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<インタビュー>マイケル・ボルトン、キャリア初の全曲オリジナル共作アルバム『スパーク・オブ・ライト』完成
かすれ気味なのに、甘く広がる歌声。アメリカの国民的シンガー、マイケル・ボルトンは、その歌声を武器に半世紀近くにわたって数々のヒット・ソングを放ってきた。パーシー・スレッジの「男が女を愛する時(When a Man Loves a Woman)」のカヴァーはとくに有名で、オリジナルと同じくらい長く広く聴かれている。70年代半ばにハードロックを歌ってキャリアをスタートさせたが、代表曲は80〜90年代の「How Am I Supposed Live Without You」、「How Can We Be Lovers」、「Soul Provider」などの甘いバラードだ。コンスタントにアルバムをリリースしているマイケルが、3年ぶりの新作となる『Spark of Light』をリリース。本人がコ・ライトで参加したオリジナル・アルバムとしては実に14年ぶり、全曲コ・ライトしたのは今回が初めてだ。
新作はマイケル・ジャクソン「Human Nature」やホイットニー・ヒューストン「One Moment in Time」を作詞した巨匠ジョン・ベティスが書いた壮大なバラード「Out of The Ashes」から、キラキラしたタイトル曲『Spark of Light』、ポップ・ロック「Just the Beginning」まで、ファンが彼に望む王道の「マイケル・ボルトン・サウンド」が詰まっている。新作について、本人に話を聞いた。(Interview : 池城美菜子)
キャリア初となる、全曲コ・ライトで参加の新作について
――まず、すばらしい新作を届けてくれて、ありがとうございます。歌声と美しいメロディの宝庫で、ファンがマイケル・ボルトンに求めるものが詰まっていますね。
マイケル・ボルトン:そう言ってくれてうれしいよ、ありがとう。
――『A Symphony of Hits』からは3年ぶり、あなたが全曲をコ・ライトしたアルバムとしては、キャリア初となります。制作にはどれくらいかかったのでしょう?
マイケル:いつから始めて、いつまでに仕上げる、というふうにはいつも決めないんだ。とくに今回はコロナ禍があって、中断しては再開して、をくり返したし。完全に止めないといけない期間もあったし、オンラインでモニター越しにやり取りをしながら曲を書く作業もおこなった。また正常な形で音楽を作れるかどうか、おそろしかったね。
――前作はレゲエに挑戦したり、レディ・ガガ、Ne-Yoといったアーティストと組んだりとさまざまなサウンドを採り入れていました。『Spark of Light』はあなたらしいストレートなミッドバラードやポップ・ロックが多いですが、これは最初に意図したことでしょうか?
マイケル:いや、意図はしていなかったよ。私がいい、と感じたものに従いながら作ったんだ。曲が集まってくるなかで、自分自身の気分が上がるような曲を集めていった。自身に対して一番厳しい批評をするのは私だから。これは収録するに値する水準に達しているか、この人の仕事ぶりはどうだろう、この曲の仕上がりはどうだろうって見極めながら仕上げた。少し、プレッシャーがあったな。
――「Home」と「Safe」では、相手を見守る歌詞が目立ちます。聴き手によってさまざまな取り方があるかと思いますが、家族に宛てたと捉えてもいいでしょうか?
マイケル:はっきりとは言い切れないかな。どの曲も、家族への想いは必ず入っているから。パンデミックの間に作った曲であるのは間違いない。
――「君の安全を守るよ」という歌詞は、パンデミックの期間、それ以降の確実に変わった世の中で、私たち全員がだれかに言ってもらいたかった言葉なので、嬉しかったです。
マイケル:そう受け取ってくれると、私も嬉しいね。ありがとう。
――「Eye on You」は結婚式やアニバーサリーにぴったりの曲です。そのような使い方を意図して作詞されたのでしょうか?
マイケル:いや、そういうつもりで作っていないよ。自分にとって、たった一人の大切な人を見つけた時を想定して書いている。まぁ、たしかにウェディング向きではあるから、そうやって使ってくれても良いと思う。それまではあまり本気の恋愛をしてこなかった男性が、やっとその気になった状況の歌だよ。
――「Beautiful World」ではジャスティン・ジェッソとの美しいデュエットが聴けます。どのようにしてこの共演が実現したのでしょう?
マイケル:私がずいぶん前から望んでいたんだ。彼は私の長年の大ファンなんだよ。以前、レストランでディナーをしていたら、たまたま居合わせたジャスティンがテーブルまで来て「大ファンです」って自己紹介をしてくれた。それから20年が経って、ようやく実現したんだ。
▲マイケル・ボルトン「Beautiful World」
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――「Out of The Ashes」はジョン・バティスの作詞です。大物同士の共演で話題になりそうですが、オリジナルの曲は今回が初めて、ということで合っていますか?
マイケル:そうだね。
――どのような経緯で実現したか教えてください。
マイケル:私は彼が書く歌詞が好きでね。ナッシュビルにソングライターたちを集めて話し合ったときに、彼の名前が出てマネージャーが取り持ってくれた。私が数日間、ナッシュビルにいると伝えたら、一緒にスタジオに入ることになった。人柄もすばらしい人だったよ。
――ご本人を前にこれを言うのも妙ですが、「ああ、マイケル・ボルトンだ!」とファンが感激するような壮大なバラードです。一方、ステージで歌うと大変そうな曲だな、とも思いました。あまりそういうことは気にしませんか?
マイケル:まず、(インタビューは)私に直接、感想を伝える機会だから好きに言ってくれていいんだよ。たしかに、とても張り詰めた曲だよね。ステージで歌うのが大変そうだな、とかは全く考えないんだ。制作している間、このプロジェクトにぴったりの曲だという手応えがあると、その後の人生と共にあるような曲になるからね。もう少しでファンがどの曲を気に入ってくれたかがわかるし、リリースが楽しみだよ。
――私はカントリー調の「Running Out of Ways」と、ヴォーカルのレイヤーが美しい「Just The Beginning」が特に好きです。少しオルタナティブ・ロックが入っているところが新鮮ですが、収録することに決めた理由は?
マイケル:「Running Out of Ways」のトラックを聴いたときは、「かなり高度なヴォーカル・パフォーマンスが要求されるな」とは思ったよ。と同時に、とても説得力のある曲だとも思った。コ・ライターのエイジア・ホワイトテイカーが解釈して歌ったバージョンが良かったから、それを参考に歌ってみたんだ。
――アルバムのタイトルについて伺います。『Spark of Light』はタイトル・トラックもありますが、これをアルバム全体のタイトルにした理由はなんでしょう?
マイケル:毎回、その言葉を耳にすると私の気分が明るくなるような説得力があるから。あの曲の歌詞を聴いても、同じ作用がある。優しい感じの歌詞で、暗い時代を照らすような光があると思ったんだ。周りの人に聴かせたときの反応もとてもポジティブだったしね。
▲マイケル・ボルトン「Spark of Light」
――このアルバムで最も伝えたかったことは?
マイケル:光だね。きっといいことが起きる、という期待。それから、希望だね。
――あなたは一度、聴いたら忘れない天性の美声の持ち主です。長年、保つために実践していることはありますか? ルーサー・ヴァドロスに取材したときは、コンサートの前は丸24時間、話さないと言っていました。
マイケル:その話は本当だろうね。私もなるべく喋らないようにするよ。声の休息時間と呼んでいて、大声を出さないようにするし、喉を痛めるようなこともしない。そうすると、ステージに出た瞬間から修復し始めて、声帯が通常の状態に戻っていく。ルーサーもすばらしい声の持ち主だったよね。それほど長い時間、話さなかったとは知らなかったけれど、似たような行動を取っている人は多いと思う。
日本のファンへのメッセージ
――2010年代から積極的にリアリティTVに出演なさっていますよね? 違う面を見せることでどんなプラスがありましたか?
マイケル:きっかけは、(人気コメディ番組)『サタデー・ナイト・ライヴ』に出演しているコメディアンのトリオ、ザ・ロンリー・アイランドに拝み倒されて、「ジャック・スパロウ」に参加したことなんだ。あの曲のヴィデオがYouTubeですごく人気になってね。やってみたら楽しかったし、気が楽になって他のプロジェクトやテレビ番組も出演するようになった。いまでは、次のコメディと音楽を組み合わせた企画を楽しみにしているくらいだ。
――しばらく来日されていませんが、日本での思い出があれば教えてください。
マイケル:すぐにこれ、と思い出せる出来事はないけれど、日本、特に東京はとてもリラックスできる場所だから大好きさ。日本のファンは集中してステージを観てくれるしね。大騒ぎをしないし、礼儀正しいよね。
――「日本のファンは大人しいから、ステージで不安になった」とアーティストに言われることもあります。それは気になさらないのですね。
マイケル:よく観察して、敬意を表してくれていると思っているよ。日本のファンに新作を聴いてもらえるのが待ちきれないし、またステージに立つのも楽しみにしている。
かっこいいイメージが強いマイケル・ボルトンだが、ザ・ロンリー・アイランドの「ジャック・スパロウ」では曲名通り、『パイレーツ・オブ・カリビアン』の主人公に扮したり、Netflixのリアリティ・プログラム『マイケル・ボルトンのビッグでセクシーなバレンタインスペシャル』に出演したりと、ユーモラスな面も見せている。そこでふざけてから、本業では衰え知らずの歌声を聴かせる。『Spark of Light』での希望に満ちた歌唱を、ぜひ聴いてほしい。
▲マイケル・ボルトンonTV
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