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<公演開催記念インタビュー>山弦(小倉博和 佐橋佳幸)、アナログ・ベストを引っ提げてビルボードライブへ登場&所縁ある3名のアーティストからコメントが到着

インタビューバナー

 小倉博和と佐橋佳幸。日本を代表する二人のスーパー・ギタリストがタッグを組んだ夢のインストゥルメンタル・デュオ“山弦”が、この10月、東京、横浜、大阪を巡るビルボードライブ・ツアーに乗り出す。去年、なんと11年ぶりに実現した【山弦三十祭】に続く最新コンサート・ツアーだ。去年同様、今年も演奏メンバーは小倉・佐橋の二人だけ。信頼するエンジニア、飯尾芳史の全面サポートの下、極上のアコースティック・ワールドを届けてくれるはず。ツアー・タイトルは「アナオリベスト・発売記念ツアーですって!」。“アナオリベスト”って何だよ…という謎も含め、山弦の二人にたっぷり語っていただいた。(Interview: 萩原健太 / Photo: Yuma Totsuka)

ギター2本の可能性を追求するということに新鮮に取り組みたい

佐橋佳幸:山弦は自分たちが書いた曲だけで構成したオリジナル・アルバムを3作、カヴァー曲だけで構成した“MUNCH”シリーズのアルバムを3作、それぞれ出していて。そのうち、オリジナル3作の方からセレクトしたベスト盤が『山弦 ORIGINAL BEST』です。今年の4月26日にアナログLP2枚組で出たんですけど。その時期、ぼくらのスケジュールがなかなか合わせられなかったんで。だいぶ遅れて、ようやく10月にライヴをやれることになりました。

小倉博和:山弦の曲ってバラードっぽいのも踊れるのもあるから。曲調ごとにLP2枚それぞれへ振り分けるのもいいんじゃない?って。それで、たとえば朝、身体を目覚めさせたいときとか、掃除しながらとか、ちょっと気分をアッパーに上げたいとき、コーヒー飲むように聴いてもらいたい“FLOOR SIDE”と、夜寝るときとか、ちょっとクール・ダウンしたいときに聴く“COUCH SIDE”と。こっちはお風呂に入りながら聴くとかもいいんじゃないかな。

佐橋:お風呂の中でアナログLPを聴くのはむずかしいけどね(笑)。

――選曲は大変でした?

佐橋:ご存知の通り、アナログ・レコードは片面に収められるタイムが決められていて。あんまり長く入れちゃうと音が悪くなっちゃう。なので、まずはプレイリストを家で作って、あれこれ並べて、タイムを測りながら二人で相談して…。

小倉:家の近所にアナログ盤だけ回してるカフェがあるんですよ。盤ができあがったとき、まずそこに持ってって、昼間、明るい光の中で、いろいろ他のお客さんいるとこで聴いたりしまして。非常に良かったな。曲順だけでなく、音もすごく良かった。

佐橋:これ、収録曲の年代が長期にわたっているでしょ。レコーディングで使っていたメディアも、最初のころはもちろんテープで、最近の方はプロ・ツールスになってたりするんで。音のレンジの調整を何度かやり直してもらって。とっても良くなったかな。


――こうなると“MUNCH”シリーズの方のベストも欲しくなりますね。

小倉:あ、すでにレコード会社の方がそっちも作ろうと言ってくれてます。

――そんなベスト盤を引っ提げてのビルボードライブ・ツアー。ちなみに“アナオリベスト”というのは、つまりアナログLPによるオリジナル曲だけのベストってこと?

佐橋:もちろん、小倉さんが考えました(笑)。

小倉:去年のツアーと同じで、われわれ二人とエンジニアの飯尾(芳史)さんの3人だけで回るわけだけれど。それよりも前【小倉博和 60th Anniversary LIVE ~No Guitar , No Life~】というのをビルボードライブ東京でやったことから、いろんなことが動き始めたんですよ。

佐橋:確かにそのときまで、山弦としての表立った活動はしばらく途切れていて。

小倉:ちょこちょこはやってたんだけどね。友達の店の10周年のお祝いでやるとか(笑)。あとは佐橋さんの30周年のコンサートに出たりとか。でも、確かに新しい作品を作るっていうところにはいってなかった。でも、ぼくの還暦ライヴのとき、前の方の席に山弦を見に来た人がほんとに多くいらっしゃって。ぼくと佐橋さんの演奏聞いて、ちょっと感動でうるっときてるような…。一応ぼくの還暦のお祝いライヴだったんだけど(笑)。


佐橋:あれが2020年1月末でしょ。出演者のみんなと楽屋で“コロナって知ってる? なんかやばいらしいよ”みたいな話になったのを覚えてる。そしたらほんとにコロナ禍がやってきて。コンサートはできなくなってしまったけど、あの還暦ライヴで再会したのをきっかけに、すべてリモートで新しいアルバム『TOKYO MUNCH』を作ったんですよね。そういう流れがあっての去年のツアー。去年のアルバムがカヴァーによる“MUNCH”シリーズだったので、その収録曲中心のセットリストだったんですけど。今回はこのベストのツアーですからね。全曲オリジナルで。

小倉:真面目なぼくたちとしては、とにかくこのアルバムからお届けしよう、と(笑)。


佐橋:でも、実は久しぶりにやる曲が多いので、ちょっと昨日も練習してたんですけど、これがなかなかむずかしい(笑)。いろんなとこが凝ってますね、各曲。1番終わって、でも2番で同じことが起こらない。自分で作っておきながら、あれ、次はなんだったっけ? みたいになっちゃう。

小倉:第一、オリジナル・ヴァージョンはバンド編成で表現しているものが多いんだよね。それを今回初めて二人だけで演奏するわけで。

――そういう意味ではベスト盤に収められた代表曲を再現するライヴじゃないってことですね。新しいアプローチで代表曲を新鮮に演奏するライヴ。

佐橋:そうです。再現しようと思ってやってないし。

小倉:アドリブの部分、多いですからね。毎回どうなるかわからない。

佐橋:一回たりと同じライヴはない。演奏も、MCも(笑)。当然二人用にいつの間にかアレンジされているし、オリジナル・ヴァージョン通りではないよね。

小倉:これを、たとえば昔の山弦バンドのメンバーたちを迎えて、昔の環境に戻してやるというのではなく…。まあ、バンドのうち最高のベーシストだった有賀啓雄が今年の2月に亡くなったので、もともとそれは無理なんだけど。またギター2本の可能性を追求するっていうことに新鮮に取り組みたいですからね。

――自分たちの曲を素材にした新たな“MUNCH”、みたいな?

小倉:そうか。オリジナル・マンチだ!


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ライヴのこだわり、注目ポイントについて

――新たなアレンジとか新たな奏法とか、いろいろ楽しみです。

小倉:コロナ禍で二人なかなか顔を合わせることができなかった間、お互いいろいろ新たな奏法を編み出したしね。ぼくなんかもボディ・ヒットというか、ギターのボディを叩きながら弾くみたいな。そういうのも踏まえて昔の曲を新たにアレンジすることになるから。楽しいですよ。

佐橋:ボディを叩きながら弾くってやつは、びっくりしたなぁ。『TOKYO MUNCH』ってアルバムは全部リモートでデータをやりとりしながら、それぞれ自分の家でレコーディングしたわけですよ。だけど、小倉さんから届いた音を聴くと、これ、何か打楽器を叩いてるみたいな音がしてる。えっ、どうやってるんだろうと思って。で、去年のライヴのとき、その新しい叩きワザを初めて目の当たりにしたわけですよ。コロナでステイホームしている間、ヒマになっちゃったから編み出したワザだって(笑)。アルバム1枚レコーディングしたのに、生で合奏するのは去年のライヴのときが初めてだったから。面白かったね、あの感覚。

小倉:世の中がコロナ禍に突入したとき、ヒマになってまず思ったのは、“練習できる”って…。

――ギター大好きじゃないですか(笑)。

小倉:コロナはたくさんの災いをもたらしたわけだけれど。今だからこそ言えるのは、あれがあって生まれたこともけっこう多いんだな、と。あそこでああいうパンデミックが起こらなかったら『TOKYO MUNCH』のようなレコーディングもできなかったわけだし。ぼくの新ワザも編み出せなかったわけだし。

――山弦は基本的にアコースティック・ギター2本のユニットですから、ライヴでは生音を届けているのだと思われがちですが、そのアコースティックな感触を生み出すために、実はテクノロジー的にもずいぶんと試行錯誤をしているんですよね。

佐橋:レコーディングのときもそうですけど、ぼくらから出てくる音をエンジニアの飯尾さんがいろいろ演出してくれて。そういうことをライヴでもやってみようってことで3人で回ったのが昨年のツアー。今回もその形です。


小倉:飯尾さんは音も素晴らしいけど、人柄もね(笑)。どこ行っても安心するんですよ。いろいろ新しいやり方を考えてくれるし。たとえば、普通、モニター・スピーカーっていうのは演奏者の方を向いて置かれているんですけど。山弦の場合そうじゃなくて、自分たちの後ろに置いて、客席の方に向かって飯尾さんがエフェクトした音が出るようになってるんですよ。

佐橋:いろいろ試した結果、ぼくらの前にモニターがなくて。後ろに、お客さんが聴いているのと同じ音がしてるスピーカーがある。それを聴きながら演奏するってスタイル。

小倉:ディレイがかかったり、リヴァーヴが深くなったり。飯尾さんの作る世界観を聴きながらぼくらの演奏も変わってくる、というね。

――音響的にも凝っているわけですね。

小倉:たとえばボディ・ヒットにしても。こうやってギターのボディ叩いても、普通のPAしてたら音、聞こえませんからね。それをどうやって、ここで鳴っているような音をPAスピーカーから出すか、そのバランスのこととか、どこにマイクを貼ればいちばん音がいいのかとか。そういうのも含めて、飯尾さんだけでなく、そういう機器を作ってくれるテックの人とのやりとりとかもあるんですよね。まあ、そういうのってうまく行って当たり前なので誰もあまり意識しないと思いますが。いろいろやってるんです、ひそかに(笑)。

――楽器を奏でる二人の姿ばかり見てないで、そういうところにも注目してほしい、と。

小倉:前から3列目で双眼鏡使ってぼくらのこと見てる人とかもいますからね。何見てるんだ、あれ(笑)。

――指ですよ。神ワザ的な運指を見てるんですって。

佐橋:あ、でも小倉さんの場合は左手よりも右手を見た方がいいです、今回は。右手のワザがさらにすごいことになってます。

小倉:手品みたいなもんですからね(笑)。

佐橋:というわけで、山弦ならではの楽しいお喋りと愉快な演奏。

小倉:基本的にずっと愉快だってことで(笑)。ぜひぜひいらしてください。


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公演に向けて、所縁ある3名のアーティストからコメントが到着!

大好きな山弦とは、コンサートでも度々ご一緒させて頂いておりますが
性格も違う二人の(いえ、違うから良いと言えるのかも)
息のあった絶妙のサウンドを是非!!
二人にとってギターは、身体の一部!
また、その演奏を間近で見られるという、贅沢。
観て聴いて、合間のお喋りもお楽しみ下さい。


大貫妙子

大貫妙子 オフィシャルサイト

山弦のアルバムの素晴らしさはもちろんだが、ライブにはアルバムとは別格の山弦の面白さがある。
何と言っても、スーパープレイヤー佐橋とオグちゃん、二人のギターワークにびっくりさせられる。
当たり前というかもしれないけど、アルバムで聴いていたあの複雑だけどやたらと心地よいフレーズが、目の前で何の苦もなく繰り広げられるんだよ。しかも余裕の笑顔で、さらにその音はアルバムより遥かに楽しそうに聴こえる。
僕は山弦のアルバムを聴いていると、まるで美術館の絵画を観ているような気持ちになるんだけど、それがライブではもっと立体的に、言ってみれば実際の風景のように眼の前に広がり、時に陽が差したり風が吹いたりする。本当にびっくりするよ。おそらく、これはエンジニアの飯尾さんの手腕も大きいよね。二人の音をありのまま聴かせるだけでなく、飯尾さんも佐橋とオグちゃんとセッションしながら、その日ならではの音像を聴かせてくれるんだ。「えー、なにこの音」「これギター2本だけの音じゃないよ」って驚きの連続。これは生で聴いた人しかわからない感動だね。
あなたも是非、そんな経験してみてください。


スターダスト☆レビュー 根本 要

スターダスト☆レビュー オフィシャルサイト

玄人のみならず、皆様に広く知られていることと思いますので、あえてここで多くを語る必要はないでしょう。
小倉博和、佐橋佳幸という二人のギタリストは、80年代の名曲の中には必ずと言っていい程その名前がクレジットされている、本当に素晴らしいギタリストです。それらの楽曲を聴いていた僕にとっては、お二人が自分のレコーディングに参加してくれるということ程、光栄なことはありませんでした。
「これからこのサウンドでやっていこう」と決めることになる3rdアルバムで、お二人が山弦としてスタジオのブースに並び、「君は僕の宝物」のインストバージョンを弾いてくださったことは、今でも忘れられない素晴らしい思い出です。
この度、山弦がツアーに出るということで、いてもたってもいられません。すご〜く楽しみです♡


槇原敬之


Photo: 濱田 晋

槇原敬之 オフィシャルサイト




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