Billboard JAPAN


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<わたしたちと音楽 Vol.26>のん 幅広い活動の中で身につけた、自分を貫くという強さ

インタビューバナー

 米ビルボードが、2007年から主催する【ビルボード・ウィメン・イン・ミュージック(WIM)】。音楽業界に多大に貢献し、その活動を通じて女性たちをエンパワーメントしたアーティストを毎年<ウーマン・オブ・ザ・イヤー>として表彰してきた。Billboard JAPANでは、2022年より、独自の観点から“音楽業界における女性”をフィーチャーした企画を発足し、その一環として女性たちにフォーカスしたインタビュー連載『わたしたちと音楽』を展開している。

 今回ゲストに登場したのは、11月3日(金・祝)に日比谷野外音楽堂で行われるライブイベント【Billboard JAPAN Women In Music vol.1】への出演が決定している俳優・アーティスト、のん。演技や音楽活動と、ジャンルを超えて表現する場を広げてきた彼女が、どのフィールドでものびのびと自分を表現し、パワフルに進化し続ける理由とは。(Interview & Text:Rio Hirai[SOW SWEET PUBLISHING]/ Photo: Yu Inohara)

牙を向く女性の強さを自分だけの表現でパフォーマンスや作品に乗せる

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――11月3日(金・祝)に日比谷野外音楽堂で行われる【Billboard JAPAN Women In Music vol.1】に出演されますが、オファーを受けたときの感想をお聞かせいただけますか。

のん:「Women In Music」という枠で私に声をかけていただいたのがまず嬉しかったですし、日比谷野外音楽堂(以下、野音)のステージでバンド演奏ができるのもすごくワクワクしました。実は一度、仲井戸“CHABO”麗市さんと一緒に計画していた野音でのライブが台風で中止になってしまったことがあったんです。そのときすごく悲しかったので、今回の【Billboard JAPAN Women In Music vol.1】で、改めてちゃんと自分のバンドで野音のステージに立つことができるのをすごく嬉しく思います。


――今回はステージでどのようなテーマでパフォーマンスをしたいですか。

のん:まずは私自身が楽しみたいと思っています。今年、楽しく力強いメッセージを曲に詰め込んだ『PURSUE』というアルバムをリリースしたので、その中からたくさん曲を演奏したいですね。


――パフォーマンスが今からとても楽しみです。今回のイベントは「女性を応援する」というテーマがあるのですが、そのテーマを聞いてどう思われましたか。

のん:私のアーティストとして初めての個展『'のん'ひとり展 -女の子は牙をむく-』でもテーマにしていたくらい、私自身が女性の持っているパワーをすごく大事にしているので、共感しましたし、素直に素敵だなと思いました。今回のイベントでも、女性の持っている力強いパワーや牙を向いているところが伝わるパフォーマンスができたらいいなと思います。


周りに何を言われようと、流されない自分の意思を持ち続けたい

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――力強いパワーがある人がのんさんの思うカッコいい女性なのですね。のんさんが小さい頃に憧れていた理想の女性像などは覚えていらっしゃいますか。

のん:小さい頃にイメージしていたのは、ヒールをカツカツ鳴らしてビシッとしている人。決してよろけず、キラキラしている女性がカッコいいと思っていました。今でもそのイメージの女性がカッコいいと思うのは変わらないですが、自分自身がその人になりたいかというと、そうではなくなったように思います。


――今ご自身が思い描いている理想像はどのようなものなのでしょうか。

のん:今は、それこそ「自分がやりたいことを“pursue(追及)”してやり通す人」が自分が目指している人だと思います。自分の意思を貫くということを大事にしたいですね。その上で面白おかしくやっていけたらもっと理想的。シリアスであったり真剣なことでも、楽しいものに変換して表現したいと思っています。


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――その理想の女性像に近い人は、身近な人で誰が思い浮かびますか。

のん:矢野顕子さんです。矢野さんは、私が高校生のときから真似をして歌ったり、研究をするほど好きだったアーティスト。最初は矢野さんの歌声や楽曲のファンだったんですが、そのあとから矢野さんの生き方を含めて全てが素敵だなと思うようになりました。


――矢野さんがロールモデルだったのですね。具体的にはどんなところに惹かれているのでしょうか。

のん:絶対に折れないところです。自分がこうだと思ったことは、誰に何を言われても、折れずに突き通す。そのせいで角が立つとか立たないとかで物事を判断しないところがすごくカッコいいなと思います。


――自分の意見や気持ちを貫きたくてもなかなか難しいときもありますよね。のんさんはそういった難しいことに直面した際にどのように乗り越えていらっしゃいますか。

のん:そういうときは、矢野さんの言葉を大事にしています。矢野さんのようになりたくて、あるときご本人に「自分がやりたいことがあるのに『やめたほうがいいよ』という空気感があった場合、どうすれば矢野さんのように自由な表現や自由な活動ができるのですか」と質問をしたことがあったんです。矢野さんは「自分がやりたくてやろうとしていることは、周りが何も言わなくなるまでやり通す。そうすると、みんなが諦めてくれる」と答えてくださいました。それ以来私はその言葉をモットーにしています。だからきっと、私がやりたいことを突き通している裏では、きっと諦めて疲弊している人もたくさんいると思います(笑)。


自分が表現したいことに、性別の壁は必要ない

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――のんさんは音楽活動や俳優など、ジャンルを横断して表現活動をしていらっしゃいます。その中で女性であることの影響を感じた経験はありますか。

のん:「女性だからこんな影響があるな」というのは正直あまり考えたことがありません。ただ、映画やテレビドラマを観ている中で、「こういう役を私もやりたい!」という役のポジションに男性がいることが多いんですよね。それが物凄く悔しいなと思っていました。そういったときは大体「私だったらどうするかな」とか、「こんなふうに解釈できるけどな」という想像をたくさんするので、それがまた自分の新しい表現に繋がっている気がします。最近出演した『さかなのこ』という映画では、女性の私が男性のさかなクン役を演じました。それは沖田修一監督の「男か女かはどっちでもいい」というスローガンがあったからできたこと。「こういう役、男の人ばっかりなんだよな」と思っていたところにちょうど巡ってきた役だったので、自分の中ではすごく大切な作品になりましたね。


――男性の役を演じるときは、女性の役を演じるときとはまた違う難しさがあるのでしょうか。

のん:男女ではどうしても体格に差があるので、胸を潰したり腰が張っているのが分からないように肉付けさせたりすることはありましたが、そのほかで私が意識的に行ったのはひたすらさかなクンの研究をしたくらい。動きや声のトーン、テンションの使い方などを研究して、自然にさかなクンを演じられるようにするのが私がやるべきことでしたが、それは今回に限らず女の子の役を演じるときでも同じです。演じる役の性別が違うからといって、特にいつもと変わったことはなかったと思います。


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演じる役は、自分の人生とは一線を引いている

――素の自分では思いつかないような言動や行動を役として演じるのも俳優のお仕事だと思うのですが、演じることでの自分の内面への影響はありますか。

のん:影響を受けるということはないですね。演じる役の生き方で共感した部分があれば、それが自分の背中を押してくれたり、「これでいいじゃん」と納得したりすることもあるかもしれないですが、基本的に自分と似ている性格や境遇の役のお仕事はあまりありません。そのあたり、演じる役と自分の人生とは一線を引いているのかもしれません。


――もし今、キャリア1年目の自分にアドバイスを送るとしたらどんな声をかけますか。

のん:とても難しいですが、強いて言うなら「もうちょっと猫背を治そう」などでしょうか(笑)。今は直りましたが、当時は猫背の自覚があまりなかったので、「もう少しピシッとしようか」と言いたいです。


――背筋が伸びるようになったのですね!(笑)最後に、のんさんご自身に力を与えてくれる女性アーティストの1曲を教えてください。

のん:矢野顕子さんの『ひとつだけ』です。ファンタジックなイメージの歌詞が混じってくるのですが、それまではすごく日常を感じる、心が温かくなるような言葉が入ってくる。そういった日常的なものがキラキラ輝き出す、ロマンチックな曲なんです。そこからの、胸がキュンとする相手を思うサビが心臓に突き刺さってきて、すごくカッコいい。矢野さんの声って温かくて穏やかな気持ちにもなるんですけど、気持ちが掻き立てられて、興奮してくるんです。そんな要素が全部詰まった曲だと思います。私は夜に気持ちや集中力が上がって創作意欲が湧くほうなので、夜中にこの曲をよく聴きますね。そうすると眠れなくなるくらい神経が研ぎ澄まされて、頭が冴えます。


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