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<インタビュー>Vo.竹縄航太が語るHOWL BE QUIETの13年間 「もし選べるのなら、またHOWL BE QUIETをやりたい」



インタビューバナー

HOWL BE QUIETが、アルバム『HOWL BE QUIET』と東名阪ツアー【HOWL BE QUIET LAST TOUR「Evergreen」】をもって解散する。高校3年生の頃に結成し、メンバーの脱退・加入やレーベルの移籍・設立などもありながら13年間走り抜けてきたが、ここで幕を下ろす。

バンドが続くことは奇跡だ。商業的な成功という目的を背負っているバンドならなおさら険しい。それでも、人生を戻れるとしても「またHOWL BE QUIETをやる」という竹縄航太(Vo./Pf./Gt.)の答えがバンドの魅力を語り尽くしていると思った。最後に自分たちのやりたいことをやり通したアルバム『HOWL BE QUIET』を完成させることができた竹縄の表情は、実に清々しかった。(Interview & Text:矢島由佳子/Photo:堀内彩香)

ラストアルバムの制作は「バンド史上一番楽しかった」

――HOWL BE QUIETは何度も大変な時期を乗り越えてきたバンドだと思うんです。だから解散発表を聞いた時には驚きと寂しさが大きかったです。今回解散を選んだ決定打は何だったんですか?

竹縄:決定打として一番大きかったのは、去年『ばかやろう』と『Wonderism』というシングルを出した時に、「じゃあ次はどうしようか」という話に初めてなったんですね。それまではずっと、1、2年先まで予定が決まっていたので。そうなった時に、何も浮かばなかったんです。そこで真っ先に思ったのは、解散コメントとかでも言っているんですけど、「やりきったな」という感覚だったんですよね。HOWL BE QUIETとしてやれることは全部やったし、燃料が尽きたというのが正直なところで。高校3年生の頃にバンドを組んで、そこから13年間、音楽まっしぐらでやってきた中で、もちろん音楽は大好きだし音楽を続けたい気持ちはあるけど、HOWL BE QUIETというバンドに注ぐ燃料が底を突いてしまったというのが2022年に訪れた現象のひとつで。それを僕だけじゃなくて、角度は違えどメンバーみんな思っていたことが、解散という結論に至ったきっかけのひとつだと思います。

――どんなバンドもモチベーションのアップダウンはあるじゃないですか。次の燃料が手に入るまで活動休止しよう、ということではなく、解散を選んだのはどうしてですか。

竹縄:ベースの(松本)拓郎だけはちょっと若いんですけど、高校からやってきているメンバーはもう今年32になるという時に、やっぱり次に進まないとというふうに思うじゃないですか。HOWL BE QUIETを続けることで、甘えようと思えばいくらでも甘えられたんですよ。でも、ここでしっかりとけじめをつけることが、次に進む上でひとつの大事な階段になるんじゃないかという話をメンバーともして。活休とかも考えましたけど、HOWL BE QUIETという生命体を見た時に「ここで解散」としたほうがかっこいいよねって、それはある種の美学として思ったところでもありました。


Photo:堀内彩香

――この取材依頼をいただいて、私は絶対に引き受けなければならないと思ったんですね。というのも、メジャーデビューの時からHOWLをとてもいいバンドだと思っていたから、すごく期待を込めてプッシュさせてもらっていて。メディアに携わる人間として、このバンドをプッシュした責任を自分で回収しなきゃいけないというか、けじめをつける責任も負わなきゃいけないなと思って。

竹縄:そんなことを思っていただいていたんですね。いや、それが嬉しいです。ありがとうございます。

――今「MONSTER WORLD」を聴いても、やっぱりすごく可能性のあるバンドだと思ってしまうし。

竹縄:いやそれめっちゃ思うんですよ(笑)。久々にMVとかを見返していて、自分でも笑っちゃうくらい「めっちゃいいじゃん、これ売れるでしょ」って今でも思うから。だから間違ってないんだなってすごく思いますし、「本当にいい曲書くな、俺」って、いい意味で勝手に自惚れたりしました。だから自信や間違ってないという気持ちは一切薄れてなくて。

▲HOWL BE QUIET「MONSTER WORLD」

――音楽的にも「やりきった」と言えるところは大きいですか。2016年のメジャーデビュー時、HOWLはロックバンドという枠にとらわれず、1曲の中でいろんなジャンルをやりたいし、曲ごとに違うジャンルをやりたいと言っていて。2023年の今だとむしろ評価されるようなことをいち早く、アウトサイダー的な立ち位置から言っていましたよね。

竹縄:そうでしたね。本当に、今はそうですよね。何でもありだし、曲単位でまったく違う色を出して、というのが当たり前の時代ですもんね。

――そういう意味でも、HOWL BE QUIETとしてやるべき音楽性をやりきったと言えますか。

竹縄:HOWL BE QUIETとしてやりたかったことは全部やろうって、わがままを言って作らせてもらったのがこのアルバム(『HOWL BE QUIET』)で。バンドとしてもやりきったし、音楽性としてもやりきったというのが如実に出ていると思いますね。それは胸を張って言えます。


Photo:堀内彩香

――メジャーデビュー後、最初に「しんどいな」と思ったタイミングっていつでした?

竹縄:メジャーデビューしてからは……『Mr.HOLIC』を出す前に【pre-HOLIC TOUR】というツアーをやったんですけど、その初日が赤坂BLITZで、全然人が入らなかったことがめっちゃきつかったですね。悔しいし、へこむし、あの時はめちゃめちゃきました。そのあとも夏にBLITZが決まっていたので「いやこれマジでどうしよう」みたいな。どうやったらみんな気づいてくれて、聴いてくれて、ライブに来てくれるんだろうって、あらゆることを考えたり悩んだりして。デビュー後一番初めに訪れた高い壁でしたね。

――もうどうすればいいのかわからないモードに入ってしまうし、そうなるとバンドの雰囲気も……。

竹縄:そう、雰囲気もモヤモヤとした、負の連鎖みたいなことにもなりますし。暗中模索で「どうしよう」という感じで。「ライブの時のこれがよくないんだ」とか責任転嫁的な部分も出てきますし、あの時期はなかなか難しかったですね。でもそのあと夏のBLITZはソールド間近まで人が入ったので、ちょっとはリベンジできたのが嬉しかったです。思うと……バンドで経験できることって、色々あるじゃないですか。テレビに出る、ラジオに出るとか、いろんなことがあると思うんですけど。何をもって「売れる」とするのかは置いておいて、「売れる」というひとつのゴールを僕らは達成できなかった、そこに一歩届かなかったという悔しさはあるんですけど、それ以外のバンドで経験できることは、挫折からいいことまで、全部経験してきたなと思うんですよね。

――フェスに出ることもそうだし、メンバー脱退・加入とかも含めて、バンドで経験できるものは全部経験してきたと。

竹縄:インディからメジャーデビューしたり、ポニーキャニオンと一旦お別れして、新しく自分たちで始めるということだったり。本当に色々なことを経験してきたなと改めて思います。

――味わえる喜怒哀楽は味わい尽くした?

竹縄:いや本当に。だいぶ味わいましたね。もう味しないくらい噛みました(笑)。

――そういう意味でも、「やりきった」と思う領域に達したんですね。

竹縄:そうなんですよね。実は発表してから僕も「なんでやりきったと思うんだろう」って考えていたんですけど、言葉を選ばずに言うと、多分どこかに「疲れた」があるんですよね。やっぱり、いろんなことを経験して、紆余曲折を経すぎて今に至った時、「あ、もうこれで全部だろう」という感覚が強くて。ネガに言えば「疲れた」だし、ポジティブに言えば「やりきった」という感じが、多分みんなにあって。バンド内でもガシャガシャぶつかりながら歩いてきたような13年間だったので、だからこそこのアルバムを作っている時がバンド史上一番楽しかったんですよね。


Photo:堀内彩香

――解散を決めたあとのアルバム制作がどういう雰囲気だったのか、やはりそこは気になってました。

竹縄:びっくりするくらいいい雰囲気で。レコーディングでも陰鬱な雰囲気が流れることはなくずっと笑ってましたし、ここ5、6年で一番いい雰囲気だと思います。このアルバムは本当にありがたいことに、スタッフも「最後だし本当に好きなようにやりな」と言ってくれて、レコーディングもMVもわがままを聞いてもらったので、これを作っている時が一番楽しかったですね。最後にすごいアルバムを作ろうという同じ方向に向かってただただ走れたので、すごく気持ちよかったし楽しかったです。

――具体的に最後にやりたいことって、どういうものでした?

竹縄:まず、18曲入れることをOKしてもらったこと。あとは、今までわりと「この曲入れるのどうなんだ」とか、「この歌詞はどうなんだ」とか、いろんな面でスタッフと議論してきたんですけど、今回は「メンバーがやりたいんだったら好きにやりな」というふうに言ってくれて。もちろんいつも歌いたいことや作りたい曲を入れてはいるんですけど、今回は純度がより濃いというか。本当にメンバーだけで話して、メンバーだけでアレンジした曲も多くて。そういうものを作れたことが嬉しさのひとつだと思います。

――HOWLって、言葉が難しいけど……めちゃくちゃ売り出されたメジャーデビューだったじゃないですか。

竹縄:本当にね。もう包み隠さず言ってください(笑)。本当にそうなんですよ。ラジオ局だって46局とか(パワープレイを)取っていただいてましたからね。大前提として、バンドとしての地力が足りなかったということはもちろん絶対にあって。もっといいライブができていたらとか、もっといい曲ができていたらとか、もちろんあるとは思うんですけど、バンドなりに色々模索しながら全力疾走で駆け抜けてきて、結論としてはそのどれもが間違ってなかったなと思います。結果として今、気持ちよくアルバムを作れたので。

――間違ってなかったと言い切れるのは素晴らしいことですね。

竹縄:「あの時にああしていればよかったね」なんてことは簡単に言えるんですよ。でも、あの時の俺らにできた選択はあれだったし、あの時の俺らにとってのベストはあれだったよね、というふうに思います。今みんながそれぞれの道へ羽ばたこうとしていて、羽ばたく前にこのアルバムを出すことは「立つ鳥跡を濁さず」感があって僕は好きですね。

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ゴールテープはとっくの前に切っていたのかも

――デビューの時から多くの人に聴いてもらうことに意識的なバンドだったからこそ、常にチーム内でいろんな議論があったけど、最後の作品は、もちろんひとりでも多くの人に聴いてほしいという気持ちはありながら、何よりもメンバー4人の想いを優先して作れた音楽だったと。

竹縄:そうですね。「何でもあり感」がイレギュラーで楽しかったですね。これまで無駄に背負っていた感はあるかもしれないです。ボーカルだし、いい曲を書かないといけないし、とか。そういう大言壮語みたいなことを勝手に背負ってた。いざ解散が決まった時にそれがどさっと降りて、「色々考えちゃってたんだな、俺」みたいなことは思いました。

――メンバーは竹縄さんの歌が好きだからこそ歌を大事にするバンドでありたいという意志があっただろうし、だからこそ竹縄さんはボーカル兼ソングライターとして「いい歌を書かなきゃいけない」というプレッシャーを背負っていただろうし。

竹縄:そう、変に背負ってました。もうちょっとおこがましかったらよかったなって。「じゃあここのメロディ変えてみようかな」とか、「だったら違う曲書いてみようかな」とか、わりと素直に色々な意見を聞いていたので。時にはもっと貫く強さがあってよかったんだなと思ったり。だから解散が決まってから自分の中ではすごく景色がいいですね。

――目の前がぐちゃぐちゃなほど背負っていたということですよね。

竹縄:無駄にね。勝手に自分の中で。事務所、レーベル、メンバー、各方面の考え方の相違はもちろんあって当たり前なんですけど。事務所もレーベルも売れないとお金にならないからダメだし、でもメンバーとしてはただ売れる音楽をやってりゃいいのかっていうバンドマンとしてのプライドもあるし。そういう難しさをHOWLは色々経験してきたなと思いながらも、ここで満場一致で同じゴールを目指して作れた感じがするんですよね。だからこんなに清々しいんだと思います。


Photo:堀内彩香

――ラストアルバムを作ると決まってから書き始めた曲でいうと……。

竹縄:「メアリー」、「煙に巻かれて」、「かさぶた」、「ぼくらはつづくよどこまでも」、「Bad Morning」は、このアルバムに向けて書いた曲たちです。

――ラストアルバムのために5曲書くとなった時、どういう曲を作りたいと思いました?

竹縄:もうラストだから好きなものを書いていいとなった時に、これまでたくさん別れの歌を歌ってきたから、幸せな歌を書きたいという気持ちが自分の中であって。最後のアルバムにこんな歌があったら素敵だなと思って作ったのが「メアリー」だったんです。解散を決めてアルバムを作ろうとなった時にできたのかな。

▲HOWL BE QUIET「メアリー」

――HOWL BE QUIETとして最後に書いた曲は?

竹縄:「ぼくらはつづくよどこまでも」が最後に書いた曲でした。断定しすぎたくはないですけど、この時は間違いなく、自分がHOWL BE QUIETに向けて最後に書く1曲だと思いながら書いていて、走馬灯のように結成時からの出来事が思い浮かんできたので、バンドへの愛と情は詰まっていると思います。

――竹縄さんにとって、バンドのよさって何ですか?

竹縄:「人がいる」ということですね。目が合う、言葉を交わせるということが何よりも素敵で。同じ目線、角度、熱量で話したり喧嘩したり。バンドという生命体は強すぎるんですよね。ドラマが生まれるのがバンドのよさだなとも思うし。それが俺は好きだったんだなと思います。この曲(「ぼくらはつづくよどこまでも」)も僕がただひとりで歌うのと、HOWL BE QUIETとして出すのとでは伝わり方や破壊力が違う。最近ひとりで曲を作っていると、バンドの距離感って本当に稀有で尊いものだったんだなと改めて思いますね。でも本当に強がりとかじゃなく、今は悲しみとかよりも清々しさや達成感の方が強くて。とか言いながらライブで号泣してるかもしれないですけど(笑)。でも本当に晴れやかで。みんなともそういう会話しかしてないです。

――HOWL BE QUIETというバンドをやる人生とやらない人生を選べる地点に戻れるとしたら、どうしますか。

竹縄:ああ、それはやっちゃうなあ(笑)。いや、こうなるならどう考えたってやらない方がいいんですよ。だって、売れることがゴールじゃないですか。そのゴールをHOWLでは成し遂げられなかったという時点で、絶対に選ばない方がいいんですよ。でも、楽しかったんですよね。だから絶対に選んじゃうと思います。それくらいバンドというのは魅力的だし、HOWL BE QUIETが魅力的でした。

――ゴール、と言っても色々あるし。

竹縄:もちろん、いろんなゴールがありますからね。

――ゴールを達成したか否かの事実より、その過程の毎日の出来事がどうであるかの方が人生の幸福度に影響を与えるんじゃないかなとも思います。

竹縄:いや本当にそうですよね。だから、幸福度では結果的によかったなと思います。お客さんにもたくさん愛してもらって。解散を発表した時に初めてトレンド入りして、みんなが色々つぶやいてくれているのを見て、「これだけの人が知ってくれて、聴いてくれて、想いを馳せてくれているんだ」と思いました。あれはすごく嬉しかったですね。

――ある意味、ゴールは達成していたんじゃないですか?

竹縄:そうなのかもしれないですね。気づいてないだけでね。意外とゴールテープはとっくの前に切っていたのかもしれない。


Photo:堀内彩香

――ラストツアー【HOWL BE QUIET LAST TOUR「Evergreen」】もいい雰囲気になりそうですね。このアルバムを聴いて竹縄さんの話も聞くと、すごく暖かい拍手で包まれるんだろうなと想像します。

竹縄:もうみんなと繋がることがないと思うと、この日のことを引き出しの片隅の方でいいから置いておいてもらって、いつもどこかで小さくでもエールを送ったりできるような、そんな日を作りたいなと思います。だからこの日は笑って終わりたいですね。笑ってバイバイしたい。

――【Evergreen】というタイトルがまたいいですね。

竹縄:「Evergreen」という曲を作りたいなと思っていた時に「ツアーのタイトルどうする?」って言われて、これはツアー名にしようと思って。HOWL BE QUIETというバンドはなくなりますけど、曲は残っていくので。曲が残っていくからこうやって最後にアルバムを出すし。

――竹縄さん自身はこれからも音楽を続けたいという気持ちがありますか。

竹縄:俺はもう、めちゃめちゃ続けたい。どんな形になるかはまだわかってないですけど、歌い続けたいし、曲を作り続けたいので、何かしら音楽のそばにいたいなと思ってます。今まではHOWL BE QUIETという看板を掲げた竹縄航太だったので、ひとりの竹縄航太としていろんなことに挑戦できると思うと楽しみな一面はありますね。でもとにかく、こういうアルバムを最後に出せたことが本当に嬉しいです。

HOWL BE QUIET「HOWL BE QUIET」

HOWL BE QUIET

2023/03/01 RELEASE
MMZ-11016 ¥ 3,850(税込)

詳細・購入はこちら

Disc01
  1. 01.メアリー
  2. 02.解体君書
  3. 03.ばかやろう
  4. 04.コーヒーの歌
  5. 05.煙に巻かれて
  6. 06.染み
  7. 07.ベストフレンド
  8. 08.かさぶた
  9. 09.Abyss (inst.)
  10. 10.つよがりの唄
  11. 11.釣った魚の愛し方
  12. 12.I’M HOME
  13. 13.味噌汁
  14. 14.ぼくらはつづくよどこまでも
  15. 15.Bad Morning
  16. 16.ケシゴムライフ
  17. 17.GOOD BYE (2022 Ver.)
  18. 18.逢いたい (2022 Ver.)

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