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<インタビュー>デビュー20周年の湘南乃風が突き進む2023年夏とこれから
Interview & Text: 森朋之
Photos: 筒浦奨太
デビュー20周年を迎えた湘南乃風から、ベストアルバム『湘南乃風 ~20th Anniversary BEST~』が届けられた。本作は、“夏・海”をテーマにした【湘南~134号線~編】(「純恋歌」「睡蓮花」「Real Riders」など)、“働く人への応援歌”をコンパイルした【新橋~ガード下~編】(「カラス」「黄金魂」「夢物語」など)、“夜の街”を描いた楽曲による【新宿~歌舞伎町~編】(「パズル」「Joker」「一番歌」など)で構成。2003年のメジャーデビュー以来、レゲエを軸にした音楽性、リスナーを鼓舞する歌によって強い支持を得てきた彼らの20年の軌跡を体感できる作品に仕上がっている。
8月12日には、10年ぶりの横浜スタジアム公演【風祭り at 横浜スタジアム~困ったことがあったらな、風に向かって俺らの名前を呼べ!あんちゃん達がどっからでも飛んできてやるから~】が開催。この夏、湘南乃風は新たなピークに向かって突き進むことになりそうだ。
左から:SHOCK EYE、HAN-KUN、RED RICE
――湘南乃風は2003年にアルバム『湘南乃風~REAL RIDERS~』でメジャーデビュー。今年20周年を迎えました。
SHOCK EYE:自分たちも驚いてるというか、20周年を迎えられるなんて考えてなかったですね。今振り返って思うのは、自分たちよりちょっと先輩のグループやバンド、たとえばDragon Ashや10-FEETが15周年、20周年を迎えるのを見て、「自分たちもあと○年で、そういう時期なんだな」とイメージできていたのが大きいのかなと。
RED RICE:そうかもね。ただ、ここ数年はコロナの影響もあって、いろいろと考えることが多かったんですよ。ツアーが中止になったり、お客さんを半分しか入れられなかったりすることもあったし。その前は楽観的で、「絶対、この仲間とずっとやっていく」と思ってたんですよ。
SHOCK EYE:ホントに? すげぇな。
RED RICE:だからこそ、コロナで活動が止まったことがショックだったんだよね。年齢を重ねるなかで、少しずつ“終わり”を意識するようになったというか。でも、メンバーと話し合いを重ねるなかで、今はみんなで前を向けるようになって、やっと20周年の重みを実感できるようになりました。
――レゲエを軸にした音楽性、ライブのやり方を含め、湘南乃風のスタイルはそれまでのメジャーシーンには存在しませんでした。新しい道を切り開いてきた、という実感もあるのでは?
HAN-KUN:シーンを背負っていくという責任感もあったと思うんですけど、いざ飛び出してみると、自分たちが井の中の蛙だったことに気づかされたんですよね。メジャーの世界には、すごいテクニックや、めちゃくちゃ音楽の知識がある人がいっぱいいて、ミュージシャンとしてのクオリティーという面でも、全然追いつけてなかったんですよ。
SHOCK EYE:“ケンカ自慢のヤツが本物の格闘技のリングに上がっちゃった”みたいな状態だったよね。プロとしての技術はデビューしてから身に付けていきました。
HAN-KUN:マスタリングのことも全然知らなかったし、CDになるまでの過程もデビュー後に勉強したんですよ。メンバーそれぞれ努力して、背伸びもした。たとえばメンバーの誰かが新しい技術や情報を得るとするじゃないですか。その場では「俺も知ってるよ」みたいな顔しちゃうんですよ(笑)。で、一人になってから調べて、勉強する。そうやってグループの中で競い合ってるところもあったんですよね。「メンバーに負けたくない」という気持ちにどんどん拍車がかかっていったし、勉強させてもらえる環境があったのはありがたいですね。
RED RICE:僕はみんなの努力を横目で見ながら、“お任せ”してただけ。
SHOCK EYE:そうやって見守ってくれる人がいるのも大事なんですよ。他の3人はそれができない人たちだから。
RED RICE:その言葉を胸に頑張ってきました。
HAN-KUN:人生相談(笑)?
RED RICE:ハハハ(笑)。最初の頃はHAN-KUNやSHOCKの歌い方を参考にすることもあったんだけど、だんだんと自分が持っているものを出せるようになってきて。適材適所というか、少しずつみんなのポジションが定まってきたんだと思います。
SHOCK EYE:関係性が出来上がってないままデビューしたところもあったからね。
――メンバー同士で刺激を与え合いながら進化してきた、と。
SHOCK EYE:一筋縄ではいかないメンバーが揃ってるし、飽きないチームだったという点がここまで僕たちが続いた理由の一つかもしれないですね。
HAN-KUN:今日は用事で来られなかったんですけど、もう一人のメンバー(若旦那)が本当に僕らを飽きさせないキャラクターなんですよ。しばらく会わないと、まったく違う人になってたり(笑)。
SHOCK EYE:そうだね(笑)。お互いの理解度も少しずつ深まっていったんですよ。もともと仲は良かったんだけど、心の中とか価値観、好きなものや嫌いなものがちょっとずつわかっていった。最初の頃は勢いというか、「テッペン取るぞ!」だけで走り出したので。
――“テッペン取る”というのは、具体的にどんな目標だったんですか?
SHOCK EYE:○○ランキング1位とか、何万人の前でライブやるとか。あとは「俺たちをバカにしたヤツをギャフンと言わせたい」とか(笑)。最初の5年でかなり実現できましたね。
RED RICE:でも、届き切れてないところもけっこうあって。だから今も続いているのかもしれないですね。
SHOCK EYE:みんな負けず嫌いだからね。
リリース情報
『湘南乃風 〜20th Anniversary BEST〜』
2023/7/5 RELEASE
アルバム詳細・購入はこちら
公演情報
湘南乃風 二十周年記念公演【風祭り at 横浜スタジアム~困ったことがあったらな、風に向かって俺らの名前を呼べ!あんちゃん達がどっからでも飛んできてやるから~】
2023年8月12日(土)開場15:30/開演17:30
神奈川・横浜スタジアム
公演詳細はこちら
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若旦那は新橋へのこだわりがすごかった
――では、ベストアルバム『湘南乃風 ~20th Anniversary BEST~』について聞かせてください。【湘南~134号線~編】【新橋~ガード下~編】【新宿~歌舞伎町~編】による3枚組ですが、“湘南” “新橋” “新宿”で分けるというコンセプトはどんな経緯で決まったんですか?
HAN-KUN:若旦那の提案ですね。ベストアルバムは以前も一度出しているので、今回リリースするにあたって、「どんな形にするのがいいんだろうね?」って話をして。そのなかで若旦那が、湘南と新橋、新宿に分けて、ジャケットも3か所で撮るというアイデアを出してきたんです。スタッフの方々も「いいですね」ってピンと来て、プレイリストみたいな感じで曲を選んでいきました。しっかり筋が通ってるし、自分たちにとっても面白いベストになりましたね。
RED RICE:若旦那は新橋へのこだわりがすごかったよね。
HAN-KUN:新橋で飲みたかったんじゃない(笑)? 俺はあまりなじみがない場所だったんだけど、ジャケットの撮影で行ったら、すごくいいところで。今度飲みに行きたいです(笑)。
――「カラス」「黄金魂」「夢物語」などを収録した【新橋~ガード下~編】は、“働く人への応援歌”がテーマ。リスナーを鼓舞し、勇気づける楽曲が中心ですね。
HAN-KUN:俺らの1枚目や2枚目のシングルをリアルタイムで聴いてくれてた人たちが今、新橋のガード下にいる世代だと思うんですよね。その世代に向けて、もう一回ベストを届けたいというか。当時を思い出して、「よっしゃ、もう一回頑張ろう」っていう気持ちになってくれたらなと……たぶん、そういう思いが若旦那にはあるんだと思います。
SHOCK EYE:哀愁や人情を感じさせる地名ですよね。人それぞれ、いろんなストーリーがあるでしょうし。
――湘南乃風がデビューした頃に10代半ばだったとしたら、今は30代半ばですからね。
HAN-KUN:会社で中堅になった人たちに、若手社員をカラオケに連れて行って、俺らの曲を歌ってもらう(笑)。
RED RICE:「カラス」とか良さそうだね。
――“夏・海”をテーマにした【湘南~134号線~編】には「純恋歌」「睡蓮花」「Real Riders」などを収録。“湘南”に対してはどんな思いがありますか?
SHOCK EYE:このベストにも入ってる「湘南乃『海 その愛』」で加山雄三さんとコラボレーションさせていただいたときに、「湘南の名前を背負って頑張ってくれ」というお言葉をかけてもらってから、さらに意識するようになりましたね。
RED RICE:地元の人間にとっても憧れの名前なんですよね、湘南は。“湘南ナンバー”ができたときもすごく嬉しかったし、たくさんの人に愛してもらってる名前なので、それをグループ名に掲げて活動できているのも嬉しいですね。
――そもそも湘南乃風という名前は、どういう経緯で生まれたんですか?
HAN-KUN:この4人以外に、GOKIという方がいて、初めて作ったミックステープの1曲目がGOKIが作った「湘南の風」という曲だったんです。GOKIが「この曲名をミックステープのタイトルにしたい」と若旦那に相談したみたいで。
SHOCK EYE:GOKIは横浜出身なんですけどね。
RED RICE:若旦那は世田谷だしね。地元の人間だったら、湘南乃風という名前は付けられなかったかも。
――なるほど。そして【新宿~歌舞伎町~編】には、「バブル」「一番歌」などゲームソフト『龍が如く』関連の楽曲も収録。
SHOCK EYE:(『龍が如く』シリーズの総合監督)名越稔洋さんとの出会いが大きいですね。明確なストーリーと景色を持っている方で、そのなかに湘南乃風も関わらせてもらって。「バブル」と「一番歌」はライブでも大事な曲になっているし、僕らがもともと持っていた世界観やスタイルとも合っていたんだと思います。
HAN-KUN:うん。俺らの楽曲に“絵”を加えてくれるというか。
――いろんなジャンルのクリエイターとタッグを組むことで、湘南乃風の世界観も広がっていく。
SHOCK EYE:品川ヒロシさんの映画(『ドロップ』)の主題歌(「親友(とも)よ」)もそうですね。映像やゲームを作っている方が湘南乃風の音楽に共感してくださって、一緒に作品を作れたのもすごくよかったと思います。
HAN-KUN:「Summers」もそうだよね。さまぁ~ずさんの番組(『7つの海を楽しもう!世界さまぁ〜リゾート』)のために作らせてもらった。
RED RICE:「Summers」って、そのままですけどね(笑)。個人的にも好きな曲です。
リリース情報
『湘南乃風 〜20th Anniversary BEST〜』
2023/7/5 RELEASE
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湘南乃風 二十周年記念公演【風祭り at 横浜スタジアム~困ったことがあったらな、風に向かって俺らの名前を呼べ!あんちゃん達がどっからでも飛んできてやるから~】
2023年8月12日(土)開場15:30/開演17:30
神奈川・横浜スタジアム
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「20年間で一番よかった」と思えるライブを
――8月12日には、10年ぶりの横浜スタジアム公演【風祭り at 横浜スタジアム】が開催されます。湘南乃風の20周年を象徴するライブになりそうですね。
SHOCK EYE:そうですね。よくも悪くも、“そこで起きたことがすべて”にならざるを得ない。自分としてはメンバー4人とThe BK Sound(セレクター)でステージに立てれば、それだけで感動すると思うんですよ。コロナを経て、ツアーをやって、20周年で横浜スタジアムのステージに上がれるなんて最高じゃないですか。
HAN-KUN:10年前と同じステージに立てることもそうだし、またチャレンジさせてもらえるのはすごくありがたいですね。それは間違いなく、サポートしてくれるリスナーの方、スタッフのみなさんのおかげだし。もちろん“ありがとう”という気持ちを持ってステージに上がるんだけど、自分たちのライブのクオリティーをさらに高めて、8月12日は音楽人として、「20年間で一番よかった」と思えるライブを目指したいです。
RED RICE:(横浜スタジアムのライブに向けて)設定した体重があるんですよ。
HAN-KUN:それ、10周年のときも言ってたよね。
RED RICE:二桁(100kg未満)が目標です(笑)。それはともかく、15周年の後、いろんなことを経験して、不安を抱えていた時期もあったんです。今は4人揃って20周年に進めているし、横浜スタジアムはこれまで積み上げたものを全部出せる場所だと思ってます。大きいライブの後は笑えてないことがけっこうあったから、今回は納得できるライブにしたいですね。
リリース情報
『湘南乃風 〜20th Anniversary BEST〜』
2023/7/5 RELEASE
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湘南乃風 二十周年記念公演【風祭り at 横浜スタジアム~困ったことがあったらな、風に向かって俺らの名前を呼べ!あんちゃん達がどっからでも飛んできてやるから~】
2023年8月12日(土)開場15:30/開演17:30
神奈川・横浜スタジアム
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