Special

<インタビュー>GLIM SPANKY、時代の変化を捉えつつ存在感を誇示した傑作『The Goldmine』

インタビューバナー

Interview & Text:岡本貴之

 GLIM SPANKYが、通算7枚目のアルバム『The Goldmine』を2023年11月15日にリリースする。豪快なギターリフから始まるロック、エレクトロとバンドサウンドが融合したダンスチューン、牧歌的且つサイケデリックなアコースティックナンバー、洒落たポップス、インスト曲や、代表曲「怒りをくれよ」のボカロPによるリミックス等、粒ぞろいの曲たちが並んだ今作。新境地を感じさせながらも、幻想的な部分と攻撃的な部分が同居した1枚は、まさにGLIM SPANKYというバンドの存在そのものをクッキリと浮かび上がらせている。“全てが主役級”な楽曲たちを揃えたという自信に満ちたコメントも頷ける傑作について、松尾レミ(Vo./Gt.)、⻲本寛貴(Gt.)に話を訊いた。音楽シーン最前線のミュージシャンであり、音楽愛溢れるリスナーでもある2人が語るアルバム制作過程を知れば、今作をより楽しんで聴けるはずだ。

「誰しも心の中にGoldmineがある」

――“全てが主役級の楽曲たち”というリリース時のコメントにある通り、素晴らしいアルバムが出来ましたね。制作にあたってどんなお話をしていたのでしょうか。

⻲本寛貴:“全てが主役級の楽曲たち”というアルバムにしようっていう話は、最初の段階でしてたよね?

松尾レミ:そうだね。例えばインストがあったりとか、次にアコースティックな大きな曲があったりロックな曲があったりとか、テイストは様々なんですけど、テイストに沿った形で自分たちができる最大限の主役級の曲っていうのをテーマにしました。

⻲本:僕らがデビューしたときはサブスクがなかったので、人に聴いてもらうときってこういうインタビューで喋ったりとか、ラジオやテレビにゲスト出演して演奏したりすることで曲を知ってもらっていたんですけど、それはだいたい1曲だけだから、まずは間口が広い曲を作って、その1曲をきっかけにアルバムを買っていただいた人には新しい発見や自分たちの音楽性をより深く表現したものを作ろうという考えが強かったんです。ただ、サブスクってどの曲も普通に平等に聴けるから、どの曲にもヒットのチャンスがあるんですよ。どの曲も多くの人に聴かれるかもしれないっていう可能性を消さないような曲たちを作りたいという話はすごくしたことを覚えています。


――そうして出来上がったアルバムのタイトルは『The Goldmine』。これはどのタイミングで決まったんですか。

松尾:最初にワンコーラスぐらいの曲が半分ほどできてきた中で、先にアルバムタイトルを決めようってことになったんです。いろんな言葉を出した中で、「Gold」ってつく言葉がいいねっていう話になりまして。私もいろいろ調べていく中で、「Goldmine」という言葉を見つけて調べたら「金脈」だったりとか「宝庫」という意味があったので、そういう言葉をタイトルにするのも面白いし、人の日常の中でもちゃんと意味を持たせられたら生きる希望になるんじゃないかということで『The Goldmine』を選びました。それと、ちょうどその頃にニール・ヤングの空気感が自分の中でちょっとブームで、「Heart of Gold」が入っているアルバム『Harvest』のジャケのレタリングっぽいあの文字あるじゃないですか?ああいう感じのロゴって今までやったことがなくて、今回は映画の中みたいな感じでっていうアイディアもあったので、ニール・ヤングとかクロスビー、スティルス、ナッシュ&ヤング、ザ・バンドだったり、旅を彷彿とさせるフォントにしようって、『The Goldmine』という言葉に引っ張られて、いろんなことが決まって行ったんです。





7th Album 『The Goldmine』 全曲試聴映像


――ということは、1曲目はアルバムタイトルが決まった後に作ったわけですか。

⻲本:そうです。アルバムを象徴する曲が必要だから、作っていた曲の中で「この曲は「The Goldmine」っていうタイトルにしよう」って作りました。

松尾:アルバムタイトルが言いたいことを1曲に表現しようと思って、“とどめの一撃”みたいな感じで最後にレコーディングしました。みんな心の中にきっとそれぞれのGoldmineがあって、そこに価値を見いだして、発掘作業し続けてる人もいれば、何もないと思って手をつけてない人や気付かない人だっているわけですよ。でも、「誰しも心の中にGoldmineがある」っていうのは絶対だなって思っていて。それを自分でどうするかはそれぞれだけど、自分のGoldmineの中から宝を見つけて生きていくっていう作業を私たちはみんな繰り返してるんじゃないかなって。それを言葉でちょっと詩的に表した曲が「The Goldmine」です。


――<僕らやりたいことばかりで 枯れないゴールドマイン>という歌詞がありますが、7枚目のアルバムにして全部主役級の曲を並べた1枚にしようっていうことを掲げて、実際にこれだけクオリティの高い曲たちを作れるっていうのは、常に溜めているアイディアがあるのか、それとも自分の中の金脈を掘りあてたような感覚があったのでしょうか。

⻲本:自分はいろんな曲聴くのが好きなので、「あれもいいな、これもいいな」ってなっちゃうし、そうするとやりたいアイディアが常にいろいろ出てくるんですよね。今回アルバムを作ったけど、できなかったこともいっぱいあるし、やりたいことは常にたくさんありますね。

松尾:私は、音楽理論に詳しいとか楽器がめちゃめちゃ弾けるタイプじゃないので、どういうギターのコードを曲に使おうかなと思ったときに、変則チューニングをすることによって、自分が今まで作らなかった進行や、思わぬメロディーが出てきたりするんです。そういうものを求めて、「真昼の幽霊(Interlude)」「Summer Letter」の2曲は今までやったことのないチューニング方法で作りました。6弦からB・E・B・Eっていうチューニングで、ヤバいんです(笑)。

⻲本:EからBまで下げてるから、もう弦がダルンダルンですよ。

松尾:ダルンダルンな上に、「Summer Letter」はもう半音下げてるんで、B♭・E♭・B♭・E♭なんです。私はニック・ドレイクが大好きで、彼と同じようなチューニングでやってみたら、面白かったっていう感じです。アシッド・フォーク感がありながら、ジョニ・ミッチェルみたいに開けていて、変則チューニングにグッドメロディーが乗ってポップになるようなバランスを目指して作りました。


NEXT PAGE
  1. 「歳を取るごとに、長野の空気や環境がすごく美しいってわかるようになりました」
  2. Next >

GLIM SPANKY「The Goldmine」

The Goldmine

2023/11/15 RELEASE
TYCT-60219 ¥ 3,080(税込)

詳細・購入はこちら

Disc01
  1. 01.The Goldmine
  2. 02.Glitter Illusion
  3. 03.光の車輪
  4. 04.ラストシーン
  5. 05.真昼の幽霊 (Interlude)
  6. 06.Summer Letter
  7. 07.Odd Dancer
  8. 08.愛の元へ
  9. 09.不幸アレ
  10. 10.Innocent Eyes
  11. 11.怒りをくれよ (jon-YAKITORY Remix) [Bonus track]

関連商品