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<インタビュー>山本彩、ナチュラルに音楽と向き合い完成したアルバム『&』を語る
山本彩がニューアルバム『&』をリリースした。前作『α』からの約3年半は、コロナ禍や療養のための活動休止といった出来事により、活動がままならない瞬間もあった。しかし、それらを乗り越えた今の彼女は、いい意味で肩の力が抜け、よりしなやかに、よりナチュラルに音楽と向き合っている。その結晶とも言えるのが本作だ。「ドラマチックに乾杯」(ドラマ「その女、ジルバ」主題歌)、「ゼロ ユニバース」(ドラマ『あのコの夢を見たんです。』エンディングテーマ)、「against」(日本生命「ニッセイ青春エールプロジェクト」テーマソング)、「yonder」(山形日産グループ創業60周年記念アニメCMソング)といった既発曲に、待望の音源化となる「ラメント」(ゲームアプリ『メメントモリ』ロザリーキャラクター専用曲)、さらに「劣等感」「Bring it on」という2編の新曲を加えた全12曲。そこに込めた思いを本人へのインタビューで紐解いていきたい。(Interview & Text:もりひでゆき / Photo:興梠真穂 )
「自分にとって音楽がいかに大きな存在であるか」
――2019年12月の3rdアルバム『α』リリース以降のことをまず振り返っていただけたらなと思います。世の中的にはコロナのパンデミックがあり、山本さんも20年に予定されていたツアー【山本彩 LIVE TOUR 2020 ~α~】が中止になるなどの影響を受けました。
山本彩:コロナ禍は本当に試行錯誤の日々でした。制作に関しても、ライブ作りにしても、すべてにおいて「どう動くべきなのか」を考えるのがすごく難しかったというか。感情的にはけっこう絶望を味わったところもありましたね。オンラインライブも経験しましたけど、生のリアクションがない無観客だとなかなか手ごたえを感じることもできなくて、気持ちが晴れない感じがずっと続いていたというか。2021年に有観客でのライブを再開させたときは、お客さんにまた会えた喜びはありました。ただ、まだいろんな制限があったし、私もお客さんもお互いに気を使っている感じがあって、やっぱりどこかやりづらさは残っていたように思います。
――21年9月には【SAYAKA YAMAMOTO TOUR 2021 ~re~】がスタートしましたが、今度はご自身の体調不良によりファイナルの大阪公演2デイズが中止になってしまいました。そこから約8カ月の活動休止期間に入ったわけですが、その間はどのように日々を過ごされていたんですか?
山本:一旦、いろんなことから距離を置いていたので、正直、仕事のことについては何も考えていなかったです。とにかくひたすら休むというか。普段の自分はそういうことができないタイプなので、せっかく活動休止を決めたんだったら、しっかり休まないと意味がないなって。何も考えないことを意識的にやっていた日々でしたね。
――アーティスト・山本彩としての未来を考えることもなかったですか?
山本:そうですね。しっかり休んで時間が経ったとき、自然と浮かび上がった答えを受け入れようと思ってたんですよ。当初はもう自分でもどんな答えが出るかがまったくわかっていない状態だったので。
――もし「音楽を続ける」という答えが出なかったら、それを受け入れるくらいの気持ちだったわけですか。
山本:はい。休養期間に入った当初は、音楽もまったく聴けなかったですしね。ただ、時間が経つ中で徐々に「これからどうしていこうかな」と考えることが増えて。そのときに、やっぱり私には音楽しかないなと思えたし、またライブがやりたいという気持ちが自然と湧き上がってきたんです。なので、またここに帰ってきました(笑)。活動を止めたことで、自分にとって音楽がいかに大きな存在であるかが再確認できたのは良かったなって思いますね。
――休止期間を経たことで、音楽に対する向き合い方が変化した部分ってあります?。
山本:私は元々、妥協が一切できないタイプなんですよ。それによってこれまでは自分で自分の首を絞めてしまうこともけっこう多くて。でも休止後は、いい意味で自分に甘くなれたというか(笑)。妥協が許せないことでメンタルが崩れてしまうのであれば、そこを一旦、緩めてみるという取捨選択ができるようになったんだと思います。そういう思考になってからは、気持ちがめちゃくちゃ楽になりましたし、音楽を作ることがより楽しめるようになりましたね。
――スタッフであったり、楽曲に参加されているプロデューサーであったりに、いい意味で頼れるようになったところがあるのかもしれないですよね。
山本:そうそう。それもめちゃくちゃ大きい変化かもしれない。今までは何か選択肢が生まれたときに、最終的な判断は自分でやらないと絶対にダメだと思っていたんですよ。山本彩として世に出す作品なんだから、すべてを自分で決めなきゃいけないんだっていう変な責任感があった(笑)。でも今は何かを選択するときには周りの人に相談できるようにもなったし、場合によってはお任せしてもいいんだなっていう考え方になったんですよね。気負わず、すべてを背負い込みすぎずに活動できるようになったのは、休止期間にフル充電できた結果なんだと思います。
- 「ストレートに吐き出さないと意味がないよなって」
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リリース情報
アルバム『&』
- 2023/5/17 RELEASE
<通常盤(CD)>
UMCK-1743 / 3,300円(tax in.)
<初回限定盤(CD+DVD) >
UMCK-7210 / 4,950円(tax in.)
※三方背ケース仕様
<FC限定盤(CD+DVD+Photo Book) >
PROS-1927 / 9,900円(tax in.)
※豪華BOX仕様
UMCK-1745 3,980円(tax in.)
公演情報
【SAYAKA YAMAMOTO TOUR 2023 -&-】
-
ライブハウスツアー
2023年6月15日(木)千葉・千葉LOOK
2023年6月17日(土)福島・郡山HipShot
2023年6月18日(日)栃木・HR宇都宮
2023年6月23日(金)埼玉・HRさいたま新都心
2023年6月25日(日)静岡・浜松窓枠
2023年6月28日(水)石川・金沢エイトホール
2023年6月29日(木)京都・京都MUSE
2023年7月01日(土)群馬・高松festahale
2023年7月02日(日)広島・広島CLUB QUATTRO
2023年7月09日(日)宮城・仙台GIGS
Zeppツアー
2023年7月13日(木)東京・Zepp DiverCity(TOKYO)
2023年7月18日(火)愛知・Zepp Nagoya
2023年7月19日(水)大阪・Zepp Namba
2023年7月26日(水)福岡・Zepp Fukuoka
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「ストレートに吐き出さないと意味がないよなって」
――昨年7月に活動を再開されてからは、ライブも楽曲のリリースも精力的に行ってきました。その活動の一つの結晶が今回のニューアルバム『&』だと思います。その仕上がりについてはどう感じていますか?
山本:私の元々のルーツはロックなんですけど、山本彩としての音楽性に関してはジャンルレスであることを大事にしてきたんですよ。ロック以外にも好きなジャンルがたくさんあるので、いろんな音楽を形として残していきたいなって。その思いが今回はより色濃く出たんじゃないかなって思いますね。本当にジャンルレスなアルバムになっているので。
――活動初期から音楽性の幅広さは見えていましたけど、今回はさらに振り切っている印象がありますよね。
山本:そうですね(笑)。いろんなクリエイターの方と制作をさせていただく機会も増えてきたので、その方々の特徴や得意なサウンド感と私の個性が合わさったときに生まれる化学反応が1曲ごとに色濃く出ているんだと思います。
――個人的には7曲目「あいまって。」でのyonkeyさんとのコラボがすごくおもしろかったです。山本さんの新たな表情が引き出されていますよね。
山本:yonkeyさんは自分とはまったく違う感覚を持たれている方だったので、制作は本当に楽しかったです。歌詞に関しては会話の延長のような感じで、おしゃべりしながら作っていったんですよ。その結果、“遮光カーテン”とか、日常が浮かんでくる具体的なワードがどんどん盛り込まれていって。自分でもすごくおもしろい曲になったと思います。
「あいまって。」Lyric Video @SAYAKA YAMAMOTO TOUR 2021 ~ re ~
――バラエティに富んだ既発楽曲が目白押しの本作ですが、「劣等感」「Bring it on」という2つの新曲も収録されていますね。
山本:はい。「劣等感」は活動休止前にプロットというか、書きたいことの骨組みはできていたんですよ。ただ、具体的な歌詞としての言葉がなかなか出て来なくて。結局、活動を再開させてから完成させた感じでしたね。
――タイトルが示すように、この曲では山本さんの中にある弱い一面がリアルに描かれていますよね。心の中の思いをストレートに吐き出している感じ。
山本:何事に対しても自信がないから、すぐ自己否定しちゃうっていう(笑)。これまでも自分の弱い部分を曲にしていなかったわけではないんですけど、ここまでストレートに書いたのは初めてだと思います。比喩を使ったり、変に遠回しな言い方をしないで弱音を吐くことができるようになったんでしょうね(笑)。
――そこも活動休止を経たことでの変化ですか?
山本:そうかもしれないです。せっかく自分のことを表現できる仕事をしているんだから、ストレートに吐き出さないと意味がないよなって思えるようになったというか。きっと休止前に完成していたら、こういう曲にはなっていなかったと思います。この曲ができたことで、少しラクになった部分もありましたね。
――この曲のサウンドプロデュースは、ボカロPの100回嘔吐さんですね。
山本:パッと見、意外な組み合わせですよね(笑)。でも私は学生時代にボカロ曲をたくさん聴いていたし、100回嘔吐さんが手がけたずとまよ(ずっと真夜中でいいのに。)さんや和ぬかさんの曲もめちゃくちゃ好きだったんです。私は基本、ギターをジャカジャカ弾くアナログなスタイルで曲を作るので、100回嘔吐さんとご一緒できたことで自分の中にはない引き出しを開けてもらえた感じがしました。2コーラス目のAメロでガラッと雰囲気が変わるところとか、早口で畳みかけるところとかは100回嘔吐さんっぽいですよね。歌っててもすごく気持ちよかったです。
――もう1曲の「Bring it on」は一転、めちゃくちゃ強気な山本さんが見えていて。
山本:はい。アルバム制作の最後に書きました。復帰して以降はやる気に満ち溢れていたし、「劣等感」でふつふつとした思いを書ききれた思いもあったので、今度はバーンと解放させる曲を書こうと思って。自信がないって言ったばかりですけど、この曲を書いていたときはもう無双状態だったというか(笑)。自信を持って、スラスラと書くことができましたね。
――この曲のサウンドプロデュースは江口亮さんです。
山本:この曲に関しては全編ギターがギャンギャン鳴っていて、リフが印象に残る曲にしたいイメージがあったんですよ。最近で言うとLiSAさんの「一斉ノ喝采」もそうでしたけど、江口さんはそういったサウンドが得意な方だと思ったので、今回初めてプロデュースをお願いさせてもらいました。
――まさに狙い通りのハードなロックナンバーに仕上がりましたね。その上で荒ぶる山本さんの歌も最高だなと。
山本:あははは。ありがとうございます。この曲はパワフルに、エネルギーを注げば注ぐほどいいっていうのはわかっていたんですけど、どこかで自分の中の優等生的な部分がブレーキをかけてしまうところがあって。それを江口さんにうまく取っ払ってもらえた印象がありますね。「もっとラフでいいよ」「上手く歌うことを考えなくていいよ」みたいなディレクションをしていただけたことで、余計なことを考えずに歌いきることができたと思います。本当に楽しいレコーディングでした。この曲をきっかけに、これからもっともっとレコーディングで荒ぶれるようになっていきたいですね(笑)。
「Bring it on」ミュージックビデオ
――真逆とも言える感情を注いだ「劣等感」と「Bring it on」。この2曲が生まれたことでアルバムタイトルが決まっていったそうですね。
山本:はい。サウンドも、歌っている内容も全然違う2曲ができたこと自体、すごく自分っぽいなと思ったんですよ。なので、今回のアルバムのテーマは二面性だなと思い、タイトルを「&」にしたんです。どっちも山本彩の中にあるリアルな感情だよっていうことで。私は今後も、劣等感に苛まれたかと思えば、「なんでもできる!」みたいな感じのゾーンに入ったりっていうことを繰り返して生きて行くんだと思います(笑)。今回、そのまんまの自分を表せたアルバムを作れたことがすごくうれしいです。
――本作を引っ提げ、6月13日から【SAYAKA YAMAMOTO LIVE TOUR 2023 “&”】がスタートします。小箱のライブハウスを巡りながら、後半にZeppツアーがジョイントされている、言わば2本立てとも言える内容ですね。
山本:アルバムの内容的にも、バンドらしい、ロックらしいツアーになると思います。特に「Bring it on」なんかは、ライブでみんなと声出しする光景を思い描きながら作っていたので、めちゃくちゃに盛り上がれたらいいですよね。後半のZeppでは少し内容も変えようかなって思ったりもしています。
――Zeppではバンドメンバーも増えるんですよね。
山本:そうなんですよ。コーラスとバイオリンの方に入っていただくので、また前半とは違った雰囲気のライブになると思いますね。
――ツアーの最中、7月14日には誕生日も迎えられますね。
山本:そうですよねぇ(笑)。いよいよ30代に入るので、気持ち的にはまたいろいろ違ってくるところがあるのかもしれないです。30代だからこそ書ける女性の歌とか、そういったものをどんどん出していけたらいいな。まずは20代から30代に変わる瞬間をまたいだツアーを思いきり楽しもうと思います。
リリース情報
アルバム『&』
- 2023/5/17 RELEASE
<通常盤(CD)>
UMCK-1743 / 3,300円(tax in.)
<初回限定盤(CD+DVD) >
UMCK-7210 / 4,950円(tax in.)
※三方背ケース仕様
<FC限定盤(CD+DVD+Photo Book) >
PROS-1927 / 9,900円(tax in.)
※豪華BOX仕様
UMCK-1745 3,980円(tax in.)
公演情報
【SAYAKA YAMAMOTO TOUR 2023 -&-】
-
ライブハウスツアー
2023年6月15日(木)千葉・千葉LOOK
2023年6月17日(土)福島・郡山HipShot
2023年6月18日(日)栃木・HR宇都宮
2023年6月23日(金)埼玉・HRさいたま新都心
2023年6月25日(日)静岡・浜松窓枠
2023年6月28日(水)石川・金沢エイトホール
2023年6月29日(木)京都・京都MUSE
2023年7月01日(土)群馬・高松festahale
2023年7月02日(日)広島・広島CLUB QUATTRO
2023年7月09日(日)宮城・仙台GIGS
Zeppツアー
2023年7月13日(木)東京・Zepp DiverCity(TOKYO)
2023年7月18日(火)愛知・Zepp Nagoya
2023年7月19日(水)大阪・Zepp Namba
2023年7月26日(水)福岡・Zepp Fukuoka
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