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<コラム>NHK連続テレビ小説『ブギウギ』主題歌を担当、今知っておくべき“さかいゆう”のキャリアを総括
Text: 栗本 斉
10月からスタートするNHK連続テレビ小説『ブギウギ』。毎回大いに話題になる国民的な朝ドラ枠だが、先日ついに主題歌の詳細が発表された。昭和歌謡の大スターである笠置シヅ子をモデルにしたドラマだけに、彼女のヒット曲を数多く手掛けた服部良一の孫にあたる作編曲家の服部隆之を音楽担当に起用。主題歌「ハッピー☆ブギ」の作詞作曲も彼が一手に引き受け、ボーカルには主演女優でもある趣里、EGO-WRAPPIN’の中納良恵、そして、さかいゆうがフィーチャーされることとなった。3人の歌い手がどのようにドラマを彩ってくれるのかを知るには、もう少々待たなければいけないが、いずれにしても朝ドラの主題歌という大役をこなすだけの力量があるメンツなのは間違いない。
なかでも、さかいゆうは特に注目しておきたい人物だ。ファンキーでソウルフルな歌声を特徴とするシンガー・ソングライターであり、セッションで鍛えた鍵盤捌きにも定評がある。ジャンルを超えたコラボレーションも多く、まさにミュージシャンズ・ミュージシャンといってもいいだろう。
高知県出身のさかいゆうは、幼い頃から歌謡曲などを歌うことが好きな少年だった。高校を卒業した後に上京し、音楽専門学校に入学。その後、単身で米国ロサンゼルスに行き、独学でピアノを始めた。その時にゴスペルやソウルに目覚め、自身でも作曲活動を行うようになったそうだ。ストリート・ライブなどで実力をつけ、帰国後はセッション・ミュージシャンとして活動を始める。そして、2006年4月5日、アルバム『ZAMANNA』でインディーズ・デビューを果たした。
さかいゆうが本格的に注目を集めたのは、2009年に発表したメジャー・デビュー・シングル『ストーリー』からだろう。この際、全国のFM局43局でパワープレイを獲得するなど華々しくプロモーションが行われ、一気に彼の名は全国区となった。続くセカンド・シングル『まなざし☆デイドリーム」(2009年)の表題曲は、ドラマ『のだめカンタービレ フィナーレ』の主題歌に起用。これらの楽曲を収めた1stアルバム『Yes!!』(2010年)以降、『How's it going?』(2012年)、『Coming Up Roses』(2014年)、『4YU』(2016年)とコンスタントにオリジナル・アルバムを発表し、実力派アーティストとして評価を高めていったのである。いわゆる代表曲としては、アニメの主題歌「君と僕の挽歌」(2012年)、自動車のCMソングに抜擢された「薔薇とローズ」(2013年)、蔦谷好位置にプロデュースを委ねた「ジャスミン」(2015年)などが挙げられるだろう。
こういったシンガー・ソングライターとしてのアイデンティティを構築していくと同時に、さかいゆうらしさといってもいい活動も並行して行っている。それが、様々なコラボレーションだ。インディーズ時代からライブハウスでのフリー・セッションをルーティンにしていただけあって、圧倒的なボーカル・パワーとプレイヤーのスキルを活かしたゲスト参加や共演企画の数は膨大だ。2015年には『さかいゆうといっしょ』というコラボレーション・アルバムを発表しており、それまで成果を一枚にまとめ上げている。KREVA、RHYMESTER、冨田ラボ、Ovall、秦 基博、Little Glee Monsterといったラインナップを挙げるだけでも、さかいゆうという稀有なミュージシャンの柔軟性が理解できるはずだ。
こういったコラボレーションの相手は日本国内にとどまらず、海外にも目を向けているのが彼の特徴でもある。5作目のオリジナル・アルバムとなった『Yu Are Something』(2019年)では、レイ・パーカー・ジュニア、ジョン・スコフィールド、スティーヴ・スワロウといったトップ・ミュージシャンをレコーディング・メンバーに起用し、続く『Touch The World』(2020年)においてはロサンゼルス、ニューヨーク、ロンドン、サンパウロで録音するというフットワークの軽さを見せつけた。
様々なコラボレーションの魅力をさらに発展させたのが、2022年に制作した『CITY POP LOVERS』である。タイトル通り、山下達郎、松原みき、竹内まりや、ブレッド&バターといったシティポップの名曲をカバーした企画作品だが、origami PRODUCTIONSのミュージシャンを全面的に起用。Ovall、Kan Sano、Michael Kaneko、Hiro-a-key、さらさといった名うてのミュージシャンやシンガーたちと共演した密度の濃い名曲の解釈は、数あるシティポップ・カバーの決定打となったと同時に、コラボレーション同様にカバーも多いさかいゆうワークスの代表作にもなったのである。
これまでのさかいゆうの経歴をなぞっていけば、この度決定したNHK連続テレビ小説『ブギウギ』の主題歌「ハッピー☆ブギ」への参加は、まさに彼の真骨頂とも取れるだろう。レコーディング前には服部良一の自伝『ぼくの音楽人生—エピソードでつづる和製ジャズ・ソング史』を読み込んだというだけあって、シンガーとしての矜持が表れているに違いない。逆に「ハッピー☆ブギ」を聴いてさかいゆうのことが気になったなら、ぜひ彼の歌世界を深く掘り下げてみてほしい。呼ばれるべくして呼ばれたミュージシャンシップは、彼のソロ作品で存分に堪能できることだろう。
本日連続テレビ小説『#ブギウギ』主題歌「ハッピー☆ブギ」の歌唱が発表されました!NYにいる #さかいゆう からのメッセージをお届け✈️ pic.twitter.com/9gonkLYH8h
— さかいゆう公式 (@Sakai_Official) August 21, 2023
番組情報
2023年度後期 連続テレビ小説 第109作『ブギウギ』
2023年10月2日(月)より放送
『ブギウギ』公式ホームページ
公演情報
【Augusta Camp 2023 ~SUKIMASWITCH 20th Anniversary~ powered by 360 Reality Audio】
2023年9月23日(土)横浜赤レンガパーク
出演:スキマスイッチ、杏子、山崎まさよし、岡本定義(COIL)、あらきゆうこ、元ちとせ、長澤知之、秦 基博、さかいゆう、浜端ヨウヘイ、竹原ピストル、 松室政哉
【Augusta Camp 2023】特設サイト
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