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<インタビュー>アニメ『呪術廻戦』テーマソングに込めた想い、ロックとボカロに魅了された学生時代――キタニタツヤが語る“青春時代”の葛藤と学び【MONTHLY FEATURE】
Interview:Takuto Ueda
Billboard JAPANが注目するアーティスト・作品をマンスリーでピックアップするシリーズ“MONTHLY FEATURE”。今月は、TVアニメ『呪術廻戦』第2期「懐玉・玉折」オープニング・テーマに最新曲「青のすみか」を提供したシンガーソングライター、キタニタツヤのインタビューをお届けする。
2014年からボカロP“こんにちは谷田さん”として音楽活動を開始し、バンド活動や楽曲提供なども並行しながら、2018年9月にはキタニタツヤ名義で1stアルバム『I DO(NOT)LOVE YOU.』を発表。以降、アニメ『平穏世代の韋駄天達』『BLEACH』やドラマ『ゴシップ #彼女が知りたい本当の〇〇』とのタイアップ、そして様々なアーティストとのコラボレーションなども経て、個性豊かな楽曲を世に送り出し、着実にリスナー層を拡大してきた。
かねてより『呪術廻戦』のファンだったというキタニが「青のすみか」に込めた想い、楽曲制作の過程、そして他者とのコミュニケーションに思い悩んだ自身の“青春時代”について、振り返ってもらった。
ファンも待望だった『呪術廻戦』タイアップ
――早速ですが「青のすみか」の反響はいかがですか?
キタニ:よく月並みな言葉で「実感がないです」と言う人も多いと思うんですけど、自分からは切り離されてるなという印象は実際あります。たしかに数字を見たら頭では理解できるけど、それで何かが大きく変わったということもなくて。曲に関しても「これは良い曲が作れたぞ」みたいな手応えって毎回あるので、今回はいろいろな要素が重なったんだと思います。なので、自分自身の心持ちや生活の有り様にそこまで大きな変化はないです。でも、プレッシャーは増えたかもしれない。次も良い曲を出さないとなっていう。
――どこか俯瞰している感じもある?
キタニ:でも、夏フェスに出たときの反応は変わったし、人の数が増えたというのは目に見えて分かりましたね。あとは、街で声をかけられる回数が如実に増えました。広がっているのは曲だけど、キタニタツヤという存在の認知につながっているのは純粋にうれしいです。
――タイアップの連絡をもらったときはどんな心境でしたか?
キタニ:作品はもともと読んでいたし、なおかつ自分のファンの中にも「『呪術廻戦』の曲をやってほしい」みたいなことを言ってくれる人もけっこう多くて。どちらもダークでシリアスな作風で、温度感的にはジャンルが近い。中でも今回の「懐玉・玉折」を挙げるファンは特に多かったんです。僕も一番好きなセクションだったのでうれしかったし、「俺に任せとけば良い曲書くぜ」みたいな自信もちょっとありました(笑)。
TVアニメ『呪術廻戦』第2期「懐玉・玉折」PV第1弾
――そうだったんですね。
キタニ:共感できる部分が多かったので、良い曲をストレスなく作れるだろうな、という根拠のない自信はありました。
――具体的には「懐玉・玉折」のどんな部分に魅力を感じていたのでしょう?
キタニ:自分の何気ない言動が人を傷つけてしまったり、バタフライ・エフェクト的に後から効いてきて、どうしようもない破局につながってしまった、みたいな展開が物語の中でもあるんですけど、その感覚がすごく共感できるんですよね。特に青春時代の心が不安定な時期って、大人からしたら「そんなしょうもないこと」と思うようなことでも一大事件だったりする。だからこそ、ちょっとしたことが大きな転換点や分水嶺になったりしますよね。その感覚は僕も常々持っていて。それが寓話的に分かりやすく提示されていたのが「懐玉・玉折」だと思うし、今回の曲でもそういう部分に焦点を当てました。
――印象的なシーンやキャラクターのセリフなどがあれば教えてください。
キタニ:夏油 傑が変化した瞬間。自分のちょっとした冗談のような思いつきに「それは“アリ”だ」と言われて、そこから考えが偏り始めていくっていう。僕はあそこが大きな転換点だったと思うので印象に残っています。
――後に呪詛師として人類の敵となり、呪術師たちの前に立ちはだかる夏油。いわば闇落ちのきっかけのひとつになった一幕ですよね。
キタニ:悩みごとは誰かに相談するべきだって当たり前のこと、大人だったら分かってるじゃないですか。「それは“アリ”だ」と言われたとしても、もう少し周りにいる人との対話を試して、それが本当に正しいのかを精査していく、そういう過程をきっと踏むと思うんですよ。でも、それをしない。コミュニケーション不全のまま思考がどんどん偏っていくのを止められない。それって青春時代特有の変化だと思うんです。
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