国内外を問わず大舞台でのライブを重ねた2023年を振り返り今感じていることや、プロデューサー・澤野弘之に対する想いまでたっぷり聞くことができた。

ライブを重ねて、リスナーからパワーをもらえることに気がついた

――今年の４月にメジャーデビュー2周年を向かえますが、SennaRinさんにとってはどんな２年間となりましたか。

SennaRin：最近、これまでにどういう活動をしてきたかを振り返る機会があったんです。一番最初にSennaRinとして人前で歌わせていただいたのが映画館での歌唱だったのですが、当時は顔出しをしていなかったので、人前で歌うのが本当に初めてで。とても緊張してたのですが、歌い始めたら楽しくて…すごく記憶に残ってます。そのことをとても鮮明に思い出せたので、そういう意味ではあっという間でした。でも、振り返ると本当にたくさんの経験をさせていただいた2年間でした。

――これまでを振り返ってみた中で一番印象深い出来事を挙げるとすると？

SennaRin：一番最初が映画館での歌唱で、その次が福岡でのライブ。そのあとに国際フォーラムでのゲストボーカル出演があって、その年の夏には初めての海外ライブでサウジアラビアに行かせていただいて、新国立競技場でも歌わせていただき……全部が特大イベントで一番が選べないですね…。

――デビュー1年目の話とは思えないくらいの大舞台を経験してますよね。今、お話にでたライブについて聞かせてください。2022年2月末にZepp Fukuokaで行われたライブイベント【HIGH FIVE 2022】では、プロデューサーの澤野弘之さんと出演して。

SennaRin：そうですね。私にとっては初めてのライブだったので、皆さんとの空気感を楽しむことも初めてでしたし、すごく楽しかった思い出があります。

――その2週間後には国際フォーラムで開催された【澤野弘之 LIVE [nZk]007】に出演。

SennaRin：デビューEP『Dignified』から「BEEP」「証」「melt」の3曲を歌わせていただいたのですが、ステージから見た景色が本当に綺麗でした。とても広い会場でスポットライトが当たる、あの景色は忘れられないですね。私は楽曲の世界観に入り込んで歌うことが好きで、いつも楽曲に救われていると感じているのですが、国際フォーラムでは歌い終わった後に舞台裏でちょっと泣きそうになったのを覚えてます。また、澤野さんのファンの方々に、澤野さんプロデュースでデビューします！　というふうにご挨拶できた機会でもあったので、すごく記憶に残っていますね。

――そして同年4月にメジャーデビューして、6月にサウジアラビアで開催されたイベント【ジェッダ・シーズン2022】でワンマンライブを行っています。

SennaRin：そのときまではライブで多くても3～4曲しか歌ったことがなかったんですが、サウジアラビアでは、「SennaRin from SawanoHiroyuki[nZk]」名義で出演させていただいたので、自分の楽曲に加えて、澤野さんが今まで手がけてこられた楽曲でセットリストを構成して、1時間以上のライブをしたんです。こんなに一気に歌った経験がなかったし、どういう風に聴いてくださるのかも全然想像ができなくて。少し不安がある中でライブだったのですが、集まってくださったお客さんは、やっぱりみんな音楽が好きで、一緒に歌ってくださって。すごくパワーを感じましたし、1時間以上のライブでも最後までエネルギッシュに歌うことができました。

――翌月の7月には、新国立競技場で開催された【東京2020オリンピック・パラリンピック1周年記念セレモニー】に出演してます。

SennaRin：急遽出演させていただくことになりました。夏の野外で、あんなにも大きな空間で歌う経験をしたことなかったので、なんだか不思議な気分でした。今、思い返してみても、なんだか半分夢みたいな感じです。

――その後、ワンマンライブを2回開催し、去年の11月にはニューヨークにも行ってますよね。

SennaRin：2022年と2023年は、海外でたくさんライブをさせていただき、ベトナム、上海、ブラジル、ドイツといろんな地域に行かせていただいたんですけど、海外で澤野さんと一緒にライブをするのはニューヨークが初めてだったので、一緒にステージに立てることがとても嬉しかったです。そして、ニューヨークの方々もすごくアニメが好きで、TVアニメ『BLEACH 千年血戦篇』のエンディングテーマ「最果て」も知ってくださっていましたし、澤野さんの楽曲も皆さん一緒に歌ってくださって、すごく楽しかったです。

――たくさんのステージを経験することで歌やライブに対する向き合い方は変わりましたか？

SennaRin：そうですね。最初の頃は、人前で歌うことに対しての緊張が強かったのですが、海外でのライブをたくさん経験して、音楽を楽しんで聴いてくださる方から逆にパワーをいただけることを実感しました。ワンマンライブでは、私の歌を聴きに、私を応援してくださる方がいる空間で、温かさを感じて。みなさんと一緒にライブを楽しむ意識が増したような気がしますね。

プロデューサー・澤野弘之の存在とは

――澤野さんはSennaさんにとってどんな存在ですか。

SennaRin：ひと言では言い表せないのですね…。すごく尊敬していますし、澤野さんみたいな方になりたいなと思います。

――新曲「NOD（ノド）」もこれまでに引き続き澤野さんの作曲、編曲となってますが、まず、ドラマ『院内警察』のオープニングテーマに起用されたことに関してはどう感じましたか。

SennaRin：初のドラマ・タイアップなのですが、ずっとドラマや映画の主題歌、挿入歌を担当したかったので、夢が叶って嬉しかったです。

――楽曲を聴いて、どんな歌詞を書こうと考えていましたか？

SennaRin：最初に澤野さんへ「すごくカッコよくて、洋楽チックなメロディーですけど、どのような感じでサビを書けばいいですか？」と相談したんです。そしたら「英語と日本語が混じった、ちょっと暗号チックな歌詞でもいいんじゃない？」というふうに言ってくださって、そのアドバイスを踏まえて作詞しました。

――タイトルは？

SennaRin：“罪からの逃亡”の究極の先を調べて、旧約聖書で弟・アベルを殺した、兄・カインが神によって追放された＜ノドの地＞からとりました。＜ノドの地＞について調べている中で、 “のどぼとけ”を英語でいうと“アダムズ・アップル”だと言うことを知りました。

――アダムが禁断の実（リンゴ）を食べた時に喉に詰まったから、と言われてますね。しかも、その後にアダムも楽園から追放されている。

SennaRin：そうなんですよ。カインとアベル、ノド、喉、喉仏、仏、アダム……。根拠はないそうなのですが、日本語のノド（喉）が偶然、旧約聖書と繋がってるというのも面白いなと思って。あとは、曲を聴いて、ゼエゼエ言いながら走っている映像が頭に浮かんだので、浮かんだ映像をそのまま歌詞に乗せていきました。

――英語と日本語と記号が混じり合っていて、独特な響きを持っているな、と感じてます。細かいところですが、歌詞の＜scene 2 1＞というのは、ドラマからですか？

SennaRin：実は、最初に＜3 2 1＞と＜切り取ったシーン＞という言葉が思い浮かんだので、その母音を意識しました。澤野さんからの『英語と日本語と記号交じり』というアイデアを意識しながら、パズルを合わせていくみたいな感じで楽しみながら書いていて。歌詞にカインも入ってます。

――＜CAIN 不適切な罪 rude＞と歌ってますね。＜不適切な罪＞も英語のような発音で。

SennaRin：そうですね。英語のように聞こえる日本語の言葉を選びつつ、意味も合うものを考えて書いてました。＜雷鳴を切ってfar＞というサビは、脳内に後悔が残ったまま、雷鳴を切って遠くまで走っているところを書いてるんですけど、ドラマの原作のサブタイトルが……。

――＜アスクレピオスの蛇＞とついてました。ギリシャ神話で医者の神ですよね。

SennaRin：そうです。死者の蘇生を行ったため、ゼウスに雷で殺されて星となった神様らしくて。原作のサブタイトルを知ったのは作詞を終えた後だったので、本当に偶然なんですが、そういった部分でも原作に寄り添った楽曲になったのではないかと思います。

大好きな世界観のMVになった

――掘れば掘るほど、さまざまなリンクが見つかりそうですね。歌入れはどんなアプローチで臨みましたか。

SennaRin：澤野さんが「サビは勢いよく強く！」とおっしゃるので、「ここはこうやって歌おう」と細かく決めていくというよりは、勢いでいく感じの方が多いです。この曲に関しては、Aメロはおさえて、少し息遣いを感じるような歌い方にしていて。サビは明確な差が出るように、「とにかく強く！」を意識して歌いました。

――最新のトレンドであるジャジークラブのビートも入ってるんですよね。1曲が2分44秒しかないっていうのも今っぽくて。

SennaRin：私は洋楽みたいだなって思いながら聴いていたのですが、2分44秒ですとあっという間に終わってしまうじゃないですか。あっという間に終わってしまうから何回も聴いちゃうんです。ミックスした音源が届いてからずっと繰り返して聴いていました。

――ドラマで流れてるのを見てご自身ではどう感じました？

SennaRin：序盤のいいところで「NOD」のイントロが入ってきて、いつも「カッコいい！」って思いながら見てます。オープニング映像は毎週少しずつ変化しているので、楽曲と合わせて皆さんに楽しんでいただきたいです。

――ミュージックビデオも公開されましたね。

SennaRin：監督の谷さんが、曲・歌詞の世界観から、独自の設定を作ってくださいました。

――撮影はいかがでしたか？

SennaRin：今回のミュージックビデオでは髪を切ってみたくて、「髪を切らせていただけますか？」とお願いしたんです。あれはウィッグなんですけど、一発勝負だったのでちょっと細かめに慎重にやりました（笑）。いろんな映像が組み込まれていて、その1つ1つがすごく素敵なのでぜひ細かく何度も見ていただきたいです。

――ミステリーホラーのようで、確かに何度も見返したくなる映像になってますね。そして、2月17日には3回目のワンマンが控えています。

SennaRin：１回目と２回目は、1007＝Sennaの日ということで、毎年10月7日にワンマンライブをしていたんですけど、今年からはもっとたくさんライブをしたいなという気持ちがあったので、2月にワンマンライブをすることになり、すごく嬉しいですね。

――どんなライブになりそうですか？

SennaRin：最初のワンマンライブはすごく緊張していて…。2回目のワンマンライブでは、私を応援してくださる方がたくさん来てくださるんだということを再確認して、本当に楽しいと感じることができたんです。だから、3回目のワンマンライブは絶対に楽しくなるんだろうなって思っています。みなさんがいろんな日々を経て、いろんな経験をして、たどり着いた地である“Land of NOD”。みなさんと一緒に楽しい空間を過ごせたらいいなと思ってます。

――最後に今後の目標を聞かせてください。

SennaRin：今年はたくさんの新曲お届けしたいと思っています。昨年からずっと、澤野さんといろんな試みをしながら、新曲をどんどん制作しているので、それをしっかりと届ける一年にしたいですし、ライブもたくさんやっていきたいです。新しいことにもたくさん挑戦していきたいなって思ってます。

――新しい挑戦というのは？

SennaRin：海外の映画とか、壮大なファンタジー、現実にはない質感の映像や音楽が好きなんです。そこに特化したアーティストになりたいなと思っています。